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23話 天使とウィル神族の番は揉める
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「……ヒカリお母さん?」
「お母さんって呼んでくれるの! ヒカルーー!!」
ヒカリは、アレックスを無視し、母子二人だけの世界に入り込む。そんなヒカリにコトハがツッコミを入れる。
「ちょっと待ったー! ヒカリ、あなた自分の夫を無視してない?」
「あ、いいの。もう別れたから」
「はあ?ヒカリ、どういうことだ!」
予言の姫、コトハと光の王族の姫、ヒカリとウィル神聖王国の王弟、アレックスが、三人三様勝手に話し始めた。傍観者であるウィル王とリチャードとヒカルは呆然とする。
「ヒカリ!お前は何で姿を消したんだ! 私がどれだけ……」
「あ! それもういいから」
アレックスは懊悩する。そしてヒカリは、そんな夫をもうどうでもいいとは適当にかわす。
(な、なんていい加減な……。あれだけアレックスお父さんが悩んでいたのに……)
ヒカルは実母のヒカリに開いた口が塞がらない。責めて姿を消した理由を話せばいいのにと感じた。コトハも同じことを思ったらしく、口を開いた。
「ヒカリ、あなたが姿を消した原因を話しなさいよ。そうじゃないとケッペル公爵は納得しないわよ」
「……。ちっ」
「ちょっと主君に舌打ちしたわね!ヒカリ!」
従姉妹であるので気安いのだろう、二人は掛け合い漫才を始めた。
「あの……。コトハ様とヒカリお母さん、いきなり漫才を始めないで。ヒカリお母さん、コトハ様の言っていることが正しいと思う。何でアレックスお父さんの前からいなくなったのか話してあげないと」
ヒカルの真摯な言葉と表情にヒカリは唖然とする。まさか、実の娘が夫の味方をするとは思っていなかったのだ。
「女の敵……」
ヒカリは、ぼそりと誰にも聞こえない声で呟く。しかし、アレックスはそれを聞き漏らしていなかった。
「ヒカリ、それはどういう意味だ?」
眉根を寄せてアレックスが問い返す。それにヒカリはげっ!と呻いた。
「だって、あなた私があなたの乳母に嫌がらせを受けていたのを無視していたじゃない!」
びしっとヒカリがアレックスを指差す。
「他にも女官長からも女官からも敵視されて、ありとあらゆる嫌がらせをされて、私あなたに訴えても気のせいだの一言だったじゃない!夜会で足を踏まれるわ、ドレスを切り刻まれるわ、妃教育の授業の邪魔をされるわ、散々だったわ!私がウィル王家で初めて天空族の王家の血を引く正妃だったから嫌がらせをされたのよ!私は、あなたを想ってたからずっと我慢していたの、ヒカルを妊娠して動けなくなって、鬱病になったのよ!それでもう我慢できなくなって、自分もヒカルも死んだことにして天空界に帰ったのよ!産後も鬱病が酷くて、妹のアカリにヒカルを預けたの! 自分の娘でさえ育てられなかったに!」
ヒカリは長年の鬱憤を晴らすように叫んだ。沢山の人から受けた小さな嫌がらせが積もり積もって、ヒカリを鬱病に追い込んだのだ。ヒカリは、本当は嫌がらせを受けたら、百倍にして返す性格だった。それを我慢したのもいけなかったのかもしれない。
「ヒカリ……。済まなかった、乳母の件は私がいけない。彼女は私の母親代わりで大切な人だったんだ。だが、君が亡くなって、乳母の娘に寝所に潜り込まれた。乳母が、乳母の娘は幼い頃から一方的に私に懸想していて、天空族の王族が番(つがい)になれるならと思い違いをしたんだ」
「ふん! 今更よ!」
ヒカリはヒカルを抱き締めながら首を振る。
(何よ、これ痴話げんかじゃない……)
ヒカリの態度は今だアレックスに気があるのが一目瞭然で。それがわからないのはアレックスとウィル神族の男性陣だけだ。ちらりとヒカルはコトハに視線をやる。コトハはふーっと嘆息し、苦笑いをヒカルだけにわかるように浮かべた。
(そうでしょ、そうだよねえ……)
ヒカルは呆れる。しかし、妊娠中や産後の男性の思いやりのない態度は一生の恨みになると聞いたことがあった。だからヒカリの恨みは相当なものかもしれないとヒカルは、結論付けた。
「お母さんって呼んでくれるの! ヒカルーー!!」
ヒカリは、アレックスを無視し、母子二人だけの世界に入り込む。そんなヒカリにコトハがツッコミを入れる。
「ちょっと待ったー! ヒカリ、あなた自分の夫を無視してない?」
「あ、いいの。もう別れたから」
「はあ?ヒカリ、どういうことだ!」
予言の姫、コトハと光の王族の姫、ヒカリとウィル神聖王国の王弟、アレックスが、三人三様勝手に話し始めた。傍観者であるウィル王とリチャードとヒカルは呆然とする。
「ヒカリ!お前は何で姿を消したんだ! 私がどれだけ……」
「あ! それもういいから」
アレックスは懊悩する。そしてヒカリは、そんな夫をもうどうでもいいとは適当にかわす。
(な、なんていい加減な……。あれだけアレックスお父さんが悩んでいたのに……)
ヒカルは実母のヒカリに開いた口が塞がらない。責めて姿を消した理由を話せばいいのにと感じた。コトハも同じことを思ったらしく、口を開いた。
「ヒカリ、あなたが姿を消した原因を話しなさいよ。そうじゃないとケッペル公爵は納得しないわよ」
「……。ちっ」
「ちょっと主君に舌打ちしたわね!ヒカリ!」
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「女の敵……」
ヒカリは、ぼそりと誰にも聞こえない声で呟く。しかし、アレックスはそれを聞き漏らしていなかった。
「ヒカリ、それはどういう意味だ?」
眉根を寄せてアレックスが問い返す。それにヒカリはげっ!と呻いた。
「だって、あなた私があなたの乳母に嫌がらせを受けていたのを無視していたじゃない!」
びしっとヒカリがアレックスを指差す。
「他にも女官長からも女官からも敵視されて、ありとあらゆる嫌がらせをされて、私あなたに訴えても気のせいだの一言だったじゃない!夜会で足を踏まれるわ、ドレスを切り刻まれるわ、妃教育の授業の邪魔をされるわ、散々だったわ!私がウィル王家で初めて天空族の王家の血を引く正妃だったから嫌がらせをされたのよ!私は、あなたを想ってたからずっと我慢していたの、ヒカルを妊娠して動けなくなって、鬱病になったのよ!それでもう我慢できなくなって、自分もヒカルも死んだことにして天空界に帰ったのよ!産後も鬱病が酷くて、妹のアカリにヒカルを預けたの! 自分の娘でさえ育てられなかったに!」
ヒカリは長年の鬱憤を晴らすように叫んだ。沢山の人から受けた小さな嫌がらせが積もり積もって、ヒカリを鬱病に追い込んだのだ。ヒカリは、本当は嫌がらせを受けたら、百倍にして返す性格だった。それを我慢したのもいけなかったのかもしれない。
「ヒカリ……。済まなかった、乳母の件は私がいけない。彼女は私の母親代わりで大切な人だったんだ。だが、君が亡くなって、乳母の娘に寝所に潜り込まれた。乳母が、乳母の娘は幼い頃から一方的に私に懸想していて、天空族の王族が番(つがい)になれるならと思い違いをしたんだ」
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(そうでしょ、そうだよねえ……)
ヒカルは呆れる。しかし、妊娠中や産後の男性の思いやりのない態度は一生の恨みになると聞いたことがあった。だからヒカリの恨みは相当なものかもしれないとヒカルは、結論付けた。
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