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美しい装飾の街
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「今日は定休日だよ! 帰りな!!」
宿屋の主とおぼしき老齢の女性は、ドアを開けたとたんに不機嫌そうにそう言い捨てた。
「はぁ!? 冗談だろ? 今日は祭りだ! 稼ぎ時だろ!!」
肩を怒らせて抗議するジルをじろじろと観察すると老女はふん、と鼻を鳴らした。
「そんなこと知るもんか。この宿屋はあたしのもんだよ。つまりはあたしがルールだ。たとえ世間が祭りだろうが、葬式だろうが、天変地異が起きようが、世界が終わろうが、あたしが開かないと言えば開かないんだよ!」
老女は綺麗に真っ白に染まった髪を神経質なまでにきっちりとお団子に結い上げ、細い緑色のの目をつり上げて立っていた。
小柄で身長はイヴより頭一つ高い程度のものだろう。
しかし、手を腰にあてた堂々とした立ち姿が実物以上の存在感を与えていた。
「ねぇ、おばあさん、本当に駄目なの?」
イヴはひょこりとジルの背後から姿を現して横から口を挟んだ。
「くどいよ! 駄目なもんは駄目さ!」
「こんなに美少女なのに?」
可愛らしく人さし指をあごに当て、首を傾げて見せる。
「自分で言うその性根が駄目じゃ」
イヴの提案は一蹴された。
まったくもって、どいつもこいつも失礼な奴らばかりである。イヴの美少女さはもう少し大切にされてしかるべきではないだろうか。
背後で呆れたようにため息をつくジルのことは軽く後ろ足で蹴っ飛ばしておいた。
改めて、老女に向き直る。
「じゃあ、わかったわ。1晩だけ雇ってちょうだい。わたし達はお客さんじゃなくて日雇い従業員よ」
「……なんだって?」
いぶかしげに聞き返してくる老女に、イヴはにやりと笑う。
かかった。
不気味な笑みに背後でジルとリオンが後ずさる。
「言葉通りの意味よ。今晩だけわたし達はあなたの宿屋に雇われるわ。賃金は今晩の宿でけっこうよ」
にっこりと花のように微笑んだイヴをしばらく見つめると、老女はふん、と鼻を鳴らした。
「人手はもう十分だよ」
「あらら? そうかしら。その割には屋根が所々剥げているわね。ドアの上にも蜘蛛の巣がかかっているわ。お客が入る予定がないのに髪をきっちり結い上げて身ぎれいにするおばあさんらしくない失態ね」
「………」
「わたし達なら屋根の上にも上れるし、高いところにある蜘蛛の巣だって払えるわ」
「……………」
「さっきから腰に手を当てたままね、おばあさん。立ったままでいるのも腰に負担がかかるんじゃないかしら?」
「…………………………」
「部屋の中の椅子までエスコートするわ」
まるでダンスにでも誘うように手を差し出すと、老女は無言でその手を払った。
「椅子にぐらい一人で座れるよ! いいかい! あたしは決して歳なわけじゃないからね! ただ、せっかくの定休日だから、ほんの少し楽をするだけさ!」
「わかっているわ、おばあさん。休日はぜひともだらだらするべきよ!」
部屋へ戻る老女の後に弾む足取りで続くイヴに、ジルとリオンは顔をしばし見合わせた後にゆっくりとついて行った。
まったくもって女というのは強かな生き物である。
宿屋の主とおぼしき老齢の女性は、ドアを開けたとたんに不機嫌そうにそう言い捨てた。
「はぁ!? 冗談だろ? 今日は祭りだ! 稼ぎ時だろ!!」
肩を怒らせて抗議するジルをじろじろと観察すると老女はふん、と鼻を鳴らした。
「そんなこと知るもんか。この宿屋はあたしのもんだよ。つまりはあたしがルールだ。たとえ世間が祭りだろうが、葬式だろうが、天変地異が起きようが、世界が終わろうが、あたしが開かないと言えば開かないんだよ!」
老女は綺麗に真っ白に染まった髪を神経質なまでにきっちりとお団子に結い上げ、細い緑色のの目をつり上げて立っていた。
小柄で身長はイヴより頭一つ高い程度のものだろう。
しかし、手を腰にあてた堂々とした立ち姿が実物以上の存在感を与えていた。
「ねぇ、おばあさん、本当に駄目なの?」
イヴはひょこりとジルの背後から姿を現して横から口を挟んだ。
「くどいよ! 駄目なもんは駄目さ!」
「こんなに美少女なのに?」
可愛らしく人さし指をあごに当て、首を傾げて見せる。
「自分で言うその性根が駄目じゃ」
イヴの提案は一蹴された。
まったくもって、どいつもこいつも失礼な奴らばかりである。イヴの美少女さはもう少し大切にされてしかるべきではないだろうか。
背後で呆れたようにため息をつくジルのことは軽く後ろ足で蹴っ飛ばしておいた。
改めて、老女に向き直る。
「じゃあ、わかったわ。1晩だけ雇ってちょうだい。わたし達はお客さんじゃなくて日雇い従業員よ」
「……なんだって?」
いぶかしげに聞き返してくる老女に、イヴはにやりと笑う。
かかった。
不気味な笑みに背後でジルとリオンが後ずさる。
「言葉通りの意味よ。今晩だけわたし達はあなたの宿屋に雇われるわ。賃金は今晩の宿でけっこうよ」
にっこりと花のように微笑んだイヴをしばらく見つめると、老女はふん、と鼻を鳴らした。
「人手はもう十分だよ」
「あらら? そうかしら。その割には屋根が所々剥げているわね。ドアの上にも蜘蛛の巣がかかっているわ。お客が入る予定がないのに髪をきっちり結い上げて身ぎれいにするおばあさんらしくない失態ね」
「………」
「わたし達なら屋根の上にも上れるし、高いところにある蜘蛛の巣だって払えるわ」
「……………」
「さっきから腰に手を当てたままね、おばあさん。立ったままでいるのも腰に負担がかかるんじゃないかしら?」
「…………………………」
「部屋の中の椅子までエスコートするわ」
まるでダンスにでも誘うように手を差し出すと、老女は無言でその手を払った。
「椅子にぐらい一人で座れるよ! いいかい! あたしは決して歳なわけじゃないからね! ただ、せっかくの定休日だから、ほんの少し楽をするだけさ!」
「わかっているわ、おばあさん。休日はぜひともだらだらするべきよ!」
部屋へ戻る老女の後に弾む足取りで続くイヴに、ジルとリオンは顔をしばし見合わせた後にゆっくりとついて行った。
まったくもって女というのは強かな生き物である。
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