16 / 29
15話 あなたの心を知りたい5
しおりを挟む
カフェでレヴィは珈琲を注文し、エリンは季節のケーキセットを注文した。
レヴィが珈琲を飲んで、エリンは桃のケーキを食べる。
端正な顔立ちで珍しい紅の瞳を持つレヴィは、カフェの女性客の注目を集めていた。桃のケーキを食べることに集中していたエリンは、途中で隣の席の女性がレヴィをうっとり見ていることに気づいて不愉快になる。
(レヴィ様って本当に見た目はいいんだから! 何よ! いつもは婚約者に塩対応で実は耽美派の詩人が大好きなのよ!)
いらいらしている自分にエリンははっと気づく。
(私、もしかしてレヴィ様のことが好き?)
嬉しそうに桃のケーキを食べていたエリンの手が止まっていることにレヴィの目に留まる。
「エリン、どうした?」
レヴィの声にエリンは動揺する。
レヴィは、エリンのことが好きだ。心の中であれだけ好きだ、可愛いと言われているのだからエリンがレヴィを好きになるのは自然の流れだ。エリンの青の瞳がレヴィの紅の瞳と出会う。ボン!とエリンの顔が真っ赤になった。そして、レヴィの瞳から視線を逸らすと顔を俯かせる。
「……エリン?」
まだデートに慣れない美男美女のカップルが互いを意識しているのが傍目には微笑ましく映る。気づいていないのは当の本人たちだけ。
「こ、この桃のケーキ、美味しいです」
エリンは誤魔化すようにケーキを口に入れ、頬張る。
その婚約者の可愛らしい様子にレヴィがふっと微笑んだ。
(か、可愛い! レヴィ様が笑うとこんなに可愛いんだ!)
恋する乙女は無敵である。恋愛フィルターを通して相手を見るので、相手が良く見える。
「そんなに美味しいんだ」
「た、食べますか?」
エリンがケーキをフォークで取り分けると、フォークを差し出す。レヴィは、エリンが差し出した桃のケーキを口に入れると、また笑う。
「うん。美味い」
エリンの思考が停止した。
(ど、どうしよう。レヴィ様が可愛すぎて、見ていられない。尊い!)
レヴィが自分の差し出した桃のケーキを食べたのだ。
(や、やばい。これは恋人たちがするあーんという儀式!)
動揺したエリンは、自分の世界がぐるぐる回っていることに気づかない。
エリンの視界が暗転する。
さっきまで美味しそうに桃のケーキを食べていたエリンが倒れた。
レヴィは、慌ててエリンに近づくと、さっと抱き上げた。
意識のないエリンは、お人形のようで。
レヴィは心配で胸が張り裂けそうだった。
エリンは目を覚ました。
ソファに寝かされていて、横にレヴィが座っている。
「あ……」
いつもの心読みの薬を飲んだ副作用だ。最近は少なめに飲んでいたから倒れなかったが、今回はレヴィとのデートということで薬を多めに飲んでいたのだ。
顔を上げると心配そうな顔をしたレヴィと視線が合う。
「ここは?」
「カフェの従業員室だ。エリンが倒れたから貸してくれた」
少し青ざめた表情のレヴィは、エリンを凝視する。
「あ、また倒れちゃった……。ごめんなさい」
エリンの言葉を受けて、レヴィは怖い顔をする。
「エリン、俺の前でも二回倒れているだろう。まさか、それ以外にも倒れたのか?」
エリンはレヴィの科白にぎょっとした表情をする。
「あ、えーと」
「倒れたんだな」
ふうとレヴィは嘆息する。
「体調が悪いなら無理して今日来なくても」
「だって……レヴィ様とデートの約束できたから、嬉しくて!」
思わず自分の本音を漏らしたエリンは、自分の口を両手で押さえる。
「え……」
エリンから想いを寄せられているとは思いもしなかったレヴィは、驚愕する。
その紅の瞳を困惑の色に染め上げた。
「私はレヴィ様が好きです。私の気持ち、迷惑ですか?」
青の瞳を潤ませて、エリンはレヴィに問いかけた。
心読みの薬が切れたのだろう、レヴィの心の声は聴こえない。
レヴィの表情から感情が読み取れない。
レヴィが珈琲を飲んで、エリンは桃のケーキを食べる。
端正な顔立ちで珍しい紅の瞳を持つレヴィは、カフェの女性客の注目を集めていた。桃のケーキを食べることに集中していたエリンは、途中で隣の席の女性がレヴィをうっとり見ていることに気づいて不愉快になる。
(レヴィ様って本当に見た目はいいんだから! 何よ! いつもは婚約者に塩対応で実は耽美派の詩人が大好きなのよ!)
いらいらしている自分にエリンははっと気づく。
(私、もしかしてレヴィ様のことが好き?)
嬉しそうに桃のケーキを食べていたエリンの手が止まっていることにレヴィの目に留まる。
「エリン、どうした?」
レヴィの声にエリンは動揺する。
レヴィは、エリンのことが好きだ。心の中であれだけ好きだ、可愛いと言われているのだからエリンがレヴィを好きになるのは自然の流れだ。エリンの青の瞳がレヴィの紅の瞳と出会う。ボン!とエリンの顔が真っ赤になった。そして、レヴィの瞳から視線を逸らすと顔を俯かせる。
「……エリン?」
まだデートに慣れない美男美女のカップルが互いを意識しているのが傍目には微笑ましく映る。気づいていないのは当の本人たちだけ。
「こ、この桃のケーキ、美味しいです」
エリンは誤魔化すようにケーキを口に入れ、頬張る。
その婚約者の可愛らしい様子にレヴィがふっと微笑んだ。
(か、可愛い! レヴィ様が笑うとこんなに可愛いんだ!)
恋する乙女は無敵である。恋愛フィルターを通して相手を見るので、相手が良く見える。
「そんなに美味しいんだ」
「た、食べますか?」
エリンがケーキをフォークで取り分けると、フォークを差し出す。レヴィは、エリンが差し出した桃のケーキを口に入れると、また笑う。
「うん。美味い」
エリンの思考が停止した。
(ど、どうしよう。レヴィ様が可愛すぎて、見ていられない。尊い!)
レヴィが自分の差し出した桃のケーキを食べたのだ。
(や、やばい。これは恋人たちがするあーんという儀式!)
動揺したエリンは、自分の世界がぐるぐる回っていることに気づかない。
エリンの視界が暗転する。
さっきまで美味しそうに桃のケーキを食べていたエリンが倒れた。
レヴィは、慌ててエリンに近づくと、さっと抱き上げた。
意識のないエリンは、お人形のようで。
レヴィは心配で胸が張り裂けそうだった。
エリンは目を覚ました。
ソファに寝かされていて、横にレヴィが座っている。
「あ……」
いつもの心読みの薬を飲んだ副作用だ。最近は少なめに飲んでいたから倒れなかったが、今回はレヴィとのデートということで薬を多めに飲んでいたのだ。
顔を上げると心配そうな顔をしたレヴィと視線が合う。
「ここは?」
「カフェの従業員室だ。エリンが倒れたから貸してくれた」
少し青ざめた表情のレヴィは、エリンを凝視する。
「あ、また倒れちゃった……。ごめんなさい」
エリンの言葉を受けて、レヴィは怖い顔をする。
「エリン、俺の前でも二回倒れているだろう。まさか、それ以外にも倒れたのか?」
エリンはレヴィの科白にぎょっとした表情をする。
「あ、えーと」
「倒れたんだな」
ふうとレヴィは嘆息する。
「体調が悪いなら無理して今日来なくても」
「だって……レヴィ様とデートの約束できたから、嬉しくて!」
思わず自分の本音を漏らしたエリンは、自分の口を両手で押さえる。
「え……」
エリンから想いを寄せられているとは思いもしなかったレヴィは、驚愕する。
その紅の瞳を困惑の色に染め上げた。
「私はレヴィ様が好きです。私の気持ち、迷惑ですか?」
青の瞳を潤ませて、エリンはレヴィに問いかけた。
心読みの薬が切れたのだろう、レヴィの心の声は聴こえない。
レヴィの表情から感情が読み取れない。
0
お気に入りに追加
220
あなたにおすすめの小説
【R18】軍人彼氏の秘密〜可愛い大型犬だと思っていた恋人は、獰猛な獣でした〜
レイラ
恋愛
王城で事務員として働くユフェは、軍部の精鋭、フレッドに大変懐かれている。今日も今日とて寝癖を直してやったり、ほつれた制服を修繕してやったり。こんなにも尻尾を振って追いかけてくるなんて、絶対私の事好きだよね?絆されるようにして付き合って知る、彼の本性とは…
◆ムーンライトノベルズにも投稿しています。
【R18】騎士団長は××な胸がお好き 〜胸が小さいからと失恋したら、おっぱいを××されることになりました!~
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
「胸が小さいから」と浮気されてフラれた堅物眼鏡文官令嬢(騎士団長補佐・秘書)キティが、真面目で不真面目な騎士団長ブライアンから、胸と心を優しく解きほぐされて、そのまま美味しくいただかれてしまう話。
※R18には※
※ふわふわマシュマロおっぱい
※もみもみ
※ムーンライトノベルズの完結作
【R18】幼馴染な陛下は、わたくしのおっぱいお好きですか?💕
月極まろん
恋愛
幼なじみの陛下に告白したら、両思いだと分かったので、甘々な毎日になりました。
でも陛下、本当にわたくしに御不満はございませんか?
【R18】国王陛下はずっとご執心です〜我慢して何も得られないのなら、どんな手を使ってでも愛する人を手に入れよう〜
まさかの
恋愛
濃厚な甘々えっちシーンばかりですので閲覧注意してください!
題名の☆マークがえっちシーンありです。
王位を内乱勝ち取った国王ジルダールは護衛騎士のクラリスのことを愛していた。
しかし彼女はその気持ちに気付きながらも、自分にはその資格が無いとジルダールの愛を拒み続ける。
肌を重ねても去ってしまう彼女の居ない日々を過ごしていたが、実の兄のクーデターによって命の危険に晒される。
彼はやっと理解した。
我慢した先に何もないことを。
ジルダールは彼女の愛を手に入れるために我慢しないことにした。
小説家になろう、アルファポリスで投稿しています。
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
【R18】幼馴染な陛下と、甘々な毎日になりました💕
月極まろん
恋愛
幼なじみの陛下に、気持ちだけでも伝えたくて。いい思い出にしたくて告白したのに、執務室のソファに座らせられて、なぜかこんなえっちな日々になりました。
皇帝陛下は皇妃を可愛がる~俺の可愛いお嫁さん、今日もいっぱい乱れてね?~
一ノ瀬 彩音
恋愛
ある国の皇帝である主人公は、とある理由から妻となったヒロインに毎日のように夜伽を命じる。
だが、彼女は恥ずかしいのか、いつも顔を真っ赤にして拒むのだ。
そんなある日、彼女はついに自分から求めるようになるのだが……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
国王陛下は悪役令嬢の子宮で溺れる
一ノ瀬 彩音
恋愛
「俺様」なイケメン国王陛下。彼は自分の婚約者である悪役令嬢・エリザベッタを愛していた。
そんな時、謎の男から『エリザベッタを妊娠させる薬』を受け取る。
それを使って彼女を孕ませる事に成功したのだが──まさかの展開!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる