元悪役令嬢の私が別人と思われて元婚約者に告白された件について

清里優月

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1話 騎士と天使の邂逅~彼の初恋を拗らせた出逢い~

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 満月が出ている晩は魔族の持つ力が強大化して、天空界やウィル神界での犯罪率が上がると天空界の対魔組織ウィザードのデータが語る。

 天空界のシルフィード国の首都シルフィードの上空に二人の天使が翼を広げていた。

「魔族に逃げられました!行先はウィル神界の王都ウィルディア!」
 金糸のポニーテールに纏めた髪を夜風に靡かせて少女が叫ぶ。
その双眸は光の杖と共鳴していて金色に染まり、身体は金色に発光していた。
対魔組織ウィザードの隊員で光の杖の持ち主ヒカル=パッカード警部である。

「どうするの?パッカード警部」
 同じく対魔組織ウィザードのヒカルの上司ソウ=シルフィーディア警視が翼を羽ばたかせて、厳しく問いかけてくる。

 ヒカルはさっと頷く。
「中位魔族を追って、ウィル神界へ行きます!」
 高位の魔法使いだけが出現させられる簡易の魔法陣を呼び出し、ウィル神界へヒカルは転移した。
「あ、ちょっと!ウィル神族に見られたらまず……って人の話を聞け~!」
 夜の天空界にソウ=シルフィーディア警視の声が響き渡った。

 逃走した高位魔族を追っててヒカルはウィル神界に転移した。ばさりと白い翼を羽ばたかせる。天には美しい黄金色の月が光っていた。
「うーん。王都の上空みたいね……」
 まだヒカルの身体は金色に発光している。光の杖と共鳴し、魔族の行先を特定する。

(西に5キロ!まずいわ……)
 ばさりと翼を羽ばたかせて、転移魔法を唱える。

 その頃ウィル神族の近衛騎士団も魔族を探知して出撃していた。
「リチャード隊長!中位の魔族の気配がします!」
 探知の魔法眼を持つ騎士が叫ぶ。
「わかった!四宝の剣よ!導け!」
 ウィル王から授けられた王族の騎士が持つ四宝の剣を構えて、転移する。
 魔族の気配が濃くなっているのを近衛騎士団の第三部隊隊長リチャード=カーライルは察知する。
 それと同時に別の濃い気配の匂いがした。

「ん?」
 夜空に翼を羽ばたかせた天使。金糸の長いを髪が風に靡かせて、その双眸は金。
 そして天使の身体は同じ金色に発光していた。
 驚いた可愛らしい顔をリチャードに向けている。

「え?」
 いきなり出現した清廉な気配にヒカルはその気配の方向へ視線をやる。
 下には涼やかな端正な美貌の騎士団の制服を着た青年が居た。
 光の杖と共鳴した金色の双眸と濃い純粋な紫の双眸が一瞬交差する。
 その瞳から目が離せない。
 引き寄せられるかのように暫く二人は見つめ合う。

『ヒカル!アブナイワ!』
 光の杖の声がして、ヒカルは我に返る。

「ありがとう!光の杖!行っくよー!」
『エエ!』
 光の杖と共鳴し、一体化する。
 金の色が響く波のように。
 そしてヒカルの身体から巨大な金色の閃光が走った。
 魔族が一瞬で灰へと還る。

 余りの凄まじい光景にリチャードは目を疑う。
 だが、金色に染まる天使の少女は依然として空に浮いている。

「……」
 少女はリチャードにその金色の双眸を向けて、彼をちらりと一瞥する。
 そして、その姿は一瞬で宙に消えた。

「今のは一体……。何だったんだ……」
 少女は天空界の対魔組織ウィザードの制服を着ていた。
 まだ10代後半の清楚な美貌の苛烈な力を持つ天使。

 その金色の円らな双眸がリチャードの脳裏から離れなかった……。
 それがリチャードの遅い初恋の始まりであった。
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