サフォネリアの咲く頃

水星直己

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第四章

[第48話]オルヘイムの占事

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トーエンの海辺に現れた魔烟の痕跡に、翌朝二度目の浄化が施された。

「ほぼこれで大丈夫とは思いますが、大闇祓いが終わりましたら、もう一度浄化に参りましょう」

セルティアは町の人にそう約束すると、蒼の騎士団・天使団は次の地へ向かって出発した。

最終目的地の連峰南口までには、あと一日、途中滞在する必要がある。
その場所まで、数時間おきに休憩を取りながらの旅は、普段関わらない仲間同士の交流を深めるのにいい機会だった。

緑の聖都が在る広大な森の南に、旅人たちが立ち寄る宿場がある。
一行はその近くで休憩を取ることにした。
宿場町の外れに休憩場所を構え、騎士たちは馬車の整備や馬の手入れ、店への食料調達に行き、天使たちは調理の準備や軽い洗濯などをする。

食料調達を任されたクーガルは、甥のセディムを含め、若手の騎士の中から七名程に宿場町への買い物を頼んだ。


「昨日の魔物、見たかったなぁ…。で、結局ラームだったのか?」

買い出しを終え、荷物を抱えた若手の騎士たちの先頭を歩くトマークが、この中で唯一魔物を目撃したセディムに話しかけた。

「うーん…形はラームに似てたけど…奴は荒れ地の砂を好むだろ?海から出てきたってのが謎なんだよなぁ…」

「それそれ!…『日々、魔烟は濃くなっているし、連峰に近づくほど魔物の種類も複雑になってきているのかもしれないな…』…って、デューク隊長が言ってたよなぁ」

「なんだカルニス、それデューク隊長の真似か?」

「微妙~。でも、結構いい線行ってるかな?」

ボルザークやミゼラが揶揄い、皆で笑いあっていると、甲高い抗議の声が後方から上がった。

「ぜ、全然似てないし。デューク隊長はもっと声が低くて、格好いいよ」

皆が一斉に振り返ると、そこには第七部隊新人のキューネラがいた。

今年入隊した新人の中でも一番小柄なキューネラは、剣術の成績も一番低い。
それ故、騎士としての自信がないのか、いつも後ろで小さくなっていて、意見してくることは滅多にないのだが、綺麗に切り揃えた空色の髪を撥ねさせながら、高揚した茶色の瞳を潤ませている。

カルニスは一瞬呆気にとられたが、声音を真似たのも、似せるつもりでやった訳ではない。
むしろ似せるなどおこがましい。
デュークの事は誰よりも崇拝しているつもりだ。
そんな自分よりもデュークの事を知っている風に話すキューネラに、ムッとした表情で返す。

「…あのな、キューネラ。デューク隊長が格好いいのは当たり前だろ。何ムキになってんだよ」

「べ、別にムキになってなんか…」

それ以上の反論は無いようだ。
キューネラへの注目は瞬時で終わり、皆、再び雑談に戻って行った。


休憩場所に帰り、買い物してきたものを皆で仕分けしていると、クーガルがヒューゼラとニカウを伴って、食材を受け取りに来た。

「皆ご苦労だったな。助かった。非常食の仕分け管理は…トマーク、お前に頼む。あと一人、昼食用の食材運びを手伝ってくれ」

「僕が行きます。クーガルお…隊長」

立候補したセディムは、クーガルたちと共に調理場へ向かった。

残った騎士たちは部隊毎に非常食を分けて行く。
戦いの最中に必需品となるそれに、漏れがあってはならない。

「いいか?平等に…贔屓はなしだぞ?それに、当たり前だけど自分の分も増やそうとするな」

トマークが仕切り、慎重に作業を済ませたところに、デュークがサフォーネと共にやってきた。

「皆、すまない。帰ってきたところ早速悪いんだが、近くの海辺まで行ける奴はいないか?」

「?何かあったんですか?隊長」

「あぁ、実はサフォーネが…」

デュークは隣りにいるサフォーネに視線を落とす。
サフォーネはその視線から目を反らすと、何か隠している手を胸元に引き寄せた。

「…サフォ…だから連れて行けないって何度も言ってるだろ…」

「………むぅ」

以前は何でもデュークに伺いを立てていたサフォーネも、今や反抗期か、珍しく抵抗している。

何を隠しているのか、皆が注目すると、サフォーネの指の間から小さな蟹が顔を出した。
トーエンから連れてきたのだろう。
カルニスを始め、サフォーネを護る会の四人はサフォーネらしい行動に笑いを堪えるのが必死だった。

「この蟹を海辺に返してきて欲しいんだ。俺はこれから会議があるし…こいつ自身に行かせる訳にもいかないしな…」

まだこの辺は海辺と同じ砂地になっている。
『蟹の一匹くらいその辺に置いていけばいいものの』…殆どの者はそう思ったが、心はまだ幼子のサフォーネには教育上良くないだろう。
何よりデュークが真剣な顔で頼みごとをしていきているのだ。
そんなこと言える筈もない。

「ぼ…僕が行きます!」

皆の後方で手を挙げ、名乗り出たのはキューネラだった。
デュークはその顔に見覚えがあった。
ぎりぎりで入隊試験に受かったものの、その後の訓練について行けず、誰もが匙を投げかけていたキューネラを、一時期面倒見ていたのだ。

「キューネラか…ありがとう。あれから剣術の方はどうだ?」

「!!…は、はい!…あの、デューク隊長の助言をもらってから…すごく上達したって…周りの人も言ってくれて…シズラカ隊長も驚いてました」

「そうか、良かったな」

「はい!あの…それで…今度また…訓練の方、見てもらえたら…」

「あぁ、時間が合えばいつでもいいぞ」

キューネラがデュークに面倒を見てもらったのは一月くらいだった。
その後は部隊も違うし、顔を合わせることは殆ど無かった。

それなのに名前を覚えてくれていて、また訓練を見てもらえるなんて…。

その感激に頬を染め、瞳を潤ませるキューネラは、端から見れば恋する少女のようだった。

「…おい、ひょっとして、キューネラって…」

「…だな…あの様子は」

ボルザークとミゼラが核心を突いて囁く。
その時、一歩前に出てキューネラの横に立ったのはカルニスだった。
その佇まいには妙な迫力があった。

「キューネラだけじゃ心配だ。俺も行きますよ、隊長」

「そ、そうか…。じゃあ二人に頼む。ここから海辺までなら往復一時間も掛からないだろう。食事時間までには充分間に合うはずだ」

「はい!お任せくださいっ!」

カルニスは大きな声で敬礼すると、サフォーネの前に歩を進め、手のひらを出した。
サフォーネは渋々、その手に蟹を預ける。
受け取ったカルニスは翼を広げ、その場から飛び立った。
それを見たキューネラも慌てて翼を広げた。

「カルニスはまた別の意味で対抗心持ってるな…」

「いずれにせよ、デューク隊長は男女問わずもてるってことだね…」

海辺に向かって飛んでいく二人を眺めながら、トマークとシャンネラが囁いていると、ボルザークとミゼラの慌てる声が聞こえてきた。

「あぁ、サフォーネ。泣かない、泣かない。…ほら、さっき露店で買ってきた美味い菓子があるから…」

「そ、そうだ!この時間にまた乗馬の練習をしよう?」

蟹との別れに泣きべそをかいているサフォーネのご機嫌取りは四人に任せて大丈夫そうだ。
デュークは、上役会議の場へと急いだ。


会議では、大闇祓いでの隊列や天使たちの護衛担当を再確認する。
これまでの隊員たちの健康や心理状態を把握し、状況によっては人員の入れ替えも必要になるため、休憩箇所で会議は随時行われていた。

小一時間ほど話し合われた会議が終わる頃には、カルニスとキューネラも帰還し、サフォーネの機嫌も直っていた。
一同は軽い食事を済ませると、新鎧と装束に正装し、次の目的地へと向かう。


二日目の滞在地は、エルフ族だけで建国されたオルヘイム。

自然を愛し、その恵みを崇拝するエルフたちの中でも、その誇りを強く持つ一族には、精霊の先祖も居ると伝えられている。
彼らハイエルフは、緑の聖都より南西に位置した森の中に、彼らだけの国を作った。

他種族との交流を拒否し、祖人が構える王都を嫌悪しているが、羽根人が行う大闇祓いに関しては一目置き、協力している。
15年に一度、彼らがここを訪れるのはオルヘイムにとって祀りごとになっていた。

「……うはぁ…なんていうか…綺麗なところだな…」

「正装してきて正解、って感じだな」

ヒューゼラとニカウは、その国の景観に溜息をついた。
森の大木はそのままに、街並みを包むように緑を茂らせている。
この辺りは地下に温度の高い源泉が通っていることで地面が温かく、季節の変動が緩やかなのだ。
木々の合間に木造りの建物が並び、それは森に溶け込んで見える。
一瞬、枝にエルフたちが留まっているように見えるのも、建物同士を繋ぐ木造の階段を行き来しているからだった。
通路は石畳になっているが、それも長年の苔で緑に染まっている。

他の騎士や天使たちも、この国を訪れるのは皆初めてで、俄かに緊張した足取りで、案内人の後をついて行く。
進んで行くと、一際大きな円形の広場に出た。
その奥には宮殿のような巨大な木造の建築物が佇んでいる。

「女王様がお出でになります」

案内人の言葉に、蒼の騎士団・天使団一行は、広場の中央で片膝を付いて頭を垂れた。
宮殿の扉が開き、そこから透き通るような白い肌と、白銀の長髪を携えた美しいエルフが現れた。

「ようこそ、お出で下さいました。天の遣い人である皆様を歓迎いたします」

オルヘイムを治める女王フレイアが、先頭にいるルシュアとセルティアに挨拶をする。
その声は高潔なエルフ族特有の、微かに空気を響かせる不思議な音だ。

「今宵はこの国でおくつろぎくださいませ」

女王の合図で、接待を担当するエルフたちが広場の形に沿って絹の敷物を並べていく。
座卓が運び込まれると、その上にはたちまち酒や料理が運びこまれてきた。
その手際のよい光景に見とれている騎士や天使たちの腕を取り、エルフたちは座卓の前に導き、料理を取り分けていく。

「あ、ありがとう…」

空気の様に軽い物腰、優雅な手つきで酌をされ、騎士たちは緊張気味に礼を言う。
その言葉に微笑みで返す接待係たちは、仲間同士エルフ語で囁きあっている。
共用語を使えるのは女王や高官職の者だけのようだ。

すっかりエルフ族の雰囲気に呑まれてしまった羽根人たちは、普段の会話もままならず、沈黙での食事が続いていく。
その様子を見た女王は、付き人に指示を出した。
頭を下げ、その場を後にする付き人を目で追いながら、女王は口を開く。

「皆様、我々エルフ族の占いをご存知ですか?皆様の祖先にも予知の力を持つ方が居るのは存じ上げておりますが、我が国が抱える占い師は高官職の一つでもあり、その的中率はこの大陸で一番と自負しております…」

そこへ、宮殿の方からひとりの少女が現れた。
女王と同じく白い肌に白銀の髪も輝かしく、静かに歩んでくると女王の傍らで傅いた。

「この子はヴェイラと申します。まだ16歳ですが、この国を支える程の先見の力を携えております」

女王の言葉に、羽根人たちは皆興味深そうにヴェイラに注目する。
ヴェイラが顔を上げておっとりした笑顔を向けると、その愛らしさに、若い騎士たちの何人かは心を奪われた。



しかし、熟練の騎士や上位の天使たちは、占い師を呼んできた女王の真意を考える。
これは気軽に占いを頼んでもいいものかどうか…。

「ははは。占い師かぁ…聖都にもいたが、当たった試しがなかったなぁ…」

突然響いたメルティオの笑い声に、周りの者たちは冷や汗をかく。
もともと酒が強くないところ、エルフ族の酒の強さに早速酔いが回ったのだろう。
しかしヴェイラは気を悪くするでもなく、にこやかな笑顔でメルティオに微笑むと、羽根人たちの座卓へ膝を進めていった。

「よろしければ、占って差し上げますよ?」

「それって、何でもいいの?こ、恋占い、とか…」

傍で聞いていたフィンカナが瞳を輝かせて割って入ってきた。
ヴェイラは細い指で口元を隠すように静かに笑う。

「恋占い…いいですね。人は愛が無くては生きて行けませんもの」

人とは思えない程の美しいエルフが、俗世の話に理解を示す様は、益々若手の騎士たちの心を掴んだ。
ヒューゼラとニカウは四半期の旅以来、密かにトハーチェに想いを寄せている。
二人は思い切って恋占いを頼もうと立ち上がりかけたところ、再びメルティオの大きな声が響いた。

「ほぉ…なら、俺の想い人でも当ててもらおうかな?」

酔ったメルティオを誰も止められない。
ヴェイラはそれでも動じることなく、くすくすと笑うと、手のひらに収まるくらいの水晶玉を取り出した。
アリューシャの持っている精霊石に似ているそれを、ヴェイラは手のひらに載せたままメルティオの前に掲げる。

「年上の方、ですね…。とても聡明でお優しい…懐の広い方…。蜂蜜色の長い髪…瞳は若葉色…」

「!!…わぁあああああ…わ、分かった!も、もういい!!それ以上は…」

ヴェイラが語る相手の特徴が的中したのだろう。
慌てるメルティオを見て、シャウザとルーゼルが笑った。

「メルティオさん、分かりやすいなぁ」

「占うまでもなく、みんな知ってることだ。キシリカ様に夢中だもんな…」

メルティオの慌てぶりを見て、目の前の占い師はかなりの信憑性があるのだろう。
フィンカナは一瞬たじろいだが、聞かずにはいられなかった。

「あ、あのっ!私の未来の旦那様とか、見えたりします?」

年下の少女に思わず敬語になるフィンカナの背後で、カヌシャとティファーシャもその答えに固唾を飲んだ。

「将来のお相手の方とは…もう巡り合っておられますね…身近な方です」

その答えに、三人娘が「きゃぁああ!」と悲鳴を上げると、離れて酒を飲んでいた他の仲間たちも何事が起きているのかと、注目し始めた。

「え、ええ?そ、その方って、背が高くて、年上で、それでそれで、とっても強くて、格好いいですよね?」

「ちょっとフィン!?」

「それはずるいですよぉ」

勝手に決めつけるフィンカナの発言にカヌシャとティファ―シャが抗議の声を上げる。

「…いいえ。年下の方です。背は…まだ低いですが、将来は伸びると思いますよ?」

「えぇえええ?」

肩を落とすフィンカナを尻目に、カヌシャとティファーシャも期待して聞いてみたが、カヌシャは騎士団ではない人、ティファーシャはまだ出逢っていない人、と告げられた。

落ち込む三人の横から、今度は騎士たちも集まってくる。
ヒューゼラとニカウもどきどきしながら、その輪に加わった。


すっかり羽根人たちも緊張が解れた様子に、女王が胸を撫でおろすと、隣にいたルシュアが軽く頭を下げた。

「お気遣いありがとうございます。私もそうですが、皆このような美しい所は初めてで…。それに貴女のような美しい方にお会いするのも…」

天性のたらし的な性根は自然と出るものなのか、エルフ国の女王相手にまで口説き文句を告げる様子に、傍に居たセルティアは頭を抱えた。

「それは光栄ですわ…。総隊長様のような素晴らしいお方に褒めて頂けるなんて…。よろしければヴェイラに総隊長様の未来のお相手も占わせましょうか?そうすれば、そのようなお言葉を向ける相手もおひとりに定まるでしょうから…」

女王は一瞬でルシュアの性質を見抜いたのか、核心をつくような言葉を返した。
たじろぐルシュアの様子に、セルティアは思わず小さく吹き出した。


それぞれが占いの結果を聞きながら一喜一憂する中、声を潜ませてきたのは第六部隊のリュシムだった。

「あ…あの…それは道ならぬ恋、でも占えるのか?」

リュシムは生まれながら女性を愛せないことに悩んでいた。
そしてそれは現在、同じ騎士団の中に想い人ができてからは尚更だった。

「もちろん、占えますけど…どんな結果でも受け入れられますか?」

リュシムはその言葉に、ソシュレイの方を見た。
ソシュレイがエルーレのことを想っているのは知っている。
そして、その想いが叶わなかったことも…。
だからと言って、ソシュレイが自分を見てくれる可能性が無いのは解っている。
黙り込むリュシムの後ろから、巨大な影がぬっと現れた。

「聞く勇気がないならやめときな。…ていうか、占いに頼って行動を起こせない方が問題あると思うけど?その辺についてはどう思うのかしらね。占い師のお嬢さん?」

ヴェイラとリュシムの間に割って入ってきたのは、大柄な騎士だったが、そのいかつい顔には化粧が施されている。第六部隊副隊長のジャンシェンだ。
茶目っ気のある青い瞳をくるりとさせて、橙色の巻き毛を片手で払いながら顔を寄せてくるのは愛嬌たっぷりだった。

「もちろん、占いはただの助言です。当たるのも当たらないのも、その人次第です。…これから皆さんは危険な戦いに赴きます。私がその安否を占い、『命を落とす』と告げても、それを受け入れることはできないでしょう?抗って抗い抜く果てに、その運命を変えることもできるのです」

その言葉を聞き、結果に落胆していた者たちは一気に顔を上げた。

「そ、そうよね…。未来は変えられる可能性があるってことよね…。私、諦めないわ…」

「ちょっとフィン…だからといって抜け駆けは駄目だからね」

「そうですよぉ」

「おいおい。それなら、一番気になる奴を占ってもらった方がてっとり早いんじゃないか?」

メルティオが後ろを通りかかったデュークの腕を掴んで、ヴェイラの前に差し出してきた。

「ちょ…何ですか、メルティオさん」

メルティオに腕を引っ張られ、その場に跪いたデュークは抗議の声を上げた。
占い騒ぎには気づいていたが、然程興味もなく、食事が終わったので明日に備えて馬車の点検をしに行くところだった。
すぐに立ち上がろうとしたが、その場にいた全員が期待の目を向けている。
デュークは逃げる機会を失った。

目の前に飛び込んできた騎士を見て、先程から女性たちを悩ませている当人だとヴェイラはすぐに気が付いた。
顔立ちが整っているのはもちろんだが、醸し出す『気』が他の男性たちとは別格だった。

(これは…かなりおもてになる方ですね…)

苦笑しながら、目の前の騎士に何を占って欲しいか聞こうとしたその時、ヴェイラの脳裏にこれまでにない闇が過った。

「…あ…」

本来、本人の意思を聞いてから占うべきなのだが、それは身構える前に入ってきた。
ヴェイラは咄嗟に立ち上がってしまい、不思議そうに見上げてくるデュークを見降ろした。

その黒髪が一瞬、空色の髪に見えた。
背中に携わる白い翼の幻影が、黒く染まっていく。
真っすぐな青い瞳がこちらを捉えてくることが居た堪れない。

「…貴方は…数奇な運命を辿る人…。これまでも、これからも…。この先も、大いなる試練が待っている…どうか、闇に呑み込まれないで…」

それだけ言うと、ヴェイラは頭を下げ、立ち去って行く。
その場は一瞬、静けさに包まれた。

「え…どういうこと…?」

ヴェイラの謎の言葉に、フィンカナが呆然と返す。
背後では歓迎の楽団が登場したか、美しい音楽が奏でられ始めた。


~つづく~
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