サフォネリアの咲く頃

水星直己

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第三章

[第40話]奇跡の荒れ野

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大陸の最東端に位置する王都は、年間を通して穏やかな気候が多い。
しかし今年の冬は寒さが厳しく、この数日、都は珍しく雪に包まれていた。

続く悪天候に、年明けに予定していた数々の屋外行事が中止となった祖人の王は、城内での職務が増えていた。
謁見、会議、各地報告書類の通覧…。
特に謁見が増えると、余計な気苦労も耐えない。
それは側近のフノラにも言えることで、一芝居打ちながらの国策は相当な神経が張り巡らされる。

「このようなことなら、言葉は話せる、ということにしておけば良かったか…?そなたにも苦労をかけるな」

王の言葉にフノラは静かに笑みを浮かべた。

「祖人と羽根人では、声の質に違いがあるそうです。私などには分かりませんが、エルフや小人、獣人族にはその違いが分かるとか…。ただでさえ、羽根人同士では正体も隠せないのに、これ以上噂が拡がるのを防ぐには、声を発しないのは妥当な策かと…。それに、私はこの立場を苦痛と感じたことはございません」

「…そうか」

祖人の王になって以来、側近として仕えることになったフノラは、日々の激務に不平を言うでもなく、献身的に務めてくれる。
それに感謝するように王は静かに返した。


その日、午前中の謁見を終えた王は、自室に戻って覆面を外し、執務机に積まれた書類に目を通しながら、深く溜め息を落とした。

「あれから報告が途絶えているようだが、私の不在の間に連絡は無かったか…?」

王の自室への出入りを許されるのは、その事情を知る幹部の者だけ。
飲み物を用意してきたフノラに、王は直接言葉をかけた。

「…先程確認しましたが、連絡はまだ無いようです。やはり、あの荒れ野に緑を芽吹かせるなど、無理な話なのでは無いでしょうか…」

「…うむ…だが……いや、結果を待つしかないな」

「……」

あの時の謁見で、赤髪の羽根人が王にとって特別な関わりがあるのは解っている。
だがフノラは、その関係を明確に知りたいとも思わなかった。
フノラにとって、王が羽根人の頃の記憶に囚われるのは心穏やかではない。
それは王都の国政に携わる身であると共に、王への想いもあるからだ。

(全く…あの羽根人たちのせいで、王の心が乱される…。私にとっては只の厄介事でしかないのですが…)

そう思いつつも、王の落胆ぶりを見ると複雑になる。

フノラは隣の部屋に続く扉を見つめた。
普段そこは王の正体を知る幹部たちで重要な会議を行う部屋となっているが、今回のために術師たちが交代制で、精霊石の番を行っている。

王は昼夜問わず、その扉を気にしているようで、睡眠も儘ならないのだろう。
最近の忙しさも相まって、左目の下に隈ができているのが見てとれた。

「それよりも…お疲れではないですか?次の謁見まで時間もございます。少しお休みになられては…?」

「…うむ…」

その時、扉の向こうが騒がしくなった。
続いて、術師頭のイエシェの声が扉越しに届く。

「王よ。申し上げます。西の荒れ野から一報です。それから、信じられない光景が…」

その声に王は立ち上がり、隣室に近づいて扉を開けようとしたところ、フノラに止められた。
その手には先ほど外した覆面が掲げられている。

「イエシェだけだ。必要ない」

術師頭も王の事情を知る者のひとりで、王が部屋に入る際は他の術師たちは人払いされることになっている。

「王よ。いかなるときもお心乱さぬよう。間違いなく、荒れ野に何かあったのでしょう。あちらの巫女に王のご尊顔を露にする訳には…」

「!…そうであったな…。…すまない」

冷静なフノラの言葉に我に返る。
覆面を受け取り、装着した王は扉を開けた。
そこには頭を垂れ、控えている術師頭がいた。

間もなく80歳になろうという術師頭のイエシェは占術にも長け、今の王の選出を勧めた人物のひとりである。
猫背をさらに丸くするように、王の入室と共にさらに頭を下げた。

「何か変化があったのか?」

「はい…まずはこちらを…」

そう言って、イエシェは王を精霊石の前まで誘導するように数歩後ずさった。

「…これは…」

精霊石の水晶玉を覗きこんだ王は瞳を見開いた。

『…あ、王様?…どうかしら。この景色見えます?』

聞こえてきた声は、頭に翼を携えた精霊の巫女か…。

水晶玉の中には、季節を先走った花たちが咲き誇る風景が広がっていた。
アブラナ、ネモフィナ、芝桜…。
何も遮る物がない冬の薄灰色の空と、広い大地を埋め尽くす色とりどりの花の組み合わせは、本来あり得ない光景であるが、それこそが奇跡が起こった証だった。

「あぁ、見えるとも…まさか、本当にここまでのことを…」

『祖人の王よ。これが再生の力です』

声と共に風景が移動すると、そこに映ったのは、こちらに向かって頭を垂れている蒼の騎士団総隊長の姿だった。
ルシュアは顔を上げると言葉を続けた。

『このサフォーネの力をどうかお認め頂き、大陸中に広める許可を頂けないでしょうか』

アリューシャは、手にしている精霊石を高く掲げた。
そこには咲き誇る花畑の中、自然の声に耳を傾けているサフォーネの姿があった。
その傍を黒髪の青年が見守るように立っている。
自然の淡い色合いの中に、赤と黒の鮮烈な存在が一段と際立っていた。

異端と憎んだ羽根人が成し遂げた偉業に、王は知らずに目頭が熱くなる。

「…認めよう。その力を…。そしてこれより、大陸中にそれを知らしめることにしよう」

王の言葉に、アリューシャとルシュアから喜びの吐息が漏れた。
しかしそこに、術師頭とフノラが口を挟んできた。

「恐れながら…大陸中に知らしめる、というのは…?」

「この状況を言葉で伝えても信憑性は難しいでしょうね…一体どうやって…」

その言葉を聞いて、荒れ野にいるアリューシャは「待ってました」と言わんばかりに胸を張った。

『それなんだけど、ひとつ試してもらいたいことがあるの。王様の部屋に鏡はあるかしら?』

「…鏡?…あぁ、あるが…」

『それに精霊石の映像を反射させて、壁に映し出すことってできます?』

「…!」

その言葉がどういうことか、祖人の王も理解したようで、すぐにフノラに準備させた。
アリューシャの言う通りに、精霊石の映像が映るような場所に鏡を配置し、角度を変えて部屋の壁に反射させてみる。

「!…映し出せますわ!」

「なるほど…これを応用すれば…」

『精霊石は各聖殿には必ずあるし、あとは主要都市にいくつか用意すれば、この景色を直接届けられるわ。そして、鏡の反射を使って、街の中の壁に映し出せば…。鏡と反射させる壁なら、精霊石と違ってすぐに用意できるでしょ?あとは大きさも大事ね。大きいものであればあるほど、多くの人の目に届けることができると思うの』

祖人の王を始め、フノラと術師頭は感心したような溜息を落とした。

(揃いも揃って、異端の羽根人が…)

本来の言葉とは裏腹に、それは功績を称えるしかない表現であろう。

「…解った。ではそなたたちはそれまでそこに留まり、その景色を届け続けて欲しい」

王は顔を上げると、目の前の二人に命を下す。

「では至急手配を頼む。この力の存在が大陸の者にみな平等に届くように…」

その言葉にフノラが一礼し、すぐに執務室へと向かった。
術師頭も主要都市に届ける精霊石の手配を急ぐことにした。


精霊石を通して祖人の王への報告が終わると、荒れ野の羽根人たちは天幕に集まり、次のことを話し合うことにした。

「これで、荒れ野に緑を芽吹かせる方法は確信できた。あとは王都から大陸の主要都市にこのことを知らせてくれれば、人の口から伝わり、各地で再生の力を必要とする者たちが集まってくるだろう」

ルシュアの見解にセルティアも頷いたが、微かに眉根を寄せた。

「…それらは、蒼の聖殿で受け入れる、ということになりますか?」

再生の力を受け渡す場所。
それはサフォーネがいる場所であり、必然と蒼の聖殿、もしくは聖都に限られてしまう。

「そうよね。でもそれって…結構大変なことよね?闇祓いと浄化の依頼も受けながら、再生の依頼も受けるとなると…蒼の聖殿では回し切れない気もするわ…」

アリューシャも懸念すると、そこへトワたちが定例の燃料運びで訪ねてきた。
円卓で羽根人たちが集まっている様子に、ニルハとナコラも興味深そうに近寄って来る。

「よぉ。調子はどうだ?…って、何かあったのか?」

「あぁ、トワ様…いつもありがとうございます。実は…」

考え込む羽根人の集団を見て、不思議そうな顔をするトワにナチュアが事情を話した。
トワは「ふーん…」と思案顔をすると口を開いた。

「それなら、聖都の外で依頼を受ける場所を作ったらどうだ?」

「…え、外で…ですか…?」

「蒼の聖殿で再生の仕事も受け付けるってのは、結局、蒼の聖殿に伺いを立てるってことだろ?あんたらが一番気にしてた事じゃないのか?」

トワとナチュアの会話を聞いて、アリューシャが唸った。

「確かにね…」

「!…そうか…」

そのやり取りに、ルシュアが閃いた。
大陸の地図を持ち出し、全員の前に広げると、一つの場所を指さす。



「ここはどうだ」

「え、ここって…」

「三日月湖の…セレーネ島?」

ルシュアの指先には、三日月湖にある中の島が示されていた。
その名は『セレーネ』。
美しさを表す言葉だ。

「正直…サフォーネには浄清の天使としての活動も続けてもらいたい。再生の天使としての活動は、月に一度、一週間ほどがいいかな…。この場所で再生の力を込めた種を作るというのはどうだ?ここなら蒼の聖殿からも足が運びやすいと思うんだが…」

ルシュアの提案にデュークが頷いた。

「なるほど。月に一度くらいの間隔で、再生の天使としてその場所で依頼を受ける訳か…」

「そ、その時は私も着いていって宜しいのでしょうか?」

慌てるナチュアに皆が笑顔で頷く。

着々と計画が進められる中、サフォーネは地図を見つめ、初めて蒼の聖都を訪れた霧の中で見た、その島を思い浮かべた。

「差し詰め『再生の館』ってどうかしら?…とにかく、たくさんの人を呼ぶのなら、それなりの建築計画も必要だと思うわ…。それに、その館を管理する人たちもね」

「だんだん纏まってきたな。再生の力の権利は王都の直下に置くから、いろいろ折り合いをつけるためにも、あとは祖人の王に相談したいところだな」

アリューシャがわくわくしたような声で話すと、ルシュアも頷いた。
少しずつ先の話が見えてくると、間もなく旅の終わりも近づいてくる。
皆の顔も晴れるようだった。
アリューシャは満面の笑みをトワに向けた。

「トワのお陰でいい案ができたわ。ありがとね」

「…!そ、そうか?…まぁ、それなら良かったが…」

最初の印象のまま、打ち解けられないでいた小さな羽根人が、素直に礼を言ってくるのに面食らったトワは、少し考えるとさらに意見を出した。

「…あぁ、それと…。再生の力を望むのは、俺たち獣人族も結構多いと思うぜ?町から離れて暮らすのは獣人か小人辺りだし…町から離れれば、土地の条件はあまり良くないからな。獣人語が解る奴もその場所に必要かもしれないな」

トワの見解に皆が唸った。
確かに痩せた土地に住むのは、大きな町に住みにくさを覚える者ばかりだろう。
中には都市に住む地主が土地の再利用で、依頼をしてくる可能性もあるが…。

「…それなら、トワ様にお願いできないものでしょうか…」

「…え?俺か?」

「それはいい考えだ。トワさえ良ければ、だが」

ナチュアの提案にトワが驚くと、ルシュアが乗ってきた。

「ちょ…ちょっと待ってくれ…」

思いがけない展開に慌てるトワに、ニルハとナコラが目を輝かせる。

「え。それっておいらたちも一緒に行けるのか?」

「三日月湖って、聞いたことあるわ!すごく綺麗なところよね?」

「こら、お前たち、勝手に話を進めるな!ヤヌ様に相談もなしに…」

妹と弟が喜ぶ姿に狼狽するトワを見て、デュークが静かに微笑んだ。

「トワには村での大事な役目もあるだろうから、そこは無理にとは言わないが…。君が来てくれるなら、俺たちは心強いよ」

誰かに期待されるなど、あまり経験もないトワはどう返せばいいのか判らない。
笑顔で頷く羽根人たちを前に、その場に居たたまれない気持ちだけが先行した。

「…あ、あぁ…とりあえず…考えとくよ…。さぁ、お前ら用事を済ませたら、すぐ帰るからな」

妹と弟を急かし、トワは照れくさそうに頭を掻きながら天幕を出ていくと、仲間たちと共に黙々と物資を運び入れ、いつもより早く立ち去って行った。

彼らを見送った後、ルシュアが声を上げる。

「よし。王都から大陸への通達が始まるまでは、この辺りにもう少し豊かな地を広げてみたいと思う」

「…そうだな。サフォーネ、やれそうか?」

「…うん!」

デュークの言葉にサフォーネは力強く答えて立ち上がった。


野営所の周辺は、ほぼ緑で覆い尽くされた。
まだ手が届いていないのは、到着初日に雪崩に遭った崖の上くらいだった。

セルティアとイオリギは天幕で待機、護衛にルシュアを残し、サフォーネたちは南西の方へ歩を進めていく。
リゾルの村に真っすぐ南下する際に聳えていた崖の脇を迂回すると、その上に辿れる斜面がある。
小一時間くらい歩いただろうか…。
登り切ったそこにも痩せた土地が拡がっていた。

「ここから崖の斜面に向かって木が育てば、雪崩も起きにくくなりそうだな」

「そうね。この下の荒れ野をみんなが今後活用するようになるなら、この場所も安全にしたいわよね」

デュークの見解にアリューシャも同意する。
再生の力を込めた多年草の種を幾つか取り出し、デューク、アリューシャ、ナチュアはそれぞれ手分けして植え付けていく。
サフォーネも種を手にして植えようとしたが、何かに呼ばれた気がして手を止めた。

「……?」

立ち上がり、誘われるようにふらりとその場から歩き出す。

「…?サフォーネ?」

また自生している多年草の場所でも見つけたのかと思い見守っていたが、どんどん先へ進んでいく様子に、デュークも慌てて立ち上がると後を追った。


はっきりした言葉ではないが、誰かがずっと呼んでいる。
懐かしいような、切ないような、頭の中に響く声。

(…だれ…?だれか、いる…?)

サフォーネはその声に応えようと心の中で問いかけるが、その返事はない。
もっと『そこへ』近づけば判るかもしれない…。
サフォーネは知らず知らず早足になる。

「…おい。サフォーネ。どうした?戻ろう。みんな心配す……」

デュークは声を掛ける途中で言葉を失った。

(この風景…見たことがある…)

荒れ野が拡がっているだけかと思えば、そこにはかつて人が住んでいたと思われる畑跡が見られた。
水が渇れかけている細い小川もある。
そこには朽ち果てて今にも崩れそうな、小さな水車もあった。

この先にサフォーネを行かせてはいけない。
そんな気がしてデュークが駆け寄ろうとすると、目の前のサフォーネが立ち止まり、突然膝をついた。

「サフォ!?…!」

慌てて駆け寄ったデュークは、サフォーネの先に広がる光景に言葉を失った。

小さな家、一軒分くらいの焼け跡。

「ここは…」

デュークの脳裏に、家の中に転がる小人と盗賊の遺体、燃え盛る炎に包まれる幼い羽根人の姿が浮かんだ。

「…うぅ…うぁ…うあああぁ…!」

サフォーネの今までにない泣き叫ぶ声に「はっ」と我に返ると、膝をついてその場で抱き寄せた。

「…まさか…こんな…今になって、あの場所に辿り着くなんて…」

腕の中のサフォーネは、その光景が目の前に見えるのか、宙を凝視したまま震えている。

「うぅぅ…こわい…こわいよぉ…」

あの時叫べなかったサフォーネの声が、今になって届く。
途端にデュークもあの日の幻影に引き戻されるように、炎の中にいた。

目の前を覆う火の塊。
その向こうに小人の亡骸が横たわっている。
光を失った小人の目がこちらを見ていた。

「み…な……しん、じゃ…った……サフォ…サフォが…サフォの…せい…」

その言葉に、デュークの心臓は握り潰されそうになる。

「違う!…お前のせいじゃない!お前じゃない…あれは、俺が…」

デュークは言葉を失った。

思えば、あの炎を巻き起こしたのは誰だったのか…。
サフォーネが身を護るために精霊に無心で祈ってしまったのか、それとも…。

『何してる!逃げるんだ!』

そう叫ぶ自身の声が蘇る。
サフォーネを穢したくない己の心の叫びがそうさせたのか…。

『お前、本当に…災いの…』

酔いも冷める恐怖の表情で盗賊が口走った。
――災いの色…?――
それに関わったせいで、小人の兄妹と盗賊は命を落としたというのか…?

――違う…違う、違う!――

災いの色があの悲劇を生んだとは思いたくなかった。
サフォーネにそう思わせたくなかった。
サフォーネの記憶が蘇ってしまうのが恐かった。

「サフォーネ…俺を見ろ。何も考えるな…俺だけを…」

デュークの声にサフォーネは涙を溜めた大きな瞳でその顔を見つめた。

「…デューク…あのこえ…デュー…ク…?」

「!」

「サフォ…なま、え…よん…だ……」

そのままサフォーネは気を失った。
涙が伝う頬に、己の頬を擦り合わせるように、デュークはその体をきつく抱きしめる。

心配して駆け寄ってきたナチュアは、サフォーネの様子におろおろし、アリューシャは、拡がる光景に全てを察した。
デュークは力ない呟きを落とす。

「サフォーネが…想い出してしまった…」


天幕に帰ると、ナチュアがすぐにサフォーネの寝床を用意した。
ルシュアとセルティアにデュークが事情を話すと、ふたりは驚いた後に表情を曇らせた。

「どういうことなのですか?お聞かせください」

今まで知りたいのを我慢してきたナチュアが堰を切る。
事情をよく知らないイオリギも加え、アリューシャがサフォーネの過去を話すと、ナチュアは涙した。
セルティアが切なく呟く。

「神の悪戯…いえ、精霊の導き、なのでしょうかね…」

「サフォーネがどこまでのことを想い出すのか…だな」

母に捨てられ、精霊の祠で育ち、預けられた小人たちを死に至らしめた…その事実を知って、恨みや自責の念という負の感情を覚えてしまったら…。

「サフォーネの純真で清らかな心が精霊を宿していると思うの…。もし、もしもよ?サフォーネの心があの記憶で曇るようなことがあれば…再生の力は消滅するかもしれないわ…」

アリューシャの見解に一同が言葉を失う。

「ここまできたのに…もし、再生の力が無くなれば…」

既に大陸中で動き始めているこの計画が全て無駄になる。

「サフォーネを信じるしかない。…いや、俺は信じている。サフォーネの心は決して変わらない。変わらない筈だ…」

デュークは強く言い放った。


~つづく~
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