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第一章
[第2話]クエナの町
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クエナの町までの道のりは二通りあった。
一つは起伏の激しい岩場の道。
これはほぼ直線距離で、シェルドナの足ならば最短三日で行けるものだった。
だが、サフォーネを連れていることもあり、デュークは岩場を迂回し、自生する果樹や小さな集落が点在する緩やかな道のりを選んだ。
二人を乗せるシェルドナの負担を減らし、二人分の食料を調達するためであった。
すると十日ほどで、ようやくクエナの町を遠くに確認することができた。
その間、ずっと翼を操る練習をしてきた甲斐もあったか、サフォーネは翼を格納する感覚をようやく掴めるようになったのだが…。
くしゅん!
温度の低い空気が鼻を刺激し、反射的に出たくしゃみで翼が放出されたりなど、まだまだ完璧ではなく、こちらの道のりは険しそうだった。
「飛ぶ練習はまだ先になりそうだな…」
それでもまた翼をしまおうと悪戦苦闘する様子を見て、肩をすぼめたデュークは、サフォーネを馬の前に乗るように促し、己の背に下がっている外套をくるむように羽織らせた。
「ようやくこっち側に乗せられるようになったな。くしゃみしていきなり翼出すなよ?」
空を見上げれば、雲行きも怪しい。雨になる前にと、デュークはシェルドナに走るように命じた。
二人が町に到着したのは夕暮れを迎える少し前の頃で、大きな黒い馬が町の中央にある小さな噴水にやってくれば、好奇心旺盛な子供たちが集まって出迎えてくれた。
ここは祖人やエルフ、ドワーフなどが共同生活している町で、子供達もさまざまな種族がいた。
「ひとまず、服を買うか。そのままでは寒いだろ」
デュークに抱擁されるように馬に乗ってきたサフォーネは、その間は暖かかったものの、馬を下りれば急激に寒さを感じて少し震えていた。
デュークは辺りを見渡した。
思えばこの町を出たのは十年ほど前。ところどころ様変わりをしている様子だった。
町の入り口近くにあった大木は、落雷のせいか、それとも火事でもあったのか、切り倒された場所に焦げ跡を残して無くなっていたし、十年前にはこの広場の噴水はただの水汲み場だった。
幼い頃に身を寄せたこの町には様々な思い出がある。
町の中を見渡すと、その頃の自分がそこかしこに映し出される。
医者の言いつけで買い物によく行った雑貨店はまだあった。
同い年くらいの子供たちと足の速さを競った小さな坂は、石畳が少し荒れていたがまだあった。
悲しく辛いことも多かったが、将来への糧となるものをたくさん学んだ場所でもあった。
町を出てから一度だけ、5年前に立ち寄ったことはあるが、その時はわずか数日滞在しただけで、その時の町の様子は覚えていない。
ただ、住居地区はだいぶ建て直しがあったようで、子供の頃からの知り合いがかなり減っているのは何となく気が付いていた。
デュークは周囲に集まってきた子供たちに、衣服店と散髪屋の場所を尋ね、さらに医者がまだこの町にいるか確認してみた。
「メルクロ先生なら、昔から同じ場所にずっといるよ。オレそこで今、助手してるんだ」
尖った耳をぴくっと動かしながら、他の子どもたちを押しのけるようにして前に出てきたのは、サフォーネよりも頭一つ背が低い半エルフの少年だった。
半エルフとはエルフと祖人の間に産まれた者。
エルフの特徴である尖った耳を持ち、祖人の体力を供え、優しく強い心根を持つ者が多い。
「そうか、それならこの馬を先生のところへ連れていってくれるか?用事を終えたら訪ねていきます、と伝えてくれ」
デュークはシェルドナの手綱を少年に預けようとしたが、少年は受け取らず、真面目な顔で言葉を返してきた。
「構わないけど、あなた誰?先生の知り合い?先生はこの町に必要な人なんだ。知らない人と簡単に会わせる訳にはいかないから」
どこか警戒している様子にデュークは小さく息を吐いた。
今から50年以上も前、大陸には数多い小国が存在し、領土を奪い合う争いが頻繁にあった。
中でも、祖人を中心とする国と国との間では、その争いごとを諫めるために国家を統一しようという思想が芽生え、大きな戦が絶えなかったという。
そんな戦争が絶えない時代に、メルクロは産まれた。
その家柄は騎士を多く輩出する士族で、メルクロも幼い頃から剣の修行をさせられていたため、徴兵制度で10代後半に軍隊に入った頃には『剣豪メルクロ』と呼ばれるほどの腕前だった。
しかし、そこまでの腕を持ちながら、メルクロは兵士を志願しなかった。
幼い頃より「医者になりたい」という夢があったからだ。
文武両道。医者になるための知識は、剣と同時に学んできた。
2年の兵役が明けると、親の反対を押し切って家を飛び出した。
たどり着いたクエナの町で診療所を開き、妻と出逢い、1年後には息子も授かった。
だがそれは束の間の幸福だった。
数年後に戦況が悪化し、メルクロは国家命令で戦場へ招集されることになった。
挙句、その戦争によって片足を失い、戦火に巻き込まれたクエナでは、妻と子の命を敵兵に奪われた。
戦線から離脱すると、家族を失った悲しみを乗り越えるため、そして、戦争で奪った命への償いをするため、一生医者としてその身を捧げる決意をした。
間もなくして戦争を終結する王都が誕生する頃には、メルクロの医者としての腕は評判となっていた。
今では王都を始め、各地にある小国から貴重な人材として重宝されている。
そんな名医がこの町に留まっているのは、この地で医者として生きて行く決意をしたこともあるが、妻子の眠る墓標もあるからだ。
幼い頃にこの町に身を寄せたデュークは、メルクロから剣術や学問をはじめ、生き抜くために必要なこと、人として大切なこと、様々なことを教わった。
一度は死をも覚悟した、失意のどん底から救ってくれたのもメルクロだった。
どんなに辛くとも生きている。生かされている意味を考える必要があるのだ、と…。
戦争でいろいろなものを失ったが、皮肉にも得ることもあったという自身の昔話を、幼かったデュークにメルクロはよく話してくれていた。
そんな尊敬する先生のもとに、日ごといろいろな国から使者が訪ねてきて、各々の国に召し抱えようとしてくる様子も知っていた。
少年が警戒するのも無理はないのだ。
「名乗らずにすまない。俺はデューク。昔、この町で暮らしていたんだ。先生にとても世話になった」
それを聞いた少年の瞳が輝いた。
「デューク…?…聞いてます!先生が息子のように育てて…すごく強い剣士になった…って」
急に敬語になった様子にデュークは苦笑したが、自身に対する過大評価には小さく首を振った。
「いや、強いかどうかは…ただ、先生の教えのお陰でここまで生きているのは確かだな。今も旅の途中なんだが…先生に頼みたいことがあって、ここに立ち寄ったんだ」
「そうでしたか…。知らずに失礼しました。オレはミューって言います。馬、お預かりして、先生に伝えますね」
デュークがシェルドナの手綱を預けると、ミューは「任せてください」と答え、歩き出す。
「ありがとう。頼んだぞ、ミュー」
半エルフの少年と愛馬の後姿を見送りながらも、隣で震えているサフォーネをこのまま放っても置けず、デュークは残った子供たちに衣服店への案内を頼んだ。
衣服店はドワーフの夫婦が営んでいた。
店の中に入ってきたデュークとサフォーネを見ると、両手をさすりながら出迎えて親しげな笑顔を浮かべる。
サフォーネに合う服が欲しいことを伝えると、夫人が小さな瞳を見開いた。
「んまぁ、なんてかわいらしいお嬢さん。ちょうどいい素敵な服がありますよ~」
汚れは落としたものの、髪もまだ整っていない。『かわいらしい』というのは客商売ならではの表現なのだろうが、サフォーネが少女に見えたのは間違いないようだ。
甲高い声とともに夫人が持ち出してきたのは、袖口や裾にひらひらとしたフリルがついた、女性用の服だった。
服をあてがわられてきょとんとしたサフォーネだったが、店の中の鏡を見て、その姿が気に入ったのかはしゃいでいる。
「あぁ、待て待て。悪いな店主。こいつは男なんだ。もう少し動きやすい服を頼む。それから…」
デュークが慌てて訂正し、声を潜めるように「羽根人仕様のもので」と付け加えると「えぇ!」と夫婦そろって驚きの声を上げたが、いそいそと主人の方が背中に切り込みがある羽根人向けの服と脚を包める履物を持ち出してきた。
「お身体に合いそうな羽根人仕様の服はこれくらいしかないのですが…もしお気に召さなければ、祖人仕様の服をお直しいたしますんで…」
クエナの町はおろか、祖人や他の種族が暮らす町には羽根人仕様の服は殆どない。
差し出されたチュニックは、綿素材の若草色の生地を下地に、麻を混在した月白色に染められた生地が表面に重なり、充分防寒対策の取れそうなものだった。
膝上までの履物も、月白色の獣の皮があしらわれていて暖かそうである。
どちらも奇跡的にもサフォーネの体にぴたりと合う大きさだった。
店主の心配をよそに、試着したサフォーネは着心地がよさそうな顔をしている。
「どうだ、気に入ったか?」というデュークの問いかけにこくんと嬉しそうに頷いた。
デュークはドワーフの夫婦に代金を支払うと店を出て、外で待っていた子供たちの案内で今度はサフォーネを散髪屋に連れて行く。
そこはデュークが子供の頃には無かった店だった。
もともとは木造で質素だった家を、色飾りタイルなどを貼り付けて華やかに演出しているのは、その店の主人の趣味なのだろうか…。
扉を開けると軽やかに鳴りだす鈴の音。細身で長身の店主が出迎えてくれた。
「この子の髪を綺麗に揃えて欲しいんだが…」
デュークがサフォーネを前に差し出し注文すると、店主は嘆きの声を上げた。
「あーら、素敵な髪色なのに、どうしてこんなことになってるの~?」
祖人の店主は外見は男であったが、中身は繊細な女性のようだった。
乱雑に切られたサフォーネの髪を見て一瞬天井を仰いだが、間髪入れずにサフォーネの肩をがっしり掴むと瞳を輝かせた。
「わかったわ!任せて頂戴。私が綺麗にしてあげる!」
散髪屋としての腕が鳴り始めたか、言うや否やサフォーネを洗髪台の椅子に座らせ、素晴らしい速さでその髪を洗い始めた。
店内を石鹸の香りが漂い始める。充分髪を洗い終えると、店主は手際よく切り始めた。
途中、デュークが恐れていたくしゃみをサフォーネがしたが、それは小さかったため、背中の翼もちょっとだけ顔を出したというハプニングになった。
それを見ても「あら、素敵なアクセサリーね」というだけの店主の大らかさには感謝しかなかった。
「はい、お待たせしました。完成よ~。どうかしら~?」
椅子に腰かけ、軽くうたた寝をしながら待っていたデュークはその声に顔を上げる。
そこには、髪を肩のあたりまで切り揃えてもらったサフォーネが、店主に連れられて立っていた。
「……サフォーネ…?」
目の前の天使は、出会ったときのみすぼらしい姿など微塵もなかった。
デュークは改めてサフォーネの美しさを認識する。
湖で洗った時には落とし切れなかった髪の汚れが、綺麗に洗ってもらったお陰で艶やかに光っている。
ゆるくウェーブがかかった毛先が頬にかかり、その肌の白さを強調する。
前髪が揃えられると、赤色の大きな瞳がさらに際立って、それはやはり少女に見えなくもない顔立ちだった。ひょっとしたら両性体なのではないかと思うほどであった。
羽根人には男性と女性の特徴を両方兼ねそろえた両性体も存在する。
希少なため珍しく思われるが、それが故に持っている能力が他の天使とは違う、というものでもなかった。むしろ身体が弱く、短命の者もいる。
そして、きわめて美しいものが多い、ということなのだが、サフォーネは間違いなく己と同性なのだ。
考えを巡らせていると、散髪屋が代金を催促するよう、にんまりした顔でこちらを見ていた。
デュークは軽く咳払いをすると散髪屋に代金を支払い、サフォーネを連れて店を出た。
子供たちが次はどこに行くのだろうと、好奇心の目を向けて待っていたが、あとはもうメルクロの家に向かうだけだ。
その場所は町の外れにある林の奥で、デュークの記憶にもしっかり刻まれている。
デュークとサフォーネは子供たちとともに林の入り口まで来ると、そこで子供たちとは別れ、診療所に続く小道を二人で歩んでいった。
まっすぐに伸びる小道は、落ち葉の絨毯と化していた。
冷たい突風が小さなつむじ風を作り、落ち葉を舞い上がらせる。
この道は何度も行き来した。
幼い頃、両親に連れられて通った道。
嘆いて飛び出して走った道。
失望して戻ってきた道。
そして旅立った道…。
小道の落ち葉を、買ってもらったばかりの靴で踏みしめると、かさかさと音が鳴る。
サフォーネはその音を楽しんでいるようだった。
ゆっくり歩んではまた数歩戻って小走りで駆けてくる。それを何度か繰り返していた。
その様子を見ながら、デュークは徐に話し出した。
「メルクロ先生と出会ったのは、俺が4歳くらいの頃なんだ」
デュークの言葉に、サフォーネは落ち葉を踏み鳴らすのをやめて耳を傾ける。
曇りのない大きな瞳で見返されると、サフォーネにどこまで理解してもらえるか分からず苦笑がもれたが、デュークは話を続けた。
「俺の翼は、産まれた時は白かった。成長とともに色が変わってきて…それを心配した両親が先生の噂を聞きつけて、診てもらうことにしたんだよ。それから定期的に診てもらっていたんだが、ある日…取り返しのつかない事件が起きて…完全に黒く染まった」
サフォーネと出会って以来、異端という己の存在に再び向き合ってきた。
そしてこの時、ずっと封じようとしてきた心に抱えている闇をデュークは掘り起こそうとしたのだが、そこまではできなかった。
思い出して語れるほど、その闇は浄化されてもいなければ、祓う事すらできていない。
ましてや、目の前の純真な天使にそのことを告げる勇気がなかった。
どこか苦しそうなデュークの様子に、サフォーネは心配している旨を伝えたいのか、背中の翼を手ぶりで表現しながら、首をかしげてみせた。
サフォーネのそんな様子に不思議な安堵感を覚えて、デュークはふっと息をつく。
「呪わしい色だと母が嘆いた。俺は…俺が産まれ背負った罪の色が、翼を染めたのだと思った。…だが、先生は『翼の色の変化は突然変異、自然現象の一つ』と、そんなことを一蹴して、母親から見放された俺を引き取ってくれたんだ。俺はその時まだ7歳だった」
遠くに見えてきた懐かしい小屋の景色に目を細めながら、デュークはサフォーネにあの小屋だというように指さしてみせた。
「先生から生きる術をいろいろ学んだ。あの人には感謝しきれない」
小屋の扉が開き、先ほど出会った半エルフのミューが出てきて手を振り、シェルドナが繋がれている馬小屋を指示した。
それに応えるようにデュークが軽く手を上げると、ミューの後ろから、義足の片足を軽く引きずったメルクロが出てくるのが見えた。
「おぉ、デューク!元気だったか」
恰幅のいい体型で、身長はそれほど高くないが、昔は戦場の一線で活躍したことを思わせる筋肉質の腕を大きく広げ、メルクロはデュークを迎え入れた。
「先生、お久しぶりです。変わりなくお元気そうで」
「お前はまたずいぶんと背が伸びたな。身体も鍛えているようで何よりだ」
再会を喜ぶ握手と抱擁とともに、メルクロはその鍛錬を確認するよう、デュークの肩や腕を軽く叩いた。
「町はだいぶ様子が変わった気がしますが…知り合いもほとんどいなかった」
「あぁ…町長の奴がな…良かれと思っていろいろ改革した結果、出て行った者もいたからな…」
メルクロが他人事のように話すのは、町の中心から外れたこの場所で、自由気ままに生きている証でもあった。それが変わらずにいることが、どこかデュークをほっとさせた。
「ん?そちらさんは?」
ふたりの後ろで、所在なさげに地面の落ち葉を靴先でいじっているサフォーネに気が付いたメルクロが声をかけた。
デュークは握手していた手をとくと、サフォーネの背中を押してやりながら、メルクロの前へ連れてきた。
「旅の途中で出会ったんですが、言葉を話せない状態で…」
そう説明しかけた時に、頭上の木から散ってきた落ち葉がサフォーネの鼻を掠めて、大きなくしゃみを誘った。
くしゃん!
途端に、サフォーネの背中に白い翼が広がり、その勢いで落ち葉とともに白い羽が舞い上がった。
「な…羽根人か……こりゃまた…見事な色だ…」
広がった翼に呆気に取られ、舞い散る羽根を見ていたメルクロだったが、サフォーネの髪の色を見て、デュークがなぜ連れてきたのかも理解した。
「とにかく、中に入りなさい。詳しい話はそれからだ」
サフォーネが羽根人だったことに驚いているミューを促し、メルクロは先だって診療所の中に入っていった。
デュークはサフォーネに翼をしまわせると、一緒にあとから診療所へと入って行く。
そこはデュークにとって、久しぶりに立ち寄る我が家でもあった。
~つづく~
一つは起伏の激しい岩場の道。
これはほぼ直線距離で、シェルドナの足ならば最短三日で行けるものだった。
だが、サフォーネを連れていることもあり、デュークは岩場を迂回し、自生する果樹や小さな集落が点在する緩やかな道のりを選んだ。
二人を乗せるシェルドナの負担を減らし、二人分の食料を調達するためであった。
すると十日ほどで、ようやくクエナの町を遠くに確認することができた。
その間、ずっと翼を操る練習をしてきた甲斐もあったか、サフォーネは翼を格納する感覚をようやく掴めるようになったのだが…。
くしゅん!
温度の低い空気が鼻を刺激し、反射的に出たくしゃみで翼が放出されたりなど、まだまだ完璧ではなく、こちらの道のりは険しそうだった。
「飛ぶ練習はまだ先になりそうだな…」
それでもまた翼をしまおうと悪戦苦闘する様子を見て、肩をすぼめたデュークは、サフォーネを馬の前に乗るように促し、己の背に下がっている外套をくるむように羽織らせた。
「ようやくこっち側に乗せられるようになったな。くしゃみしていきなり翼出すなよ?」
空を見上げれば、雲行きも怪しい。雨になる前にと、デュークはシェルドナに走るように命じた。
二人が町に到着したのは夕暮れを迎える少し前の頃で、大きな黒い馬が町の中央にある小さな噴水にやってくれば、好奇心旺盛な子供たちが集まって出迎えてくれた。
ここは祖人やエルフ、ドワーフなどが共同生活している町で、子供達もさまざまな種族がいた。
「ひとまず、服を買うか。そのままでは寒いだろ」
デュークに抱擁されるように馬に乗ってきたサフォーネは、その間は暖かかったものの、馬を下りれば急激に寒さを感じて少し震えていた。
デュークは辺りを見渡した。
思えばこの町を出たのは十年ほど前。ところどころ様変わりをしている様子だった。
町の入り口近くにあった大木は、落雷のせいか、それとも火事でもあったのか、切り倒された場所に焦げ跡を残して無くなっていたし、十年前にはこの広場の噴水はただの水汲み場だった。
幼い頃に身を寄せたこの町には様々な思い出がある。
町の中を見渡すと、その頃の自分がそこかしこに映し出される。
医者の言いつけで買い物によく行った雑貨店はまだあった。
同い年くらいの子供たちと足の速さを競った小さな坂は、石畳が少し荒れていたがまだあった。
悲しく辛いことも多かったが、将来への糧となるものをたくさん学んだ場所でもあった。
町を出てから一度だけ、5年前に立ち寄ったことはあるが、その時はわずか数日滞在しただけで、その時の町の様子は覚えていない。
ただ、住居地区はだいぶ建て直しがあったようで、子供の頃からの知り合いがかなり減っているのは何となく気が付いていた。
デュークは周囲に集まってきた子供たちに、衣服店と散髪屋の場所を尋ね、さらに医者がまだこの町にいるか確認してみた。
「メルクロ先生なら、昔から同じ場所にずっといるよ。オレそこで今、助手してるんだ」
尖った耳をぴくっと動かしながら、他の子どもたちを押しのけるようにして前に出てきたのは、サフォーネよりも頭一つ背が低い半エルフの少年だった。
半エルフとはエルフと祖人の間に産まれた者。
エルフの特徴である尖った耳を持ち、祖人の体力を供え、優しく強い心根を持つ者が多い。
「そうか、それならこの馬を先生のところへ連れていってくれるか?用事を終えたら訪ねていきます、と伝えてくれ」
デュークはシェルドナの手綱を少年に預けようとしたが、少年は受け取らず、真面目な顔で言葉を返してきた。
「構わないけど、あなた誰?先生の知り合い?先生はこの町に必要な人なんだ。知らない人と簡単に会わせる訳にはいかないから」
どこか警戒している様子にデュークは小さく息を吐いた。
今から50年以上も前、大陸には数多い小国が存在し、領土を奪い合う争いが頻繁にあった。
中でも、祖人を中心とする国と国との間では、その争いごとを諫めるために国家を統一しようという思想が芽生え、大きな戦が絶えなかったという。
そんな戦争が絶えない時代に、メルクロは産まれた。
その家柄は騎士を多く輩出する士族で、メルクロも幼い頃から剣の修行をさせられていたため、徴兵制度で10代後半に軍隊に入った頃には『剣豪メルクロ』と呼ばれるほどの腕前だった。
しかし、そこまでの腕を持ちながら、メルクロは兵士を志願しなかった。
幼い頃より「医者になりたい」という夢があったからだ。
文武両道。医者になるための知識は、剣と同時に学んできた。
2年の兵役が明けると、親の反対を押し切って家を飛び出した。
たどり着いたクエナの町で診療所を開き、妻と出逢い、1年後には息子も授かった。
だがそれは束の間の幸福だった。
数年後に戦況が悪化し、メルクロは国家命令で戦場へ招集されることになった。
挙句、その戦争によって片足を失い、戦火に巻き込まれたクエナでは、妻と子の命を敵兵に奪われた。
戦線から離脱すると、家族を失った悲しみを乗り越えるため、そして、戦争で奪った命への償いをするため、一生医者としてその身を捧げる決意をした。
間もなくして戦争を終結する王都が誕生する頃には、メルクロの医者としての腕は評判となっていた。
今では王都を始め、各地にある小国から貴重な人材として重宝されている。
そんな名医がこの町に留まっているのは、この地で医者として生きて行く決意をしたこともあるが、妻子の眠る墓標もあるからだ。
幼い頃にこの町に身を寄せたデュークは、メルクロから剣術や学問をはじめ、生き抜くために必要なこと、人として大切なこと、様々なことを教わった。
一度は死をも覚悟した、失意のどん底から救ってくれたのもメルクロだった。
どんなに辛くとも生きている。生かされている意味を考える必要があるのだ、と…。
戦争でいろいろなものを失ったが、皮肉にも得ることもあったという自身の昔話を、幼かったデュークにメルクロはよく話してくれていた。
そんな尊敬する先生のもとに、日ごといろいろな国から使者が訪ねてきて、各々の国に召し抱えようとしてくる様子も知っていた。
少年が警戒するのも無理はないのだ。
「名乗らずにすまない。俺はデューク。昔、この町で暮らしていたんだ。先生にとても世話になった」
それを聞いた少年の瞳が輝いた。
「デューク…?…聞いてます!先生が息子のように育てて…すごく強い剣士になった…って」
急に敬語になった様子にデュークは苦笑したが、自身に対する過大評価には小さく首を振った。
「いや、強いかどうかは…ただ、先生の教えのお陰でここまで生きているのは確かだな。今も旅の途中なんだが…先生に頼みたいことがあって、ここに立ち寄ったんだ」
「そうでしたか…。知らずに失礼しました。オレはミューって言います。馬、お預かりして、先生に伝えますね」
デュークがシェルドナの手綱を預けると、ミューは「任せてください」と答え、歩き出す。
「ありがとう。頼んだぞ、ミュー」
半エルフの少年と愛馬の後姿を見送りながらも、隣で震えているサフォーネをこのまま放っても置けず、デュークは残った子供たちに衣服店への案内を頼んだ。
衣服店はドワーフの夫婦が営んでいた。
店の中に入ってきたデュークとサフォーネを見ると、両手をさすりながら出迎えて親しげな笑顔を浮かべる。
サフォーネに合う服が欲しいことを伝えると、夫人が小さな瞳を見開いた。
「んまぁ、なんてかわいらしいお嬢さん。ちょうどいい素敵な服がありますよ~」
汚れは落としたものの、髪もまだ整っていない。『かわいらしい』というのは客商売ならではの表現なのだろうが、サフォーネが少女に見えたのは間違いないようだ。
甲高い声とともに夫人が持ち出してきたのは、袖口や裾にひらひらとしたフリルがついた、女性用の服だった。
服をあてがわられてきょとんとしたサフォーネだったが、店の中の鏡を見て、その姿が気に入ったのかはしゃいでいる。
「あぁ、待て待て。悪いな店主。こいつは男なんだ。もう少し動きやすい服を頼む。それから…」
デュークが慌てて訂正し、声を潜めるように「羽根人仕様のもので」と付け加えると「えぇ!」と夫婦そろって驚きの声を上げたが、いそいそと主人の方が背中に切り込みがある羽根人向けの服と脚を包める履物を持ち出してきた。
「お身体に合いそうな羽根人仕様の服はこれくらいしかないのですが…もしお気に召さなければ、祖人仕様の服をお直しいたしますんで…」
クエナの町はおろか、祖人や他の種族が暮らす町には羽根人仕様の服は殆どない。
差し出されたチュニックは、綿素材の若草色の生地を下地に、麻を混在した月白色に染められた生地が表面に重なり、充分防寒対策の取れそうなものだった。
膝上までの履物も、月白色の獣の皮があしらわれていて暖かそうである。
どちらも奇跡的にもサフォーネの体にぴたりと合う大きさだった。
店主の心配をよそに、試着したサフォーネは着心地がよさそうな顔をしている。
「どうだ、気に入ったか?」というデュークの問いかけにこくんと嬉しそうに頷いた。
デュークはドワーフの夫婦に代金を支払うと店を出て、外で待っていた子供たちの案内で今度はサフォーネを散髪屋に連れて行く。
そこはデュークが子供の頃には無かった店だった。
もともとは木造で質素だった家を、色飾りタイルなどを貼り付けて華やかに演出しているのは、その店の主人の趣味なのだろうか…。
扉を開けると軽やかに鳴りだす鈴の音。細身で長身の店主が出迎えてくれた。
「この子の髪を綺麗に揃えて欲しいんだが…」
デュークがサフォーネを前に差し出し注文すると、店主は嘆きの声を上げた。
「あーら、素敵な髪色なのに、どうしてこんなことになってるの~?」
祖人の店主は外見は男であったが、中身は繊細な女性のようだった。
乱雑に切られたサフォーネの髪を見て一瞬天井を仰いだが、間髪入れずにサフォーネの肩をがっしり掴むと瞳を輝かせた。
「わかったわ!任せて頂戴。私が綺麗にしてあげる!」
散髪屋としての腕が鳴り始めたか、言うや否やサフォーネを洗髪台の椅子に座らせ、素晴らしい速さでその髪を洗い始めた。
店内を石鹸の香りが漂い始める。充分髪を洗い終えると、店主は手際よく切り始めた。
途中、デュークが恐れていたくしゃみをサフォーネがしたが、それは小さかったため、背中の翼もちょっとだけ顔を出したというハプニングになった。
それを見ても「あら、素敵なアクセサリーね」というだけの店主の大らかさには感謝しかなかった。
「はい、お待たせしました。完成よ~。どうかしら~?」
椅子に腰かけ、軽くうたた寝をしながら待っていたデュークはその声に顔を上げる。
そこには、髪を肩のあたりまで切り揃えてもらったサフォーネが、店主に連れられて立っていた。
「……サフォーネ…?」
目の前の天使は、出会ったときのみすぼらしい姿など微塵もなかった。
デュークは改めてサフォーネの美しさを認識する。
湖で洗った時には落とし切れなかった髪の汚れが、綺麗に洗ってもらったお陰で艶やかに光っている。
ゆるくウェーブがかかった毛先が頬にかかり、その肌の白さを強調する。
前髪が揃えられると、赤色の大きな瞳がさらに際立って、それはやはり少女に見えなくもない顔立ちだった。ひょっとしたら両性体なのではないかと思うほどであった。
羽根人には男性と女性の特徴を両方兼ねそろえた両性体も存在する。
希少なため珍しく思われるが、それが故に持っている能力が他の天使とは違う、というものでもなかった。むしろ身体が弱く、短命の者もいる。
そして、きわめて美しいものが多い、ということなのだが、サフォーネは間違いなく己と同性なのだ。
考えを巡らせていると、散髪屋が代金を催促するよう、にんまりした顔でこちらを見ていた。
デュークは軽く咳払いをすると散髪屋に代金を支払い、サフォーネを連れて店を出た。
子供たちが次はどこに行くのだろうと、好奇心の目を向けて待っていたが、あとはもうメルクロの家に向かうだけだ。
その場所は町の外れにある林の奥で、デュークの記憶にもしっかり刻まれている。
デュークとサフォーネは子供たちとともに林の入り口まで来ると、そこで子供たちとは別れ、診療所に続く小道を二人で歩んでいった。
まっすぐに伸びる小道は、落ち葉の絨毯と化していた。
冷たい突風が小さなつむじ風を作り、落ち葉を舞い上がらせる。
この道は何度も行き来した。
幼い頃、両親に連れられて通った道。
嘆いて飛び出して走った道。
失望して戻ってきた道。
そして旅立った道…。
小道の落ち葉を、買ってもらったばかりの靴で踏みしめると、かさかさと音が鳴る。
サフォーネはその音を楽しんでいるようだった。
ゆっくり歩んではまた数歩戻って小走りで駆けてくる。それを何度か繰り返していた。
その様子を見ながら、デュークは徐に話し出した。
「メルクロ先生と出会ったのは、俺が4歳くらいの頃なんだ」
デュークの言葉に、サフォーネは落ち葉を踏み鳴らすのをやめて耳を傾ける。
曇りのない大きな瞳で見返されると、サフォーネにどこまで理解してもらえるか分からず苦笑がもれたが、デュークは話を続けた。
「俺の翼は、産まれた時は白かった。成長とともに色が変わってきて…それを心配した両親が先生の噂を聞きつけて、診てもらうことにしたんだよ。それから定期的に診てもらっていたんだが、ある日…取り返しのつかない事件が起きて…完全に黒く染まった」
サフォーネと出会って以来、異端という己の存在に再び向き合ってきた。
そしてこの時、ずっと封じようとしてきた心に抱えている闇をデュークは掘り起こそうとしたのだが、そこまではできなかった。
思い出して語れるほど、その闇は浄化されてもいなければ、祓う事すらできていない。
ましてや、目の前の純真な天使にそのことを告げる勇気がなかった。
どこか苦しそうなデュークの様子に、サフォーネは心配している旨を伝えたいのか、背中の翼を手ぶりで表現しながら、首をかしげてみせた。
サフォーネのそんな様子に不思議な安堵感を覚えて、デュークはふっと息をつく。
「呪わしい色だと母が嘆いた。俺は…俺が産まれ背負った罪の色が、翼を染めたのだと思った。…だが、先生は『翼の色の変化は突然変異、自然現象の一つ』と、そんなことを一蹴して、母親から見放された俺を引き取ってくれたんだ。俺はその時まだ7歳だった」
遠くに見えてきた懐かしい小屋の景色に目を細めながら、デュークはサフォーネにあの小屋だというように指さしてみせた。
「先生から生きる術をいろいろ学んだ。あの人には感謝しきれない」
小屋の扉が開き、先ほど出会った半エルフのミューが出てきて手を振り、シェルドナが繋がれている馬小屋を指示した。
それに応えるようにデュークが軽く手を上げると、ミューの後ろから、義足の片足を軽く引きずったメルクロが出てくるのが見えた。
「おぉ、デューク!元気だったか」
恰幅のいい体型で、身長はそれほど高くないが、昔は戦場の一線で活躍したことを思わせる筋肉質の腕を大きく広げ、メルクロはデュークを迎え入れた。
「先生、お久しぶりです。変わりなくお元気そうで」
「お前はまたずいぶんと背が伸びたな。身体も鍛えているようで何よりだ」
再会を喜ぶ握手と抱擁とともに、メルクロはその鍛錬を確認するよう、デュークの肩や腕を軽く叩いた。
「町はだいぶ様子が変わった気がしますが…知り合いもほとんどいなかった」
「あぁ…町長の奴がな…良かれと思っていろいろ改革した結果、出て行った者もいたからな…」
メルクロが他人事のように話すのは、町の中心から外れたこの場所で、自由気ままに生きている証でもあった。それが変わらずにいることが、どこかデュークをほっとさせた。
「ん?そちらさんは?」
ふたりの後ろで、所在なさげに地面の落ち葉を靴先でいじっているサフォーネに気が付いたメルクロが声をかけた。
デュークは握手していた手をとくと、サフォーネの背中を押してやりながら、メルクロの前へ連れてきた。
「旅の途中で出会ったんですが、言葉を話せない状態で…」
そう説明しかけた時に、頭上の木から散ってきた落ち葉がサフォーネの鼻を掠めて、大きなくしゃみを誘った。
くしゃん!
途端に、サフォーネの背中に白い翼が広がり、その勢いで落ち葉とともに白い羽が舞い上がった。
「な…羽根人か……こりゃまた…見事な色だ…」
広がった翼に呆気に取られ、舞い散る羽根を見ていたメルクロだったが、サフォーネの髪の色を見て、デュークがなぜ連れてきたのかも理解した。
「とにかく、中に入りなさい。詳しい話はそれからだ」
サフォーネが羽根人だったことに驚いているミューを促し、メルクロは先だって診療所の中に入っていった。
デュークはサフォーネに翼をしまわせると、一緒にあとから診療所へと入って行く。
そこはデュークにとって、久しぶりに立ち寄る我が家でもあった。
~つづく~
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