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24話 天使とウィル神族の番は揉める2
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「ヒカリ!」
「あー、うざいうざい!」
ヒカリとアレックスの二人はさっきからずっと言い争っている。曰く別れただの別れた記憶はないだの、この場に居合わせた四人、ヒカルとコトハとウィル王もリチャードも今は遠い目をしている。
(いい加減、やーめーろー!)
もうこの不毛な言い争いを始めて2時間だ。最初ははらはらしていた四人も今はどうでもいい、
どうにか終わらせてくれという目をしている。しかもウィル王は最初はたった一人の弟のアレックスを案じていた。が、途中から唯の痴話喧嘩だと気づいてからあほらしくなったようだ。
「あーのー」
ヒカルが口を開く。
「なによ!」
「なんだ!」
アレックスとヒカリの言葉が見事に合う。さすが番(つがい)の夫婦である。
「……」
娘のヒカルが呆れた目で二人を見る。それに気付いた二人は、口論を止めた。
「あのさ、どうせなら揉めるんじゃなくて、同居しない?」
ヒカルのいきなりの提案に二人は首を傾げた。
「だから親子三人で天空界で同居しようよ、どうせなら私大学卒業まであと二年あるからそれまで。それで復縁か、正式に別れるか、決めたら?」
ヒカルが詳しく提案する。
その提案にヒカリはえーっと言葉を発し、アレックスは頷いた。
「わかった。兄上」
「うむ。お前は今日から在シルフィードのウィル神聖王国の大使だ」
あまりの切り替わりの早さに、ヒカルは驚愕する。
「あのウィル王……」
「ん、おじさんで構わんぞ」
「えっ。じゃあ、おじさん、決断が早すぎると思います」
ヒカルの突っ込みにウィル王は嬉しそうに笑う。
「?」
「ははっ! ヒカルは面白い子だな。自分の姪がこんなに楽しくて、おじさんは嬉しいぞ」
「からかいがいがあると?」
ヒカルにジト目で冷たく凝視されて、ウィル王は肩を震わせた。
(面白いが、さすがアレックスの子だ、頭の回転は早い……)
馬鹿には出来ないとウィル王は気を引き締めた。とあることを思いついて、にやりと笑う。
「リチャード、お前暫く天空界にいろ」
ウィル王の命にリチャードは己の紫の目を瞬かせた。
「はい?」
「アレックスとその家族の警護に着け」
「はっ」
ウィル王の命令には背けない。だが、そのウィル王の命令の意図に気付き、リチャードはその命に頷く。
「はあ?」
それに納得できない人が一人、ヒカルだ。ヒカルは、ウィル王に反論する。
「おじさん、警護はい、いらないよ!私はウィザードで神器使いだもん。他の二人も私が守れるよ!」
「ヒカル、アレックスは王弟だ。それにヒカリはアレックスの正妃で、お前は私の姪に当たる。
そんな三人になにかがあれば、責められるのはウィル王の私だ。ウィル神族だったお前ならわかる筈だ」
ヒカルは、ウィル王の説得にぐっと言葉に詰まらせた。
(や、やられた!)
ウィル王の巧妙な悪戯にヒカルは、頭を抱える。
そして、この四人の珍妙な同居生活が、始まることになるのだった。
「あー、うざいうざい!」
ヒカリとアレックスの二人はさっきからずっと言い争っている。曰く別れただの別れた記憶はないだの、この場に居合わせた四人、ヒカルとコトハとウィル王もリチャードも今は遠い目をしている。
(いい加減、やーめーろー!)
もうこの不毛な言い争いを始めて2時間だ。最初ははらはらしていた四人も今はどうでもいい、
どうにか終わらせてくれという目をしている。しかもウィル王は最初はたった一人の弟のアレックスを案じていた。が、途中から唯の痴話喧嘩だと気づいてからあほらしくなったようだ。
「あーのー」
ヒカルが口を開く。
「なによ!」
「なんだ!」
アレックスとヒカリの言葉が見事に合う。さすが番(つがい)の夫婦である。
「……」
娘のヒカルが呆れた目で二人を見る。それに気付いた二人は、口論を止めた。
「あのさ、どうせなら揉めるんじゃなくて、同居しない?」
ヒカルのいきなりの提案に二人は首を傾げた。
「だから親子三人で天空界で同居しようよ、どうせなら私大学卒業まであと二年あるからそれまで。それで復縁か、正式に別れるか、決めたら?」
ヒカルが詳しく提案する。
その提案にヒカリはえーっと言葉を発し、アレックスは頷いた。
「わかった。兄上」
「うむ。お前は今日から在シルフィードのウィル神聖王国の大使だ」
あまりの切り替わりの早さに、ヒカルは驚愕する。
「あのウィル王……」
「ん、おじさんで構わんぞ」
「えっ。じゃあ、おじさん、決断が早すぎると思います」
ヒカルの突っ込みにウィル王は嬉しそうに笑う。
「?」
「ははっ! ヒカルは面白い子だな。自分の姪がこんなに楽しくて、おじさんは嬉しいぞ」
「からかいがいがあると?」
ヒカルにジト目で冷たく凝視されて、ウィル王は肩を震わせた。
(面白いが、さすがアレックスの子だ、頭の回転は早い……)
馬鹿には出来ないとウィル王は気を引き締めた。とあることを思いついて、にやりと笑う。
「リチャード、お前暫く天空界にいろ」
ウィル王の命にリチャードは己の紫の目を瞬かせた。
「はい?」
「アレックスとその家族の警護に着け」
「はっ」
ウィル王の命令には背けない。だが、そのウィル王の命令の意図に気付き、リチャードはその命に頷く。
「はあ?」
それに納得できない人が一人、ヒカルだ。ヒカルは、ウィル王に反論する。
「おじさん、警護はい、いらないよ!私はウィザードで神器使いだもん。他の二人も私が守れるよ!」
「ヒカル、アレックスは王弟だ。それにヒカリはアレックスの正妃で、お前は私の姪に当たる。
そんな三人になにかがあれば、責められるのはウィル王の私だ。ウィル神族だったお前ならわかる筈だ」
ヒカルは、ウィル王の説得にぐっと言葉に詰まらせた。
(や、やられた!)
ウィル王の巧妙な悪戯にヒカルは、頭を抱える。
そして、この四人の珍妙な同居生活が、始まることになるのだった。
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