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さよなら、私のエーデルワイス
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トーマスはエマと一緒に美しい夜景を望むテラス席に座っていた。彼はエマの手を優しく握りながら、彼女に微笑む。
「エマ、君と一緒にいると本当に幸せだよ。この景色も素敵だけど、少し特別な場所に行かないか?もう少し一緒にいたい」
エマは少し戸惑いながらも、トーマスの熱意に心を揺さぶられた。彼女は微笑みながら頷く。トーマスとなら、きっと後悔しない。
ジャンにエーデルワイスを贈った日を忘れたわけではなかった。でも、もう忘れてしまいたかった。
「どこに行くの?」
トーマスはエマの手を引いて立ち上がり、彼女に優しい笑顔を見せた。
「それはサプライズだよ。君に特別な場所を見せてあげたいんだ」
エマはトーマスの目を見つめ、彼の優しさと心意気に感謝の気持ちを抱きました。二人は手を繋ぎながら、レストランを出て彼の手配した馬車に乗り込んだ。
トーマスはエマを連れて、近くにある美しい湖へと向かい、湖畔には静かな夜風が吹き、満天の星が輝いていた。二人は湖のほとりのベンチに座り、穏やかな雰囲気の中で会話を楽しんでいた。
「実は…この湖が見える部屋をとってあるんだ。もしよかったら、今日は朝まで一緒にいてくれない?」
トーマスは緊張を隠しもせず、頬を染めて真剣な表情だった。エマもつられて緊張してしまう。でも、トーマスとなら…その想いは変わらなかった。
侍女は入れ替わり立ち替わり人の出入りがある。それは、17歳頃には結婚して止めていくからだ。エマももう、村を出てから二年が経ち、侍女の中ではベテランの仲間入りをしていた。
ーーさよなら、私のエーデルワイス
泣いた自覚はなかったが、涙で髪を濡らした。ジャンに捧げたエーデルワイスは、あの時のエマの言葉通り大切な思い出となってしまった。
トーマスはエマのために長くこの瞬間を待ってくれていた。神経質なほどゆっくりと、エマの反応を見ながらここまで連れてきた。後悔はなかった。エマはトーマスの想いに応えたいと思ったのだ。
◇ ◇ ◇
「エマ、まだ結婚なんてしないでよ?新人と同じ部屋なんて、もう私には無理だからね」
同室のアンナとは仲良くやっている。同室なだけあって一番仲がいいし、外泊すればバレてしまう。
「結婚なんてまだまだそんな話は出てないから安心して」
トーマスとは上手くいっていた。お互いに寮生活なので時間が合えば食事に行く程度だったが、たまに休みを合わせて出掛けたりして穏やかに過ごしている。
ただ、エマが気になるのはジャンのことだ。ジャンはあれからエマに何度も声をかけていた。それでも、未だ伯爵令嬢との逢瀬は続けているのだから、エマに迷いようはなかった。
ジャンはエマの冷たい態度に苦しむ日々を送っていた。彼は彼女に自分の真意を伝えたいと願っていたが、エマの壁は厚く、なかなか近づくことができなかった。
ジャンはエマに対して熱心に接近しようとするが、彼女は距離を置く態度を崩さない。彼女は自分の心を守るためにジャンへの感情を封じ込めていた。
ある日、ジャンは思い切ってエマとの対話を求める手紙を書くことに決めた。彼は真摯な気持ちを込めて文字を綴り、エマの心に届けたいと願っていた。手紙を書く過程で、ジャンは自分の思いを整理し、エマに対する深い愛情を再確認した。
「エマの幼馴染ってまさか…」
騎士団の門番とジャンのやり取りが耳に入り、足を止めたのは、街に買い出しに出ていたアンナだった。
手紙をエマに届けるために、ジャンはアンナにエマに手渡すよう頼む。アンナはジャンの真摯な気持ちを感じ取り、エマに手紙を届けることを約束した。
エマは手紙を受け取ったが、なかなか開くことができなかった。彼女はジャンへの感情を封じ込め、自分を守るために冷たい態度を取っていた。しかし、手紙が目の前にあることで、彼女の心に微かな揺れが生じた。
数日後、エマは手紙を開く決断をする。ジャンの真摯な言葉が綴られた手紙は、彼女の心を揺さぶった。彼の想いが本物であることを感じ、大きく揺さぶられた。
「大切なエマへ、
君からの贈り物、エーデルワイスの花を覚えていますか?その美しい花の存在は、君の優しさと愛情を僕に伝えてくれました。君の心に咲いたエーデルワイスの花は、僕の心にも深く根を張っています。
君が王都での噂について聞いたこと、そして僕と伯爵令嬢との関係について誤解が生まれたことは全て僕の責任です。しかし、その噂は事実ではなく、伯爵令嬢との関係はあくまで護衛としての立場です。僕の心は、ずっと君に寄り添っています。
手紙を通じて君に伝えたいのは、僕が君を深く愛していることです。君が持つ魅力や才能、君自身の美しさに心を奪われています。その愛情は、ずっと前から芽生えていたもので、ハート騎士団をやめ、王立騎士団に入団出来るよう、努力するつもりです。次のトーナメント戦の参加の許可はすでにもらってあります。
僕はこれからも二人の過去の思い出や絆を大切にしたいと願っています。僕たちが共に歩んできた幼少期の思い出や約束、そしてエーデルワイスの花に込められた想いを忘れずに、新たな未来を築きましょう。
僕はこの花に、大切な思い出ではなく、永遠の愛という言葉を込めて贈ります。
もし、君が会って話をする準備ができたならば、僕はいつでも君のそばにいます。君の心を開いてくれるその日を心待ちにしています。君との対話を通じて、互いの想いを確かめ合い、真実の愛を育んでいきましょう。
愛を込めて、ジャンより」
手紙に添えられていたのは、エーデルワイスの花だった。それを見て酷く動揺したエマは、数日経ち、枯れ始めているエーデルワイスを手紙に挟んで封筒にしまい込んだ。
もしジャンが幼い頃から夢見ていた王立騎士団に入団したら、素直に喜べるかと考えてしまう。エマは夢を叶えた瞬間を一緒に喜びたいと思ってこの仕事をもぎ取ったはずだった。でも今は、困惑している。
この手紙を受け取るまでは、確かにトーマスからは揺るがないと思っていた。それなのにどうしてこんなにも揺れ動いてしまうのか、エマは悩まされた。
「エマ、君と一緒にいると本当に幸せだよ。この景色も素敵だけど、少し特別な場所に行かないか?もう少し一緒にいたい」
エマは少し戸惑いながらも、トーマスの熱意に心を揺さぶられた。彼女は微笑みながら頷く。トーマスとなら、きっと後悔しない。
ジャンにエーデルワイスを贈った日を忘れたわけではなかった。でも、もう忘れてしまいたかった。
「どこに行くの?」
トーマスはエマの手を引いて立ち上がり、彼女に優しい笑顔を見せた。
「それはサプライズだよ。君に特別な場所を見せてあげたいんだ」
エマはトーマスの目を見つめ、彼の優しさと心意気に感謝の気持ちを抱きました。二人は手を繋ぎながら、レストランを出て彼の手配した馬車に乗り込んだ。
トーマスはエマを連れて、近くにある美しい湖へと向かい、湖畔には静かな夜風が吹き、満天の星が輝いていた。二人は湖のほとりのベンチに座り、穏やかな雰囲気の中で会話を楽しんでいた。
「実は…この湖が見える部屋をとってあるんだ。もしよかったら、今日は朝まで一緒にいてくれない?」
トーマスは緊張を隠しもせず、頬を染めて真剣な表情だった。エマもつられて緊張してしまう。でも、トーマスとなら…その想いは変わらなかった。
侍女は入れ替わり立ち替わり人の出入りがある。それは、17歳頃には結婚して止めていくからだ。エマももう、村を出てから二年が経ち、侍女の中ではベテランの仲間入りをしていた。
ーーさよなら、私のエーデルワイス
泣いた自覚はなかったが、涙で髪を濡らした。ジャンに捧げたエーデルワイスは、あの時のエマの言葉通り大切な思い出となってしまった。
トーマスはエマのために長くこの瞬間を待ってくれていた。神経質なほどゆっくりと、エマの反応を見ながらここまで連れてきた。後悔はなかった。エマはトーマスの想いに応えたいと思ったのだ。
◇ ◇ ◇
「エマ、まだ結婚なんてしないでよ?新人と同じ部屋なんて、もう私には無理だからね」
同室のアンナとは仲良くやっている。同室なだけあって一番仲がいいし、外泊すればバレてしまう。
「結婚なんてまだまだそんな話は出てないから安心して」
トーマスとは上手くいっていた。お互いに寮生活なので時間が合えば食事に行く程度だったが、たまに休みを合わせて出掛けたりして穏やかに過ごしている。
ただ、エマが気になるのはジャンのことだ。ジャンはあれからエマに何度も声をかけていた。それでも、未だ伯爵令嬢との逢瀬は続けているのだから、エマに迷いようはなかった。
ジャンはエマの冷たい態度に苦しむ日々を送っていた。彼は彼女に自分の真意を伝えたいと願っていたが、エマの壁は厚く、なかなか近づくことができなかった。
ジャンはエマに対して熱心に接近しようとするが、彼女は距離を置く態度を崩さない。彼女は自分の心を守るためにジャンへの感情を封じ込めていた。
ある日、ジャンは思い切ってエマとの対話を求める手紙を書くことに決めた。彼は真摯な気持ちを込めて文字を綴り、エマの心に届けたいと願っていた。手紙を書く過程で、ジャンは自分の思いを整理し、エマに対する深い愛情を再確認した。
「エマの幼馴染ってまさか…」
騎士団の門番とジャンのやり取りが耳に入り、足を止めたのは、街に買い出しに出ていたアンナだった。
手紙をエマに届けるために、ジャンはアンナにエマに手渡すよう頼む。アンナはジャンの真摯な気持ちを感じ取り、エマに手紙を届けることを約束した。
エマは手紙を受け取ったが、なかなか開くことができなかった。彼女はジャンへの感情を封じ込め、自分を守るために冷たい態度を取っていた。しかし、手紙が目の前にあることで、彼女の心に微かな揺れが生じた。
数日後、エマは手紙を開く決断をする。ジャンの真摯な言葉が綴られた手紙は、彼女の心を揺さぶった。彼の想いが本物であることを感じ、大きく揺さぶられた。
「大切なエマへ、
君からの贈り物、エーデルワイスの花を覚えていますか?その美しい花の存在は、君の優しさと愛情を僕に伝えてくれました。君の心に咲いたエーデルワイスの花は、僕の心にも深く根を張っています。
君が王都での噂について聞いたこと、そして僕と伯爵令嬢との関係について誤解が生まれたことは全て僕の責任です。しかし、その噂は事実ではなく、伯爵令嬢との関係はあくまで護衛としての立場です。僕の心は、ずっと君に寄り添っています。
手紙を通じて君に伝えたいのは、僕が君を深く愛していることです。君が持つ魅力や才能、君自身の美しさに心を奪われています。その愛情は、ずっと前から芽生えていたもので、ハート騎士団をやめ、王立騎士団に入団出来るよう、努力するつもりです。次のトーナメント戦の参加の許可はすでにもらってあります。
僕はこれからも二人の過去の思い出や絆を大切にしたいと願っています。僕たちが共に歩んできた幼少期の思い出や約束、そしてエーデルワイスの花に込められた想いを忘れずに、新たな未来を築きましょう。
僕はこの花に、大切な思い出ではなく、永遠の愛という言葉を込めて贈ります。
もし、君が会って話をする準備ができたならば、僕はいつでも君のそばにいます。君の心を開いてくれるその日を心待ちにしています。君との対話を通じて、互いの想いを確かめ合い、真実の愛を育んでいきましょう。
愛を込めて、ジャンより」
手紙に添えられていたのは、エーデルワイスの花だった。それを見て酷く動揺したエマは、数日経ち、枯れ始めているエーデルワイスを手紙に挟んで封筒にしまい込んだ。
もしジャンが幼い頃から夢見ていた王立騎士団に入団したら、素直に喜べるかと考えてしまう。エマは夢を叶えた瞬間を一緒に喜びたいと思ってこの仕事をもぎ取ったはずだった。でも今は、困惑している。
この手紙を受け取るまでは、確かにトーマスからは揺るがないと思っていた。それなのにどうしてこんなにも揺れ動いてしまうのか、エマは悩まされた。
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