僕は君にとってのラーメンになりたい。

第一章

【8話】知ってたんだからね、でも今の僕なら、

8話です。

真戸と植木のラーメン
実食タイムが始まりました。



真戸は植木からもらった野菜を
ハフハフと頬張っています。

小さいお口が膨らんでいて
小動物みたいで可愛らしい。


植木はようやくマスクを外して食べようと
思った矢先、その光景を見て、
また赤面してしまった。


一応ラーメンの下りが多すぎて、
お忘れであろうが、植木は今、
好きな人とのファーストコンタクトで
一緒に食事をしているのである。


緊張で食事が喉を通らない、
しかし真戸に食べさせて
負担をかける事もしたくない。

一種の拷問のようにも思えるが、
植木には好きな人と食事をしている
シチュエーションの幸せの方が勝っていた。



真戸はそんな植木の事を
ちょっと心配していた。

真戸（どうしよう、食事を奢れば
私がラーメン好きなのを他の社員に
黙っててくれると思ってたのに…）

真戸（少食なのを知らなくて
ラーメンを食べさせてしまった。）

真戸（男の人皆がラーメン
好きな訳じゃないんだ……）
（※そうです、貴方の偏見です。）


真戸（うわ、しかし珍しいな……
女の子みたいな
可愛い食べ方してる、
全然すすれてない……。）


男性という生き物は、
好きな人の前では見栄を張るものである。

真戸に近づいてくる男性社員の
ほとんどがそれであった。


その為、真戸は、
目の前の飾らない雰囲気の植木に
少し好感を抱きだしていた。


真戸「辛いのとさっぱりしたの
どれが好きですか？」

真戸「味飽きしたら
調味料使うといいですよ。」


ラーメンが半分に差し掛かったので、
真戸はお酢をかけていた。


植木「僕もそれかけてみます。」



それから後半は2人とも
黙々とラーメンを食べて、
食べ終えた後にウーロン茶を飲んで、
安心してホッとため息をついた。


植木（結構お腹いっぱいになった。）
真戸（全然お腹いっぱいにならなかった。）


植木「ご馳走様でした。」

真戸「ご馳走様です。」


真戸「お昼休憩終わるので、
そろそろ社内に戻らないとですね。」


植木「あっ！そうでしたッ！！」



足早に店の外に出た時に、
植木が財布を取り出す。


植木「あのっ！食事代出しますッ！！」


植木「沢山注文していたので、いくらか
分からないんですけど！！！」


そう言って植木は3000円を財布から出した。


真戸（多いな………）


真戸「今日は私が誘いましたので、
お代は結構です。」


植木「そんな訳に行きませんからッ！！」


植木（お金払わず好きな人と食事なんて
罪悪感がすごいッッッ！！！いろいろとムリッッ！！！）


真戸は様々な男性社員の口から
「奢るよ」と言う言葉を聞いてきた。


あからさまに、かっこつけた
その一言が嫌いだった。


そして、真戸自身は気づいていないが、
植木との食事は楽しかったようだ。


真戸（植木さんとまた食事したいな……）


真戸（でも、もうしてくれないんだろうな……）


真戸は目の前のお金を受け取ったら、
植木とまた食事が出来ないと思い込んだ。


こういう場合どうしたらいいのか、
真戸は知らなかった。


しかし、真戸は良いアイディアを思いついた。


真戸「その代金少し多いです。」


植木「良いんですよッ多めに払いますッ！！」


真戸「そのお代受け取りませんから」






真戸「代わりにまた食事に誘って貰えますか？」






植木「ふぇ！？？」∑


真戸「この金額ならあと3回くらいは
行けるんじゃないですか？」


真戸「私、穴場知ってるんで！」


真戸は結んでいた髪留めをとり、
髪をなびかせた。


そして可愛らしい笑顔で、
幸せに溢れていた。




これが植木と真戸の
お付き合いするきっかけとなった、
馴れ初めの話でした。



【end】
【番外編に続きます】


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