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第三章
[第41話]世界の光
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「もう二日になりますね…」
朝日の射す寝所の天幕で、イオリギに髪を梳いてもらいながら、セルティアは眉根を寄せて呟いた。
サフォーネが気を失い、目覚めないまま二日が経とうとしている。
その言葉にイオリギも手を止めた。
「…初めてお話を伺いましたが…さぞ衝撃的な記憶だったことと存じます…。天真爛漫なサフォーネ様のお心に傷が残らねばいいのですが…」
イオリギは慣れた手つきでセルティアの髪を纏め終えると、道具を片付け一礼し、その場を後にする。
恐らくこの時間は洗濯の準備をしに行ったのだろう。
離れていくイオリギの気配を感じながら、セルティアは小さな調度品の引き出しを開け、聖殿から持参した香袋を取り出した。
荒れ野に野営所を構えて約一月。
聖殿での生活様式が無くとも、ここに馴染んできたのはこの香袋の存在も大きかった。
「好みの香りは人の心を癒してくれます…あの子の好きな香りが解れば…」
セルティアは徐ろに立ち上がると、寝所から手探りで主要天幕に向かった。
主要天幕では、ルシュアとアリューシャが、肩を落とすように中央の円卓に座っていた。
「参ったな…」
王都には一度連絡を入れた。
サフォーネが倒れ、最悪の場合、再生の力を失う可能性もあるかもしれない、と…。
しかし、力の喪失が決まった訳ではないと、祖人の王は各地での準備をやめさせようとすることは無かった。
「王様もサフォーネを信じてくれているのね」
「有難いことだが…もしも本当に再生の力を失うことになったら…」
アリューシャの言葉にルシュアが溜め息で返す。
これは蒼の聖殿の体裁という問題ではない。
世界に射した光が失われることになるのだ。
魔烟は減ることはない。
四半期の旅で駆除しても、大闇祓いを行ったとしても、永遠にこの戦いは続く。
しかし、再生の力があれば、その脅威が減るどころか、いつか本当に魔烟のない世界を創り出せるのではないか。
そう期待していたのだが…。
そこへ、主要天幕と隣接するサフォーネの寝所からナチュアが出てきた。
着替え終えた夜具を手に、辺りを見回しながら先程とは違う光景に首を傾げる。
「…あら?デューク様はどちらへ…?それに、ニルハとナコラは…もう帰ったのでしょうか?」
サフォーネの事情を知らず、今日も種植えの手伝いができると思っていた獣人族の子供たちは、トワの用事が終わるまでここで時間を持て余していたのだ。
「デュークならさっき、二人を連れて外に出ていったわよ?すぐ近くの林って言ってたけど」
アリューシャの言葉に、ナチュアは小さく息を吐いた。
「そうでしたか…サフォーネ様も心配ですが…デューク様は大丈夫なのでしょうか…」
ナチュアの言葉にルシュアとアリューシャも唸る。
一番心痛を抱えている筈のデュークに、思ったような動揺が見られないからであった。
「デュークなら大丈夫でしょう。あの子を信じているのでしょうね…」
突然の声に、皆驚いてそちらを見ると、手を彷徨わせながら簾を捲るセルティアがいた。
ルシュアは慌てて立ち上がると、その手を取る。
ナチュアも手にしていた夜具を置くと、セルティアの元に駆け寄った。
「セルティア様、お呼びくださればお迎えに行きましたのに…」
「…いえ、急に思い立ったもので…」
ルシュアに導かれて円卓に座ったセルティアはそう言うと、まだ使っていない香袋を懐から取り出した。
「ナチュア…サフォーネの好きな香りは判りますか?この香袋に、あの子の好きな香りを詰めて欲しいのですが…」
「…!…ありがとうございます!」
セルティアの配慮に、ナチュアは嬉しそうに頬を紅潮させながらそれを受け取った。
「サフォーネ様のお好きな香り…何がいいでしょう…」
ナチュアには思い当たる節がたくさんあるのか、何が一番最善なのか思案しているようだったが、それを見たルシュアが悪戯っぽく言った。
「そりゃ、デュークの香りか、食べ物の匂いがいいんじゃないか?一発で起きるだろうな」
「ちょっと、どっちも袋の中に詰められる訳ないでしょ」
アリューシャが返すと、天幕の中で久しぶりに笑いが起こった。
「以前、クエナの町でもらった石鹸の香りがお好きだと仰ってました…。確か荷物の中にまだ残っていますので、それを入れてみます」
ナチュアは一礼すると、再び夜具を手にして、イオリギの手伝いをするため、その場を去って行った。
「さて。サフォーネが起きた時に備えて、あたしたちもできることを考えましょうか」
「そうだな。デュークも呼んでこよう。ふたりはここで待っていてくれ」
ルシュアの言葉にアリューシャとセルティアが頷いた。
野営所から少し離れたところに、サフォネリアと同様に地中に根を張れる竹も植えられている。
その小さな竹林の近くに、デュークはニルハとナコラを連れてきていた。
「こんなのでいいのか?デューク」
「あぁ、充分だな。ちょっと待ってろ?」
ニルハとナコラが搾取してきた指ほどの細い竹を手にして、デュークは草むらに座り込んだ。
二人もそれを覗き込むように座り込む。
デュークは短剣を取り出すと、1本の竹から様々な長さを作り出した。
どれも掌に収まるくらいの長さで、それぞれ中の節をくり抜き、筒の部分に息を吹きかけて音を鳴らすと、乾いた音色が響いた。
「綺麗な音…」
「すげーな」
何度も竹に息を吹き込み、音を確かめながら長さを調節すると、デュークは麻糸で7本の竹を纏め、笛を完成させた。
「デューク、こんなところで何してるんだ」
ルシュアがやってきたのとすれ違いに、ニルハとナコラはそれぞれ作ってもらった笛を大事そうに抱えながら、トワの元へ走っていった。
「せっかく手伝いにきてくれたのに、サフォーネが眠ったままだからな…笛を作ってやったんだ」
「…お前…よく冷静でいられるな」
何よりもサフォーネの身を案じているデュークの想像もできない行動に、ルシュアは呆れるような感情を乗せて言葉にした。
その声に笑いを誘われたデュークは、小さく笑みを浮かべると静かに語り出した。
「記憶の中の母親の行動が例え赦されないことだとしても、サフォーネは俺と違って、母親の愛を知っている…。それは揺るぎないものだから、きっと大丈夫だ…」
そう言って立ち上がると、一つ余計に作った笛を片手に、デュークは天幕へと戻って行く。
ルシュアはその背を見送りながら、セルティアの言葉を思い出していた。
「確かに…サフォーネのことを信じているのだろうが…」
だが、大切に思っている者があのような事態になったら…。
自分がどれだけ冷静でいられるか、想像はつかなかった。
ルシュアは静かな溜息を落とすと、サフォーネの力で甦った草地を眺めた。
「デュークお帰りなさい。ルシュアと会った?」
戻ってきたデュークにアリューシャが声を掛けると「あぁ」と短い返事と笑顔が返ってきた。
天幕内を横切り、サフォーネの寝所にまっすぐ向かう様子に、アリューシャはそのまま見守ることにした。
セルティアも静かに微笑んで小さく頷く。
デュークが寝所の簾を上げようとするのと、ナチュアが出てくるのは同時だった。
「あ、デューク様…今、サフォーネ様の枕元に、セルティア様から頂いた『香袋』をお持ちしたんです。とても良い香りで…きっと穏やかな夢を見られるはずです」
「…そうか、ありがとう。セルティア様にも礼を言わないとな…」
静かに寝所に入って行くデュークを、ナチュアは微笑みで返した。
サフォーネは微動だにせず、横たわっている。
デュークはその枕元に椅子を用意した。
「サフォーネ…俺はお前を信じてる。お前は、お前自身を信じるんだ…。お前が産まれた意味。それを一番喜んだのは、愛してくれたのは、お前の母親なんだからな」
語り掛けても反応のないサフォーネの髪を軽く撫でると、デュークは椅子に腰掛け、手にしていた笛を静かに吹き出した。
暗闇の中に聞こえる赤ん坊の泣き声。
それが自身の声だと分かっている。
自分を包む優しい腕が少しずつ冷たくなって、温かい水滴が自分の頬に落ちた記憶が微かにある。
いつも暖かい光に包まれていた。
いつも何かに護られていた。
その揺るぎない感触は、自分がそこに居てもいいんだと思わせてくれた。
ときどき、人から冷たい仕打ちを受けても、生き抜くことだけを考えた。
いつか、あの時助けてくれた声の人に会うまで…。
サフォーネはゆっくりと瞳を開けた。
仄かに懐かしい石鹸の香り。
耳に届く風の音色。
その傍らにいる人を見つけて小さく微笑んだ。
「…デューク…きれいなおと…それ…サフォもやりたい…」
その声にはっとなって、デュークは笛を吹くのをやめた。
そこには、いつもと変わらぬ笑顔のサフォーネがいる。
「…サフォ…」
知らずに涙が溢れ、デュークは横たわるサフォーネを抱きしめた。
されるがままに、デュークの静かな嗚咽を耳にしながら、サフォーネはまだ夢を見ているように呆けていたが、その手にあった笛を見つけると手を伸ばした。
受け取った笛を見様見真似で吹いてみる。
しかし、空気が抜ける音しか出ず、サフォーネは顔をしかめた。
「これ、むずかしい…」
「…大丈夫だ、教えてやる。すぐに巧く吹けるようになるから…」
「ほんと…?」
嬉しそうに笑うサフォーネの声が届いたか、簾の向こうからナチュアとアリューシャが飛び込んできた。
「サフォーネ様…?」
「…よかった…目が覚めたのね」
二人の顔を見るのが久しぶりな気がして、サフォーネは嬉しそうに笑って一言返した。
「…ただいま」
「まったく…心配したが…何も変わりはないようだな?」
起きた後、たらふく食事をとったサフォーネが以前と変わらない様子に、ルシュアが胸を撫でおろす。
セルティアも深く頷いた。
「そうですね。心の穏やかさも何一つ、以前と変わっていないように思えますよ」
「記憶が戻らなかった、ということか…?」
「いや、思い出している。それでいて、全て受け入れたんだ、あいつは…」
あの炎の中、サフォーネに向かって叫んだ声は、しっかりと届いていた。
サフォーネ自身、その声の主をはっきりと認めることができた。
もう隠す必要もない。
再生の力に変化もなく、その後も種づくりは順調に続けられた。
小人の家の焼け跡には、サフォーネが咲かせた花が手向けられ、皆で祈りを捧げてその魂を弔った。
荒れ野は確実に緑が定着していき、その様子を眺めたいと、リゾルの村から他の獣人たちも訪れるようになった。
長老のヤヌも訪ねてくると、サフォーネに向かって頭を下げた。
「あなた様のお力は我々人類の希望です。あなた様にお仕えすべく、我が村からトワを送りますので、どうか役立たせてやってください」
咲き誇る花たちの中、トワがサフォーネに誓いを立てるように膝を付いて頭を下げた。
静かな笑顔で返すサフォーネの元に、子やぎを連れたニルハとナコラが近寄ってきた。
「おいらたちは行けないんだ…」
「成人するまでは、駄目なんですって」
「メンメの世話もあるしな…それに、ここを兄ちゃんの代わりに護っていかないと…」
寂しそうだが、すっかり納得してのことか、二人は笑顔で話した。
間もなくして、王都から大陸の主要都市の準備が整ったとの連絡が入ると、アリューシャは精霊石を使って、その奇跡の景色を届けた。
王都には予め、精霊石を用意できない小国や町の代表が集められていた。
街の広場や集会所でその奇跡が伝えられると、驚きと共にすぐに崇める者が出てきた。
中には「これはまやかしだ」と疑う者もいたが、近く三日月湖に『再生の舘』が設けられ、そこで誰もがその種を受け取れると聞くと、試してやろうと活気づいた。
その様子を祖人の王は王城のテラスから眺め、人々の反応を確かめると、満足した笑みを浮かべた。
「いよいよだな…」
世界を射す光が確かなものになった。
王は城内に入ると、次の工程に移るようフノラや幹部の者たちに指示を出した。
クエナの町の中央広場には巨大な白壁が用意され、この景色が映し出されると、町の人々は多いに盛り上がった。
衣服店の主人は、「再生の天使様に相応しい衣を仕立てよう」と張り切り始め、散髪屋の主人も自慢の髪用石鹸を献上しようと準備に取り掛かる。
「すごいや…これ、サフォがやったんですね…」
「そのようだな…」
メルクロは、映像で届けられるデュークとサフォーネの姿に、嬉しそうに何度も頷いた。
(オレも負けてられない)
ミューはあの日、萎れかけていた黄色い花が甦ったのを、サフォーネが立ち去ったあとに気がついた。
大陸中に讃えられ、人々の役に立てるサフォーネを羨ましく、誇らしく思いながら、ミューは自身の夢に向かって邁進しようと誓った。
光、蒼、緑の各聖殿は、この日のために、全員が待機するように言われていた。
蒼の聖殿では大広間に張られた白い大きな布に、精霊石の映像が映し出されている。
長やババ様、長老たちを始め、一同に揃った騎士や天使たちはその光景に息を呑んだ。
「サフォーネの力…こういうことだったのね…」
「……」
トハーチェが納得したように頷いた。
クローヌは驚きが隠せない様子で言葉を失っている。
『サフォーネを護る会』の若い騎士たちは、誇らしげに頬を紅潮させ、他の騎士や天使たちの反応を伺っている。
その傍らで、『デュークを応援する会』の三人娘たちは、久しぶりに見るデュークの姿に違う盛り上がりを見せていた。
「なるほど、確かにこれは大陸中を揺るがす出来事だな」
ワグナが唸ると、同じく総隊長の留守を預かっているセンゲルも頷く。
四半期の旅で大怪我を負ったエンドレも、妹のエルーレに支えられながらその光景を目の当たりにした。
皆が騒然とする中、エターニャが口を開く。
「再生の館が完成するまでは、この蒼の聖殿の補佐が必要になるでしょう。ルシュアが戻り次第、そちらの計画も進める予定です。皆、頼みましたよ」
その言葉に一同は静かに頭を下げた。
一方、緑の聖都にもこの映像が届けられ、大騒ぎとなっていた。
聖殿内はもちろん、貴族の集会所、公の施設など、各所で精霊石を反射させる幕が用意され、多くの民たちがこの事実を目撃する。
蔦の家に居たリマノラの侍女は、近くの広場でこの光景を目にしていた。
「…あぁ、なんということでしょう。本当にこれほどまでお嬢様に生き写しだなんて…」
侍女は、一目でサフォーネがリマノラの子だと分かると、止まらない涙を拭いながら、その姿を目に焼き付けていた。
(お嬢様のお子が世界を救うことになるなら…これで皆様も報われるでしょう…)
規則を破って宿した異端の子。
その為に命を落としたと思われた主たちを、周囲もいつか認めてくれるだろう。
侍女はようやく心が決まったと、蔦の家を去ることにした。
光の聖都に住む貴族たちは、宴を催している最中にこの知らせを耳にした。
以前より、重要な知らせがあるため待機せよ、という通達は受けていたが、宴に参加して自身の立場を護ることが、貴族にとっては何よりも最優先されていた。
宴とは、主催側も招待側もその威信を掛ける大事なものなのだ。
知らせを持ってきた給仕係から、『羽根人の中に再生の力という新たな力が見つかり、王都の認可になった』と聞かされた貴族たちは、映像が用意されているという広間に向かう。
「王都からの重要な通達とはこのことだったのですね」
「それにしても素晴らしい…そのような力を発揮させるとは、どういった家柄の出身なのか」
皆、期待に胸を膨らませ、その映像を確認すると、大半の貴族たちが愕然とした。
「…!まぁ、なんと言うこと…あの髪をご覧になって…まさか異端の羽根人が…?」
「信じられない…王都が認める名誉ある力を異端の者が…?」
「あら…?その近くにいる黒髪の騎士は…」
「…しっ」
貴族たちの好奇の目の中、その映像に釘付けになりながら、手布を握りしめ、拳を震わせる銀髪の貴婦人がいた。
その夫と思われる紳士が、貴婦人の視線の先に映る黒髪の青年を見て言葉を切り出した。
「シェーラ、あれは…」
「なんとおぞましい…異端の羽根人が起こした奇跡など、何か呪わしいことが起きるに違いありませんわ」
シェーラケルトは、そう言い捨てると、足早に宴の席を後にする。
夫も後を追おうとしたが、主催者であるウォーレリーガに呼び止められた。
「これはこれは、イリック殿。ご覧になりましたか。あれはひょっとして…」
「ウォーレ殿…その話は妻の心労が重なるため、控えて頂きたい…今日はこれで失礼する…」
イリックリーガはそう言って一礼し、その場から逃げるように去って行く。
ウォーレはその様子に「ふん」と鼻を鳴らした。
「まったく…我々嶌族の中に異端の出生があるとは…困ったものだ」
ウォーレの言葉を受けて、近くにいたひとりの貴族が口を挟む。
「しかし、イリック様はずっとご子息の消息を探されていたとか…。再び蒼の聖殿入りを知った時は喜んでおられたとも聞いていますが…」
「…なるほどな。彼の真意はそうだとしても、夫人には頭が上がらんのだろう…。異端の一族とは悲しいものだな」
貴族たちの宴はその後も続けられた。
彼らが目にした『再生の力』は、その時は興味をそそられたものの、自分たちには大して関わりのないことと判断されたか、その後の宴の話題に上ることは無かった。
「これで、大陸中にこの力の存在を届けられたな」
「あぁ、そうだな…」
ルシュアがデュークの元にやってきて語りかけると、簡単な答えが返ってくる。
光の聖都の貴族たちにも、この状況は漏れなく知らされる筈だ。
だが、両親の元に届いたとて、何の期待もしていない様子に、ルシュアはデュークの肩を軽く叩いた。
奇跡の映像を届け終えると、示し合わせたように皆集まってきた。
イオリギに手を引かれたセルティアは安堵の笑みを浮かべ、精霊石を布に包んでいるアリューシャの傍らに並んだ。
ナチュアにストールを掛けさせてもらったサフォーネが、デュークのもとに駆け寄ってその手を繋ぐ。
皆の顔が晴れ晴れとしていた。
「皆ご苦労だったな。これでこの旅も終わりだ。私たちの聖殿へ帰ろう」
ルシュアがそう呼び掛けると、全員が静かに頷いた。
~つづく~
朝日の射す寝所の天幕で、イオリギに髪を梳いてもらいながら、セルティアは眉根を寄せて呟いた。
サフォーネが気を失い、目覚めないまま二日が経とうとしている。
その言葉にイオリギも手を止めた。
「…初めてお話を伺いましたが…さぞ衝撃的な記憶だったことと存じます…。天真爛漫なサフォーネ様のお心に傷が残らねばいいのですが…」
イオリギは慣れた手つきでセルティアの髪を纏め終えると、道具を片付け一礼し、その場を後にする。
恐らくこの時間は洗濯の準備をしに行ったのだろう。
離れていくイオリギの気配を感じながら、セルティアは小さな調度品の引き出しを開け、聖殿から持参した香袋を取り出した。
荒れ野に野営所を構えて約一月。
聖殿での生活様式が無くとも、ここに馴染んできたのはこの香袋の存在も大きかった。
「好みの香りは人の心を癒してくれます…あの子の好きな香りが解れば…」
セルティアは徐ろに立ち上がると、寝所から手探りで主要天幕に向かった。
主要天幕では、ルシュアとアリューシャが、肩を落とすように中央の円卓に座っていた。
「参ったな…」
王都には一度連絡を入れた。
サフォーネが倒れ、最悪の場合、再生の力を失う可能性もあるかもしれない、と…。
しかし、力の喪失が決まった訳ではないと、祖人の王は各地での準備をやめさせようとすることは無かった。
「王様もサフォーネを信じてくれているのね」
「有難いことだが…もしも本当に再生の力を失うことになったら…」
アリューシャの言葉にルシュアが溜め息で返す。
これは蒼の聖殿の体裁という問題ではない。
世界に射した光が失われることになるのだ。
魔烟は減ることはない。
四半期の旅で駆除しても、大闇祓いを行ったとしても、永遠にこの戦いは続く。
しかし、再生の力があれば、その脅威が減るどころか、いつか本当に魔烟のない世界を創り出せるのではないか。
そう期待していたのだが…。
そこへ、主要天幕と隣接するサフォーネの寝所からナチュアが出てきた。
着替え終えた夜具を手に、辺りを見回しながら先程とは違う光景に首を傾げる。
「…あら?デューク様はどちらへ…?それに、ニルハとナコラは…もう帰ったのでしょうか?」
サフォーネの事情を知らず、今日も種植えの手伝いができると思っていた獣人族の子供たちは、トワの用事が終わるまでここで時間を持て余していたのだ。
「デュークならさっき、二人を連れて外に出ていったわよ?すぐ近くの林って言ってたけど」
アリューシャの言葉に、ナチュアは小さく息を吐いた。
「そうでしたか…サフォーネ様も心配ですが…デューク様は大丈夫なのでしょうか…」
ナチュアの言葉にルシュアとアリューシャも唸る。
一番心痛を抱えている筈のデュークに、思ったような動揺が見られないからであった。
「デュークなら大丈夫でしょう。あの子を信じているのでしょうね…」
突然の声に、皆驚いてそちらを見ると、手を彷徨わせながら簾を捲るセルティアがいた。
ルシュアは慌てて立ち上がると、その手を取る。
ナチュアも手にしていた夜具を置くと、セルティアの元に駆け寄った。
「セルティア様、お呼びくださればお迎えに行きましたのに…」
「…いえ、急に思い立ったもので…」
ルシュアに導かれて円卓に座ったセルティアはそう言うと、まだ使っていない香袋を懐から取り出した。
「ナチュア…サフォーネの好きな香りは判りますか?この香袋に、あの子の好きな香りを詰めて欲しいのですが…」
「…!…ありがとうございます!」
セルティアの配慮に、ナチュアは嬉しそうに頬を紅潮させながらそれを受け取った。
「サフォーネ様のお好きな香り…何がいいでしょう…」
ナチュアには思い当たる節がたくさんあるのか、何が一番最善なのか思案しているようだったが、それを見たルシュアが悪戯っぽく言った。
「そりゃ、デュークの香りか、食べ物の匂いがいいんじゃないか?一発で起きるだろうな」
「ちょっと、どっちも袋の中に詰められる訳ないでしょ」
アリューシャが返すと、天幕の中で久しぶりに笑いが起こった。
「以前、クエナの町でもらった石鹸の香りがお好きだと仰ってました…。確か荷物の中にまだ残っていますので、それを入れてみます」
ナチュアは一礼すると、再び夜具を手にして、イオリギの手伝いをするため、その場を去って行った。
「さて。サフォーネが起きた時に備えて、あたしたちもできることを考えましょうか」
「そうだな。デュークも呼んでこよう。ふたりはここで待っていてくれ」
ルシュアの言葉にアリューシャとセルティアが頷いた。
野営所から少し離れたところに、サフォネリアと同様に地中に根を張れる竹も植えられている。
その小さな竹林の近くに、デュークはニルハとナコラを連れてきていた。
「こんなのでいいのか?デューク」
「あぁ、充分だな。ちょっと待ってろ?」
ニルハとナコラが搾取してきた指ほどの細い竹を手にして、デュークは草むらに座り込んだ。
二人もそれを覗き込むように座り込む。
デュークは短剣を取り出すと、1本の竹から様々な長さを作り出した。
どれも掌に収まるくらいの長さで、それぞれ中の節をくり抜き、筒の部分に息を吹きかけて音を鳴らすと、乾いた音色が響いた。
「綺麗な音…」
「すげーな」
何度も竹に息を吹き込み、音を確かめながら長さを調節すると、デュークは麻糸で7本の竹を纏め、笛を完成させた。
「デューク、こんなところで何してるんだ」
ルシュアがやってきたのとすれ違いに、ニルハとナコラはそれぞれ作ってもらった笛を大事そうに抱えながら、トワの元へ走っていった。
「せっかく手伝いにきてくれたのに、サフォーネが眠ったままだからな…笛を作ってやったんだ」
「…お前…よく冷静でいられるな」
何よりもサフォーネの身を案じているデュークの想像もできない行動に、ルシュアは呆れるような感情を乗せて言葉にした。
その声に笑いを誘われたデュークは、小さく笑みを浮かべると静かに語り出した。
「記憶の中の母親の行動が例え赦されないことだとしても、サフォーネは俺と違って、母親の愛を知っている…。それは揺るぎないものだから、きっと大丈夫だ…」
そう言って立ち上がると、一つ余計に作った笛を片手に、デュークは天幕へと戻って行く。
ルシュアはその背を見送りながら、セルティアの言葉を思い出していた。
「確かに…サフォーネのことを信じているのだろうが…」
だが、大切に思っている者があのような事態になったら…。
自分がどれだけ冷静でいられるか、想像はつかなかった。
ルシュアは静かな溜息を落とすと、サフォーネの力で甦った草地を眺めた。
「デュークお帰りなさい。ルシュアと会った?」
戻ってきたデュークにアリューシャが声を掛けると「あぁ」と短い返事と笑顔が返ってきた。
天幕内を横切り、サフォーネの寝所にまっすぐ向かう様子に、アリューシャはそのまま見守ることにした。
セルティアも静かに微笑んで小さく頷く。
デュークが寝所の簾を上げようとするのと、ナチュアが出てくるのは同時だった。
「あ、デューク様…今、サフォーネ様の枕元に、セルティア様から頂いた『香袋』をお持ちしたんです。とても良い香りで…きっと穏やかな夢を見られるはずです」
「…そうか、ありがとう。セルティア様にも礼を言わないとな…」
静かに寝所に入って行くデュークを、ナチュアは微笑みで返した。
サフォーネは微動だにせず、横たわっている。
デュークはその枕元に椅子を用意した。
「サフォーネ…俺はお前を信じてる。お前は、お前自身を信じるんだ…。お前が産まれた意味。それを一番喜んだのは、愛してくれたのは、お前の母親なんだからな」
語り掛けても反応のないサフォーネの髪を軽く撫でると、デュークは椅子に腰掛け、手にしていた笛を静かに吹き出した。
暗闇の中に聞こえる赤ん坊の泣き声。
それが自身の声だと分かっている。
自分を包む優しい腕が少しずつ冷たくなって、温かい水滴が自分の頬に落ちた記憶が微かにある。
いつも暖かい光に包まれていた。
いつも何かに護られていた。
その揺るぎない感触は、自分がそこに居てもいいんだと思わせてくれた。
ときどき、人から冷たい仕打ちを受けても、生き抜くことだけを考えた。
いつか、あの時助けてくれた声の人に会うまで…。
サフォーネはゆっくりと瞳を開けた。
仄かに懐かしい石鹸の香り。
耳に届く風の音色。
その傍らにいる人を見つけて小さく微笑んだ。
「…デューク…きれいなおと…それ…サフォもやりたい…」
その声にはっとなって、デュークは笛を吹くのをやめた。
そこには、いつもと変わらぬ笑顔のサフォーネがいる。
「…サフォ…」
知らずに涙が溢れ、デュークは横たわるサフォーネを抱きしめた。
されるがままに、デュークの静かな嗚咽を耳にしながら、サフォーネはまだ夢を見ているように呆けていたが、その手にあった笛を見つけると手を伸ばした。
受け取った笛を見様見真似で吹いてみる。
しかし、空気が抜ける音しか出ず、サフォーネは顔をしかめた。
「これ、むずかしい…」
「…大丈夫だ、教えてやる。すぐに巧く吹けるようになるから…」
「ほんと…?」
嬉しそうに笑うサフォーネの声が届いたか、簾の向こうからナチュアとアリューシャが飛び込んできた。
「サフォーネ様…?」
「…よかった…目が覚めたのね」
二人の顔を見るのが久しぶりな気がして、サフォーネは嬉しそうに笑って一言返した。
「…ただいま」
「まったく…心配したが…何も変わりはないようだな?」
起きた後、たらふく食事をとったサフォーネが以前と変わらない様子に、ルシュアが胸を撫でおろす。
セルティアも深く頷いた。
「そうですね。心の穏やかさも何一つ、以前と変わっていないように思えますよ」
「記憶が戻らなかった、ということか…?」
「いや、思い出している。それでいて、全て受け入れたんだ、あいつは…」
あの炎の中、サフォーネに向かって叫んだ声は、しっかりと届いていた。
サフォーネ自身、その声の主をはっきりと認めることができた。
もう隠す必要もない。
再生の力に変化もなく、その後も種づくりは順調に続けられた。
小人の家の焼け跡には、サフォーネが咲かせた花が手向けられ、皆で祈りを捧げてその魂を弔った。
荒れ野は確実に緑が定着していき、その様子を眺めたいと、リゾルの村から他の獣人たちも訪れるようになった。
長老のヤヌも訪ねてくると、サフォーネに向かって頭を下げた。
「あなた様のお力は我々人類の希望です。あなた様にお仕えすべく、我が村からトワを送りますので、どうか役立たせてやってください」
咲き誇る花たちの中、トワがサフォーネに誓いを立てるように膝を付いて頭を下げた。
静かな笑顔で返すサフォーネの元に、子やぎを連れたニルハとナコラが近寄ってきた。
「おいらたちは行けないんだ…」
「成人するまでは、駄目なんですって」
「メンメの世話もあるしな…それに、ここを兄ちゃんの代わりに護っていかないと…」
寂しそうだが、すっかり納得してのことか、二人は笑顔で話した。
間もなくして、王都から大陸の主要都市の準備が整ったとの連絡が入ると、アリューシャは精霊石を使って、その奇跡の景色を届けた。
王都には予め、精霊石を用意できない小国や町の代表が集められていた。
街の広場や集会所でその奇跡が伝えられると、驚きと共にすぐに崇める者が出てきた。
中には「これはまやかしだ」と疑う者もいたが、近く三日月湖に『再生の舘』が設けられ、そこで誰もがその種を受け取れると聞くと、試してやろうと活気づいた。
その様子を祖人の王は王城のテラスから眺め、人々の反応を確かめると、満足した笑みを浮かべた。
「いよいよだな…」
世界を射す光が確かなものになった。
王は城内に入ると、次の工程に移るようフノラや幹部の者たちに指示を出した。
クエナの町の中央広場には巨大な白壁が用意され、この景色が映し出されると、町の人々は多いに盛り上がった。
衣服店の主人は、「再生の天使様に相応しい衣を仕立てよう」と張り切り始め、散髪屋の主人も自慢の髪用石鹸を献上しようと準備に取り掛かる。
「すごいや…これ、サフォがやったんですね…」
「そのようだな…」
メルクロは、映像で届けられるデュークとサフォーネの姿に、嬉しそうに何度も頷いた。
(オレも負けてられない)
ミューはあの日、萎れかけていた黄色い花が甦ったのを、サフォーネが立ち去ったあとに気がついた。
大陸中に讃えられ、人々の役に立てるサフォーネを羨ましく、誇らしく思いながら、ミューは自身の夢に向かって邁進しようと誓った。
光、蒼、緑の各聖殿は、この日のために、全員が待機するように言われていた。
蒼の聖殿では大広間に張られた白い大きな布に、精霊石の映像が映し出されている。
長やババ様、長老たちを始め、一同に揃った騎士や天使たちはその光景に息を呑んだ。
「サフォーネの力…こういうことだったのね…」
「……」
トハーチェが納得したように頷いた。
クローヌは驚きが隠せない様子で言葉を失っている。
『サフォーネを護る会』の若い騎士たちは、誇らしげに頬を紅潮させ、他の騎士や天使たちの反応を伺っている。
その傍らで、『デュークを応援する会』の三人娘たちは、久しぶりに見るデュークの姿に違う盛り上がりを見せていた。
「なるほど、確かにこれは大陸中を揺るがす出来事だな」
ワグナが唸ると、同じく総隊長の留守を預かっているセンゲルも頷く。
四半期の旅で大怪我を負ったエンドレも、妹のエルーレに支えられながらその光景を目の当たりにした。
皆が騒然とする中、エターニャが口を開く。
「再生の館が完成するまでは、この蒼の聖殿の補佐が必要になるでしょう。ルシュアが戻り次第、そちらの計画も進める予定です。皆、頼みましたよ」
その言葉に一同は静かに頭を下げた。
一方、緑の聖都にもこの映像が届けられ、大騒ぎとなっていた。
聖殿内はもちろん、貴族の集会所、公の施設など、各所で精霊石を反射させる幕が用意され、多くの民たちがこの事実を目撃する。
蔦の家に居たリマノラの侍女は、近くの広場でこの光景を目にしていた。
「…あぁ、なんということでしょう。本当にこれほどまでお嬢様に生き写しだなんて…」
侍女は、一目でサフォーネがリマノラの子だと分かると、止まらない涙を拭いながら、その姿を目に焼き付けていた。
(お嬢様のお子が世界を救うことになるなら…これで皆様も報われるでしょう…)
規則を破って宿した異端の子。
その為に命を落としたと思われた主たちを、周囲もいつか認めてくれるだろう。
侍女はようやく心が決まったと、蔦の家を去ることにした。
光の聖都に住む貴族たちは、宴を催している最中にこの知らせを耳にした。
以前より、重要な知らせがあるため待機せよ、という通達は受けていたが、宴に参加して自身の立場を護ることが、貴族にとっては何よりも最優先されていた。
宴とは、主催側も招待側もその威信を掛ける大事なものなのだ。
知らせを持ってきた給仕係から、『羽根人の中に再生の力という新たな力が見つかり、王都の認可になった』と聞かされた貴族たちは、映像が用意されているという広間に向かう。
「王都からの重要な通達とはこのことだったのですね」
「それにしても素晴らしい…そのような力を発揮させるとは、どういった家柄の出身なのか」
皆、期待に胸を膨らませ、その映像を確認すると、大半の貴族たちが愕然とした。
「…!まぁ、なんと言うこと…あの髪をご覧になって…まさか異端の羽根人が…?」
「信じられない…王都が認める名誉ある力を異端の者が…?」
「あら…?その近くにいる黒髪の騎士は…」
「…しっ」
貴族たちの好奇の目の中、その映像に釘付けになりながら、手布を握りしめ、拳を震わせる銀髪の貴婦人がいた。
その夫と思われる紳士が、貴婦人の視線の先に映る黒髪の青年を見て言葉を切り出した。
「シェーラ、あれは…」
「なんとおぞましい…異端の羽根人が起こした奇跡など、何か呪わしいことが起きるに違いありませんわ」
シェーラケルトは、そう言い捨てると、足早に宴の席を後にする。
夫も後を追おうとしたが、主催者であるウォーレリーガに呼び止められた。
「これはこれは、イリック殿。ご覧になりましたか。あれはひょっとして…」
「ウォーレ殿…その話は妻の心労が重なるため、控えて頂きたい…今日はこれで失礼する…」
イリックリーガはそう言って一礼し、その場から逃げるように去って行く。
ウォーレはその様子に「ふん」と鼻を鳴らした。
「まったく…我々嶌族の中に異端の出生があるとは…困ったものだ」
ウォーレの言葉を受けて、近くにいたひとりの貴族が口を挟む。
「しかし、イリック様はずっとご子息の消息を探されていたとか…。再び蒼の聖殿入りを知った時は喜んでおられたとも聞いていますが…」
「…なるほどな。彼の真意はそうだとしても、夫人には頭が上がらんのだろう…。異端の一族とは悲しいものだな」
貴族たちの宴はその後も続けられた。
彼らが目にした『再生の力』は、その時は興味をそそられたものの、自分たちには大して関わりのないことと判断されたか、その後の宴の話題に上ることは無かった。
「これで、大陸中にこの力の存在を届けられたな」
「あぁ、そうだな…」
ルシュアがデュークの元にやってきて語りかけると、簡単な答えが返ってくる。
光の聖都の貴族たちにも、この状況は漏れなく知らされる筈だ。
だが、両親の元に届いたとて、何の期待もしていない様子に、ルシュアはデュークの肩を軽く叩いた。
奇跡の映像を届け終えると、示し合わせたように皆集まってきた。
イオリギに手を引かれたセルティアは安堵の笑みを浮かべ、精霊石を布に包んでいるアリューシャの傍らに並んだ。
ナチュアにストールを掛けさせてもらったサフォーネが、デュークのもとに駆け寄ってその手を繋ぐ。
皆の顔が晴れ晴れとしていた。
「皆ご苦労だったな。これでこの旅も終わりだ。私たちの聖殿へ帰ろう」
ルシュアがそう呼び掛けると、全員が静かに頷いた。
~つづく~
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