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エピローグ~違う空の下で~
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あれから2週間が経ち、リチャードはウィル神聖王国へ帰還した。盛大に天空界から帰還した宰相に指名された王弟のアレックスと次期ウィル王のカーライル公爵は迎えられたとウィル神界の新聞筋から天空界で報じられていた。
ヒカルは、相変わらず大学とウィザードとの二重生活を送っている。その日も雪だった。暖かい天空界にしては、珍しい程今年の冬は冷えて雪が降り、積もる。
ヒカルは、大学のゼミで児童心理学の卒論に向けて、発表の為、勉強していた。卒論は「児童虐待について」で自分が置かれていたウィル神界での境遇をもう一回振り返ろうとヒカルは、大学の図書館で専門書を数冊借りて、トートバッグに入れて雪の積もった大学構内を歩いていた。寒いので紺のフードの付いたダウンコートにミニスカートとブラウスの上にセーターとマフラーを巻いて、ロングブーツを履いていた。
「さむーい」
ヒカルは、グレーの手袋に白い息を吐く。リチャードのいない日常にも慣れてきた。きっと、こうやって彼のいない日常に慣れていくのだ、唯この胸の痛みを引きずって、そしていつか忘れるのだ。ふうとヒカルは気を抜いて、雪に滑って転んだ。
「いたたた……」
身体を起こして、唸っていると手を差し伸べられた。ヒカルは、その手を掴む。
「ありがとうございます……」
笑顔をその手の主に向けて、ヒカルは固まる。
自分の手を取るのは、黒い短髪に濃い純粋な紫の王眼、整った鼻筋に整った口元の涼やかな美貌のヒカルより身長の高い鍛えられた細い身体の主の次期ウィル王である自分の元恋人。
「ヒカル……」
低いテノールの綺麗な声音が自分の名を呼ぶ。
ヒカルは、リチャードの手を振り払って、脱兎の如く逃げ出した。光の転移魔法を唱えるが、リチャードが、それを阻止する魔法を唱えた。
翼を広げて、空に逃げようとするがリチャードが、ヒカルに向けて王眼の力を放つ。
(う、動けない……)
ヒカルは、きっと青の双眸でリチャードを睨みつける。
「ヒカル……。まだ逃げるのか……」
呆れた声のリチャードにヒカルは、まだ抵抗する。
「あ、当たり前でしょう! 何でここにいるのよっ! ひ、人がどんな想いで別れを告げたと……。って言うか! 次期ウィル王がどうしてここにいるのよっ!」
二人は天使たちに解らないようにウィル神聖語でやりとりしていたが、リチャードを見て著名な政治家の息子が叫んで指を指した。
「紫の王眼! 次期ウィル王のリチャード=カーライル!」
ヒカルは頭を抱える。
「っていうか! 今すぐ帰って! ウィル神界へ! 今なら間に合……。ん~」
リチャードに抱き締められて、唇を強引に奪われた。ヒカルは、どんどんとリチャードの胸を叩くがその隙にリチャードは、ヒカルの唇をこじ開けて、舌を強引に搦める。じゅっと熱い舌で吸われて、ヒカルは混乱する。
「リチャード様!」
ヒカルを抱き締めているリチャードに宰相となった実父アレックスがウィル神聖王国の数名の重臣や騎士たちを引き連れて、飛び出してくる。その時、リチャードの紫の王眼が光る。前にヒカルと二人でいたときに起きた現象だ。
「リチャード様の番……」
アレックスたちはヒカルに臣下の礼を取る。ヒカルは、はっと気づく。嵌められたのだ、リチャードに自分は! 唇が離れて、ヒカルはリチャードに怒鳴る。
「何でこんな所でキスするのよ!」
「そっちが先に嘘をついただろう……、ヒカル」
リチャードにぐっと抱き締められて、ヒカルは動けない。
「一年は約束だ、待つ。だが、俺は短気なんだ……。逃がしはしない」
ヒカルの耳にリチャードの言葉が囁かれて、リチャードはヒカルに再び口づける。再び唇を吸われて、ヒカルは甘い快楽と眩暈がした。唇が離れてリチャードにしがみつきながらヒカルは叫ぶ。
「何も大学の人が集まる所でこんな風に何回もキスすることないでしょう!」
「逃げた罰だ……」
ふっとリチャードが笑い、ヒカルは顔を赤らめた。
「この策士~! リチャードの馬鹿~!」
ヒカルの可愛らしい声がシルフィード国の空の下、響き渡る。
ヒカル=ウェルリース=ケッペル、通称ケッペル正王家最後の姫君は、騎士王と呼ばれたリチャード=ウィル=カーライル王の正妃であった。この二人は、ウィル王家の歴史では珍しく恋愛結婚で二人は神器使いの番としても有名であり、共に千年生きたと伝えられる。
ヒカルは、相変わらず大学とウィザードとの二重生活を送っている。その日も雪だった。暖かい天空界にしては、珍しい程今年の冬は冷えて雪が降り、積もる。
ヒカルは、大学のゼミで児童心理学の卒論に向けて、発表の為、勉強していた。卒論は「児童虐待について」で自分が置かれていたウィル神界での境遇をもう一回振り返ろうとヒカルは、大学の図書館で専門書を数冊借りて、トートバッグに入れて雪の積もった大学構内を歩いていた。寒いので紺のフードの付いたダウンコートにミニスカートとブラウスの上にセーターとマフラーを巻いて、ロングブーツを履いていた。
「さむーい」
ヒカルは、グレーの手袋に白い息を吐く。リチャードのいない日常にも慣れてきた。きっと、こうやって彼のいない日常に慣れていくのだ、唯この胸の痛みを引きずって、そしていつか忘れるのだ。ふうとヒカルは気を抜いて、雪に滑って転んだ。
「いたたた……」
身体を起こして、唸っていると手を差し伸べられた。ヒカルは、その手を掴む。
「ありがとうございます……」
笑顔をその手の主に向けて、ヒカルは固まる。
自分の手を取るのは、黒い短髪に濃い純粋な紫の王眼、整った鼻筋に整った口元の涼やかな美貌のヒカルより身長の高い鍛えられた細い身体の主の次期ウィル王である自分の元恋人。
「ヒカル……」
低いテノールの綺麗な声音が自分の名を呼ぶ。
ヒカルは、リチャードの手を振り払って、脱兎の如く逃げ出した。光の転移魔法を唱えるが、リチャードが、それを阻止する魔法を唱えた。
翼を広げて、空に逃げようとするがリチャードが、ヒカルに向けて王眼の力を放つ。
(う、動けない……)
ヒカルは、きっと青の双眸でリチャードを睨みつける。
「ヒカル……。まだ逃げるのか……」
呆れた声のリチャードにヒカルは、まだ抵抗する。
「あ、当たり前でしょう! 何でここにいるのよっ! ひ、人がどんな想いで別れを告げたと……。って言うか! 次期ウィル王がどうしてここにいるのよっ!」
二人は天使たちに解らないようにウィル神聖語でやりとりしていたが、リチャードを見て著名な政治家の息子が叫んで指を指した。
「紫の王眼! 次期ウィル王のリチャード=カーライル!」
ヒカルは頭を抱える。
「っていうか! 今すぐ帰って! ウィル神界へ! 今なら間に合……。ん~」
リチャードに抱き締められて、唇を強引に奪われた。ヒカルは、どんどんとリチャードの胸を叩くがその隙にリチャードは、ヒカルの唇をこじ開けて、舌を強引に搦める。じゅっと熱い舌で吸われて、ヒカルは混乱する。
「リチャード様!」
ヒカルを抱き締めているリチャードに宰相となった実父アレックスがウィル神聖王国の数名の重臣や騎士たちを引き連れて、飛び出してくる。その時、リチャードの紫の王眼が光る。前にヒカルと二人でいたときに起きた現象だ。
「リチャード様の番……」
アレックスたちはヒカルに臣下の礼を取る。ヒカルは、はっと気づく。嵌められたのだ、リチャードに自分は! 唇が離れて、ヒカルはリチャードに怒鳴る。
「何でこんな所でキスするのよ!」
「そっちが先に嘘をついただろう……、ヒカル」
リチャードにぐっと抱き締められて、ヒカルは動けない。
「一年は約束だ、待つ。だが、俺は短気なんだ……。逃がしはしない」
ヒカルの耳にリチャードの言葉が囁かれて、リチャードはヒカルに再び口づける。再び唇を吸われて、ヒカルは甘い快楽と眩暈がした。唇が離れてリチャードにしがみつきながらヒカルは叫ぶ。
「何も大学の人が集まる所でこんな風に何回もキスすることないでしょう!」
「逃げた罰だ……」
ふっとリチャードが笑い、ヒカルは顔を赤らめた。
「この策士~! リチャードの馬鹿~!」
ヒカルの可愛らしい声がシルフィード国の空の下、響き渡る。
ヒカル=ウェルリース=ケッペル、通称ケッペル正王家最後の姫君は、騎士王と呼ばれたリチャード=ウィル=カーライル王の正妃であった。この二人は、ウィル王家の歴史では珍しく恋愛結婚で二人は神器使いの番としても有名であり、共に千年生きたと伝えられる。
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