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挿話~対魔組織ウィザード
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その日ヒカルは本当にご機嫌だった。
学校が夏休みで予備校での勉強の日々の合間に友人たちと映画鑑賞に行ってきたのだ。初めて見た映画はびっくりしたが、恋愛映画を見て感動した。ファーストフードにも驚いた。ハンバーガーもポテトもコーラーも美味しかった!何よりもオーレリーの頃は友人など居なかったから友人たちとの恋愛話や将来の夢など話すのはとても楽しくて。天空界に来て、『ヒカル』になって本当に良かったと思えてきた。
この『ヒカル』の姿も慣れてきたし、少しずつだけど好きになれそうだ。
「楽しかったー!またねー!」
と友人たちに手を振って駅で別れる。そのまま学園都市ウェリード駅でヒカルは降りた。夏の夜風が気持ち良くて、上を見ると三日月と満天の星が夜空を彩る。学園都市ウェリードは田舎の中に建てられた国立の多数の研究所や国立シルフィード大学やその付属校や他の私立の学園からなる。研究所やビルの間を抜けて、ヒカルは住宅街の真ん中にあるタワーマンションの入り口に辿り着いた。現在両親は神器の研究所を退職して、ヒカルの高校の編入に合わせて今年の春から国立シルフィード大学の教授職に就いたので三人で学園都市ウェリードに引っ越してきたのだ。
タワーマンションの入り口に最高級車イヴァンが止まっていた。
(嘘っ!イヴァンじゃない)
イヴァンは天空界では風の王族シルフィーディアや光の王族ウェルリースに連なる王侯貴族やこのシルフィードでは大統領や財閥や芸能人位しか乗れない。
(うわぁ!庶民の私には滅多にお目にかかれない!凄いもの見ちゃった!今日はついてる!)
元侯爵令嬢であった事など綺麗さっぱり忘れて、悲しいかな、すっかり庶民な女子高生生活が板についてしまっているヒカルである。暫く車を鑑賞していたが、時間は夜の21時をヒカルの腕時計がさしていた。実に十五分車を鑑賞していたことになる。
「私は何をやってるんだ。家に帰ろう……」
天空界に来て分かった事だが、ヒカルは実の母アカリに似ていて、本来の性格はおっとりしていた。芯は気が強く負けず嫌い。だが、人が良く押しに弱く流されやすくてミーハー。今もミーハーな所が出ていた。
マンションのガラスの自動扉を抜けて、自宅の数字を押す。エレベーターで24階で開く。24階で降りて自宅近くに差し掛かった時、自宅の前に数人の対魔組織ウィザードの制服を着た男女が立っていたのだ。手には魔法銃や杖を持っている。ヒカルはウィル神族の侯爵令嬢だった時に王城に詰めているウィザードの制服を着た女性の神器使いを憧れの目で見ていた、なので知っている。が、何故自分の家に居るのだ。
「何?」
訝しむヒカルに一人のウィザード隊員が問いかけてきた。
「ヒカル=ウェルリース=パッカードさんですね?」
「はい。私はヒカル=ウェルリース=パッカードですが」
「あなたに面会されたいとの事でとある方があなたの家を訪問されています。どうぞ」
「はあ……」
自分の家なのに何故案内されなくちゃいけないのかわからない。鞄から自宅のカードキーを取り出して、開ける。
玄関に入って、リビングに向かう。そこにはソファに項垂れる様にしている両親と向かい側に誰かが座っていた。
「ただいまー。どうなってるの?」
慌てて両親の所へ走る。
「ふうーん。随分と風と光の魔法力が強いじゃない?それも光の魔法力は凄まじいものを感じるわね」
まだ年若い女性の声にヒカルは振り返る。
そこに居たのは金糸のふわふわの髪に新緑の双眸の可愛らしいビスクドールを思わせる20代前半の女性。高そうな上質なワンピースを身に着けて、長い髪を下ろして脇を三つ編みにしてリボンで結っている。外見とは違う人を圧倒する王そのものの存在感を放つ。ウィル神族だった時に似た存在を知っている。元婚約者のカーライル公爵家のリチャードが似通ったオーラを放っていた。
「あなた、誰?」
ヒカルは胡散臭い者を見るような視線を女性に向けると、女性はさっきまでの不機嫌な顔から一転させた。そして上機嫌に笑い始めた。
「凄いわね。私を会って平然としている者なんてウィル王くらいなものよ!気に入ったわ!」
傲岸不遜な態度で言い放つ。
「あなた、失礼じゃない!」
「ヒカル、止めなさい!この方は」
馬鹿にされていると感じてヒカルは女性に抗議するが、それをデイヴィッドが止めに入る。
「だって!」
「この方はこの世界を統べる予言の姫様だ!」
あまりの衝撃にヒカルは頭が真っ白になる。
「は?予言の姫?」
女性を指差す。そしてヒカルは茫然自失の状態に陥り、全ての思考を停止させた。
ヒカルの様相に予言の姫はころころ笑い出した。
「そうよ。私は予言の姫コトハ=ウェルリースよ。そして対魔組織ウィザードの長官よ。今日はあなたを迎えにきたの。あなたにはウィザードに入ってもらうわ」
実に楽しそうに言葉を紡ぐ。
それは普通の女子高生であるヒカルの悪夢の日々の始まりであった。
学校が夏休みで予備校での勉強の日々の合間に友人たちと映画鑑賞に行ってきたのだ。初めて見た映画はびっくりしたが、恋愛映画を見て感動した。ファーストフードにも驚いた。ハンバーガーもポテトもコーラーも美味しかった!何よりもオーレリーの頃は友人など居なかったから友人たちとの恋愛話や将来の夢など話すのはとても楽しくて。天空界に来て、『ヒカル』になって本当に良かったと思えてきた。
この『ヒカル』の姿も慣れてきたし、少しずつだけど好きになれそうだ。
「楽しかったー!またねー!」
と友人たちに手を振って駅で別れる。そのまま学園都市ウェリード駅でヒカルは降りた。夏の夜風が気持ち良くて、上を見ると三日月と満天の星が夜空を彩る。学園都市ウェリードは田舎の中に建てられた国立の多数の研究所や国立シルフィード大学やその付属校や他の私立の学園からなる。研究所やビルの間を抜けて、ヒカルは住宅街の真ん中にあるタワーマンションの入り口に辿り着いた。現在両親は神器の研究所を退職して、ヒカルの高校の編入に合わせて今年の春から国立シルフィード大学の教授職に就いたので三人で学園都市ウェリードに引っ越してきたのだ。
タワーマンションの入り口に最高級車イヴァンが止まっていた。
(嘘っ!イヴァンじゃない)
イヴァンは天空界では風の王族シルフィーディアや光の王族ウェルリースに連なる王侯貴族やこのシルフィードでは大統領や財閥や芸能人位しか乗れない。
(うわぁ!庶民の私には滅多にお目にかかれない!凄いもの見ちゃった!今日はついてる!)
元侯爵令嬢であった事など綺麗さっぱり忘れて、悲しいかな、すっかり庶民な女子高生生活が板についてしまっているヒカルである。暫く車を鑑賞していたが、時間は夜の21時をヒカルの腕時計がさしていた。実に十五分車を鑑賞していたことになる。
「私は何をやってるんだ。家に帰ろう……」
天空界に来て分かった事だが、ヒカルは実の母アカリに似ていて、本来の性格はおっとりしていた。芯は気が強く負けず嫌い。だが、人が良く押しに弱く流されやすくてミーハー。今もミーハーな所が出ていた。
マンションのガラスの自動扉を抜けて、自宅の数字を押す。エレベーターで24階で開く。24階で降りて自宅近くに差し掛かった時、自宅の前に数人の対魔組織ウィザードの制服を着た男女が立っていたのだ。手には魔法銃や杖を持っている。ヒカルはウィル神族の侯爵令嬢だった時に王城に詰めているウィザードの制服を着た女性の神器使いを憧れの目で見ていた、なので知っている。が、何故自分の家に居るのだ。
「何?」
訝しむヒカルに一人のウィザード隊員が問いかけてきた。
「ヒカル=ウェルリース=パッカードさんですね?」
「はい。私はヒカル=ウェルリース=パッカードですが」
「あなたに面会されたいとの事でとある方があなたの家を訪問されています。どうぞ」
「はあ……」
自分の家なのに何故案内されなくちゃいけないのかわからない。鞄から自宅のカードキーを取り出して、開ける。
玄関に入って、リビングに向かう。そこにはソファに項垂れる様にしている両親と向かい側に誰かが座っていた。
「ただいまー。どうなってるの?」
慌てて両親の所へ走る。
「ふうーん。随分と風と光の魔法力が強いじゃない?それも光の魔法力は凄まじいものを感じるわね」
まだ年若い女性の声にヒカルは振り返る。
そこに居たのは金糸のふわふわの髪に新緑の双眸の可愛らしいビスクドールを思わせる20代前半の女性。高そうな上質なワンピースを身に着けて、長い髪を下ろして脇を三つ編みにしてリボンで結っている。外見とは違う人を圧倒する王そのものの存在感を放つ。ウィル神族だった時に似た存在を知っている。元婚約者のカーライル公爵家のリチャードが似通ったオーラを放っていた。
「あなた、誰?」
ヒカルは胡散臭い者を見るような視線を女性に向けると、女性はさっきまでの不機嫌な顔から一転させた。そして上機嫌に笑い始めた。
「凄いわね。私を会って平然としている者なんてウィル王くらいなものよ!気に入ったわ!」
傲岸不遜な態度で言い放つ。
「あなた、失礼じゃない!」
「ヒカル、止めなさい!この方は」
馬鹿にされていると感じてヒカルは女性に抗議するが、それをデイヴィッドが止めに入る。
「だって!」
「この方はこの世界を統べる予言の姫様だ!」
あまりの衝撃にヒカルは頭が真っ白になる。
「は?予言の姫?」
女性を指差す。そしてヒカルは茫然自失の状態に陥り、全ての思考を停止させた。
ヒカルの様相に予言の姫はころころ笑い出した。
「そうよ。私は予言の姫コトハ=ウェルリースよ。そして対魔組織ウィザードの長官よ。今日はあなたを迎えにきたの。あなたにはウィザードに入ってもらうわ」
実に楽しそうに言葉を紡ぐ。
それは普通の女子高生であるヒカルの悪夢の日々の始まりであった。
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