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プロローグ

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最高気温を更新した今日。
額に浮かぶ汗をタオルで抑えながら、勤めている高校の正門に立っている。

「せんせーおはよ~。」
「暑~い……まじとける……」

夏休み真っ最中、夏期講習に申し込んだ生徒たちが朝から登校している。
門の開閉を任された俺は、炎天下の中指定の時間まで門の隣に立ち、挨拶運動をしなくてはならない。

「はい、おはよう。夏休みだからってスカート折すぎだぞ。生徒指導の先生に見つかる前に直せ。」

「はーい。」

日傘をさして登校して来る女子生徒をさっさと校舎へ向かわせて、ぽつぽつ門を通り抜ける生徒たちに挨拶を投げる。

「おはよう。」

「はざす……」

返してくれる子はまちまちだが、この暑さの中登校して来るだけ偉いと思う。
まあ、教室はクーラーついてるし天国だろうな…

時間になり門を閉じようと動かしていたら、道路の反対側で歩道橋を登ろうとしていた生徒が「待って先生!!」と叫びダッシュで歩道橋を渡ってきた。

門にたどり着いた時には肩で息をして、頭から滝のように汗を流している。

「ハァ…ハァ…ゼェ…っんぐ…間に合った……?」

「ギリギリセーフな。ゆっくりでいいから、教室に向かいなさい。」

「ありがとうございます!遅刻するかと思った~!」

息を整える生徒の横で閉門作業をして、門のすぐ近くを歩いていた生徒たちと話しながら校舎へと向かう。

汗を吸って重たくなったタオルを首から外し、肩へとかける。

生徒と話している最中、頭がズキズキと痛み始めた。
水分補給をそろそろしないとな、なんて考えが頭をよぎるが頭痛は酷くなる一方。

これは薬も飲んだ方がいいかなと悠長に考えていたら、視界が急に白くなり、目眩に襲われる。

足に力が入らなくなり、微かな痙攣を起こす。
体中の血がサッと引いた感覚と寒気を感じた。

あ、まずい。

そう思った時には遅かった。

カクンッと膝から崩れ落ちた俺は、自分の体を支える力も出ず、廊下に倒れてしまった。

頬に触れる床の冷たさに心地よさを感じながら、意識を手放す。

生徒たちの手本にならなければいけない立場なのに、情けない姿を見せてしまったな……

遠くで蝉の鳴き声が聞こえる。
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