36 / 142
liberty
しあわせの匂いのするワンピース
しおりを挟む
「魔女のねぇちゃん!ずっと気になってたんだけど、このでかい箱は何が入ってるんだ?」
「ふふっ開けてみて!」
キリアンが魔法書の上に置かれた箱をトントンっと掌で叩いて開けたそうにしていて、許可を得るとすぐに箱の蓋を開ける。
「これは?コンロ?」
「コンロ?もしかしてテーブルの上で使えるコンロなの?」
コンロは普通キッチンに取り付けられていたが、大きな魔石を使っていて、長い年月をかけて自然に魔力を溜め込んだ魔石の交換は高い出費となる。
最近売り出されてから平民の中で噂の的で人気なのが、魔石も小さい代わりに出力も少ない小型の持ち運びできるコンロだった。
調理の幅は狭まるが、普段の料理ならば問題はなく、さらに魔石の交換も小さい石で済むために負担が軽いというのが人気の理由で、さらにどこででも調理ができる手軽さが魅力だった。
テーブルでも庭でも、戦場でも料理が出来る!という触れ込みがウケたらしい。
「そうなの。魔石もセットで売っていたし、パーティにはピッタリかなと思って」
「じゃあ、もしかしてチーズも目の前で溶かせるのか??」
「ええ!すごいわ!鍋も置けるし座りながら目の前でお肉も焼けるわ!ねぇダン。ちょっとチーズを持ってきて!私はチーズを入れる鍋を洗っちゃうから!あ、キリアンはパンを切ってくれる?」
目をキラキラとさせたウラリーが足取りも軽やかにキッチンへ向かうと、ダンとキリアンもチーズを想像したのかすぐに動き出した。
「メイリーさんはお皿を並べてくれると嬉しいわ!」
「はい!」
何をしたらいいのか分からず寂しさを感じたのは一瞬だった。
テーブルの上に重ねられたお皿を並べていき、スプーンとフォークも並べ終わる頃には、みんな戻ってきていた。
「すごい。これならチーズが固まらないから好きな時にチーズをつけて食べられるわ!」
「うん。いつもチーズは一番最初に食べないとすぐに冷えちゃったから、熱々で食べれるなんて夢みたいだ」
みんなで席につけば、キリアンの持ってきたパンをテーブルに乗せるともう隙間もないほどにテーブルはいっぱいだった。
ウラリーとキリアンは、茹でた野菜やパンを鍋に入ったチーズをつけて、ずっと食べる手が止まらない。
ダンは生活魔法も使える貴族なので、冷えないチーズも物珍しくないだろうが、きっとこんな風に同じ鍋を共有して食べることや、大きなお皿に盛られた料理を小皿に取って分け合うことには、私と同じように慣れていないだろう。
少し動けば腕が当たりそうなテーブルで食事をするのは、ウラリー達と行動を共にしてから初めての体験だったが、この小さな空間がとても愛おしく、とても暖かく感じていた。
ダンも同じように思っていてくれたら嬉しいと思う。
「席が近いと親密になれた気がするわ!そう思わない?」
「はい。それは私も思いました」
隣に座ったダンも大きく頷いてすぐに同意してくれた。
本当にこの人を雇えて良かったと思う。
「ダンが来てくれて本当に良かった」
「うん。ダン兄ちゃんでよかった!」
「そうね、本当にいい人で良かったわ!」
食事が終わってケーキを食べた後、クロエは口から幸せが漏れてしまいそうな程の幸福を感じていた。
慣れない洗い物を手伝うことも楽しかった。
同じ貴族なのに騎士であったダンは、実は小さいテーブルに慣れていたこと、洗い物や簡単な料理なら作れることに驚かされることになった。
「今日はもうこの匂いに包まれて眠りたい」
このワンピースや髪や体に染み付いた料理たちの入り混ざった匂いこそが、しあわせの香りなのだと結論付けていた。
この香りを消してしまったら幸せも消えていってしまいそうで、このままこの匂いを纏った体を抱き締めて眠ってしまいたかった。
「ふふっなら明日の朝シャワーを浴びればいいわよ」
「そうするわ。ねぇ明日も来てもいい?」
「もちろん大歓迎よ!」
「うぅーん…魔女のねえちゃんもう帰っちゃうの?」
ぽんぽこりんのお腹でヒーヒー言いながらクッションを抱えていたキリアンも今にも眠ってしまいそうだった。
「えぇ。寂しいけれど今日はもう帰るわ。とっても楽しかった。夢の中でまた会いましょう」
「うん。夢の中でもパーティしようね。おやすみなさい」
「おやすみなさい。明日はたくさん魔法を見せてあげるね」
最後にギュッとクロエに抱きついた後、キリアンはフラフラしながらリビングを後にした。
「歯磨きしてから布団に入ってねー!」
「はーい」
明日からウラリーが家いる時間にダンに魔法を教えることを約束し、クロエは匂いと一緒に家に転移した。
そのままベッドに横になると、丸まるようにして眠りについた。
もう今日はフリードのいる家にもう一度転移しようとは思えなかった。
「ふふっ開けてみて!」
キリアンが魔法書の上に置かれた箱をトントンっと掌で叩いて開けたそうにしていて、許可を得るとすぐに箱の蓋を開ける。
「これは?コンロ?」
「コンロ?もしかしてテーブルの上で使えるコンロなの?」
コンロは普通キッチンに取り付けられていたが、大きな魔石を使っていて、長い年月をかけて自然に魔力を溜め込んだ魔石の交換は高い出費となる。
最近売り出されてから平民の中で噂の的で人気なのが、魔石も小さい代わりに出力も少ない小型の持ち運びできるコンロだった。
調理の幅は狭まるが、普段の料理ならば問題はなく、さらに魔石の交換も小さい石で済むために負担が軽いというのが人気の理由で、さらにどこででも調理ができる手軽さが魅力だった。
テーブルでも庭でも、戦場でも料理が出来る!という触れ込みがウケたらしい。
「そうなの。魔石もセットで売っていたし、パーティにはピッタリかなと思って」
「じゃあ、もしかしてチーズも目の前で溶かせるのか??」
「ええ!すごいわ!鍋も置けるし座りながら目の前でお肉も焼けるわ!ねぇダン。ちょっとチーズを持ってきて!私はチーズを入れる鍋を洗っちゃうから!あ、キリアンはパンを切ってくれる?」
目をキラキラとさせたウラリーが足取りも軽やかにキッチンへ向かうと、ダンとキリアンもチーズを想像したのかすぐに動き出した。
「メイリーさんはお皿を並べてくれると嬉しいわ!」
「はい!」
何をしたらいいのか分からず寂しさを感じたのは一瞬だった。
テーブルの上に重ねられたお皿を並べていき、スプーンとフォークも並べ終わる頃には、みんな戻ってきていた。
「すごい。これならチーズが固まらないから好きな時にチーズをつけて食べられるわ!」
「うん。いつもチーズは一番最初に食べないとすぐに冷えちゃったから、熱々で食べれるなんて夢みたいだ」
みんなで席につけば、キリアンの持ってきたパンをテーブルに乗せるともう隙間もないほどにテーブルはいっぱいだった。
ウラリーとキリアンは、茹でた野菜やパンを鍋に入ったチーズをつけて、ずっと食べる手が止まらない。
ダンは生活魔法も使える貴族なので、冷えないチーズも物珍しくないだろうが、きっとこんな風に同じ鍋を共有して食べることや、大きなお皿に盛られた料理を小皿に取って分け合うことには、私と同じように慣れていないだろう。
少し動けば腕が当たりそうなテーブルで食事をするのは、ウラリー達と行動を共にしてから初めての体験だったが、この小さな空間がとても愛おしく、とても暖かく感じていた。
ダンも同じように思っていてくれたら嬉しいと思う。
「席が近いと親密になれた気がするわ!そう思わない?」
「はい。それは私も思いました」
隣に座ったダンも大きく頷いてすぐに同意してくれた。
本当にこの人を雇えて良かったと思う。
「ダンが来てくれて本当に良かった」
「うん。ダン兄ちゃんでよかった!」
「そうね、本当にいい人で良かったわ!」
食事が終わってケーキを食べた後、クロエは口から幸せが漏れてしまいそうな程の幸福を感じていた。
慣れない洗い物を手伝うことも楽しかった。
同じ貴族なのに騎士であったダンは、実は小さいテーブルに慣れていたこと、洗い物や簡単な料理なら作れることに驚かされることになった。
「今日はもうこの匂いに包まれて眠りたい」
このワンピースや髪や体に染み付いた料理たちの入り混ざった匂いこそが、しあわせの香りなのだと結論付けていた。
この香りを消してしまったら幸せも消えていってしまいそうで、このままこの匂いを纏った体を抱き締めて眠ってしまいたかった。
「ふふっなら明日の朝シャワーを浴びればいいわよ」
「そうするわ。ねぇ明日も来てもいい?」
「もちろん大歓迎よ!」
「うぅーん…魔女のねえちゃんもう帰っちゃうの?」
ぽんぽこりんのお腹でヒーヒー言いながらクッションを抱えていたキリアンも今にも眠ってしまいそうだった。
「えぇ。寂しいけれど今日はもう帰るわ。とっても楽しかった。夢の中でまた会いましょう」
「うん。夢の中でもパーティしようね。おやすみなさい」
「おやすみなさい。明日はたくさん魔法を見せてあげるね」
最後にギュッとクロエに抱きついた後、キリアンはフラフラしながらリビングを後にした。
「歯磨きしてから布団に入ってねー!」
「はーい」
明日からウラリーが家いる時間にダンに魔法を教えることを約束し、クロエは匂いと一緒に家に転移した。
そのままベッドに横になると、丸まるようにして眠りについた。
もう今日はフリードのいる家にもう一度転移しようとは思えなかった。
0
お気に入りに追加
507
あなたにおすすめの小説
大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました
柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」
結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。
「……ああ、お前の好きにしろ」
婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。
ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。
いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。
そのはず、だったのだが……?
離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる