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王国
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「花を閉じ込めたゼリーだなんて初めて見ましたわ。アルベルトがここを選んでくれた事には感謝しなくてはいけませんね」
「こんなにも華やかな料理が並ぶとは思わなかったが、喜んでくれたならよかった。それで、本題というのはどういう話なんだ?」
派手な物が好きなイリアは見た目で楽しむ料理に機嫌を良くし、緩む頬を抑えることができないでいた。
「そうでしたわね。わたくしすっかり料理の虜になってしまっていたわ。改革派の分裂も表面化する頃合い、しかし女性の社会進出については議論は堂々巡りで庶民も貴族も飽き飽きとして関心が薄れています。ここで少し過激な方法を、選択肢に入れたく、少しご相談に乗っていただけないかと思っておりましたの」
イリアは男女平等と一言に言えど、平民から貴族に至るまで様々議論する事があり、中々話が進まない事に焦りを感じていた。
改革派が分裂すれば、益々制度を固めるのに時間がかかる。
まずは手っ取り早く女性当主を認める制度改革を推し進めたいと考えていた。
爵位の継承権を女性にも与えるというだけで、平民にも分かりやすく男女平等を視覚化出来る。
カリーナの領主代行としての仕事ぶりを、イリアの対談として記事に載せてもらう事の了承をもらいたかった。
その記事の出る数日後には、女性の夜会、お茶会のストライキを呼びかけるつもりでいる。
実際に声を上げてみないと結果は分からないが、多くの貴族女性が当主達に情報を渡さなくなる。
すぐにはその重大さに気付かないだろう。
しかしこの社交会シーズンに女性がいない事で、どれほどの不利益が起こるかは想像に容易い。
きっと情報不足により、各地の領主達の対応は遅れをとる事だろう。
今シーズンのストライキという燃料を注ぎ込む事で、改革派の分裂後の議会に、もう一度視線を集める作戦だった。
「カリーナの話をするのはもちろんいいが、ストライキとなると、陛下や王妃にもきちんと話を通した方がいいと思うが、その辺りは大丈夫なのか?また派手な事をやるな」
一連の話を説明し終えると、アルベルトの眉間には皺が寄る事になった。
ストライキは平民の間で待遇の改善のために稀に行われてはいるが、どんなに多くても10人程の規模のものばかり。
失敗することも多くあった。
事前の根回しが非常に大切になるので、イリアも早くから裏で動いていた。
「王妃へは伝えてありますが、当たり前ですが賛同はいただけませんでした。しかし、それぞれの行動を止めることは出来ることではなく、王族主催の夜会以外でのことは口を挟まないということで、了承はいただいております」
「ということは高位貴族夫人達はもう手中に収めていると言うことか。分かった。記者との日程の候補は早めに伝えてくれ。夜会に出ないイリア・ロベールが、夜会を戦場に選ぶとはなかなか面白い。私もうまく立ち回るとしよう」
2人で紅茶を飲むと、席を立つ。
「そういえば、クロッカは帝国で王子に熱心に口説かれているそうね。毎日仲良く過ごしているそうですし、歳も近い王子ならクロッカが落とされてしまうのも時間の問題かしらね。また連絡いたしますわ」
別れ際、挨拶の代わりにクスリと笑ってイリアはアルベルトと別れた。
護衛から報告は上がっているだろうが、キャサリンから直接報告を受けているイリアの方が、より情報は多く持っていることだろう。
花のようなドレスを纏ったイリアは扇子を仰ぎながら優雅に立ち去っていく。
その後ろ姿を時が止まったかのように固まったアルベルトが立ち竦んでいた。
「こんなにも華やかな料理が並ぶとは思わなかったが、喜んでくれたならよかった。それで、本題というのはどういう話なんだ?」
派手な物が好きなイリアは見た目で楽しむ料理に機嫌を良くし、緩む頬を抑えることができないでいた。
「そうでしたわね。わたくしすっかり料理の虜になってしまっていたわ。改革派の分裂も表面化する頃合い、しかし女性の社会進出については議論は堂々巡りで庶民も貴族も飽き飽きとして関心が薄れています。ここで少し過激な方法を、選択肢に入れたく、少しご相談に乗っていただけないかと思っておりましたの」
イリアは男女平等と一言に言えど、平民から貴族に至るまで様々議論する事があり、中々話が進まない事に焦りを感じていた。
改革派が分裂すれば、益々制度を固めるのに時間がかかる。
まずは手っ取り早く女性当主を認める制度改革を推し進めたいと考えていた。
爵位の継承権を女性にも与えるというだけで、平民にも分かりやすく男女平等を視覚化出来る。
カリーナの領主代行としての仕事ぶりを、イリアの対談として記事に載せてもらう事の了承をもらいたかった。
その記事の出る数日後には、女性の夜会、お茶会のストライキを呼びかけるつもりでいる。
実際に声を上げてみないと結果は分からないが、多くの貴族女性が当主達に情報を渡さなくなる。
すぐにはその重大さに気付かないだろう。
しかしこの社交会シーズンに女性がいない事で、どれほどの不利益が起こるかは想像に容易い。
きっと情報不足により、各地の領主達の対応は遅れをとる事だろう。
今シーズンのストライキという燃料を注ぎ込む事で、改革派の分裂後の議会に、もう一度視線を集める作戦だった。
「カリーナの話をするのはもちろんいいが、ストライキとなると、陛下や王妃にもきちんと話を通した方がいいと思うが、その辺りは大丈夫なのか?また派手な事をやるな」
一連の話を説明し終えると、アルベルトの眉間には皺が寄る事になった。
ストライキは平民の間で待遇の改善のために稀に行われてはいるが、どんなに多くても10人程の規模のものばかり。
失敗することも多くあった。
事前の根回しが非常に大切になるので、イリアも早くから裏で動いていた。
「王妃へは伝えてありますが、当たり前ですが賛同はいただけませんでした。しかし、それぞれの行動を止めることは出来ることではなく、王族主催の夜会以外でのことは口を挟まないということで、了承はいただいております」
「ということは高位貴族夫人達はもう手中に収めていると言うことか。分かった。記者との日程の候補は早めに伝えてくれ。夜会に出ないイリア・ロベールが、夜会を戦場に選ぶとはなかなか面白い。私もうまく立ち回るとしよう」
2人で紅茶を飲むと、席を立つ。
「そういえば、クロッカは帝国で王子に熱心に口説かれているそうね。毎日仲良く過ごしているそうですし、歳も近い王子ならクロッカが落とされてしまうのも時間の問題かしらね。また連絡いたしますわ」
別れ際、挨拶の代わりにクスリと笑ってイリアはアルベルトと別れた。
護衛から報告は上がっているだろうが、キャサリンから直接報告を受けているイリアの方が、より情報は多く持っていることだろう。
花のようなドレスを纏ったイリアは扇子を仰ぎながら優雅に立ち去っていく。
その後ろ姿を時が止まったかのように固まったアルベルトが立ち竦んでいた。
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