サフォネリアの咲く頃

水星直己

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第二章

[第16話]母の影

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サフォーネがデュークと共に蒼の聖殿に入って、約一月が経とうとしていた。
その間に二人が会えたのはたった2回。
それも互いの顔を見る程度のものだった。

最初の陽の曜日では、闇祓いの騎士団が一斉に休暇を取れることもあって、剣術大会が実施された。
聖殿内にある催し場には多くの人が見学に訪れ、サフォーネもナチュアと共に応援に出向き、そこで遠くからデュークに手を振ったが、会場の混雑ぶりもあり、直接話すことはできなかった。

剣術大会は、異端の騎士の活躍で大いに盛り上がりを見せ、蒼の騎士団に重要な戦力が加わったことを知らしめることとなった。
それはルシュアの策略でもあった。
以前から部隊を一つ増やしたかったこともあり、全部隊の再編成を行うとともに、好成績を収めたデュークを第二部隊隊長に任命した。
来たばかりの者、加えて異端の騎士を良く思わない隊員たちから不満の声も一部出たが、騎士としての実力の差を見せられれば、皆従わざるを得なかった。
ルシュアの思惑は成功したのだが、デュークはその後、魔物退治の依頼に追われることとなり、次の陽の曜日に休暇を取ることは叶わなかった。


「デューク様、本日は仕事が押してしまったとかで…残念ですね…」

落胆するサフォーネをナチュアは懸命に励ます。
サフォーネもそれに対して我儘を言わずに、あの日、デュークが背中を見せた厳しさの意味を理解しようとしていた。
それは、サフォーネ自身の修行でも試されていると…。


サフォーネの修行初日、セルティアは頭を悩ませていた。
通常、学問と精神修行の実技を同時に進行させていくのだが、幼児並みの知識と心を持つサフォーネには、なかなか難しいことだった。

「サフォーネ…あなたはまず基本の学問をしながら、集中と我慢することを覚えていきましょう」

そう言うと、セルティアは学問の指導を教育専門の羽根人に任せることにした。
浄清の仕事もある故、それは仕方の無いことだったが…。

ナチュアはその事が気掛かりだった。
恐らく、その教育係は異端に対して良い印象を持っていないのだろう。
常に表情が固く、ひとつも笑わずにサフォーネに問題を出し、正解を出しても褒めることか無い。
逆に答えられなければ叱責もあるため、日を重ねるごとにサフォーネが落ちこんでいくのだ。

「サフォーネ様、セルティア様に頼んで先生を代えてもらいましょうか」

ナチュアの気遣いにサフォーネは首を振った。

セルティアの言葉から、『自分は人より遅れをとっている』ということは何となく分かっていた。
学問の先生が厳しいのもそのためなのだと…。

このままでは「みんなをまもる」と誓いを立てたことが、かなり先のことになってしまう。
自分の気持ちを抑えて、やるべきことをやれるように…。
学問は難しくて、辛いけど、それができなければ…。

だから、デュークに会いたいという気持ちは、陽の曜日以外、我慢しなければいけないことと思うようになっていた。
翌日、回廊で偶然にも通りかかったデュークに、遠くから手を振るだけにしたのもそのためだった。


デュークは隊長就任以来、慣れない役職に日々邁進していた。
皆、認めてくれたとは言え、以前から見知っている隊員には過去の失態の払拭を、新しく顔を合わせる隊員には異端の偏見を取り除く必要がある。
闇祓いの職務が終わった後も、魔烟の情報収集や戦略の研究などに必死になっていた。

サフォーネの修行が行き詰っている様子は、ナチュアから聞いていた。
学問担当の羽根人が厳しい態度を取ることも。
しかし、仕事に支障を来す訳にはいかなかった。
回廊の遠くで見かけたサフォーネが、手を振るだけで去って行ったのを見るまでは…。

「あいつは、大丈夫なのか…?」

事ある度に口癖のようになってきたデュークを見て、むしろお前が大丈夫なのか?と、ルシュアは案じていた。
休暇を取るように命じても、応じない。
丸一月ほぼ休みなし。

心身ともに疲労が重なってきているデュークに、何か休ませる方法はないか…。

そんなところに、以前からサフォーネの出生調査を命じていた検見隊員から報告が届いた。
サフォーネの母親らしき人物の居場所「だった」ところ突き止めた、と。

「だった…?それはつまり…」

サフォーネの母親はすでにいないのか…?
検見隊員の報告では不明なことが多かった。

丁度、依頼の件数も落ち着いてきたところでもあり、ルシュアは久しぶりに全部隊に数日間の休暇を命じると、書庫に向かう途中のデュークを呼び止めた。


サフォーネの出生元の調査は表立って行っているものではなかった。
サフォーネの耳に入る懼れもあり、秘密裏に動いていたことでもある。
話のしやすい場所として会議室を借りるのも憚れ、人の通りが少ない回廊の隅を選ぶと、ルシュアはデュークにその話を切り出した。

「どういうことだ…。いや、どこに居たんだ、その人は」

詰め寄ってくるデュークに落ち着くように制すると、ルシュアは報告のあった内容を語りだした。

「サフォーネの母親だと思われる女性の名はリマノラ。リマノラニーナ。緑の聖殿に所属した、家柄の良い娘だったそうだ」

「緑の…聖殿?」

「あぁ、検見隊にはそれぞれ3つの聖都で情報を探らせた。その中で、一番有力そうな情報だ。緑の聖都で十数年くらい前にひとりの女性が変死を遂げた、というのがあってな。女性を知っている人物の話によると、彼女は元浄清の天使で、闇祓いの戦士との間に子供を儲けたらしい。だが、男の方には妻もいたらしく、結局その人はひとりで赤ん坊を産み落としたんだが…その髪の色を見て…ひどく嘆いていたそうだ」

「それが、サフォーネの母親…?髪の色を見て…そして…サフォーネを捨てたのか?」

苦々しくデュークは口を開く。

「とりあえず、わかったのはここまでだ。リマノラの家は、杜族の家系。由緒正しい貴族様らしいぞ。ひょっとしたら、お前の家とも親交があったんじゃないか?」

『杜族』は古くからその地に根付く血筋の濃い羽根人の総称。
祖先で初めて『浄化』の力を目覚めさせた一族と言われている。
デュークの家系は『闇祓い』を最初に目覚めさせたと言われる『嶌族』の家系だった。
そういった者たちは互いを尊重し、聖殿は違っても交流がある。
だが、リマノラという女性の名をデュークは聞いたことがなかった。


「気になるか?気になるよな?」

黙り込んだデュークの顔を覗き、半ば面白がるような言い方をするルシュアにムッとした顔で返すが、それは疲れの色を隠せない瞳だった。
力のない視線を向けられてもルシュアは動じない。むしろ痛ましいほどだ。

「闇祓いの依頼も少し落ち着いてきたからな。この休暇を利用して、直接確かめに行ってみないか?いくら休めと言っても、お前は休まないし…」

「…ルシュア…」

ルシュアの申し出にデュークは少しだけ驚いた。
ここ数日、心配してくれていることは分かっていたのだが…まさか隊全体の休暇がこのためだったとは考えつかなかった。
これはルシュアなりの優しさなのか…。

「緑の聖都はいいところだぞ?食べ物もうまいし、酒もうまいし、女も…」

続かれた言葉で、それは錯覚だった…とデュークが思い直したところに、

「そんな話はどうでもいいわ。さっきの話、サフォーネのことよね?なら、私も気になるんだけど」

どこからともなく、少女の声が降ってきた。

周囲を見回しても、それらしき姿は見えない。
声は頭上からしたようで、回廊脇に植えられている木立の上に視線を向けると、金の巻き毛が零れ落ちてきた。

「アリューシャか?盗み聞きとはいい趣味だな」

葉の間からぬっと顔を出した少女にルシュアが話しかけた。

アリューシャは紫の瞳を持つ14歳の少女…といっても、見た目は10歳くらいに見えるほど小柄な体型で、その巻き毛が掛かる耳の後ろには、白い翼が左右に二枚ずつ生えていた。
その代わり、背に翼はない。
この少女もまた異端の天使と言われるものだが、紫という『高貴』の色と、羽根人の能力を高く示す翼の数は、周囲の人たちから一目置かれるものだった。
それは、彼女が闇祓いでも浄清でもない、特殊な力を持つことでもあったが。

「デューク、久しぶりね。…っていっても、あまり覚えてないかしらね。ルシュア、あんたは…相変わらずね…」

アリューシャは、木の枝にぶら下がるようにして降りてくると、デュークとルシュアの間に立ち、二人を見上げた。
その容姿を見てデュークは思い出した。

「アリューシャ…?あぁ、ルシュアの…。久しぶりだな」


アリューシャの祖母はババ様であり、その兄がルシュアの祖父に当たるため、二人は又従兄妹の関係になる。
アリューシャが幼い頃に緑の聖殿に出されたため、ルシュアは一緒に遊んだ記憶はなかったが、年に何度か里帰りするときに互いの存在は認めていた。
新年を迎える里帰りの時には、蒼の聖殿を取り仕切る重役たちの会議もある。
アリューシャはその歳に思えないほどの豊富な知識を持ち、長老たちに助言もするほどで、ルシュアは「末恐ろし又従妹殿だ」とよく揶揄っていたのだ。
ルシュアはその人たらし的な人格で、長老たちの意見もまとめ、うまく渡り歩く様子を見て、アリューシャは「いけすかない奴」と思っていた。
互いの能力を認めつつも、反発しあうところは、今も変わらない。


「サフォーネのこと?…あぁ例の精霊の話か?」

ルシュアが訝し気な表情でアリューシャを見下ろすと、それが気に食わなかったのか、二人と目線があうような高さになるよう、近くの石造りの腰掛に昇って腰に手を当てる。

「信じてないわね。でも、あれは見間違いなんかじゃないわよ。サフォーネは精霊の加護を受けてるに違いないんだから」

アリューシャはサフォーネと出会った時のことを思い出す。


   ∽ ∽ ∽ ∽ ∽


それは星空が綺麗な夜だった。
久しぶりに戻った蒼の聖殿の中をゆっくり散策していると、中央塔裏の噴水広場に差し掛かった時にすすり泣く声を聴いた。

「…やだ、あたしがいない間に、ここに何か出るようになった訳じゃないわよね…?」

好奇心のまま、その声のする方へ行くと、噴水越しに赤い髪が見えた。

「サフォ、わかんない…べんきょ…どうしよ…」

震える赤い髪。
たどたどしく呟かれる高い声。
勉強が解らないことを嘆く様子。

(…なんだ、修行中の子供…かな?)

そう思ったとき、その周りを小さな光の玉が舞い始めた。
大きな受け皿に注ぎ込まれる噴水は、天然の川から流れてきている。
水辺を好む季節外れの灯虫が、その流れに乗って入り込んできたのだろうか…。

「…!違う。…これは…」

サフォーネはその声に顔を上げた。
噴水を挟んだ向こうに、小さな背格好の巻き毛の少女が立ち尽くしている。
その顔はサフォーネを見てぽかんと口を開けていた。
灯虫はいつの間にか姿を消していた。

「…だ、れ?」

恐る恐るサフォーネが尋ねると、アリューシャははっとなって駆け寄り、しゃがみこんで同じ目の高さになるとその肩を掴んだ。

「あんた!今、精霊を呼んでたでしょ?どうしてそんなことができんの?あんた何者?なんでここにいんの?」

ガタガタと肩を揺すられ、矢継ぎ早に質問を受けたサフォーネは、頭がくらくらするのを覚えながら少女を見た。
赤い瞳にまっすぐに見られて少女も我に返る。



「あ、ごめん。あたしアリューシャ。昨日やっと緑の聖殿での修行が明けて帰ってきたの。で、あんたは?見事なまでに真っ赤だけど、まだ修行中の身かしらね?いつからここにいんの?」

アリューシャと名乗った少女が捲し立てる言葉をひとつひとつ、頭の中で反芻するようにサフォーネは答えようとした。

「なまえ…サフォ…サフォーネ…。デューク、つけた。サフォ、べんきょしてる…でもわかんない…デューク、あいたい……でも、だめなの…ひの、ようびじゃない…」

言いながら、忘れていた感情が蘇り、サフォーネは再び泣きじゃくった。
自分の聞きたかった質問がどれ一つ満足に返ってこないのに苛立ちを覚えながらも、その気持ちはアリューシャにも充分わかるものだった。
修行中は辛くて弱音を吐きたくなる。
何度も故郷を思い、泣いた日もあった。
アリューシャは目の前の天使が自分よりも幼く見えて、思わずあやすように宥めた。

「あぁ、ごめん。ごめん。…そうか、デューク…デュークも来てるのね」

緑の聖殿にいた頃、異端の天使が二人、蒼の聖殿に入った、という噂が流れてきていた。
アリューシャも『異端』に対しては、気にするだけ意味のないこと、と一笑するくらいで、その噂も普通に聞き流していたほどだった。
それが三週間くらい前のことと思い出す。

「なるほどね。ここにきて三週間くらいか…ていうか、精霊よ、精霊!あんた今呼んでたでしょ?」

サフォーネの周りを飛んでいた光の玉。
一番の本題を思い出して、アリューシャはサフォーネに問いかける。


アリューシャは類まれな能力を持っている。
それは精霊と交信する力。
彼女は『精霊の巫女』と呼ばれている。

通常、大陸に暮らす人々からの目撃情報や、調査隊の報告で魔物や魔烟が見つかり、部隊が出動するが、精霊と交信ができる者がいるだけで、魔烟の鮮明な場所、その地の状況がより明確になる。
その能力は希少で、現在は緑の聖殿に一人。光の聖殿の巫女は間もなく引退すると言われている。
この蒼の聖殿でもしばらくその存在はなかった。

アリューシャの能力に最初に気が付いたのはババ様だった。
まだ三歳にもならない孫娘が一人遊びをして、そこに存在しない架空の誰かと喋っていると思っていたのだが、「ババさま、もうすぐあめがふるよ」と言えば、数日大雨の日々。「ババさま、じめんがおこってる」と言えば、地震も起きた。
これは間違いなく精霊の声を聴いていると確信したババ様は、アリューシャの両親の反対を押し切って、孫娘を緑の聖殿に預けることにした。
現役の巫女もいる場所で修行をすれば、アリューシャの能力が開花すると見越したのだ。
ちょうどその頃、入れ替わるように蒼の聖殿に入ってきたデュークの姿を、アリューシャは幼いながらも強烈に覚えていた。
白い翼が黒い翼に変わる奇病があるのだと。

そして、アリューシャはババ様の期待に応えるよう、10年かけてその能力を開花させ、修行を明けて帰ってきたのだった。


「…せ、せーれい…?」

何のことかわからずにサフォーネが首を傾げていると、遠くから自分を呼ぶ声が耳に届いた。
サフォーネが部屋に居ない異変に気付いたナチュアが探しに来たのだ。

「あ、サフォーネ様!こちらにいらしたんですね?心配したんですよ?」

サフォーネを見つけてほっとしたが、そばにいるアリューシャに気が付いて、慌ててナチュアは頭を下げた。

「あんた、この子の世話役?」

「はい、ナチュアと申します。アリューシャ様、お戻りになられたんですね?修行お疲れ様でございました」

「この子さ…」

精霊のことを聞こうと思って口を噤んだ。
本人に自覚もなく、まして、世話役に聞いたところでわかる訳もないと思った。

「学問が苦手みたいね。それでここで泣いてたわ。今度あたしの部屋に連れてきなさいよ。教えてあげる」

会いたい人に会えない気持ちを懸命に抑えているサフォーネを察し、それだけ言ってその場は立ち去ったのだ。

でもあれは見間違いではない。

「無自覚なら、自然とその加護を受けているのかもしれない…。突き止めてみせるわ」

それから時折、サフォーネを部屋に呼んでは勉強を見てやり、何かの拍子に精霊を呼ばないかと待ちかねているのだが、それは未だに叶わない…。


   ∽ ∽ ∽ ∽ ∽


思い出し「はぁ」と溜息をつくアリューシャを見て、ルシュアが揶揄うように言った。

「お前、精霊と交信できるようになったんだろ?なら自分で呼べば済むことだ。サフォーネが呼ぶ必要はないだろ」

その言葉にキッとルシュアを睨みつける。

「自由に簡単に精霊を呼べるなら苦労しないわよ。ていうか、そもそもあたしは精霊の声を聞くだけよ?子供の頃はそれが自然とできたのに…。他にも交信術はあるけど、儀式だ何だと時間もかかるんだから…」

二人の会話にしばらく耳を傾けていたデュークが口を開く。

「灯り虫が…精霊…?そういえば、俺がサフォーネに会った時も、側にいたような…」

デュークの言葉にアリューシャが瞳を輝かせた。

「でしょ?!やっぱりそうなのよ…。そして、何故それができるのか?ってことよ。秘密が分かれば、あたしにもできるようになるかしら…」

「いや…純真な心が無いと精霊は来ないんじゃないか?昔はお前もほんと可愛かっ…」

続けて言う嫌味のようなルシュアの言葉に、アリューシャは思わずその脇腹に拳を入れた。
…が、言われて確かに、とも思う。

「まぁ…サフォーネは無垢な子供のようなものだもんね…。やっぱり無意識に呼んでるのかもしれない。とにかく。あたしはサフォーネの出生の秘密が知りたいわ」

傍らで脇腹を押さえて体を屈めるルシュアを、デュークは冷ややかに見ながらも頷いた。

「そうだな、俺も知っておきたい。サフォーネの代わりに、俺が母親に言ってやれることがあるかもしれない」

「…もう死んでる女にか?」

僅かに歪めた顔を上げてルシュアが言った。

「それを確かめにいくんだろ?もしも生きていたら、の話だ…」

調査の内容から、その望みは薄いのかもしれない。
それでも、サフォーネが味わった苦しみや悲しみをその母親に伝えなければならない、デュークはそう思っていた。

「よし、決まった。では三人で明日、緑の聖都へ赴く。天馬たちを準備させておこう」

ルシュアは立ち上がると、颯爽と駆け出した。

「じゃ、あたしも。明日はデュークの馬に乗せてね?」

そう言ってアリューシャも立ち去って行った。
二人の背中を見送った後、デュークは回廊の柱の間から浄清の塔を見上げた。
今頃サフォーネは学問で忙しくしているだろう。
小さく溜息を落とすと、書庫へ向かい歩き出す。

「母親か…」

徐に呟いて、デュークは顔をしかめた。
記憶に確かにあるのは、母親の冷たい横顔か、その背中だけだった。

デュークを出産したとき、母は誇らしげに喜んだという。
髪は透き通る青。翼は雪のように穢れなき白。
翼や髪の色が産まれた時のまま変わらなかったら、母親は自分を愛してくれたのだろうか…。

しかし、天使として相応しいと言われる色彩は、物心つく頃に失ってしまった。
自分を見つめる母親の慈しみの表情など、想像できる訳もない。

その時、銀髪と白い翼を持つ子供の天使が脳裏をよぎった。

自分がどんなに望んでも、得られなかったものを攫って行った者…。
自分がどんなに罪深く、許されない存在なのだという烙印を押した者…。

その晩、デュークは久しぶりに幼い頃の悪夢を見た。


~つづく~
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