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liberty
妊婦の帰宅
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「クロ…エ?」
一瞬意識が飛んでしまったようだが、それ程時間は経っていないはずだ。
呼ばれた気がして目を開ければ、治癒魔法を施されている真っ最中のフリードと目が合った。
「あぁ、フリード目が覚めたの…」
まだポヤポヤとした頭を持ち上げると、私も寝かされていた事に気付いた。
動かされても起きなかったということかと呆れるが、この位のだるさなら魔力枯渇を起こした訳ではなかったということだ。
胃袋に詰め込んだ物たちが魔力を生成してくれたのだろう。
「クロエ…その子の父親は…僕だ」
何人もの入れ替わりで治癒魔法を使っているところを見ると、相当体中がボロボロだったのだろうことが分かる。
しかしまだ大きな傷は塞がっていないし、左手は枝に拘束されたままだ。
辺りを見渡したが、忙しなく動いていた騎士はピシッと動きを止めてこちらをギョッとした目で見ているが、その子と言われるような子供は見当たらなかったし、隠し子でも居たのかと思ったが、意識が朦朧としているだけかもしれない。
「寝惚けてるの?」
プイッと目線を逸らして上半身を起こす。
葉っぱが服にたくさん付いていて邪魔だった。
「クロ…エの…お腹の子だ」
バッと下を向くと、コルセットもしていない水色の薄い生地のワンピースはお腹の丸みを拾い、さっきまで寝かされていたのだから、誰もがまん丸のお腹を見ていたことだろう。
妊婦の様だと言われればそうだ。
「何をバカなことを!!」
途端に全員が私を見ている気がする。
フリードの子がいると思われているなんて恥ずかしすぎる。
更にそれが食べ過ぎで妊婦と勘違いされているのだからもう死にたいほどの屈辱。
「愛してる…クロエ…」
お得意のうるうるの目が真っ赤になった私を映している。
その目には弱いが、とんでもないことを口走ってくれたなと恨めしい気持ちが勝る。
子供なんて出来るわけがないじゃないか!それを分かっていて子供がいるように見せかけるなんてとんでもない男だ。
治癒魔法はその瞬間に解いた。情けをかけた私が馬鹿だったのよ。
「2度と貴方に会うことはないわ」
残り少ない魔力で私はエイフィルのウラリーの家へ転移した。
きっともう魔力はしばらく使えない。
腕の一つも動かせない私はウラリーの家の庭へと転移していた。
「メイリーさん!?」
庭で剣を振っていたらしいダンが駆け寄って来る。
家の中に転移するのは憚れたので透視もせず庭に転移したが、気付かれないことも想定していた。
「ダン…砂糖水を…もらえる?」
「もちろんです。どうしたんですか!?」
ダンに抱えられウラリーの家に入ると、リビング横にあるダンが使っているという殺風景な部屋へ連れて行かれた。
「まりょく…不足な…の…」
話すことも難しい程の魔力不足で、このまま眠ってしまったら死んでしまうのではないかと思うほどだった。
頭が働かないし、段々と身体が冷えて行くのがわかる。
防御魔法と加護の魔法を使っていることを思い出して解除した頃には、意識を失っていた。
一瞬意識が飛んでしまったようだが、それ程時間は経っていないはずだ。
呼ばれた気がして目を開ければ、治癒魔法を施されている真っ最中のフリードと目が合った。
「あぁ、フリード目が覚めたの…」
まだポヤポヤとした頭を持ち上げると、私も寝かされていた事に気付いた。
動かされても起きなかったということかと呆れるが、この位のだるさなら魔力枯渇を起こした訳ではなかったということだ。
胃袋に詰め込んだ物たちが魔力を生成してくれたのだろう。
「クロエ…その子の父親は…僕だ」
何人もの入れ替わりで治癒魔法を使っているところを見ると、相当体中がボロボロだったのだろうことが分かる。
しかしまだ大きな傷は塞がっていないし、左手は枝に拘束されたままだ。
辺りを見渡したが、忙しなく動いていた騎士はピシッと動きを止めてこちらをギョッとした目で見ているが、その子と言われるような子供は見当たらなかったし、隠し子でも居たのかと思ったが、意識が朦朧としているだけかもしれない。
「寝惚けてるの?」
プイッと目線を逸らして上半身を起こす。
葉っぱが服にたくさん付いていて邪魔だった。
「クロ…エの…お腹の子だ」
バッと下を向くと、コルセットもしていない水色の薄い生地のワンピースはお腹の丸みを拾い、さっきまで寝かされていたのだから、誰もがまん丸のお腹を見ていたことだろう。
妊婦の様だと言われればそうだ。
「何をバカなことを!!」
途端に全員が私を見ている気がする。
フリードの子がいると思われているなんて恥ずかしすぎる。
更にそれが食べ過ぎで妊婦と勘違いされているのだからもう死にたいほどの屈辱。
「愛してる…クロエ…」
お得意のうるうるの目が真っ赤になった私を映している。
その目には弱いが、とんでもないことを口走ってくれたなと恨めしい気持ちが勝る。
子供なんて出来るわけがないじゃないか!それを分かっていて子供がいるように見せかけるなんてとんでもない男だ。
治癒魔法はその瞬間に解いた。情けをかけた私が馬鹿だったのよ。
「2度と貴方に会うことはないわ」
残り少ない魔力で私はエイフィルのウラリーの家へ転移した。
きっともう魔力はしばらく使えない。
腕の一つも動かせない私はウラリーの家の庭へと転移していた。
「メイリーさん!?」
庭で剣を振っていたらしいダンが駆け寄って来る。
家の中に転移するのは憚れたので透視もせず庭に転移したが、気付かれないことも想定していた。
「ダン…砂糖水を…もらえる?」
「もちろんです。どうしたんですか!?」
ダンに抱えられウラリーの家に入ると、リビング横にあるダンが使っているという殺風景な部屋へ連れて行かれた。
「まりょく…不足な…の…」
話すことも難しい程の魔力不足で、このまま眠ってしまったら死んでしまうのではないかと思うほどだった。
頭が働かないし、段々と身体が冷えて行くのがわかる。
防御魔法と加護の魔法を使っていることを思い出して解除した頃には、意識を失っていた。
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