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21話 天使は大嘘を吐く2
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4月に入り、シルフィード大学の桜は盛りで薄紅色の花びらが綺麗だった。満開の桜は雪のようで本当に儚げで美しい。10月にウィル神聖王国から帰国して最初はリチャードが追ってくるかとびくびくしていたヒカルも半年経ってようやっと安心して毎日を送れるようになっていた。
「花見?」
「そう!今年の桜は時期も丁度いいしね!」
所属する推理ミステリー研究会の仲間のグレースからの電話に携帯を耳に当てて、ヒカルは迷っていた。が、今日と明日は非番だ。偶にはいいかと了解の返事をする。
ヒカルはやっと大学とウィザードとの生活とボランティアとの生活を取り戻して、安堵していた。
そう彼に会うまでは。
「桜が綺麗だなあ……」
今日はサークルの飲み会なので、グリーンのニットにベージュの膝丈のスカートと少々綺麗目の服で大学に向かう。
正門は桜並木が綺麗で美しい。ヒカルはうきうきと大学の正門に入ろうとした時、正門に人だかりが出来ているのに気づく。
(何だろう?女の人ばっかり)
ひょこっと人だかりを覗き込む。そこには黒の肩まで伸ばした髪をリボンで纏めて立っている男性は30代前半の濃い純粋な紫の双眸の端正な美貌のスーツ姿の青年でリチャードと良く似ただが、年を得て色気が漂っていた。もう片方は見慣れた黒の短髪の濃い純粋な紫の双眸に整った鼻筋に引き締まった唇。涼やかで端正な美貌の主は白のシャツにブラックジーンズとスニーカー姿の自分がウィル神聖王国に置いて逃げた恋人。
ヒカルはくるりと身構えて逃げる体勢を取る。全力疾走で。自慢じゃないが、毎日ウィザードの対魔作業で体力は鍛えている。
だが、リチャードとは違う美声がヒカルを呼んだ。
何故か無視できなかったのである。
「ヒカル!」
ヒカルはついうっかり迂闊にも振り返ってしまった。相手はリチャードに面差しが良く似た30代前半のスーツ姿の男性。じっとその濃い純粋な紫の双眸に凝視される。
「ああ……。ヒカリに瓜二つだ。私の娘……」
見知らぬ美貌のイケメンのおじさんに抱き締められて、ヒカルはパニックに陥る。
「いえ、娘って私は両親はいますので勘違いじゃ……」
意識を頑張って保ち、イケメンのおじさんに突っ込み返すのは流石ヒカルである。予言の姫コトハやリチャードである意味慣らされて、逞しくなったのだ。唯叔母のヒカリの名を挙げた時点でおかしいとは感じていた。
ぐいぐいと男性の身体を押してやっと聞き返す。
「ヒカリおばさんなら今会社ですよ?9時から事務所は空いてるから行ってみたら如何ですか?」
「事務所」
「弁護士事務所で弁護士やってますよ。ああ、大手事務所だから予約していかないと会ってもらえないけど」
携帯を取り出して、ヒカリの弁護士事務所の電話番号を調べてメモに書いて渡す。
男性の抱擁から解放されて、ヒカルは男性に指摘する。
「妙齢の女性を抱きしめない方がいいですよ。警察に捕まりますよ」
妙な親切心から男性にこう話すと大学に向かおうとするが、そこでリチャードに腕を掴まれた。
「ヒカル、久しぶりだ」
「……。どうも」
リチャードの熱い視線を受けて、ヒカルは居たたまれなくなり顔を背ける。
「会いたかったが、今日は仕事だ。私はウィル王の王弟であるアレックス=ウィル=ケッペル公爵様の護衛でここに来た」
「王弟?」
にっこりと優しくアレックスはヒカルに微笑むが、ヒカルにはその微笑みが、悪魔のように見えて仕方なかった。
知らなくても血が繋がった親子、感じるものがあったのかもしれない。
(コトハ様再来!)
ヒカルは一瞬にて逃亡を放棄した。
ヒカルはそうして、ウィル王の待つ大統領邸へ連れ込まれたのだった。
「花見?」
「そう!今年の桜は時期も丁度いいしね!」
所属する推理ミステリー研究会の仲間のグレースからの電話に携帯を耳に当てて、ヒカルは迷っていた。が、今日と明日は非番だ。偶にはいいかと了解の返事をする。
ヒカルはやっと大学とウィザードとの生活とボランティアとの生活を取り戻して、安堵していた。
そう彼に会うまでは。
「桜が綺麗だなあ……」
今日はサークルの飲み会なので、グリーンのニットにベージュの膝丈のスカートと少々綺麗目の服で大学に向かう。
正門は桜並木が綺麗で美しい。ヒカルはうきうきと大学の正門に入ろうとした時、正門に人だかりが出来ているのに気づく。
(何だろう?女の人ばっかり)
ひょこっと人だかりを覗き込む。そこには黒の肩まで伸ばした髪をリボンで纏めて立っている男性は30代前半の濃い純粋な紫の双眸の端正な美貌のスーツ姿の青年でリチャードと良く似ただが、年を得て色気が漂っていた。もう片方は見慣れた黒の短髪の濃い純粋な紫の双眸に整った鼻筋に引き締まった唇。涼やかで端正な美貌の主は白のシャツにブラックジーンズとスニーカー姿の自分がウィル神聖王国に置いて逃げた恋人。
ヒカルはくるりと身構えて逃げる体勢を取る。全力疾走で。自慢じゃないが、毎日ウィザードの対魔作業で体力は鍛えている。
だが、リチャードとは違う美声がヒカルを呼んだ。
何故か無視できなかったのである。
「ヒカル!」
ヒカルはついうっかり迂闊にも振り返ってしまった。相手はリチャードに面差しが良く似た30代前半のスーツ姿の男性。じっとその濃い純粋な紫の双眸に凝視される。
「ああ……。ヒカリに瓜二つだ。私の娘……」
見知らぬ美貌のイケメンのおじさんに抱き締められて、ヒカルはパニックに陥る。
「いえ、娘って私は両親はいますので勘違いじゃ……」
意識を頑張って保ち、イケメンのおじさんに突っ込み返すのは流石ヒカルである。予言の姫コトハやリチャードである意味慣らされて、逞しくなったのだ。唯叔母のヒカリの名を挙げた時点でおかしいとは感じていた。
ぐいぐいと男性の身体を押してやっと聞き返す。
「ヒカリおばさんなら今会社ですよ?9時から事務所は空いてるから行ってみたら如何ですか?」
「事務所」
「弁護士事務所で弁護士やってますよ。ああ、大手事務所だから予約していかないと会ってもらえないけど」
携帯を取り出して、ヒカリの弁護士事務所の電話番号を調べてメモに書いて渡す。
男性の抱擁から解放されて、ヒカルは男性に指摘する。
「妙齢の女性を抱きしめない方がいいですよ。警察に捕まりますよ」
妙な親切心から男性にこう話すと大学に向かおうとするが、そこでリチャードに腕を掴まれた。
「ヒカル、久しぶりだ」
「……。どうも」
リチャードの熱い視線を受けて、ヒカルは居たたまれなくなり顔を背ける。
「会いたかったが、今日は仕事だ。私はウィル王の王弟であるアレックス=ウィル=ケッペル公爵様の護衛でここに来た」
「王弟?」
にっこりと優しくアレックスはヒカルに微笑むが、ヒカルにはその微笑みが、悪魔のように見えて仕方なかった。
知らなくても血が繋がった親子、感じるものがあったのかもしれない。
(コトハ様再来!)
ヒカルは一瞬にて逃亡を放棄した。
ヒカルはそうして、ウィル王の待つ大統領邸へ連れ込まれたのだった。
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