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41話 過去と未来5
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『ふっ……。無駄だ。私は、魔力が強く憎しみの深いウィル神族の感情を食ってきた。そして、紫の王眼を食らえば最強になり、ウィル神界と天空界を支配できる』
西の魔王を内包したアリッサが語る。そして深紅の力で何かを呼ぶ。その腕の中には眠るライアンがいた。
「ライアン!」
ヒカルとリチャードが西の魔王に捕らわれた我が子を見て絶叫する。紫の王眼を食らえばと言っていた、それはライアンの瞳の事かと二人は衝撃を受ける。
「ん……」
ライアンが目を擦り、眠りから目覚める。アリッサを見て、驚く。紫の王眼を見開いてアリッサににっこりと微笑む。
「だあれ? きれいなおばちゃん」
「ライアン! 駄目!」
ヒカルが手を伸ばそうとするが、ライアンに届くわけがない。
だけど。
西の魔王の中で眠りにつかされていたアリッサが反応した。
「ライアン? 息子ライアンと一緒の名前……」
ライアンに触れようとする。
「ヒカル! 剣で西の魔王とヒナタを分離させるんだ!」
ヒカルははっとして、リチャードと剣を持ち光の力を剣から放出する。光の力がアリッサにめがけて放たれた。
アリッサの身体に命中して、アリッサは唖然とする。自分の身体が足下からさらさらと崩れていくのだ。
「嘘だ……。今までで最高の肉体が!」
魔王の意識とアリッサの意識が混濁しているのだ。
「ヒナタ!」
ルカの呼びかけにアリッサの青の瞳が見開いた。意識が完全にアリッサに戻っている。アリッサ、ヒナタは春の日差しのような微笑みを浮かべた。涙が零れ落ちる。
「ルカ……。ごめんなさい、ずっと……あなたを探していたわ。素直になれなくてごめんなさい……。本当はあなたのことが好きなのに……。何故、最初にあなたに巡り会えなかったの……天使のヒナタとして……」
ぼろぼろとヒナタは瞳を潤ませて泣く。
「おばちゃん……しんじゃうの?」
ライアンが、ヒナタが泣いているのを見て、同調して泣き出す。
「泣いてくれるの? 優しいのね……」
ヒナタが、ライアンにそっと触れた。
その瞬間、真白な優しい光がライアンから発せられた。その真白な光はアリッサを包み込んだ。
光が発光して、アリッサは天使の姿へと戻っていた。
月光を編んだ金色の髪に水色の円らな瞳。華奢な肢体に純白の翼。ヒナタの姿だ。
「あ……。元に戻れたのね、天使の姿に……」
だが、ヒナタは現世の肉体は失っていた。光を身に纏った天使の姿は魂の形だ。
「ルカ……。またあなたに会えるわ……。時間はかかるけど、私は天使の魂に戻れた。次は天使としてあなたに会いたい……」
ヒナタがルカに手を伸ばす。ルカもヒナタに触れようとする。
だけど。
現生の肉体と天使の魂の形では触れ合えない。
「また……あなたに会えるわ……。ルカ……」
ヒナタの魂が光を放ち、消えようとしている。ヒナタは剣を握りしめて呆然としているヒカルとリチャードを見つめる。
「お姉さま……。ごめんなさい、ありがとう……」
ふっとヒナタが笑う。そして魂が光を放ち、散る。
「ヒナタ……」
ヒナタの最後の言葉にヒカルは涙する。が、深紅の光がまたもライアンを狙う。
「リチャードさん!」
ヒカルの叫びにリチャードが頷く。二人は力を合わせて剣へと乗せる。
魂のみとなった西の魔王は、光の剣の発した光に打ち砕かれ、叫ぶ。
『こんな……世界を征服する私の夢が……』
深紅の魂が散っていく。
支えを失ったライアンをヒカルが翼を広げて、受け止める。
「ママ!」
「ライアン!」
ヒカルは、ライアンをぎゅっと抱き締めた。子ども独特の小さなお日様の匂いが広がる。
「あのね……」
こそっとライアンがヒカルの耳に囁く。
「ないしょだよ……。ぼくの前のママ……とあえたの」
ヒカルは弾かれるようにライアンの紫の王眼を見つめた。
「ライアン……?」
「ぼく、リチャードのパパのこどもになりたかったの。まえのパパとママも好きだったけど、なかよしじゃなかったから……。こんどはなかよしのパパとママの子どもになりたかったの……。でもまえのパパとママもなかよしだったんだね……」
眠たそうに眼を擦って、ヒカルの胸の中で眠りについた。
「ヒカル!」
下から手を振るリチャードが笑っていた。ルカも寂しげに微笑んでいる。
ヒカルは、自分とリチャードを再び結び付けてくれたライアンを愛し気に抱き締めて、空を見つめた。
空は青空だった。
西の魔王を内包したアリッサが語る。そして深紅の力で何かを呼ぶ。その腕の中には眠るライアンがいた。
「ライアン!」
ヒカルとリチャードが西の魔王に捕らわれた我が子を見て絶叫する。紫の王眼を食らえばと言っていた、それはライアンの瞳の事かと二人は衝撃を受ける。
「ん……」
ライアンが目を擦り、眠りから目覚める。アリッサを見て、驚く。紫の王眼を見開いてアリッサににっこりと微笑む。
「だあれ? きれいなおばちゃん」
「ライアン! 駄目!」
ヒカルが手を伸ばそうとするが、ライアンに届くわけがない。
だけど。
西の魔王の中で眠りにつかされていたアリッサが反応した。
「ライアン? 息子ライアンと一緒の名前……」
ライアンに触れようとする。
「ヒカル! 剣で西の魔王とヒナタを分離させるんだ!」
ヒカルははっとして、リチャードと剣を持ち光の力を剣から放出する。光の力がアリッサにめがけて放たれた。
アリッサの身体に命中して、アリッサは唖然とする。自分の身体が足下からさらさらと崩れていくのだ。
「嘘だ……。今までで最高の肉体が!」
魔王の意識とアリッサの意識が混濁しているのだ。
「ヒナタ!」
ルカの呼びかけにアリッサの青の瞳が見開いた。意識が完全にアリッサに戻っている。アリッサ、ヒナタは春の日差しのような微笑みを浮かべた。涙が零れ落ちる。
「ルカ……。ごめんなさい、ずっと……あなたを探していたわ。素直になれなくてごめんなさい……。本当はあなたのことが好きなのに……。何故、最初にあなたに巡り会えなかったの……天使のヒナタとして……」
ぼろぼろとヒナタは瞳を潤ませて泣く。
「おばちゃん……しんじゃうの?」
ライアンが、ヒナタが泣いているのを見て、同調して泣き出す。
「泣いてくれるの? 優しいのね……」
ヒナタが、ライアンにそっと触れた。
その瞬間、真白な優しい光がライアンから発せられた。その真白な光はアリッサを包み込んだ。
光が発光して、アリッサは天使の姿へと戻っていた。
月光を編んだ金色の髪に水色の円らな瞳。華奢な肢体に純白の翼。ヒナタの姿だ。
「あ……。元に戻れたのね、天使の姿に……」
だが、ヒナタは現世の肉体は失っていた。光を身に纏った天使の姿は魂の形だ。
「ルカ……。またあなたに会えるわ……。時間はかかるけど、私は天使の魂に戻れた。次は天使としてあなたに会いたい……」
ヒナタがルカに手を伸ばす。ルカもヒナタに触れようとする。
だけど。
現生の肉体と天使の魂の形では触れ合えない。
「また……あなたに会えるわ……。ルカ……」
ヒナタの魂が光を放ち、消えようとしている。ヒナタは剣を握りしめて呆然としているヒカルとリチャードを見つめる。
「お姉さま……。ごめんなさい、ありがとう……」
ふっとヒナタが笑う。そして魂が光を放ち、散る。
「ヒナタ……」
ヒナタの最後の言葉にヒカルは涙する。が、深紅の光がまたもライアンを狙う。
「リチャードさん!」
ヒカルの叫びにリチャードが頷く。二人は力を合わせて剣へと乗せる。
魂のみとなった西の魔王は、光の剣の発した光に打ち砕かれ、叫ぶ。
『こんな……世界を征服する私の夢が……』
深紅の魂が散っていく。
支えを失ったライアンをヒカルが翼を広げて、受け止める。
「ママ!」
「ライアン!」
ヒカルは、ライアンをぎゅっと抱き締めた。子ども独特の小さなお日様の匂いが広がる。
「あのね……」
こそっとライアンがヒカルの耳に囁く。
「ないしょだよ……。ぼくの前のママ……とあえたの」
ヒカルは弾かれるようにライアンの紫の王眼を見つめた。
「ライアン……?」
「ぼく、リチャードのパパのこどもになりたかったの。まえのパパとママも好きだったけど、なかよしじゃなかったから……。こんどはなかよしのパパとママの子どもになりたかったの……。でもまえのパパとママもなかよしだったんだね……」
眠たそうに眼を擦って、ヒカルの胸の中で眠りについた。
「ヒカル!」
下から手を振るリチャードが笑っていた。ルカも寂しげに微笑んでいる。
ヒカルは、自分とリチャードを再び結び付けてくれたライアンを愛し気に抱き締めて、空を見つめた。
空は青空だった。
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