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盗人世にはばかり

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 そうして分かれ道になって、それぞれ違う方向に行くことがわかったイヴ達一行と商人は別れを告げた。
 商人としては行き先が同じであればジルという護衛がいた方が良いので出来るだけ一緒に移動したいと考えていたのだが、残念なことだ。
 和やかなお別れを済ませて、しばらく。次の街について護衛を雇おうか、と商人が吟味している最中に、
「旦那さま! これを見てください!」
 血相を変えた御者が何やら紙を手に駆け寄ってきた。
 この御者は御者としての腕はそこそこ確かだが、少々感情を面に出しすぎるきらいがあった。主人はそれを寛容な態度で受け入れる。
「なんだ、どうした? 価格の暴落でも起こったのかい?」
「違いますよ! これ! 魔王を誘拐した反逆者って!」
 そこには3人組という記載と出奔した時刻などが書かれていた。
「都を出立した時間と距離を合わせると、彼らでもおかしくないですよ! もしかしたら、彼らが……っ」
「そこまでだ、イーリー」
 商人は御者の言葉を遮って黙らせる。
「いいかい、彼らは私達の命の恩人だ。たとえおまえの仮定が合っていたとしても裏切るような真似は人間としてするようなものじゃない。もしも通報するのならば、彼らに直接尋ねて真相がわかってからでなくては」
 商人とはいえ、否、人との繋がりが大事な商人だからこそある程度は人情深くなくてはね、と諭す。
「しかし……っ」
「それに、私には彼らがここに書いてあるような極悪非道の人間とは思えないね」
 もしここに書いてあることが真実のすべてであるのならば、私達もついでに殺して馬車ごと奪っていきそうなものだ。
 実は商人は彼らが魔王の子の誘拐犯ではないかと薄々感づいていた。
 気づいたのは幼い子どもが女神様の目の色の石を手にするのを戸惑った時だ。
 “女神様の敵”と呼ばれる存在など魔獣か魔王しかいない。
「女神様の目と同じ色の瞳をした少女に、その瞳の色の石をたいそう大切そうに身につける子ども、そしてその子どもらを守る獣人が国賊か。ずいぶんと笑える冗談だな」
「……旦那様」
「彼らは我々を助けてくれた通りすがりの善意の第三者さ。それでいいだろう」
 商人はひらひらと手を振った。
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