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liberty

安全な逃亡

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フィアークルの並ぶ転送装置のある通りでは、余りにも目立ちすぎると考え、空いたフィアークルが戻ってくるのを見越して少し離れた場所で待ち、フィアークルを捕まえると、東の国境の街、マンジャニールへ向かう。


「やっとご飯が食べれる?」


馬車に3人で乗り込んで早々に弟君が紙袋を漁る。


「そうね、遅くなっちゃったものね。食べちゃいましょうか。メイリーさんも。はい!」


「ありがとう。ところでお姉さんはカトリーヌというのは本名なの?」


「それは夜の名前ね。私はウラリー、この子はキリアンと言うのよ」


魚は油であげられていて、絡んでいる酸味のあるソースが口に広がる。
初めて食べる味に目を白黒させながらも、美味しいパンに舌鼓を打った。
肉が中心のイシュトハンでは味わえないパンはクロエには新鮮だった。




「やっぱり!夜の名前というものがあるのね!キリアン、私は魔女のメイリーだけど、魔女じゃない時の名前もあるの。クロエよ。よろしくね」



「私は本名をあまり知られてないから本名で呼んでもらった方がいいけど、魔女さんはそのままメイリーって呼ばれた方がいいんじゃないかしら?」


「それもそうねぇ……なら2人ともメイリーって呼んでちょうだい」



「魔女には隠している本名があるのか…」



男の子というのは頭の中に別の世界を作っているものなのかもしれない。
彼の思い描く魔女っ子メイリーになりきる事も吝かではない。
むしろ大歓迎だ。


「このパンとっても美味しいわ。ねぇウラリー、あなた2人で出て行こうとしてたみたいだけど、護身術は使えるの?」



「多少は使えます。でも不意をついて逃げ出す時間を稼ぐ位のことしか…移動するのに魔法の使えるメイリーさんがいてくれると安心できるわ」



「私こそ多少でも使えるのなら安心できるわ。でも出来るだけ離れて行動する事は避けましょう。何かあれば私が対処します」




パン一つでお腹が満たされる素敵なパンは、あっという間に3人のお腹に消えて、2つをぺろりと食べたキリアンはすっかり眠ってしまっていた。
きっと昨日はあまり眠れなかったのだろう。
マンジャニールは2時間もあればたどり着く。


「ウラリー、あなたも少し寝た方がいいわ。向こうに着いたらすぐに宿を取るつもりだけど、寝れるときに寝ておくべきよ」


「そうね、私も少し寝るわ」



膝にキリアンの頭を乗せながら、馬車の壁にもたれるようにして目をつぶった。
いつもは彼女も寝ている時間なはずで、予定していたとしても非日常の旅の中では気を張っていたのだろう。
すぐに彼女も寝息を立て始めていた。


国境までは商人たちが行き交い人通りが多い道が続くはずだ。
盗賊に襲われる可能性は低く、警備もしっかりしている。
しかし、警備がしっかりしているという事は捕まる危険もあるという事。

クロエは2人が寝た事を確認して、呪文を唱える。
何が見えても不安な姿を彼女たちに見せるわけにはいかない。
まずはフリードの動向を調べ、必要ならばイシュトハンの家も確認したほうがいい。
魔力は温存しておきたいので短時間で有益な情報が欲しいところだ。
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