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31話 ヒカル、パパラッチされる2
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コトハとソウのツッコミにヒカルが顔を真っ赤にして俯いていたが、リチャードは平然としていた。
(れ、恋愛偏差値の違いが出ている……。リチャードさんって過去に恋人が何人いたんだろう……)
ヒカルがとんでもない勘違いをしているとは知らずにリチャードはコトハと会話を始めた。
「予言の姫、私はヒカルに何回も結婚を申し込んでいます。だから、この際こ……」
「ちょっと待てー! 何を言い出すの!」
慌てたヒカルがリチャードのシャツの首元を掴んで揺さぶる。
「ちょっと、ヒカル! 相手はウィル神界の公爵よ! ウィル王家の王眼を持つ!」
コトハが、慌ててヒカルの奇行を止める。ヒカルは、最近リチャードといるのが当たり前になっていたので感覚が麻痺していたが、相手はウィル神界に三人しかいない王家の紫の王眼を持つ内の一人だ。ヒカルは正気に戻り、リチャードの首元を掴んでいた手を離す。
「リチャードさん、ごめんなさい」
ヒカルが泣きそうな顔で謝ると、リチャードは少し咳き込む。それを見て、ヒカルは青ざめる。自分は天空界とウィル神界の国交を害することをしたと。リチャードは暫くヒカルと一緒にいて、ヒカルの思考回路を読めるようになってきたので自分が天空界とウィル神界の王族の血を引く稀有な存在であることを頭から忘れているヒカルに唖然とする。
「ヒカル……。君は忘れているようだから言っておくが、ヒカルは天空界とウィル神界の両方の
王家の血を引いているのだが」
「あっ!」
「忘れてただろう」
ヒカルは、リチャードの指摘にこくりと頷く。リチャードの冷たい視線にヒカルは、恥ずかしくなり下を向いた。
「ど、どうも天空族になってから庶民の生活に慣れちゃって、自分が貴族だったことも忘れてた……。お義父さんは元会計士だったから高校生の時からおこづかい帳つけさされてたし、ウィザードの収入の半分は寄付して半分は貯金していたから……。無駄遣いはしてなかったし、高校と大学の学費は両親が出していてくれたからお金なんてほぼ使ってないわ。使うのは洋服と大学の飲み代位かな?」
ウィル神界の元侯爵令嬢で本当は二つの世界の王家の血を引くお姫様の筈のヒカルだが、本人は至って庶民な女子大生だった。
「あ、あんた、本当に天空界とウィル神界の両方の王家の血引いてるの? セコイわよ……」
風の王家の元王子だったソウが引いている。リチャードはヒカルの変貌っぷりに絶句する。オーレリーだった頃は婚約者としてのデートの時、いつも流行の最先端のドレスを着ていた。今は二人で会う時は可愛らしいワンピースやスカート等を身に着けているが、リチャードは知っている、ヒカルは大学では同じジーンズばかりはいていることを。
「ヒカル……」
リチャードは眩暈を覚えて、額を抑える。
「リチャードさん、何?」
「オーレリーの頃のようにしろとは言わないが、もう少し王族としての自覚を持った方がいい」
「私もそう思うわよ、あんた普通過ぎるわ」
リチャードとソウの二人から駄目出しされて、ヒカルはショックを受ける。
「な、なんで! オーレリーの頃は無駄遣いばかりしていたのよ! 今は寄付もして、普通の女子大生として生活しているのに!」
ヒカルは二人に反論するように叫ぶが、一般的なシルフィード国の普通の女子大生とは何かとソウとリチャードは想像しかけて止める。そんなものは、ヒカルの中にしかない。ヒカルはどこかずれていて、変だと二人は結論を出す。
リチャードは今度は眩暈ではなく、頭が痛い。己の愛してやまない番は変だった。
「あなたたち、天空界とウィル神界の王家によるトリオ漫才を繰り広げるのは止めてくれない。楽しかったけど、話が進まないわ」
冷ややかなコトハの目線と言葉に三人は固まる。天空界の主は、三人に呆れ果てていた。
「コ、コトハ様」
「あのね、ヒカルとカーライル公爵、番同士で仲良くするのはいいわ。でも天空界には番の概念が一般に知られてないの。今回私が写真を止めたからいいけど、そうでなかったら両方の世界で大騒ぎになっていたわよ」
ヒカルはコトハの言葉に頷く。リチャードは何かを言いかけるが、コトハに咎めるような目つきで一瞥されて、言うのを止める。
「あなたたち、ヒカリに知られたら殺されるわよ。ヒカリはウィル神族の高位貴族が大っ嫌いなんだから。ケッペル公爵は、カーライル公爵の味方だろうけど、ヒカリに嫌われるとなると方針を転換するだろうし」
コトハのツッコミにヒカルははっとして、考え込む。
「ヒカルはわかるわよね?」
「はい。コトハ様」
「そうね。だから暫くは二人の仲は両親には内緒にしなさい。知られない様に」
「はい」
女性陣で話を綺麗に纏めてしまっているので、リチャードとソウは呆然とする。
「ちょ、ちょっとコトハ様……。番なのを公表すればいいのでは?」
ソウがリチャードを不憫に思い、提案するとコトハが首を振る。
「無理よ。今の天空界とウィル神界の冷え切った政治情勢じゃあね。ケッペル公爵とヒカリが復縁してくれたらヒカルのことも世間に公表できるし、それからよね。二人が婚約できるのは」
コトハの台詞にヒカルは青ざめて、リチャードは納得していた。
「こ、婚約なんて考えてません!」
「ヒカル、俺に好きだと告白したのは噓だったのか?」
「う、嘘じゃないけど……。そこまでは考えてない。私、まだ20歳だし」
「……」
沈黙したリチャードにヒカルは、不安になる。リチャードと結婚してもいいなとは思ったことはある、だけど天空界の住人になったヒカルはウィル神族と結婚して上手くやっていけるのかわからない。リチャードとの話し合いは、失敗した。ウィル神族の公爵のリチャードは、やはり我儘だ。ヒカルはリチャードに振り回されてばかりいる。そんなリチャードと婚約しても、上手く行く訳がない。アレックスとヒカルの結婚の二の舞だろう。もう少し時間を置いて、考えていきたいのだ。
「私、今は考えてないだけで……」
ヒカルがつい本音を漏らすとリチャードがぱっとリアクションする。どれだけ婚約したいのよ! とヒカルは心の中で叫んだ。
「はいはい、ヒカルとカーライル公爵、仲のいいのはわかったからいちゃいちゃするのは二人になってからして」
コトハの呆れ果てた態度にヒカルは、頬を紅潮させて下を向いた。
「じゃあ、私たち帰るから。ヒカルお大事に。それからカーライル公爵、ヒカルはまだ大学生だから避妊はしっかりね」
ヒカルはコトハの去り際の科白に顔を赤面させる。コトハとソウはヒカルの赤面した顔に、にやにやしながら病室から出ていく。
「コトハ様~!」
コトハの態度に切れて、ヒカルは病室で怒鳴る。しかし、賑やかな病室に他の患者から苦情が出て、駆け付けた看護師にヒカルは叱られることとなる。
(れ、恋愛偏差値の違いが出ている……。リチャードさんって過去に恋人が何人いたんだろう……)
ヒカルがとんでもない勘違いをしているとは知らずにリチャードはコトハと会話を始めた。
「予言の姫、私はヒカルに何回も結婚を申し込んでいます。だから、この際こ……」
「ちょっと待てー! 何を言い出すの!」
慌てたヒカルがリチャードのシャツの首元を掴んで揺さぶる。
「ちょっと、ヒカル! 相手はウィル神界の公爵よ! ウィル王家の王眼を持つ!」
コトハが、慌ててヒカルの奇行を止める。ヒカルは、最近リチャードといるのが当たり前になっていたので感覚が麻痺していたが、相手はウィル神界に三人しかいない王家の紫の王眼を持つ内の一人だ。ヒカルは正気に戻り、リチャードの首元を掴んでいた手を離す。
「リチャードさん、ごめんなさい」
ヒカルが泣きそうな顔で謝ると、リチャードは少し咳き込む。それを見て、ヒカルは青ざめる。自分は天空界とウィル神界の国交を害することをしたと。リチャードは暫くヒカルと一緒にいて、ヒカルの思考回路を読めるようになってきたので自分が天空界とウィル神界の王族の血を引く稀有な存在であることを頭から忘れているヒカルに唖然とする。
「ヒカル……。君は忘れているようだから言っておくが、ヒカルは天空界とウィル神界の両方の
王家の血を引いているのだが」
「あっ!」
「忘れてただろう」
ヒカルは、リチャードの指摘にこくりと頷く。リチャードの冷たい視線にヒカルは、恥ずかしくなり下を向いた。
「ど、どうも天空族になってから庶民の生活に慣れちゃって、自分が貴族だったことも忘れてた……。お義父さんは元会計士だったから高校生の時からおこづかい帳つけさされてたし、ウィザードの収入の半分は寄付して半分は貯金していたから……。無駄遣いはしてなかったし、高校と大学の学費は両親が出していてくれたからお金なんてほぼ使ってないわ。使うのは洋服と大学の飲み代位かな?」
ウィル神界の元侯爵令嬢で本当は二つの世界の王家の血を引くお姫様の筈のヒカルだが、本人は至って庶民な女子大生だった。
「あ、あんた、本当に天空界とウィル神界の両方の王家の血引いてるの? セコイわよ……」
風の王家の元王子だったソウが引いている。リチャードはヒカルの変貌っぷりに絶句する。オーレリーだった頃は婚約者としてのデートの時、いつも流行の最先端のドレスを着ていた。今は二人で会う時は可愛らしいワンピースやスカート等を身に着けているが、リチャードは知っている、ヒカルは大学では同じジーンズばかりはいていることを。
「ヒカル……」
リチャードは眩暈を覚えて、額を抑える。
「リチャードさん、何?」
「オーレリーの頃のようにしろとは言わないが、もう少し王族としての自覚を持った方がいい」
「私もそう思うわよ、あんた普通過ぎるわ」
リチャードとソウの二人から駄目出しされて、ヒカルはショックを受ける。
「な、なんで! オーレリーの頃は無駄遣いばかりしていたのよ! 今は寄付もして、普通の女子大生として生活しているのに!」
ヒカルは二人に反論するように叫ぶが、一般的なシルフィード国の普通の女子大生とは何かとソウとリチャードは想像しかけて止める。そんなものは、ヒカルの中にしかない。ヒカルはどこかずれていて、変だと二人は結論を出す。
リチャードは今度は眩暈ではなく、頭が痛い。己の愛してやまない番は変だった。
「あなたたち、天空界とウィル神界の王家によるトリオ漫才を繰り広げるのは止めてくれない。楽しかったけど、話が進まないわ」
冷ややかなコトハの目線と言葉に三人は固まる。天空界の主は、三人に呆れ果てていた。
「コ、コトハ様」
「あのね、ヒカルとカーライル公爵、番同士で仲良くするのはいいわ。でも天空界には番の概念が一般に知られてないの。今回私が写真を止めたからいいけど、そうでなかったら両方の世界で大騒ぎになっていたわよ」
ヒカルはコトハの言葉に頷く。リチャードは何かを言いかけるが、コトハに咎めるような目つきで一瞥されて、言うのを止める。
「あなたたち、ヒカリに知られたら殺されるわよ。ヒカリはウィル神族の高位貴族が大っ嫌いなんだから。ケッペル公爵は、カーライル公爵の味方だろうけど、ヒカリに嫌われるとなると方針を転換するだろうし」
コトハのツッコミにヒカルははっとして、考え込む。
「ヒカルはわかるわよね?」
「はい。コトハ様」
「そうね。だから暫くは二人の仲は両親には内緒にしなさい。知られない様に」
「はい」
女性陣で話を綺麗に纏めてしまっているので、リチャードとソウは呆然とする。
「ちょ、ちょっとコトハ様……。番なのを公表すればいいのでは?」
ソウがリチャードを不憫に思い、提案するとコトハが首を振る。
「無理よ。今の天空界とウィル神界の冷え切った政治情勢じゃあね。ケッペル公爵とヒカリが復縁してくれたらヒカルのことも世間に公表できるし、それからよね。二人が婚約できるのは」
コトハの台詞にヒカルは青ざめて、リチャードは納得していた。
「こ、婚約なんて考えてません!」
「ヒカル、俺に好きだと告白したのは噓だったのか?」
「う、嘘じゃないけど……。そこまでは考えてない。私、まだ20歳だし」
「……」
沈黙したリチャードにヒカルは、不安になる。リチャードと結婚してもいいなとは思ったことはある、だけど天空界の住人になったヒカルはウィル神族と結婚して上手くやっていけるのかわからない。リチャードとの話し合いは、失敗した。ウィル神族の公爵のリチャードは、やはり我儘だ。ヒカルはリチャードに振り回されてばかりいる。そんなリチャードと婚約しても、上手く行く訳がない。アレックスとヒカルの結婚の二の舞だろう。もう少し時間を置いて、考えていきたいのだ。
「私、今は考えてないだけで……」
ヒカルがつい本音を漏らすとリチャードがぱっとリアクションする。どれだけ婚約したいのよ! とヒカルは心の中で叫んだ。
「はいはい、ヒカルとカーライル公爵、仲のいいのはわかったからいちゃいちゃするのは二人になってからして」
コトハの呆れ果てた態度にヒカルは、頬を紅潮させて下を向いた。
「じゃあ、私たち帰るから。ヒカルお大事に。それからカーライル公爵、ヒカルはまだ大学生だから避妊はしっかりね」
ヒカルはコトハの去り際の科白に顔を赤面させる。コトハとソウはヒカルの赤面した顔に、にやにやしながら病室から出ていく。
「コトハ様~!」
コトハの態度に切れて、ヒカルは病室で怒鳴る。しかし、賑やかな病室に他の患者から苦情が出て、駆け付けた看護師にヒカルは叱られることとなる。
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