34 / 142
liberty
はじめてのお呼ばれ
しおりを挟む
引越しパーティの準備を始めたものの、全く捗らないでいた。
寝間着のまま、揃えた平民向けのワンピースを手に取っても適切かどうか分からない。
「どうしよう…」
引っ越しパーティに相応しい服装の為に透視をするのはどうしても避けたかった。
パーティだからアクセサリーをつけるべきか、ならば平民向けのアクセサリーを買いに行かなくてはならない。
考えれば考える程時間は過ぎていった。
結局、買った中で1番おしゃれと思われた裾にフリルのついたワンピースを着ると、慌てて部屋を出た。
コルセットで締め付けることもなく、髪を櫛でとかしただけの髪をファサッと靡かせて、軽く化粧をしただけの顔でたくさんの人が行き交う街を歩く。
誰の目を気にすることもなく、屋敷の裏山に行くかのように気軽に歩くのは、それはそれは気分が良かった。
ここにいる間はフリードの婚約者でもなく、辺境伯の娘でもなく、ただのメイリーだと思うと、食べ歩きだって出来てしまいそうだ。
「まぁ!メイリーさんおかえりなさい」
大きな花束を小脇に携え、大きなケーキと魔法書を3冊と大きな箱を積み上げて両手で支えて歩いてここまできた。
転移すれば早いのに何故かここに来るまで転移のことは思いつきもしなかった。
「引っ越しパーティなんて初めてだから、何を持ってきたらいいか分からなくて遅くなってしまったわ。ごめんなさい」
ケーキの箱の上に乗った本と箱をウラリーが取って、後から現れたキリアンがケーキの箱を嬉しそうに受け取ると、漸く脇の力だけで支えていた大きな花束を手に持つことが出来た。
「おかえりなさい」という言葉が妙に耳の奥に残る。
「ありがとう。今日はね、たくさんご馳走を用意したの。ほらあがって!」
リビングの扉を開けると、ダンが一礼するが、その手にはビスケットの入った籠と、鍋を持っている。
護衛なのだから玄関を開けるのはダンの仕事ではないかと一瞬頭をよぎったが、ウラリーが咄嗟に指示を出したのなら仕方ないかもしれない。
「この花も良かったら飾って」
「本当にありがとう。こんな立派な花をもらったのは初めてだわ!嬉しい」
「喜んでくれたならよかった」
顔が火照るような感覚を覚え、それが妙に嬉しいと感じ頬に手を当てると、添えた手も暖かく、なんだか体全体が喜んでいるように感じた。
「実は私たちからもメイリーさんにプレゼントがあります」
「えっ!?」
「引っ越しをしたのは私たちだけじゃなくてメイリーさんもでしょう?」
家族からではなく、他人から何かをもらうなんて久しぶりのことだった。
誕生日だって今は家族にしか祝ってもらっていない。
その言葉だけで涙が出そうなほど嬉しかった。
寝間着のまま、揃えた平民向けのワンピースを手に取っても適切かどうか分からない。
「どうしよう…」
引っ越しパーティに相応しい服装の為に透視をするのはどうしても避けたかった。
パーティだからアクセサリーをつけるべきか、ならば平民向けのアクセサリーを買いに行かなくてはならない。
考えれば考える程時間は過ぎていった。
結局、買った中で1番おしゃれと思われた裾にフリルのついたワンピースを着ると、慌てて部屋を出た。
コルセットで締め付けることもなく、髪を櫛でとかしただけの髪をファサッと靡かせて、軽く化粧をしただけの顔でたくさんの人が行き交う街を歩く。
誰の目を気にすることもなく、屋敷の裏山に行くかのように気軽に歩くのは、それはそれは気分が良かった。
ここにいる間はフリードの婚約者でもなく、辺境伯の娘でもなく、ただのメイリーだと思うと、食べ歩きだって出来てしまいそうだ。
「まぁ!メイリーさんおかえりなさい」
大きな花束を小脇に携え、大きなケーキと魔法書を3冊と大きな箱を積み上げて両手で支えて歩いてここまできた。
転移すれば早いのに何故かここに来るまで転移のことは思いつきもしなかった。
「引っ越しパーティなんて初めてだから、何を持ってきたらいいか分からなくて遅くなってしまったわ。ごめんなさい」
ケーキの箱の上に乗った本と箱をウラリーが取って、後から現れたキリアンがケーキの箱を嬉しそうに受け取ると、漸く脇の力だけで支えていた大きな花束を手に持つことが出来た。
「おかえりなさい」という言葉が妙に耳の奥に残る。
「ありがとう。今日はね、たくさんご馳走を用意したの。ほらあがって!」
リビングの扉を開けると、ダンが一礼するが、その手にはビスケットの入った籠と、鍋を持っている。
護衛なのだから玄関を開けるのはダンの仕事ではないかと一瞬頭をよぎったが、ウラリーが咄嗟に指示を出したのなら仕方ないかもしれない。
「この花も良かったら飾って」
「本当にありがとう。こんな立派な花をもらったのは初めてだわ!嬉しい」
「喜んでくれたならよかった」
顔が火照るような感覚を覚え、それが妙に嬉しいと感じ頬に手を当てると、添えた手も暖かく、なんだか体全体が喜んでいるように感じた。
「実は私たちからもメイリーさんにプレゼントがあります」
「えっ!?」
「引っ越しをしたのは私たちだけじゃなくてメイリーさんもでしょう?」
家族からではなく、他人から何かをもらうなんて久しぶりのことだった。
誕生日だって今は家族にしか祝ってもらっていない。
その言葉だけで涙が出そうなほど嬉しかった。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」


初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。
梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。
王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。
第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。
常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。
ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。
みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。
そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。
しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる