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1章「おっさん田中太郎悪役令嬢に転生」

3話「天才科学者♂レオナルトきゅん」

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 女神クリスティーネとの面談を終え無事異世界転生をした田中太郎。
 第二の世界ではファルタジナ家の長女として生を受けた。
 名をルチーナと付けられ、貴族としての生活をし14年経過した。
 正直な所、最初は令嬢としての生活に対して不慣れではあったが14年もあればある程度慣れる事が出来た。
 
 ルチーナとなった俺の容姿だけど、身長は163cmでこの世界の女子平均値より少々高い。
 体重も平均値よりは少ない、恐らく周りの人々が体重管理をしてくれたおかげだろう。
 外見特徴は、肩よりももう少し伸びた髪大体セミロング位か?
 色は金色で、瞳の色はエメラルドグリーンであり、容姿に関しては教科書通りの悪役令嬢だと思う。
 ただし、胸は無い、と。
 大体Bカップ位なんかねぇ? 元が男だから別にそう言うの一切気にしないからどうでも良いんだけどさ。
 
 しかし、クリスティーネの野郎、みょーに胸が大きかった様な?
 俺は女神クリスティーネのスタイルを思い出しながら、ニヤニヤしだす。
 貧乳にしやがった巨乳女神へのヘイトよりもその素晴らしき、きょぬーがどうなっているのかが大事と思う俺はやっぱり内面は男なのだろう。
 
 しかし、何か肝心な事を忘れている気がする。
 あぁ、そうだ。
 女神がオプションとして付けると言っていた天才科学者が一向に現れない。
 うーむ、最初の3年位は結構楽しみにしていたんだけど、3年経っても来ないとあれはウソか? と思い始め、いつしか記憶の中から抜け出していたらしい。
 
 まぁ良いや、今日は俺の誕生日でパーティやらなんやかんやでごっちゃごっちゃしていたのだ。
 そのせいでずいぶんと疲れていて自室でゆっくりとしたい。
 
 そう言えば、なんちゃら家の令嬢サマが4男だかなんだかしらないけど王子様と良い感じになった所を話してたなぁ。
 どーして俺の誕生パーティに来たのか不思議に思っていたが、奴等の表情や仕草見た限り俺に対する、ファルタジナ家に対するじまんしに来たっぽい。

 それに関して、両親がなんかうるさかったが俺の中身は男だ、王子様にキョーミなんかこれっぽっちも無いのだ。
 何? お前は悪役令嬢なんだからなんちゃら家の令嬢サマから王子様を略奪(りゃくだつ)しろって?
 
 確かにそう言われればそうなんだが。
 略奪してもなぁ、ぴーやぱーやぷーって展開になるんだよ?
 え? 外から見たらそんなの関係無いからとっととやれって?

 むぐぐ、確かにそうだ。
 うむ、分かった、明日から頑張るぞ。
 
 
 はっはっは! 残念ながらその明日は一生来ないけどな!
 
 
 とアホな事を考えながら今日一日の面倒ゴトで疲れ果てた俺は自室のドアを開けた。
 自室に入るなり、令嬢にふさわしい豪華で広々としたベッドに向かって俺は飛び込もうとする。

 が、机の引き出しがガタガタゆれている事に気が付いた。
 まさか、中にねずみが?
 高々ねずみ、30過ぎたおっさんにはどーでも良い事である。
 だがしかし、見た目はカレンな令嬢サマである。

 カレンな令嬢サマが、ねずみの首根っこ捕まえてドヤ顔した日には、きっと両親から熱いお説教トゥアーイムが待っているだろう。
 あはは、まぁ、アレだその、6歳位の時だったな。

 ついついカレンな令嬢って事を忘れてやらかした事があったのだよ。
 それでその時、父様と母様から延々と説教をされて、6歳のピュアでカレンでいたいけな少女の精神力を根こそぎ奪った訳で。

 と言うのはウソだ。
 30歳のおっさんが持つ鋼のメンタルの前では適切なあいづちを打つだけのゲームでしかなかったのだ。

 かと言ってめんどくさいから同じ過ちは繰り返したくない。
 まっ、適当に首根っこ捕まえて窓からテキトーにポイッっと放れば良いでしょう。
 俺は、ガタガタと震える机の引き出しに手を伸ばし、開けた。
 
「や、やぁ、こ、んにちは」

 引き出しを開けるとぎこちない挨拶が聞こえた。
 ははーん、この世界のねずみとやらは人間の言葉がしゃべれるのか、異世界はやっぱスゲーな。

 ん? 待てよ? だったらこの14年間で1度位は人間の言葉をしゃべる事が出来るねずみとやらに出会っているはずだが、その記憶は無い。
 
「おいネズ公、窓から放り出してやんよ!」

 俺は細かい事を考えるのを止め、ねずみ? と思われる動物の首根っこを捕まえ机の引き出しから引きずり出そうとする。
 
「い、いたい、痛いよッ、お姉ちゃん止めて、かよわきショタっ子をいぢめないでっ」

 ああ? ねずみの分際でショタだぁ? 最近のねずみは乙女ゲーでもやんのかよ?
 しかし、ねずみにしては妙にデカいし重いな、現在14歳少女である俺の力でこやつを引き出すのはちとツライ、腕が悲鳴をあげているな。

「クソッ、ねずみのクセにずいぶんと生意気な?」

 と、ここで俺はねずみとやらの頭に視線を運ぶ。
 すると、何と、そこには。
 自称ショタっ子と言う通り、いといとしき少年の姿が目に映る。

 そう、「愛しき」位平仮名で無く漢字で書けと。
 否ッ! そこに天性の親父ギャグ的センスを感じた故こう書くしか無かったのだぁぁぁぁぁっ!
 俺は35歳田中太郎、おっさんであーーーーる!
 
 んな訳ねぇ!
 クソッ、ツッコミキャラが誰もいねぇのに思わずボケちまったぜ。
 
 ふぅ、で、俺の目の前には可愛い少年の姿があった訳だ。
 そう言えば、オプションとやらが10歳の少年だったっけなー、ちょーど目の前にいるいたいけな少年がそれ位な歳かぁ。

 って、オメーなんで上目遣いしてやがんだよッ!
 俺は男だ、野郎の上目遣いなんか興味ねぇよッ!
 
「うぅ、お姉ちゃん怖いですぅ、僕が欲しいって言ったのはお姉さんじゃないですかぁぁぁぁ」

 ちょ、おま、男がですぅ語使うなッ! 確かにオプションで選んだがッ、誰かが聞いたらゴカイするような事を言うなッ!

 俺は、今の言葉を母上に聞かれていないか周囲の音を探り判断した。
 大丈夫だ、バレてない。
 俺は、ほっと安堵の溜息を付いた。

「それで? オメーは14年間何してたんだ?」

 割とマジで気になる。
 歩けてある程度言葉をしゃべれる位の年齢でやって来るモノだとずっと俺は思ってた。
 いや、3歳以降すっかり忘れてたけど。
 
「あうぅぅぅ、をとめの秘密を聞いちゃうんですか? 仕方ないですね、お姉ちゃんだけ特別だからね?」

 ほおを赤らめながら、そこに両手をあて、やっぱり上目遣いで恥じらいながら言うショタ野郎。
 顔より下は引き出しの中で、だ。
 
「オメーは男だろうがッ!!!!」

 そんなショタ野郎に対し、思わずツッコミを入れてしまった。

「えっぐ、えっぐ、お姉ちゃん酷いですよぉ? ボク、14年前からこの世界に居たんですよ? ボクの研究室からこの部屋に移動する為の道具を発明してたんだけど、ちょっとピーとかにはまっちゃって、合間をぬって開発をしていたら14年たっちゃって(テヘッ)」
「テヘッ、じゃねぇぇぇっ!!!! てーかオメー何放送禁止用語言ってやがんだ! ショタッ子ぶって何見てやがんだ!? あぁっ!? アレは大人とでも言いやがんのかよっ!」

 ハァ、ハァ、ハァ。
 いかん、キツイツッコミを入れてしまった。
 これでは母上様に(中略)いや、大丈夫だ。
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