1 / 16
プロローグ
しおりを挟む最高気温を更新した今日。
額に浮かぶ汗をタオルで抑えながら、勤めている高校の正門に立っている。
「せんせーおはよ~。」
「暑~い……まじとける……」
夏休み真っ最中、夏期講習に申し込んだ生徒たちが朝から登校している。
門の開閉を任された俺は、炎天下の中指定の時間まで門の隣に立ち、挨拶運動をしなくてはならない。
「はい、おはよう。夏休みだからってスカート折すぎだぞ。生徒指導の先生に見つかる前に直せ。」
「はーい。」
日傘をさして登校して来る女子生徒をさっさと校舎へ向かわせて、ぽつぽつ門を通り抜ける生徒たちに挨拶を投げる。
「おはよう。」
「はざす……」
返してくれる子はまちまちだが、この暑さの中登校して来るだけ偉いと思う。
まあ、教室はクーラーついてるし天国だろうな…
時間になり門を閉じようと動かしていたら、道路の反対側で歩道橋を登ろうとしていた生徒が「待って先生!!」と叫びダッシュで歩道橋を渡ってきた。
門にたどり着いた時には肩で息をして、頭から滝のように汗を流している。
「ハァ…ハァ…ゼェ…っんぐ…間に合った……?」
「ギリギリセーフな。ゆっくりでいいから、教室に向かいなさい。」
「ありがとうございます!遅刻するかと思った~!」
息を整える生徒の横で閉門作業をして、門のすぐ近くを歩いていた生徒たちと話しながら校舎へと向かう。
汗を吸って重たくなったタオルを首から外し、肩へとかける。
生徒と話している最中、頭がズキズキと痛み始めた。
水分補給をそろそろしないとな、なんて考えが頭をよぎるが頭痛は酷くなる一方。
これは薬も飲んだ方がいいかなと悠長に考えていたら、視界が急に白くなり、目眩に襲われる。
足に力が入らなくなり、微かな痙攣を起こす。
体中の血がサッと引いた感覚と寒気を感じた。
あ、まずい。
そう思った時には遅かった。
カクンッと膝から崩れ落ちた俺は、自分の体を支える力も出ず、廊下に倒れてしまった。
頬に触れる床の冷たさに心地よさを感じながら、意識を手放す。
生徒たちの手本にならなければいけない立場なのに、情けない姿を見せてしまったな……
遠くで蝉の鳴き声が聞こえる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
168
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる