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33話 親には内緒の関係にしてください!2

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 ヒカルは、早朝に水を飲もうとパジャマ姿で台所に行こうとする。シャワーの音がするので寝ぼけた頭で風呂場を覗き込んだ。風呂場から裸のリチャードが出てきて、ヒカルは寝ぼけていた頭が一気に覚める。リチャードは、平然としているがヒカルは顔を赤らめて絶叫する。アレックスとヒカリが目を覚まして部屋から出てくる。

「で、リチャードの裸を見て、絶叫したと?」
 早朝にたたき起こされたアレックスとヒカリは、リビングのソファに座り憮然としていた。ヒカルは、母親のヒカリの隣に座り込んで頬を紅潮させている。
「ご、ごめんなさい……。大学の試験期間でレポートと試験勉強をしていてあんまり寝てなかったから音がしてそっちの方へ」
 20歳なのに顔を真っ赤にさせている自分の娘のヒカルは奥手だ。多分男性経験もないのだろうとヒカリは呆れる。まさかヒカルがリチャードと関係があるとはヒカリは知らない。

「ヒカル、私今日は裁判所に行くのと離婚訴訟の打ち合わせが午後から入っているのよ。どうでもいいことで起こさないで。全く同居初日からこれって」
 ふわーと欠伸をしてヒカリは、冷たく言い放つ。ヒカルはまだ顔を赤らめながら俯いている。寝間着のリチャードをちらりと見て視線を逸らす。アレックスは、リチャードとヒカルの二人が関係していることを知ってはいた。いたが、実の娘のこの恥じらいに呆れる。アレックスは、ヒカリと16歳の時には結婚していたし、王弟だ。その手の相手には事欠かなかった。天空界では成人は20歳だ。それと同じだが、20歳でこれではリチャードが可哀想だとアレックスはため息を吐いた。

「ヒカリお母さん、アレックスお父さん、ごめんなさい」
 アレックスとヒカリは各々の部屋へ戻っていく。二人が去ってヒカルは顔を青ざめる。リチャードと二人きりにされたからだ。ヒカルはちらりとリチャードに視線をやり、顔を上げる。
「リチャードさん、ごめんなさい。大騒ぎして……」
「ヒカル……」
 名前を呼ばれて、ヒカルは顔を上げる。リチャードがヒカルに近づいてきているが、ヒカルはきょとんと首を傾げる。ぐいっと顎を掴まれて、唇を重ねられる。同居が始まってから初日だ。さすがに自分に手を出してくることはないだろうとヒカルはリチャードを甘く見ていた。角度を変えて、啄むような軽いキスを繰り返される。ヒカルは、戸惑う。そして、正気に戻り止めてくれとリチャードの胸を両手でどんどん叩く。唇が離れて、くすりとリチャードが笑う。

「ヒカルは、俺と何度も寝たのに今更俺の裸を見て悲鳴を上げるんだな」
 ヒカルが羞恥心から耳まで真っ赤に染め上げる。本当に自分の恋人である女性は奥手でいつまでも初々しい。可愛くてからかいたくなる。
「だ、だっていつもあんなに直視はしないもの……。そ、それに……」
 慌てふためくヒカルにリチャードは噴き出しそうになり、おかしくて笑い出す。
「ははは……」
 お腹を抱えて笑い出すリチャードにヒカルはむっとする。
「ひ、酷い! リチャードさんまで私のことからかって! 知らない!」
 怒ったヒカルは、自分の部屋へ戻ろうとするがリチャードに腕を掴まれた。

「ちょっと、何よ!」
 振り返ったヒカルは、リチャードに引き寄せられて口づけられる。抱き締められると自分と違う整髪料の香りがする。そう思っているとリチャードがヒカルの唇をこじ開けて舌を入れてきた。まさかとヒカルは焦る。歯列を舐められて、口腔を貪るように舐め尽くして、舌を搦められる。段々とヒカルは身体に甘い痺れが走り、リチャードの寝間着を手で掴む。くちゅくちゅという音がして、リチャードがヒカルの舌を搦めて吸う。下腹部から何かが湧いておかしい。唾液が口から溢れてヒカルは頭がぼーっとする。リチャードが、口づけを止めて唇を離す。ヒカルはリチャードに抱き締められたままだ。

「ヒカル……。俺に部屋に来るか?」
 リチャードの甘い囁きに頷きそうになるが、ヒカルは正気に戻り首を横に振る。
「お、お父さんとお母さんがいるのに無理!」
 まだ同居生活を始めて、初日だ。それに二人がいる時にリチャードに抱かれるなんて出来ない。
「へえ?」
 リチャードがくつりと笑うと、ヒカルの胸をパジャマの上から指で愛撫し始めた。身体がぞくぞくして、ヒカルはリチャードの寝間着を掴んだ手をぎゅっとする。
「やっやっ……」
 甘い声が出て、ヒカルは愕然とする。まずい、このままではリチャードの思うがままだ。リチャードは、ヒカルの胸の先を指で上下に擦る。初めての時もこのパターンだった。まずいまずいとヒカルは思うが、快感に襲われる。

「ヒカル……」
 リチャードがヒカルの名前を甘く呼ぶ。調子に乗るリチャードに切れたヒカルはリチャードの足を蹴飛ばす。リチャードの手が止まる。リチャードはウィル王に仕える誇り高い騎士で王家の血を引く公爵だ。こんな目に合ったことはない。
「つっ……」
 痛みにリチャードが顔をしかめる。ヒカルはその大きな青の瞳を潤ませ、両親に聞こえない位の声で叫ぶ。
「リチャードさんの馬鹿っ!」
 ヒカルはそのまま自分の部屋へと走って、部屋を閉める。リチャードがヒカルの部屋を開けて入ってきた。ヒカルはぎょっとして、身構える。
「ヒカル、悪い。その……」
 リチャードが顔を赤くして、そわそわしている。
「何よっ」
 きっとリチャードをヒカルは睨みつけるが、そのまま後ろにあるベッドに押し倒される。

「???」
 ヒカルは頭が混乱する。さっきリチャードの足を蹴っ飛ばしたのに彼は何を考えているのか。
「済まない……。もう我慢できない。さっきからかってヒカルに口づけてからおかしくて……」
「な、何考えて……」
 ヒカルは切れそうになるが、はっとする。そう言えば前に抱かれたのいつだったけと。前回から2週間は空いている。
(でもでもだからってお父さんとお母さんのいる家の中!)

「結界を張るから声は我慢しなくていい」
 リチャードの頓珍漢な気遣いにヒカルは悲鳴を上げる。
「違う! 違う! そういう気遣いじゃなくて」
 ヒカルはリチャードに抗議しようとするが、噛みつくようにリチャードに口づけられる。唇をこじ開けられる。早急に舌を搦められてくちゅくちゅと吸われて、胸の先を指で上下に擦られる。リチャードは、公爵で女性に紳士的だ。なのに何故だかそういう行為においてはいつも強引だ。

(い、いやだー!)
 ヒカルは羞恥心から心の中で叫ぶ。
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