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liberty
帰宅は悲鳴と共に
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「きゃーーーーー!」
屋敷の自室に戻り、結界を解除すると、すぐに悲鳴が上がった。
私が突然現れたことに対する悲鳴ではないことは部屋の中に誰もいないことで明らかなので、部屋のドアを開けて廊下を確認する。
「クロエっ!貴方いつ帰ってきたの?転送装置が壊れてて帰れなくて大変だったのよ?」
同じように廊下を確認したのであろう姉が、顔を出していて、パチっと目があった瞬間にドアを蹴破るように開けてこちらへ向かってきた。
「ダリア姉様、そのことなんだけど…」
「まぁ間に合ったからいいの。ちょっと今から私を戻してくれない?」
「ちょっと待ってください。フリードの事で少し話があるの」
その日の夜には帰る予定が2日間も伸びたのだから、それは帰りたいだろうが、こっちも聞いて欲しいことは沢山ある。
「あぁ!そうか。なに?殺しちゃったの?」
「えっ!」
「まぁ浮気男は死罪って事でいいわ。で?」
急いでいるのは分かるが、返答が雑すぎて驚く。
暗殺が当たり前のように行えるほどこの国の治安は悪くないはずなのだが、姉にとってはそうでもないのかもしれない。
「それが、結界の中には、通常転移出来ないらしくて、でも私は転移出来てしまう事がバレてしまいましたの…」
「結界にそんな効果があったの…(知っているけど)」
「そうみたいです。だから結界の張ってある城内に転移出来ることが問題みたいで…」
「そういえばジュリアンが結界で魔力欠乏よく起こしてたじゃない?あれ、あんたが部屋に入ってこないようにしてたんじゃなかった?」
確かにジュリアンは私が転移して来れないように結界を張り続けてよく倒れていた時期がある。
しかし結界の強度を上げても侵入してくるクロエにお手上げの状態だった。
「もしかしてジュリアンは知っていたのかしら?」
「魔法省に入って研究してるのだし、知らない方がおかしいわよねぇ。でも殿下に知られてしまったのなら、結局あの浮気男と結婚しなければいけないの?」
許すまじジュリアン!こんな大事なことを黙っていたなんて!
「結婚してくれるなら陛下には黙っとくって言うから、逃げてきちゃいましたの。それで陛下にも知られることになりました」
「ということは?どっちにしろ見つかれば無理矢理結婚させられると。しかも婿に来る話もなくなると?」
「恐らく」
こんなに長く立ち話をすることは今までなかった。
もう既に影は王家に戻っているはずだし、誰かが通れば気付くだろう。
細かいことを気にする余裕はクロエにはもうなかった。
とにかく話を聞いてほしい。
その思いが溢れ出てしまっていた。
「それは困るわねぇ。跡取りがいなくなるし、そうすると気軽に帰ってこられる家がなくなる」
「プロム後に何かしら結婚については声明を出さなくてはならないらしく、それまで逃げ切れば結婚の話は無くなるかもしれません」
「そう簡単に行くかしら?でも逃げるだけならクロエが捕まるわけもないし、2、3年逃げたら諦めるんじゃない?プロムに出れないのは可哀想だけど」
「そう。そうなんです。プロムに出れないこの恨みをどうしてくれようかと」
楽しみにしていたのに、プロムに出れば殿下も陛下もいる。
この恨み晴らさずにいられようか。
「それは好きにしなさい。私はクロエがこの家を継いでくれればどうでもいいわ。でも私なら黙ってるなんて出来ないわね。間違いなく王城全てを炎で焼き尽くしているわ」
母に似て攻撃魔法に特化しているダリアは、魔法省へ外部講師として招かれている。
攻撃魔法に関しては、上級魔法士と同等の力と技術があるらしく、嫁に行った今でも定期的に外部講師として赴いているのは、王家に敵意はないと示す為だという。
攻撃魔法を身につけたのが独学であることも稀な例であるし、その力がありながらも魔法省に入らなかったことは当時話題になった。
クロエの立場を自分に置き換えて考えたのだろうダリアの顔は、まるで猛獣のように目を釣り上げ、魔力オーラが煮えたぎるように波打っていた。
「そこまでするつもりはありませんけど、向こうに非があったことは公にしたいと思っています」
「相変わらず甘いわね。頑張りなさい。さて、時間もギリギリだからそろそろ転送してくれる?」
「もう…ゆっくり聞いて欲しかったのに…」
「友達を作りなさいって言ってるじゃないの。また近いうちに会いましょう。逃げるにしても連絡はしてきなさいね」
逃亡生活の拠点は既に決まっているが、たとえ姉にでも教えるわけにはいかない。
それは分かっているのだろうダリアは、詳しく逃亡計画を聞くことはなく、平民スタイルのワンピースにも目も暮れず帰っていった。
屋敷のものに会うには寝間着にでも着替えておけばいいと考え、部屋に戻ってそそくさと着替えることにした。
屋敷の自室に戻り、結界を解除すると、すぐに悲鳴が上がった。
私が突然現れたことに対する悲鳴ではないことは部屋の中に誰もいないことで明らかなので、部屋のドアを開けて廊下を確認する。
「クロエっ!貴方いつ帰ってきたの?転送装置が壊れてて帰れなくて大変だったのよ?」
同じように廊下を確認したのであろう姉が、顔を出していて、パチっと目があった瞬間にドアを蹴破るように開けてこちらへ向かってきた。
「ダリア姉様、そのことなんだけど…」
「まぁ間に合ったからいいの。ちょっと今から私を戻してくれない?」
「ちょっと待ってください。フリードの事で少し話があるの」
その日の夜には帰る予定が2日間も伸びたのだから、それは帰りたいだろうが、こっちも聞いて欲しいことは沢山ある。
「あぁ!そうか。なに?殺しちゃったの?」
「えっ!」
「まぁ浮気男は死罪って事でいいわ。で?」
急いでいるのは分かるが、返答が雑すぎて驚く。
暗殺が当たり前のように行えるほどこの国の治安は悪くないはずなのだが、姉にとってはそうでもないのかもしれない。
「それが、結界の中には、通常転移出来ないらしくて、でも私は転移出来てしまう事がバレてしまいましたの…」
「結界にそんな効果があったの…(知っているけど)」
「そうみたいです。だから結界の張ってある城内に転移出来ることが問題みたいで…」
「そういえばジュリアンが結界で魔力欠乏よく起こしてたじゃない?あれ、あんたが部屋に入ってこないようにしてたんじゃなかった?」
確かにジュリアンは私が転移して来れないように結界を張り続けてよく倒れていた時期がある。
しかし結界の強度を上げても侵入してくるクロエにお手上げの状態だった。
「もしかしてジュリアンは知っていたのかしら?」
「魔法省に入って研究してるのだし、知らない方がおかしいわよねぇ。でも殿下に知られてしまったのなら、結局あの浮気男と結婚しなければいけないの?」
許すまじジュリアン!こんな大事なことを黙っていたなんて!
「結婚してくれるなら陛下には黙っとくって言うから、逃げてきちゃいましたの。それで陛下にも知られることになりました」
「ということは?どっちにしろ見つかれば無理矢理結婚させられると。しかも婿に来る話もなくなると?」
「恐らく」
こんなに長く立ち話をすることは今までなかった。
もう既に影は王家に戻っているはずだし、誰かが通れば気付くだろう。
細かいことを気にする余裕はクロエにはもうなかった。
とにかく話を聞いてほしい。
その思いが溢れ出てしまっていた。
「それは困るわねぇ。跡取りがいなくなるし、そうすると気軽に帰ってこられる家がなくなる」
「プロム後に何かしら結婚については声明を出さなくてはならないらしく、それまで逃げ切れば結婚の話は無くなるかもしれません」
「そう簡単に行くかしら?でも逃げるだけならクロエが捕まるわけもないし、2、3年逃げたら諦めるんじゃない?プロムに出れないのは可哀想だけど」
「そう。そうなんです。プロムに出れないこの恨みをどうしてくれようかと」
楽しみにしていたのに、プロムに出れば殿下も陛下もいる。
この恨み晴らさずにいられようか。
「それは好きにしなさい。私はクロエがこの家を継いでくれればどうでもいいわ。でも私なら黙ってるなんて出来ないわね。間違いなく王城全てを炎で焼き尽くしているわ」
母に似て攻撃魔法に特化しているダリアは、魔法省へ外部講師として招かれている。
攻撃魔法に関しては、上級魔法士と同等の力と技術があるらしく、嫁に行った今でも定期的に外部講師として赴いているのは、王家に敵意はないと示す為だという。
攻撃魔法を身につけたのが独学であることも稀な例であるし、その力がありながらも魔法省に入らなかったことは当時話題になった。
クロエの立場を自分に置き換えて考えたのだろうダリアの顔は、まるで猛獣のように目を釣り上げ、魔力オーラが煮えたぎるように波打っていた。
「そこまでするつもりはありませんけど、向こうに非があったことは公にしたいと思っています」
「相変わらず甘いわね。頑張りなさい。さて、時間もギリギリだからそろそろ転送してくれる?」
「もう…ゆっくり聞いて欲しかったのに…」
「友達を作りなさいって言ってるじゃないの。また近いうちに会いましょう。逃げるにしても連絡はしてきなさいね」
逃亡生活の拠点は既に決まっているが、たとえ姉にでも教えるわけにはいかない。
それは分かっているのだろうダリアは、詳しく逃亡計画を聞くことはなく、平民スタイルのワンピースにも目も暮れず帰っていった。
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