サフォネリアの咲く頃

水星直己

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第一章

[第10話]迷い

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デュークは、滞在していたクエナから南に馬を向かわせた。

産まれ故郷の『光の聖殿』は、クエナの町を北上したところにある。
実の両親が今も健在のはずだが、メルクロの元に置き去りにされて以来、母親とは一度も会っていない。
今更訪ねたいとも思わなかった。

(それにあそこは、異端の天使に対しての差別がどこよりも厳しい…)

馬に揺られる赤い髪を目の前に見ながら、デュークは思案する。

町から南下した先には大きな森があり、そこを抜けて東に向かえば、湖の側に構えられた『蒼の聖殿』がある。
デュークが闇祓いの騎士として修行し、16歳ごろまで過ごした場所だ。

反対の西方面には、大陸の約4分の1を占めるほどの広大な森の中に『緑の聖殿』があるが、そこに縁者はない。
いきなり異端の天使が二人、訪ねて行っても受け入れてくれるか定かではなかった。

そうなると、必然と『蒼の聖殿』を目指すことになるのだが…。
デュークは過去を思い出す度、まだどこかに迷いがあるのを自覚していた。


長い時間、馬の背に揺られて眠くなったのか、船をこぎ始めたサフォーネを見て、デュークはシェルドナの足を止めた。

「サフォ、この辺で少し休憩しよう。シェルドナもいつもより荷物が多いからな」

デュークの声に眠い目を擦りながら辺りを見渡すと、小さな林を抜けた先に草原が広がっていた。
サフォーネは馬から降りて一つ伸びをし、休憩できそうな木陰を探す。
柔らかそうな草の絨毯に大きな枝が影を落としている場所を見つけ、デュークに振り返った。

「そうだな。そこにしよう」

後に続いたデュークは、碧い草がたくさん生えている場所に手綱をつなぐと、サフォーネが寝転がれるように外套を広げた。
シェルドナの荷を少し解いてやり、腰に装着している長剣を外すと、寝転んだサフォーネの隣に座って武器の手入れを始める。

魔烟は人々に発見されていないものもあり、道すがら出くわすこともある。
この先、いつそんな状況に遭ってもいいように、武器を磨き、剣術の型も攫わなければ…。
デュークは武器の手入れを終えると立ち上がった。
怪我で動けなかった期間を取り戻すよう気を引き締め、初心に還って型を攫い始める。

サフォーネは寝転んだものの、デュークのやることを見て自分も何かしなければと思ったのか、近くにあった小ぶりの枝を拾い、見よう見まねで、空を切り始めた。
その様子に気が付いたデュークは剣を収め、枝を振るサフォーネの腕を止める。

「…サフォ、お前はそんなことやる必要はないんだ。…そうだ、少し聖殿の話をするか」

「せーでん?」

「あぁ、これからいく所だ…」

言いながら、迷っている自分がいる。
メルクロにも「聖殿に行く」と宣言したはずが…自分の弱さに改めて苦笑を浮かべながら、デュークはサフォーネをその場に座らせた。

「聖殿というのは羽根人たちの国のことだ。この大陸には3つの聖殿がある。北の開けた土地は、いつも陽の恵みを受けている『太陽の聖殿』。東の湖方面には、周囲を湖に囲まれた『湖の聖殿』。南西の広大な森には『森の聖殿』。今ではそれぞれが通称で『光の聖殿』『蒼の聖殿』『緑の聖殿』と呼ばれてはいるが…。
まずは聖殿に住む羽根人について話そうか…」

季節は間もなく夏を迎える。陽はだいぶ上に昇っていた。
木陰の隙間からその陽射しを見ながらデュークは語りだす。

「羽根人は、神が一番最後に作りだした種族と言われている。そして、他の種族が持たない、いろいろな能力を持つ者がいる。それ故、天界からの遣い『天使』と呼ばれることもあるが…。その力の代表的なものが、魔烟や魔物と対峙できる能力『闇祓い』と『浄清』だ」

「やみ、はらい?…じょーしょー?」

「あぁ。…闇祓いは俺のように魔物や魔烟と直接闘うが、浄清は穢れた地や祓われた魔烟を清めるのが仕事だ。二つの力が作用して、長い間、魔物の出現を食い止めることができるんだ。
羽根人たちはその力を他の種族にも役立てているため、一目置かれてもいるが…中にはそれを嫌う人たちも少なからず居る…羽根人だけが特別に扱われるのはおかしい、とかな…」

羽根人であることを隠しながらの旅では、直接そういった話も聞いてきた。
しかし、サフォーネにとって、それは解らないことだった。

「……でも…みんな、やさしい…サフォ、うれし、かった…」

「あぁ…クエナの町は、羽根人に対して良く思ってくれる人が多かったからな…」

サフォーネはその言葉に、クエナに着く前に、自身が受けてきた仕打ちを重ねたのか、以前痣がついていた腕の場所を摩った。
それに気が付いたデュークは、慌てて言葉を続ける。
サフォーネが受けてきたものはそれとは違うことなのだが…ただ思い出させたくなかった。

「とにかく、羽根人たちは他の種族と一緒に暮らすことをせず、『聖殿』という場所を作って、そこに自分たちの国を築いたんだ。
聖殿の周りには『聖都』と呼ばれる都があって…それはクエナの町の何倍もの広さなんだが、そこに羽根人たちの住居や、店、教会…たくさんの物が集まっている」

これまで、メルクロの家で学んできた知識と、町で見てきたものを思い返しながら、サフォーネは想像を膨らませる。

「聖殿には日々、大陸のあちこちから魔物退治や魔烟駆除の依頼が来る。それを幾つかの部隊に別れて対応していくんだ。時には戦争のような闘いもあれば、簡単に終わる依頼もある。でもどれも、人々を助けるための大事な仕事。羽根人としての任務だ。
そして、サフォが持っているのは癒しの力。それを活かせる仕事になるだろうな」

「サフォ、おしごとするの?」

「あぁ、それがこの大陸に住む人たちの平和にもつながるんだ」

デュークの言葉に『みんなをまもる』と決心した熱い気持ちが蘇る。
サフォーネは居てもたってもいられなくなり、立ち上がって地団駄を踏んだ。

「サフォ、みんなまもる。せーでん、はやくいこ。デューク、はやく」

座っているデュークの手を取り、立たせようと引っ張った。
サフォーネの熱意につられるよう立ち上がったデュークだったが、まだ出発する時ではない。
シェルドナのもとへ歩むサフォーネの背中に声をかけた。

「シェルドナをもう少し休ませてやった方がいい。聖殿は今日明日に到着できる距離じゃないんだ。それに、この先ひとつ大きな森も抜ける。そこに魔烟が潜んでいる可能性もあるから、野宿する場所も考えながら進まないとな」

「まえん…」

草を食むシェルドナの首を撫でながら、サフォーネはまだ見たことのないそれを想像してみる。
デュークと出会う前、ひとりで彷徨っているときに、もしかしたら出くわしていたかもしれないが、確証できる記憶はなかった。
人々が恐れるそれは一体どんなものなのか。
いつか絵本で見た魔物の姿も脳裏に浮かんだが、ふるふると首を振って頭の中からそれを追い出した。

「サフォ。俺たちも軽く食べよう。そしたら出発だ」

その声に頷き、デュークの元へ駆け寄ろうとしたところ、鳥の鳴き声が遥か頭上を越えていき、サフォーネは反射的に空を見上げた。
大小それぞれの鳥が数羽、それは、これから向かう森の方から飛んできたようだった。



充分な休憩を取った後、二人は出発した。
約半日かけて移動すると、聖殿への通過点となる森に差し掛かる。

森の中は覆い茂った木々の葉で、だいぶ涼しく感じられた。
安全だと思われる場所では、少しでもシェルドナの負担を無くそうと、二人で小道を歩んでいき、足場が悪いところや、魔烟が潜んでいそうな場所では馬の背に跨り、移動を続ける。
翼があるのだからと、サフォーネが飛ぼうとして、低木の枝に翼をひっかけてひと騒ぎにもなった。

デュークは古地図で場所を確認しながら、辺りを慎重に見渡していく。

「この近くに聖泉…『泉』があるはずだ。今夜はそこで野宿だな」

旅をする上で水場を探すのは、目よりも耳と鼻を使うのが常套手段だが、それは羽根人よりも馬の方が早かった。
シェルドナが、デュークの言葉を理解したかのように泉を見つけると、速足で進んでいく。
サフォーネが慌てて後を追っていくと、その先には小高い岩場から湧水が滴る小さな池があった。

「シェルドナ、すごい…ここ?」

そこは昔から、聖なる力に守られる泉と言われ、この付近では何年も魔烟の被害が出ていない。
それを知る旅人が立ち寄り、夜を明かすのだろう。
術師が作った結界の痕跡や焚火の跡もあり、薪も幾つか残されていた。
外套を広げて、二人眠れるくらいの場所も充分にある。

「あぁ、ここだな。サフォ、泉の水を汲んできてくれないか?少し早いが火を焚いて夕飯にしよう」

シェルドナから荷を下ろして、慣れた手つきで野宿の準備をするデュークは、念のため周囲の気配も確認する。やはり魔烟や魔物がいた形跡はなかった。

「デューク、これでいい?」

水筒用の革袋に水を汲んできたサフォーネに笑顔で返すと、デュークは焚火跡から火を起こし、飯盒に持ってきた食材と水で食事の支度を始めた。

ささやかな食事が終わる頃には、すっかり陽も暮れていた。
眠りについたサフォーネに、デュークは薄掛けの毛布をかけ、傍らで火を調整しながら身を横たえた。
旅慣れないサフォーネを連れて行くのがこの季節でよかった。冬ならばこんな野宿は無理だ。
隣で安心しきって眠っているサフォーネを見ると、小さく溜息をつく。

「こんな旅を続けられるなら、聖殿に連れて行く必要も無いんだがな…」

木々の間から、満天の星空が見えた。やがてデュークも眠りにつく。
数時間おきに火の確認は必要だったが、何の問題もなく、夜を明かせると思いながら…。



「…!」

夜中に火を起こし直し、再び横になって間もなくのこと、デュークは何かの気配を感じて瞳を開けた。

(…近くに何かいる…?……!)

身を起こそうとして初めて、サフォーネが己の背中にしがみつくようにして寝ているのに気が付いた。
それは、あの麦の丘から逃げてきた時と同じ…人肌を恋しがる子供のようだった。

デュークは少し狼狽えながらも、サフォーネを起こさないようにそっと身をずらした。
同時に辺りを見ると、夜なのに光が降り注ぐように明るい。
そこで改めて、感じた気配は悪いものではないと察した。

「久しぶりだな。デュークヘルト…いや、今はただのデュークか」

頭上からの声に空を仰ぎ見ると、淡い光に包まれた天馬に跨る羽根人の姿があった。
その背に携える翼は4枚。
長い金の髪を翻し、彫刻のような面持ちに、右は緑、左は紫の双眸がこちらを見下ろしている。

『デュークヘルト』…そんな昔の名前で呼ぶ者は…。



「…ルシュア…」

それは、蒼の聖殿で共に修行をした、同い年の幼馴染みであった。
ルシュアはゆっくり天馬を下降させ、静かに地面に降り立つと、馬から滑り降りた。

「ベアルを倒した旅の剣士…というのは、お前だったんだな」

数年ぶりの再会であったが、旅先でルシュアの活躍は聞いていた。
若くして蒼の騎士団・総隊長を就任。
それは、通常の羽根人と違うその姿が崇められていたからだ、と言う者もいたが、ルシュアの剣士としての腕前を知るデュークは、彼の実力こそがそこまでの結果を出したのだと分かっていた。

「あぁ。…あのあと、あの森にはお前が行ってくれたのか?ルシュア」

身を起こし、言葉を返してくるデュークを横目に、「少し遊んでいていいぞ?パキュオラ」ルシュアはそう言って天馬を自由にさせてやると、軽く肩をそびやかした。

「…いや、魔烟の情報が多すぎて、悪いが優先順位を決めさせてもらっていてな。あの森の魔烟については大きな被害も出ていなかったようで先送りにしていたんだが…。お前が森に向かった頃か、状況を再確認したら、魔物の出現があったと聞いてな。手の空いた第5部隊をやっと送ることができた…と、そんなところだ」

ルシュアの言葉にようやく納得したように、「やはりそうだったのか」と小さく返し、隣で寝ているサフォーネをちらりと見た。
サフォーネはぐっすり眠っていて起きる気配は無い。
ルシュアに気付かれないよう、デュークはずれ掛けていた毛布でその顔を隠した。

「そうしたら、既に旅の剣士がやったという報告を受けてな。しかもかなりの大物だったらしいじゃないか。そんなものにひとりで挑めるのはお前くらいだろうと思ってな。
やっと時間を作ってクエナまで行ってみたんだが…もうここにはいない、というし…探したぞ」

言いながら近づいてくるルシュアの視線が、毛布の膨らみに向けられる。
そこから気を逸らそうと、デュークは畳みかけるように言葉を返した。

「探した?蒼の騎士団・総隊長殿が直々に?…俺に何の用だ?」

ルシュアは悪い奴ではないのは知っているのだが、まだサフォーネを会わせたくなかった。
連れがいることを認識するも、さほど気にする様子もなく、ルシュアはデュークの問いかけに大げさに嘆くよう額に手を当てた。

「おいおい。私とお前の仲なのに、随分とよそよそしい言い方だな。用件は決まっているだろう。お前を聖殿に迎え入れたいんだ」

その言葉にデュークは瞳を見開いた。

「お前も知っての通り、魔烟の発生が増える一方で、聖殿も人手不足なんだ。お前ほどの能力があれば復帰もたやすい。お前さえその気になってくれれば、だがな…。どうだ?協力してくれないか?」

渡りに船とはこのことか、聖殿に向かおうと決心したのは事実だ。
しかしそれを伝えるには、自ら聖殿を捨てたという自尊心と、まだ計り知れない不安が邪魔をしていた。
デュークはルシュアから視線をそらし、地面を見つめたまま絞り出すように言葉を選んだ。

「俺が…異端ということをよく思っていない長老たちも多かっただろう。それに、一度聖殿を出た者を…」

「古い世代にはそんな迷信を信じる者もいるが、あれから代替わりもあったしな。一番口うるさかった長老はとっくに引退している。それに、『長』もお前の復帰については賛成してくれている。お前は絶対、騎士団に必要とされる。だから…」

徐々に大きくなる二人の話し声が眠っている頭に届きかけたか、

「うーー…ん」

毛布をはがし、サフォーネが寝返りを打った…と同時にその白い翼もこぼれ出た。
サフォーネの顔が露になり、ひやりとしたデュークはルシュアの顔色を窺った。

「な…羽根人か…しかも…その髪は…」

ルシュアはサフォーネの顔よりも、髪の色に驚いているようだった。
その様子に少し安堵すると、デュークは試すように話し出した。

「…そうだ、こいつも異端だ。蒼の聖殿は、異端の天使を二人も受け入れてくれるのか?」

「…うーむ…確かに…赤髪は異端だが…。それよりもさっきから異端、異端と…。異端というなら、私だって異端だぞ?」

あまりにも卑下した言い方が気になり、ルシュアは堂々と言ってのけた。
4枚の翼とオッドアイの瞳を持つ者は、他の羽根人にはいない。
それは確かに異端と言われるかもしれないが、翼は能力の高さを象徴し、「気高さ」を表す紫は高貴の色である。「災い」を表す赤や、「死」や「罪」を表す黒とは意味も違う。

「お前のは『異端』ではなくて『奇跡』だろう。誰からも歓迎される」

まさしくそれは伝説に謳われる『奇跡の天使』の容姿だ。
吐き捨てるように言うデュークを見て、ルシュアはくすくすと笑う。
昔にもこんなやり取りがあった。
肯定と否定。
希望と絶望。
二人で話すことは何かと対比してしまうことが多いが、お互い言いたいことをはっきり言うのは今も変わらないと思った。

「本当に、相変わらずだな、お前は。それにしても…」

改めてルシュアは、サフォーネの寝顔を眺めると、幼馴染みとの他愛のないやり取りを続けたい思いにかられた。

「まさか、お前が少女趣味だったとはな…知らなかった…」

「…な、違う!こいつは男だ!」

虚を突かれたことを言われて、思わず声が大きくなってしまったデュークは片手で口を抑えた。
それを見て、ルシュアはにやにやしながら言葉を続ける。

「…へぇ、それはそれは…。ならば、お前も私と同じ趣向だった、ということか…」

「っ…だから!それも違う!」

ルシュアは男女問わず、美しい者に目が無いのをデュークはよく知っていた。
やはりそこは抜け目がなかったか、嫌な予感がしてサフォーネを隠したのが、逆効果になったというところだ。

「そうなのか?二人はずいぶんと親密そうだったと、町の者から聞いたけどな」

「……」

さらに揶揄いたいルシュアだったが、この話題はこれ以上埒が明かないと思ったデュークが口を閉ざしたため、ふっと息を吐いて核心に触れだした。

「それに、この子のためにも、お前が聖殿に行くことを考えている、ともな…」

「!」

試すつもりが試されていたのか、聖殿に向かおうとしていることを知りながら「お前さえよければ」と話しかけてきたルシュアを一瞬恨めしく見るが、デュークは一つ大きく息を吐くと観念したように静かに語りだした。

「そうだ。こいつのためにも聖殿に行くのが一番いいのではないか、と考えた。だが、まだ迷っているのが本音だ。異端の天使はどこにいても、その偏見がつきまとう。聖殿の中ならなおさらだ。俺はまだしも…いや、俺は耐えるしかない。しかし、サフォーネに耐えられるかどうか…」

「サフォーネ、というのか…。メルクロに大体のことは聞いていたが…。一般の羽根人としての知識も少ないらしいな」

二人の会話が落ち着いたことで、サフォーネは眠りから覚めることなく、再び静かな寝息を立て始めている。
その穏やかな様子を見ると「やはりこのまま旅を続け、聖殿とは違うところで生きたほうが…」と、デュークは思いたくなるのだ。

デュークの迷いを知ると、ルシュアは膝をついて幼馴染みの顔を覗き込んだ。

「私は異端だろうが、そうでなかろうが、全てはそいつの能力や努力を買うことにしている。お前はその点問題ないが…。
仮にこのサフォーネの能力が乏しくとも、聖殿での仕事はいろいろある。結界に護られている聖殿に置くことで、この子の安全は保障しよう。このまま旅を続ける方が、彼にとって酷ではないのか?よく考えてほしい」

メルクロにも言われた問いかけに、デュークは瞳を伏せて考える。
ルシュアは立ち上がると天馬を呼び寄せ、その背に跨り、手綱を引いた。

「気が変わったら、いつでも蒼の聖殿に来てくれ。待っている」

ルシュアの言葉を夜闇に残し、天馬は空を駆け上っていく。
天馬が消え去ると、夜空には無数の星が瞬いていた。

「一度は決心したつもりだったんだがな…」

サフォーネとともに聖殿に行く決意で、クエナを出たはずだった。
夜空を見上げたデュークは、再び襲ってくる迷いに苦笑した。


~つづく~
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