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第一章

9 人工栽培

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「というわけでいろいろ試してもらいたいと思います!」
 時刻は夕方である。とりあえずのんびりとレオンハルトとのピクニックを終え、その後再びステラやエオの目撃情報を探し、そして税金の不正徴収についての情報収集を終えてバラ園を訪れたところだ。
 正直どれか一個くらい仕事を投げ出したいところだが、一番投げ捨てられる薬草の人工栽培の件が一番捗ってしまっているので捨てるに捨てられない。
(まぁこの件に関してはとりあえずカークスさんに仕事をお願いして、後は結果が出るまで放置でいいだろう)
 この件でミモザに必要なのは一応努力しましたよ、という証拠であって成果ではない。
 何故ならばダメ元の嫌がらせで振られた仕事だからだ。
 気分的には夏休みの読書感想文を書いているのに近い。要するに『取り組んだ』という事実が大事なのであって、素晴らしい文章を書くことは二の次でいいのだ。
 それにうまくすればそこそこの成果もあげられるかも知れない。
 ミモザは突然話を振られて訝しげな顔をするカークスに優しく微笑みかけると
「バイト代出します!」
 とサムズアップしてみせた。
「よし! やってやろうじゃねぇか! まぁまずは時給から聞こうか!」
 カークスのやる気は俄然上がったようだ。
 ミモザはカークスにすすす、と歩み寄るとその耳元に口を寄せた。
 カークスは最初は興味深げにふんふんと頷いていたが、やがて訝しげな表情になり、ミモザがやって欲しいことを伝え終わると嫌そうな顔で「いや、嬢ちゃんよぉ、そりゃ別にできるはできるが、一体何だってそんな物を……」と苦言をていした。
「まぁまぁそう言わず、今言った場所の土で試しに育ててみてくださいよ」
 ミモザは笑顔ではい、と種とお金を渡す。そしてその笑みを怪しいものへと変えて悪巧みをするようににやりと笑った。
「第4の塔と獣道にあって、第3の塔と街道にないものなーんだ?」
 そのなぞなぞにカークスはしばし考え込んだ後、「まさか」と彼は顔をしかめた。
「もし嬢ちゃんの推測が当たってたらこの薬草はとんでもねぇもんを養分にしてることになるぞ」
「まぁ、可能性はいくつかありますから。空振りなら空振りでいいんですよ」
 ミモザはカークスの察しの良さににんまりとする。
「重要なのはまだ試していない可能性を潰すということなので」
「そりゃあ、試す人間は少ねぇだろうよ」
 カークスは微妙な顔で頭を掻くと「まぁ、任せとけ」と請け負った。
「こりゃあもしかしたら成功しちまうかも知れねぇ。きっちり育てさせてもらうぜ。こいつは結構育ちが早いから結果が出るまで一週間ってとこだな」
「よろしくお願いします」
 ミモザはにこにこと仕事を手渡した。
 これでミモザは少なくとも向こう一週間はこの件について考える必要がなくなったわけである。
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