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engagement
妖精の衣装
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「ダリア姉様はプロムにも誘わない男と結婚出来る?」
「何言ってるのよ。誘われなかったってだけで、婚約破棄するに決まってるわ。それでもお釣りで同情の目を向けられて縁談が舞い込んでハッピーエンドよ!でも冷静に考えてみて。殿下がプロムに出ないなんてことはないはずよ。あなたが誘われていないなら、婚約前とかに誘ってる女がいるんじゃないの?」
「あら、やだ!そんな素敵な可能性が??それなら私もジュリアンと出席すればいいわね。鉢合わせればそれこそ簡単に婚約破棄できるわ」
クロエはつい目を輝かせてしまい、ダリアは呆れたようにため息を吐いていた。
プロムに出れれば何も問題はない。
人生の思い出としてキャハハウフフなダンスタイムと豪華な料理を楽しめればそれでいい。
殿下が他の女とプロムに出席するなら、従兄妹とプロムに参加しても、私が責められることはない。
今夜の夜這い計画も、既にお金を払っちゃったから取り敢えずやって、決定的な証拠として叩きつければいいわ。
「あなた本当にそれでいいの?殿下に責任があるなら、婚約破棄しても私は構わないけど、婚約者の殿下にフラれたも同然なのよ?プロムに他の女と参加されて悔しくないの?」
「んーそうですねぇ。この突然の婚約もあんまり納得いってなかったけど、あれから手紙の一つもよこさないし、やっぱりこれ馬鹿にされてるわよね?」
手紙や小さな箱程度のものならば、各家に置かれた小さい転送装置で簡単に送れるのだが、一通たりとも来てはいなかった。
メラメラと燃えるように静かに魔力が身体を巡回する。
「ハハッフリードリヒも何考えてるのかしら。政治的なものなのか何なのか分からないけど、釣った魚にも餌を上げないと逃げられてしまうわよねぇ」
怒りを鎮めるように目を閉じて幾度目かの呪文を唱えると、兄弟は食事が終わって談笑していた。
大きなテーブルに少しお尻を乗せ、腕を組みながらフロージアが考えるように唸っている。
「パールが似合うと思うけど。可愛らしい感じの子だっただろう?」
「そうだね。コーンウォリス男爵令嬢は小柄だし小動物系だよね。パールもいいけど、僕は石を付けて輝くのもいいなと思ったよ」
フロージアの前の壁際に立つフリードの横には水色に小さなピンクの花を全身にあしらったドレスが掛けられている。
「確かにそれもいいな」
「ねぇ、このドレスの裾に3段くらいでパールとダイヤを交互につけるように伝えて」
フリードは執事にドレスを渡し、テーブルの紅茶を一口含むと、フロージアの横で同じように腰をテーブルに預ける。
コーンウォリス男爵令嬢のドレスを何故2人が選んでいるのか。
「兄上助かったよ。彼女もドレスを喜んでくれるといいんだけど」
「プロムでも引けを取らない、いいドレスなんじゃないか?作らせたドレスはあれで何着目?」
やはり…プロムのドレス。
しかもコーンウォリス男爵令嬢ってどう考えてもいつもランチを一緒にとるサリーじゃない!
「10着。まぁ今年はそんなに多くなかったけど、針子の人数が少なくて間に合わないかもと今日まで冷や冷やしてたよ。プロムに間に合いそうでよかった」
「ねぇクロエ?」
「姉様ちょっと待って、殿下のプロムの相手分かったわ。コーンウォリス男爵令嬢。私の友人だわ…今彼女のドレスの宝石を殿下2人で選んでいたみたい」
目を瞑ったまま、話し掛けてきたダリアを制止するが考え込んでいたのもあって集中力が続かなかった。
「あぁ、しまった。まぁでもいいわ。相手は意外だったけど…」
10着もドレスを贈っていて、それが今年だけではなく以前から渡しているような口ぶりだった。
成る程。クロエの中でこの婚約の違和感が解消された気がした
「ねぇお姉様、私分かったわ。殿下は婚約者候補にも上がらない男爵のサリーに恋をして、臣籍降下しても、サリーと結ばれることは叶わないから、うちに婿に入って、事業でも起こすとかして自由になるつもりなのでは?爵位をもらっても男爵の娘じゃさすがに愛人としても許されないからよ」
臣籍降下する前にどうにかしなくてはいけなくて焦っていたということだろう。
殿下に口説かれたら拒めないことはわかる。
例えば2人が相思相愛だったとして、叶わない恋を叶えようとする気持ちもわかる。
でも、そこに私を利用するとなれば全くもって理解できない。
しまいには私には何も告げずプロムに2人で参加しようだなんて到底理解できない。
ええ。ええ。それを容認したサリーの気持ちも理解できなくなってくるわ。
「まぁ、辻褄は合うわね。それだけ揃ってたら聞けば口を割るんじゃない?直接聞いてみなさいよ」
「ダリア姉様、全然分かっていらっしゃいませんわ。あのフリードというのは腹黒い男、証拠を突きつけなければその口を割ることは絶対にあり得ませんわ。それ程の想い人がいるのなら、今夜の計画はうまくいかないかもしれませんが、婚約破棄出来るネタは多い方がいいですものね」
「あら、あなた何かする気でいるの?暗殺するなら魔法は使わず影のものを雇って殺りなさいね。転移の痕跡は残してはダメよ。関わったものは皆殺しするつもりで証拠は消しなさい」
物騒なことを軽々と言ってのけるダリアに、豊かな恋愛戦歴の陰でどれだけのライバルを抹殺…いや蹴落として来たのだろうかと考えると背筋が凍る。
相談相手を間違えたのかもしれない。
「何言ってるのよ。誘われなかったってだけで、婚約破棄するに決まってるわ。それでもお釣りで同情の目を向けられて縁談が舞い込んでハッピーエンドよ!でも冷静に考えてみて。殿下がプロムに出ないなんてことはないはずよ。あなたが誘われていないなら、婚約前とかに誘ってる女がいるんじゃないの?」
「あら、やだ!そんな素敵な可能性が??それなら私もジュリアンと出席すればいいわね。鉢合わせればそれこそ簡単に婚約破棄できるわ」
クロエはつい目を輝かせてしまい、ダリアは呆れたようにため息を吐いていた。
プロムに出れれば何も問題はない。
人生の思い出としてキャハハウフフなダンスタイムと豪華な料理を楽しめればそれでいい。
殿下が他の女とプロムに出席するなら、従兄妹とプロムに参加しても、私が責められることはない。
今夜の夜這い計画も、既にお金を払っちゃったから取り敢えずやって、決定的な証拠として叩きつければいいわ。
「あなた本当にそれでいいの?殿下に責任があるなら、婚約破棄しても私は構わないけど、婚約者の殿下にフラれたも同然なのよ?プロムに他の女と参加されて悔しくないの?」
「んーそうですねぇ。この突然の婚約もあんまり納得いってなかったけど、あれから手紙の一つもよこさないし、やっぱりこれ馬鹿にされてるわよね?」
手紙や小さな箱程度のものならば、各家に置かれた小さい転送装置で簡単に送れるのだが、一通たりとも来てはいなかった。
メラメラと燃えるように静かに魔力が身体を巡回する。
「ハハッフリードリヒも何考えてるのかしら。政治的なものなのか何なのか分からないけど、釣った魚にも餌を上げないと逃げられてしまうわよねぇ」
怒りを鎮めるように目を閉じて幾度目かの呪文を唱えると、兄弟は食事が終わって談笑していた。
大きなテーブルに少しお尻を乗せ、腕を組みながらフロージアが考えるように唸っている。
「パールが似合うと思うけど。可愛らしい感じの子だっただろう?」
「そうだね。コーンウォリス男爵令嬢は小柄だし小動物系だよね。パールもいいけど、僕は石を付けて輝くのもいいなと思ったよ」
フロージアの前の壁際に立つフリードの横には水色に小さなピンクの花を全身にあしらったドレスが掛けられている。
「確かにそれもいいな」
「ねぇ、このドレスの裾に3段くらいでパールとダイヤを交互につけるように伝えて」
フリードは執事にドレスを渡し、テーブルの紅茶を一口含むと、フロージアの横で同じように腰をテーブルに預ける。
コーンウォリス男爵令嬢のドレスを何故2人が選んでいるのか。
「兄上助かったよ。彼女もドレスを喜んでくれるといいんだけど」
「プロムでも引けを取らない、いいドレスなんじゃないか?作らせたドレスはあれで何着目?」
やはり…プロムのドレス。
しかもコーンウォリス男爵令嬢ってどう考えてもいつもランチを一緒にとるサリーじゃない!
「10着。まぁ今年はそんなに多くなかったけど、針子の人数が少なくて間に合わないかもと今日まで冷や冷やしてたよ。プロムに間に合いそうでよかった」
「ねぇクロエ?」
「姉様ちょっと待って、殿下のプロムの相手分かったわ。コーンウォリス男爵令嬢。私の友人だわ…今彼女のドレスの宝石を殿下2人で選んでいたみたい」
目を瞑ったまま、話し掛けてきたダリアを制止するが考え込んでいたのもあって集中力が続かなかった。
「あぁ、しまった。まぁでもいいわ。相手は意外だったけど…」
10着もドレスを贈っていて、それが今年だけではなく以前から渡しているような口ぶりだった。
成る程。クロエの中でこの婚約の違和感が解消された気がした
「ねぇお姉様、私分かったわ。殿下は婚約者候補にも上がらない男爵のサリーに恋をして、臣籍降下しても、サリーと結ばれることは叶わないから、うちに婿に入って、事業でも起こすとかして自由になるつもりなのでは?爵位をもらっても男爵の娘じゃさすがに愛人としても許されないからよ」
臣籍降下する前にどうにかしなくてはいけなくて焦っていたということだろう。
殿下に口説かれたら拒めないことはわかる。
例えば2人が相思相愛だったとして、叶わない恋を叶えようとする気持ちもわかる。
でも、そこに私を利用するとなれば全くもって理解できない。
しまいには私には何も告げずプロムに2人で参加しようだなんて到底理解できない。
ええ。ええ。それを容認したサリーの気持ちも理解できなくなってくるわ。
「まぁ、辻褄は合うわね。それだけ揃ってたら聞けば口を割るんじゃない?直接聞いてみなさいよ」
「ダリア姉様、全然分かっていらっしゃいませんわ。あのフリードというのは腹黒い男、証拠を突きつけなければその口を割ることは絶対にあり得ませんわ。それ程の想い人がいるのなら、今夜の計画はうまくいかないかもしれませんが、婚約破棄出来るネタは多い方がいいですものね」
「あら、あなた何かする気でいるの?暗殺するなら魔法は使わず影のものを雇って殺りなさいね。転移の痕跡は残してはダメよ。関わったものは皆殺しするつもりで証拠は消しなさい」
物騒なことを軽々と言ってのけるダリアに、豊かな恋愛戦歴の陰でどれだけのライバルを抹殺…いや蹴落として来たのだろうかと考えると背筋が凍る。
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