大嫌いな婚約者の秘密を知ってしまいました~心読みの魔法が効いてしまった結果~

清里優月

文字の大きさ
23 / 29

22話 過去4

しおりを挟む
 レヴィは自分の部屋に逃げ込もうとしたが、頭がガンガンして痛い。アリスの自分を化け物と呼んだ吐き捨てた物言いが頭の中をぐるぐる回る。あまりにショックで涙も出ない。レヴィは身体を震わせた。母親であるアリスは、レヴィに距離を置いていた。父親であるエドワードは自分に優しいが、レヴィは母親が恋しかった。いつもアリスの心を求めていた、愛されたいと。
 だけど。
 アリスは、レヴィを拒絶した。
 
 心が悲鳴を上げる。
 悲しくて、寂しくて。
 身体が熱い。
 レヴィの手から炎があがり、身体を炎が包み込んだ。
 レヴィは、気が遠くなる前に心の中でエリンの名を叫んだ。

『エリン!』
 エリンは、夢の中で炎に包まれたレヴィを見た。
 エリンに手を伸ばして、それから手を下げた。
 全てを諦めた顔をエリンに向けて、炎に呑まれた。
 エリンは、嫌な予感と夢の中のレヴィの表情に胸を震わせた。

「エリン!」
 自分を呼ぶ声がして、目を擦りながら夢から覚める。
 まだ眠くてぼんやりした意識のエリンは、目の前のエドワードの悲痛な声に覚醒する。
「レヴィが、炎の力を暴走させているんだ! エリン、頼む。水の精霊の力でレヴィを止めてくれ!」
 はっと青の瞳を見開いて、エリンはベッドから起き上がる。

 エドワードの手に引かれて、エリンは必死にレヴィの元へと走る。成人男性であるエドワードについていくのが精一杯で息が乱れて、苦しい。それでも、レヴィは炎の力に呑まれる前、必死にエリンの名を呼んでくれていたのだ。

 最後に会った時の悲しげに微笑むレヴィの顔がエリンの脳裏に浮かんだ。
(レヴィ、レヴィ。かならずたすけるから!)
 エリンは、懸命に水の精霊を召喚する。
 ふわりと水の精霊たちがエリンの周囲を囲む。
 
『エリン、この先へ行っては駄目!』
『エリン、行かないで!』
 エリンは足を止めて、澄んだ青の瞳で精霊たちを凝視する。エリンにレヴィの所へ行かせまいとひたすらエリンの名を呼ぶ。

「みずのせいれいさん、レヴィのところへいかせて。レヴィは、エリンにたすけてといっていたの。だからエリンは、レヴィのもとへいく」
 エリンは毅然とした態度で精霊たちに語りかける。普段はおっとりとしたエリンがこのように言い切るのは初めてのことだ。戸惑う精霊たちに小鳥のような軽やかな声音が命じた。
『エリンを行かせてあげなさい』
 エリンの前に貴婦人の如く美しい精霊が現れた。
『女王様!』
 精霊たちは戸惑いつつも女王の命令に姿を消す。
「みずのせいれいさん」
『我が愛し子、お行きなさい。そして何かあれば我が力を貸しましょう』
 そう言い終えると、水の精霊の女王はふわりとその姿を消した。

「エリン、水の精霊たちが居たのかい?」
 エドワードの疑問にエリンはこくんと頷く。
「おじ様、いそごう」
 エリンは手を震わせるが、エドワードの手を掴んで先を促した。二人は赤い絨毯を敷かれた廊下を走り抜けると、階段を上り。レヴィの子ども部屋のある二階へと足を踏み入れた。二階は火の海でぱちぱちと炎が踊るように広がっていく。

「みずのせいれいさん、みちをつくって」
 エリンが命ずると、水の精霊たちがエドワードとエリンを守るように水の結界を作り出してくれた。レヴィの子ども部屋へ急ぐ。

 ぱちぱちと火の爆ぜる音がした。エリンはばっと身体を翻して、レヴィの部屋の扉をばんと開いた。部屋の中は凄まじい火の嵐だ。その中心に炎に包まれたレヴィが、居た。レヴィは火だるまになって、唯立ち尽くしていた。

「レヴィ……」
 エリンは、目の前の信じられない光景に自分の目を疑う。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...