127 / 142
alone
震えて待ってろ
しおりを挟む
「あら、チェリグリーン。遅かったわね」
空いた議場の一席に座るクロエは、クリンプトンと共にドアから入ってきたチェリグリーンに、軽く声をかける。
「神の寵愛を賜るこの国の希望にご挨拶申し上げます」
「えぇ。先日は挨拶もなく去ってごめんなさいね。親切に感謝するわ」
チェリグリーンと呼ばれていた男に、枢機卿達は舐めるように視線を送る。
白い服の襟元には星が三つ並んでいる。
教会本部の中でも助祭の地位にいる。
こんな若造を枢機卿にすることなんて考えられない。
すぐに不満の声がクロエの耳にも届いた。
このチェリグリーンは、教会本部でトゥリヤ神話の保管庫に案内した人物だ。
「教皇がまだ決まらない今、この国のことを決めるのは枢機卿ではなく、当たり前ですが国王である私です。教皇の選出方法が決まらないのならば毎日一人ずつ枢機卿を入れ替えることにします。人の上に立てるのは、有能な者だけです。信仰心だけでは大陸中の信者達をまとめあげ、利になるような議論を交わすことはできません」
教皇を中心とした組織構成については、今朝目の前の枢機卿達のサインによって許可されている。
全てを枢機卿の議論によって決まる以前までの状態とは違う。
「さて、現状では私が一時的に全ての権限を持つことに、そろそろ気付いたかしら」
クロエが国王に着くと宣言し、教皇を置き組織改革をするとしてから、当然教皇不在の間は国王が教皇の権限を有すると記された。
まだその時は枢機卿に議決権があり、教皇についての権限が記された法はなかった。
だからこそ、焦れたクロエは強硬手段に出たのだ。
教皇が決まる前に、教皇の権限について定められた法令を提出し、目の前の権力に踊らされた枢機卿達は喜んで法令を通した。
それはそれはスピーディに議決された法令によって、クロエは権力を手にすることに成功したというわけだ。
「あの…」
枢機卿たちが青い顔でお互いの顔を見つめ合い自分たちのミスに気付いた頃、か弱い声がクロエの耳に届いた。
「ん?チェリグリーン?発言を許可します」
議長であるかのように枢機卿達を見渡していたクロエは、チェリグリーンがまだ立っていたことにようやく気付いた。
「私はなぜ呼ばれたのでしょうか」
「まさか、私説明していなかった?」
「私にも不在の間の説明をお願いしても?」
クロエがやっとのことで、チェリグリーンが何も理解していないことに気付いた時、クリンプトンも我慢の限界が来ていたようだ。
「はぁ…私ったら…ごめんなさい。チェリグリーン、あなたには国務長官の地位をあたえます。外交はもちろんのこと、政治について総括する立場になります。行政業務が円滑に進むように邁進しなさい」
チェリグリーンがクロエを地下に連れて行った時、まだ国内には国王になったことは発表されていなかった。
内々では知れ渡っていたとはいえ、クロエを国王と呼ばず公爵夫人と呼び、そしてそのまま保管庫に案内した。
それが気になったクロエは、チェリグリーンが非常に優秀であることに気付いた。
腰の低いチェリグリーンではあったが、司祭としての仕事は完璧で、人望も厚い。
大陸中の支部の管理をしている教会本部の末端とはいえ、多くの情報を捌いている。
情報に翻弄される他の神官達の中で、彼だけが冷静だった。
各支部の基本的な情報が頭に入っている。
それだけで冷静な判断が出来ているとすぐに気付いた。
「さて、次に首をすげ替えられるのは誰になるのか、明日を楽しみにしていますね」
教皇の座を狙う立場であると同時に、枢機卿を追われる立場になった彼らは、そのまま去ったクロエに、明日を待たず、すぐに教皇選出方法について決定した旨を伝えてきた。
「へぇ、枢機卿だけではなく本部の司教以上の者総勢120人で教皇にふさわしい者を選出するなんて可能なのかしら?」
届いた教皇選出についての法規定書に印を押しながら、クロエは感心していた。
てっきり枢機卿のいずれかを、枢機卿の中で議論し、教皇を決定することになると決めつけていたが、教皇は司教以上の者なら誰でもなれ、そして選出権も司教以上に与えるつもりらしい。
それでも実質、トップである枢機卿を差し置いて選ぶことは出来ないであろうが、初回である今回に限ってはそう上手くはいかないのではとクロエは考えていた。
今まで、司教までは島外の支部へ行くことができ、1番世の中のことが分かっているのが司教だ。
枢機卿が無能であることに気づいているのも、数多くいる司教のままで長いこと過ごしている優秀な者たちだろう。
「クリンプトン、どう思う?」
クリンプトンはクロエの為に自ら持ってきたカモミールティを入れている。
「選出出来るのか、ということですか?」
「そうね」
クリンプトンは魔法でコポコポと音が鳴るまで湯を沸かしながら、少し考える仕草をする。
サラリとした長い髪を後ろで束ね、均整のとれた美しい顔は、エプロンを着せたら侍女にでも化けられそうだ。
「難航するのは間違い無いでしょう」
「そうねぇ…ウルフテッドで決まると思って人事を考えたのだけど、一波乱あってもおかしくないわ」
「クロエ様は教皇選出が長引く恐れがあることを危惧していらっしゃるのですか?」
クリンプトンは音を立てずにクロエの前にカップを置いた。
カモミールの爽やかな香りが鼻を抜ける。
「うーん!飲まなくてもいい茶葉だと分かるわ…」
クロエは湯気のたつカップに小さく口をつけた。
「うん。渋みもなくて飲みやすいわ。あぁそうそう。教皇選出自体は長引いても構わないのよ。私は丸く収めたいだけで、この国を変えようだなんて大それたことは考えていないし、教皇選出が長引いたとしても、その間私の承認なしでは法案は通らないし、損はないもの」
「では聖女の件はどうなさるおつもりで?」
枢機卿達の聖女の話を有耶無耶にさせた今日の議場で、クロエは自分がその聖女だとは名乗らなかった。
いや、名乗りたくないから枢機卿を追い詰めたようにクリンプトンには見えていた。
ーーこのお方は何を考えているのだろう
クリンプトンにはクロエの行動が不思議でならず、そして興味を引いてやまなかった。
クロエはコクコクとまだ熱い紅茶を作法も何もなく飲み干すと立ち上がる。
「さて、今日も忙しいし早めに寝るわ。聖女の件は待つのが吉。枢機卿達は震え上がるでしょうね。貴方も早く寝なさいよ」
クロエは今夜も暗殺者達を宮殿から投げ捨てた後、何処かへと旅立っていった。
しかし、その夜からイシュトハンにクロエの魔力痕が見つかることは無くなっていた。
空いた議場の一席に座るクロエは、クリンプトンと共にドアから入ってきたチェリグリーンに、軽く声をかける。
「神の寵愛を賜るこの国の希望にご挨拶申し上げます」
「えぇ。先日は挨拶もなく去ってごめんなさいね。親切に感謝するわ」
チェリグリーンと呼ばれていた男に、枢機卿達は舐めるように視線を送る。
白い服の襟元には星が三つ並んでいる。
教会本部の中でも助祭の地位にいる。
こんな若造を枢機卿にすることなんて考えられない。
すぐに不満の声がクロエの耳にも届いた。
このチェリグリーンは、教会本部でトゥリヤ神話の保管庫に案内した人物だ。
「教皇がまだ決まらない今、この国のことを決めるのは枢機卿ではなく、当たり前ですが国王である私です。教皇の選出方法が決まらないのならば毎日一人ずつ枢機卿を入れ替えることにします。人の上に立てるのは、有能な者だけです。信仰心だけでは大陸中の信者達をまとめあげ、利になるような議論を交わすことはできません」
教皇を中心とした組織構成については、今朝目の前の枢機卿達のサインによって許可されている。
全てを枢機卿の議論によって決まる以前までの状態とは違う。
「さて、現状では私が一時的に全ての権限を持つことに、そろそろ気付いたかしら」
クロエが国王に着くと宣言し、教皇を置き組織改革をするとしてから、当然教皇不在の間は国王が教皇の権限を有すると記された。
まだその時は枢機卿に議決権があり、教皇についての権限が記された法はなかった。
だからこそ、焦れたクロエは強硬手段に出たのだ。
教皇が決まる前に、教皇の権限について定められた法令を提出し、目の前の権力に踊らされた枢機卿達は喜んで法令を通した。
それはそれはスピーディに議決された法令によって、クロエは権力を手にすることに成功したというわけだ。
「あの…」
枢機卿たちが青い顔でお互いの顔を見つめ合い自分たちのミスに気付いた頃、か弱い声がクロエの耳に届いた。
「ん?チェリグリーン?発言を許可します」
議長であるかのように枢機卿達を見渡していたクロエは、チェリグリーンがまだ立っていたことにようやく気付いた。
「私はなぜ呼ばれたのでしょうか」
「まさか、私説明していなかった?」
「私にも不在の間の説明をお願いしても?」
クロエがやっとのことで、チェリグリーンが何も理解していないことに気付いた時、クリンプトンも我慢の限界が来ていたようだ。
「はぁ…私ったら…ごめんなさい。チェリグリーン、あなたには国務長官の地位をあたえます。外交はもちろんのこと、政治について総括する立場になります。行政業務が円滑に進むように邁進しなさい」
チェリグリーンがクロエを地下に連れて行った時、まだ国内には国王になったことは発表されていなかった。
内々では知れ渡っていたとはいえ、クロエを国王と呼ばず公爵夫人と呼び、そしてそのまま保管庫に案内した。
それが気になったクロエは、チェリグリーンが非常に優秀であることに気付いた。
腰の低いチェリグリーンではあったが、司祭としての仕事は完璧で、人望も厚い。
大陸中の支部の管理をしている教会本部の末端とはいえ、多くの情報を捌いている。
情報に翻弄される他の神官達の中で、彼だけが冷静だった。
各支部の基本的な情報が頭に入っている。
それだけで冷静な判断が出来ているとすぐに気付いた。
「さて、次に首をすげ替えられるのは誰になるのか、明日を楽しみにしていますね」
教皇の座を狙う立場であると同時に、枢機卿を追われる立場になった彼らは、そのまま去ったクロエに、明日を待たず、すぐに教皇選出方法について決定した旨を伝えてきた。
「へぇ、枢機卿だけではなく本部の司教以上の者総勢120人で教皇にふさわしい者を選出するなんて可能なのかしら?」
届いた教皇選出についての法規定書に印を押しながら、クロエは感心していた。
てっきり枢機卿のいずれかを、枢機卿の中で議論し、教皇を決定することになると決めつけていたが、教皇は司教以上の者なら誰でもなれ、そして選出権も司教以上に与えるつもりらしい。
それでも実質、トップである枢機卿を差し置いて選ぶことは出来ないであろうが、初回である今回に限ってはそう上手くはいかないのではとクロエは考えていた。
今まで、司教までは島外の支部へ行くことができ、1番世の中のことが分かっているのが司教だ。
枢機卿が無能であることに気づいているのも、数多くいる司教のままで長いこと過ごしている優秀な者たちだろう。
「クリンプトン、どう思う?」
クリンプトンはクロエの為に自ら持ってきたカモミールティを入れている。
「選出出来るのか、ということですか?」
「そうね」
クリンプトンは魔法でコポコポと音が鳴るまで湯を沸かしながら、少し考える仕草をする。
サラリとした長い髪を後ろで束ね、均整のとれた美しい顔は、エプロンを着せたら侍女にでも化けられそうだ。
「難航するのは間違い無いでしょう」
「そうねぇ…ウルフテッドで決まると思って人事を考えたのだけど、一波乱あってもおかしくないわ」
「クロエ様は教皇選出が長引く恐れがあることを危惧していらっしゃるのですか?」
クリンプトンは音を立てずにクロエの前にカップを置いた。
カモミールの爽やかな香りが鼻を抜ける。
「うーん!飲まなくてもいい茶葉だと分かるわ…」
クロエは湯気のたつカップに小さく口をつけた。
「うん。渋みもなくて飲みやすいわ。あぁそうそう。教皇選出自体は長引いても構わないのよ。私は丸く収めたいだけで、この国を変えようだなんて大それたことは考えていないし、教皇選出が長引いたとしても、その間私の承認なしでは法案は通らないし、損はないもの」
「では聖女の件はどうなさるおつもりで?」
枢機卿達の聖女の話を有耶無耶にさせた今日の議場で、クロエは自分がその聖女だとは名乗らなかった。
いや、名乗りたくないから枢機卿を追い詰めたようにクリンプトンには見えていた。
ーーこのお方は何を考えているのだろう
クリンプトンにはクロエの行動が不思議でならず、そして興味を引いてやまなかった。
クロエはコクコクとまだ熱い紅茶を作法も何もなく飲み干すと立ち上がる。
「さて、今日も忙しいし早めに寝るわ。聖女の件は待つのが吉。枢機卿達は震え上がるでしょうね。貴方も早く寝なさいよ」
クロエは今夜も暗殺者達を宮殿から投げ捨てた後、何処かへと旅立っていった。
しかし、その夜からイシュトハンにクロエの魔力痕が見つかることは無くなっていた。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~
瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)
ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。
3歳年下のティーノ様だ。
本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。
行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。
なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。
もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。
そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。
全7話の短編です 完結確約です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる