トリックスターティル

うさぎ蕎麦

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第一章「冒険者ティル」

6話「ヒロイン誕生!?」

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―ティル宅―

「やぁフラッド君」
 いやー今日も本当にいい天気、なんていうのはナンパ文句だから言わないことにしてと。
「……」
 趣味に没頭しているフラッド様は俺に対して凍てつく視線を投げかけて……。
 この視線がたまんねぇ!!
 
 なわきゃない、俺は男に趣味は無いからね、いや女の子でもそんな趣味は御座いませぬ。

「最近仕事してねーよなー」
「……」
 俺の問いかけに対してフラッド様は纏っていたオーラの力を緩めた。
「いやー大魔法使いフラッド様」
 って思ったけど僕はこの前仕事したよ。
「あーいや、あれは、その」
 フラッド様の鋭い指摘に対して俺はうろたえた。
「ほら、ね?飯とかなんとか食べるお金とか必要じゃん?」
 最近冒険者としての仕事をしてないせいでお財布様から緊急勧告が出されてウルサイ訳よ。
「……」
 そんな事言われても今ゲームが良いところって言われてもなー、
 男一人が仕事する場面とか誰が見て楽しいと思う?
「……」
 じゃあ男二人が楽しいのかって?
 そりゃー、いちおーそういうのが好きな層とか居るんじゃないのー?需要は0じゃないと思うぜ?
「……」
 君はいいのかい?
 うん、正直かわいー女の子と仕事した方がたのしーけどな?

『フラッド君が発する視線の温度がガン下がりしました』

「いや、だからと言って魔法少女的な何かを求めてるワケじゃねーぞ?」
「……」
 フラッド様は秘蔵のコスチュームから魔法少女のソレに手を触れていたご様子で、俺にツッコまれてどこか落胆している様子だったのだが……。

 フラッドきゅん@魔法少女仕様。

 ……いや?アリか?
 リッツなんて凶悪女と比べれば1000倍良さそうな気が……。
 
 下らない事を考えながら、胸部に詰めるであろう物体に視線を送り……。
 
「巨乳系魔法少女」
 と呟いた俺は思わず生唾を飲み込んだ。
「……」
 俺の呟きを聞いたフラッド様は再度コスチュームに手を掛けた。
「いや、待て、偽物だ」
 と自分を諭すように呟いてリッツ嬢の洗濯板を想像するも……。
「偽物でもよくね?」
 ティル様の裁判官達による審議の結果きょぬーは正義と言う判決が下された。
 


「やべぇ……」
 フリフリのスカートをしたカジュアルチックなローブに身を纏ったフラッドきゅん。
 ウィッグにより作り出された淡い栗色のロングヘアー、その後ろにはピンク色のリボンが装着され可愛さを増加させている。
 胸の手前で両手で持たれている杖が魔法少女としての魅力を一層引き立て……。
「やぁ、そこの可愛い君」
 俺は思わずフラッドきゅんの肩に手を回し口説き始めようとしていた。
「……」
 フラッドきゅんはうっとりとした表情で俺を見つめ……。
「アンタ達、あにやってんのよ?」
 思わず超えては行けない一線を越えようとした寸前でどこぞの魅力の欠片すら無い女の声が聞こえて来た。
「魅力の欠片すらない女で悪かったわね!!」
 あれ?聞こえちゃいました?
「それはそうと、ティル君、あんた、幾ら女の子からモテないからって遂に男に手を出すようになったワケー!?」
 リッツ嬢が物凄い剣幕で言い放った。
「いや、それはその」
 ノリでついなんて言おうと思ったけどどーすっか?
「チッ」
 そう悩んでる間にリッツ嬢はフラッドきゅんに視線を向けると、あまりにも可愛い美少女へと変貌したその姿に悔しさを覚え、周りの誰からも聞こえるような舌打ちをした。
(いや、待てよ?リッツに助けられたのか?俺)
「大体なんなのよ!!」
 フラッドの胸元を指さしてリッツが叫んだ。
「……」
 リッツの罵声を浴びたフラッドきゅんは生まれたての小鹿のように瞳を潤ませ全身を震わせながら俺の背後に隠れる様に逃げた。
「あーあ、泣かせちゃった」
 なんて俺が思わずつぶやくと。
「はぁぁぁぁ!?アンタ男でしょーが!!」
「男?俺は男だけど?」
「クソティルの事じゃなーーーい!!」
「じゃあ誰?この場に男は俺しかいねーけど?」
「嘘つけーーーー!!アンタの後ろに隠れてる魔法少女は♂じゃないかーーー!!」
 リッツは派手に叫びながら俺の背中に隠れるフラッドきゅん向けてビシッと指をさした。
「魔法少女♂ですってー?やだなーふらっどきゅんはまごう事無き魔法少女じゃないですかー」
 気が付いたら俺の中でフラッドきゅんはれっきとした魔法少女となっている様だ。
「こいつのどっこが♀なのよ!!」
 激昂しているリッツ嬢はフラッドきゅんの胸元に手を回し……。
「女の胸が固いワケ無いのよっ!!」
 フラッドきゅんのお胸様を揉みしだき始めたのですが……。
「なんで柔らかいのよ!!」
 白昼どーどーとリッツお嬢様の叫び声が街中に響きました。
「……」
 フラッドきゅんは眼鏡をクイッっと右手人差し指で上げると薄ら笑みを浮かべていた。
「ねーねーフラッドきゅーん」
 フラッドきゅんを暫く睨めつけていたリッツ嬢であったが何故か猫を撫でるような声を出した。
「……」
 フラッドきゅんは首を小さく横に振りました。
「あんでダメなのよーーー!!!私だって!!」
 魅力的なヒロインになりたいと言いたそうでしたがプライドの高いリッツお嬢様は言葉を飲み込んだ様で御座いました。
「フラッド君の衣装については置いてあげるわ、でも、引きこもりオタクのハズの彼が貴方と一緒に外出するというのはどういうわけかしら?」
 先程までの暴れ方とは打って変わり虎視眈々とリッツさんは言いました。
「それはだな」
 フラッドきゅんとのデートを楽しむと言おうと思ったが、リッツから発する謎のオーラからそれを言うなと直感で伝えられた。
「まー最近お金が無いから久しぶりに冒険者として仕事しようかなと思ったのさ」 
 なんて真面目に答えた。
 いや、変な回答してシバかれるのもヤだしさ?
「そういう事なのね」
「そーそー」
「はぁ、仕方ないわねぇ、私が一肌脱いであげるわよ?」
 溜息交じりに優しく感じる言葉を吐き出すリッツ。
「一肌脱ぐ?」
 そのリッツの善意を無視するかの様にリッツの洗濯板に視線を向ける。
「てぃーるくーーーん?わ・ざ・と?」
 リッツが引きつった笑みを浮かべながら殺意のオーラに身をまとった。
「うん?」
 一肌脱ぐって言われたからそーしたんだけど、でもリッツが一肌脱いだところで魅力もなんもねーじゃん?
 自分で言っといてどーしてそーゆー態度とるんだ?
 いや、まーリッツだししゃーねーかなー?
「わざとだよねー?」
 リッツが俺に一歩踏み込みながら言った。
「え?あ、う、うん」
 こーゆー場合は適当に相槌打つのが安定行動ですよね?
「ならいいけどねー?」
「ま、まーともかくギルセンにいこーぜ?」
「そうね」
 
 かくして俺は可憐な魔法少女♂フラッドきゅんと豪桀洗濯板娘・リッツと共にギルドセンターで仕事を受けに行くのであった。
 
 リッツの称号は本人には内緒だぜ?
 
 ……あ、ちょ、ま、ち、違うんだ!?



――暫くお待ち下さい――
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