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しおりを挟むあなたの心に触れたい、その柔らかな心に。
ふわりとカーテンが舞い、風が生徒会室に吹く。
「あ」
蒼が奏に差し出したコピー用紙が風に飛んでそれを取ろうとした奏と又手が重なる、その瞬間。共鳴する、互いの力。
視える、心のイメージ。蒼はそれを視た。淡い薄紅色の桜のイメージ。
桜と戯れる少女の具現。淡い淡い本人さえ自覚していない恋心。
(これって……)
触れている奏の心の中に。その風景を二人は視ていた、視てしまった。
(これって俺の心象風景?俺の心の中……)
それが一変して生徒会の部屋に戻る。二人は見つめ合う。
「君は一体……」
奏の訝しげな声音に蒼は身構える。
「ご、ごめんなさい!私の力が暴走しちゃったんです!名波会長の心に触れたいって思ったから」
黒曜石の瞳から雫が落ちて、その雫が溢れて涙となる。
「力……?」
奏の問いかけに心に直接返答する。
(人の心を読む力……。殆ど雑音で聴こえないけれど、強い想いは私に届くんです私は人の心が読めるんです、あなたの視える力と又違う力……)
鈴のような声音が頭に響く。
無自覚な淡い強い想いをふっと自覚させられたあの心の風景。
共鳴した力。かあっと奏は頬を赤く染める。今自覚する初対面で蒼に一目惚れした自分。
「まさか俺の心の中を聞いて……」
触れたいという願い。奏の傍に居て欲張りになってしまった自分の心。
「ご、ごめんなさい!」
蒼が生徒会室の扉を開けて、飛び出す。その時一樹とすれ違った。振り返った蒼の零れ落ちそうな二つの瞳から涙が溢れていた。
「おい!奏。蒼ちゃんが泣いて……」
そこには自分の心の想いを視られてしまった事と、初めて自覚した恋心に戸惑う奏が頬を赤く染めて立ち尽くしていた。
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