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5英雄の断罪
不当逮捕
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「どういうことなのっ!?」
不作法なのは今更だ。欠片の配慮もなくジュリアは金切り声を上げた。
その勢いと声量に知らせを持ってきた使者達は耳を押さえてわずかに身を引く。しかしそんなことでは収まらないほどに今のジュリアは興奮していた。
「あのぅ、そのぅ、そこに書いてある通りでして……」
「だから! この内容について聞いているのよ! 一体なにがどうなってこんな沙汰が下るのよ!!」
「いや、しかしこれは国王からのお達しで……」
「そんなことはどうでも良いのよ! 一体どういう理由かを説明しなさいと言っているの! 貴方こんな簡単な言葉も理解できないの!?」
「ジュリア」
たじたじと下がる令状を携えた老年の使者に、らちがあかないと考えたのかルディが割り込んだ。そのたしなめるような何かを達観したかのような言い方が癪に障り、「何よ!」とジュリアは更に噛み付く。
「貴方! 貴方も言ってやりなさいよ! いいえ、貴方が言ってやるべきだわ! きちんと抗議なさい!」
ジュリアのその言葉に、しかし彼は緩く首を横に振ることで答えた。
「いいのです、ジュリア。これが国が俺に求めたことだというのならば、俺は大人しくそれを受け入れましょう」
「おおっ!」
「はぁ……っ!?」
使者は感嘆の、ジュリアは批難の声を上げた。
「ばっかじゃないの!? それを受け入れるってことは、貴方は死ぬってことよ!」
そう、ジュリアの言葉通り、その令状を受け入れるということは死を意味していた。
なぜならば彼らは、黒竜の討伐によりその配下にいた魔物達の統率が失われ活動が活性化し、それによる被害が国内各地で増加したとの理由でその行為に荷担した被疑者としてルディ・レナードを罪人として捉えに来たのだから。
しかし彼はその言葉を軽い頷き一つで了承した。
「黒竜を殺したことが罪だというのならば、それを為したのは確かにこのルディ・レナードです。それを否定することはできません」
「うむ、うむ、それでこそ英雄。いや、実に潔い。我が輩感服いたしましたぞ!」
満足気に頷くひげ面使者をジュリアはぎろりとねめつけた。それにか細い悲鳴を上げながらもさすがは国に仕えている公僕なだけはあるのか、面の皮も厚く腰が引けながらも「と、捕らえろぉっ」と背後に控える屈強な部下達に命令を下した。
「こ、この命令に反するということはぁ、国家への反逆を意味するぅっ。公務執行妨害及び国家反逆罪で捕らえられたくなければ下がれ! 下がれぃっ!」
「……っ」
そう言われてはさすがのジュリアも無理強いはできない。何せ彼の携えた書簡は紛れもなく本物であり、その証に王家の印がくっきりと押されているのであった。
使者達に自ら両腕を差し出し大人しく連行されながら、ふとルディは振り返って「ジュリア」と彼女を呼んだ。
「貴方のことだけが心配です。くれぐれも防衛体制を整えてください」
「人のことを心配している場合!? そんな暇があるなら自分の身でも案じていなさい!!」
腹立たしさに唸るジュリアにふっ、と微笑むとそのままルディは立ち去ってしまった。
不作法なのは今更だ。欠片の配慮もなくジュリアは金切り声を上げた。
その勢いと声量に知らせを持ってきた使者達は耳を押さえてわずかに身を引く。しかしそんなことでは収まらないほどに今のジュリアは興奮していた。
「あのぅ、そのぅ、そこに書いてある通りでして……」
「だから! この内容について聞いているのよ! 一体なにがどうなってこんな沙汰が下るのよ!!」
「いや、しかしこれは国王からのお達しで……」
「そんなことはどうでも良いのよ! 一体どういう理由かを説明しなさいと言っているの! 貴方こんな簡単な言葉も理解できないの!?」
「ジュリア」
たじたじと下がる令状を携えた老年の使者に、らちがあかないと考えたのかルディが割り込んだ。そのたしなめるような何かを達観したかのような言い方が癪に障り、「何よ!」とジュリアは更に噛み付く。
「貴方! 貴方も言ってやりなさいよ! いいえ、貴方が言ってやるべきだわ! きちんと抗議なさい!」
ジュリアのその言葉に、しかし彼は緩く首を横に振ることで答えた。
「いいのです、ジュリア。これが国が俺に求めたことだというのならば、俺は大人しくそれを受け入れましょう」
「おおっ!」
「はぁ……っ!?」
使者は感嘆の、ジュリアは批難の声を上げた。
「ばっかじゃないの!? それを受け入れるってことは、貴方は死ぬってことよ!」
そう、ジュリアの言葉通り、その令状を受け入れるということは死を意味していた。
なぜならば彼らは、黒竜の討伐によりその配下にいた魔物達の統率が失われ活動が活性化し、それによる被害が国内各地で増加したとの理由でその行為に荷担した被疑者としてルディ・レナードを罪人として捉えに来たのだから。
しかし彼はその言葉を軽い頷き一つで了承した。
「黒竜を殺したことが罪だというのならば、それを為したのは確かにこのルディ・レナードです。それを否定することはできません」
「うむ、うむ、それでこそ英雄。いや、実に潔い。我が輩感服いたしましたぞ!」
満足気に頷くひげ面使者をジュリアはぎろりとねめつけた。それにか細い悲鳴を上げながらもさすがは国に仕えている公僕なだけはあるのか、面の皮も厚く腰が引けながらも「と、捕らえろぉっ」と背後に控える屈強な部下達に命令を下した。
「こ、この命令に反するということはぁ、国家への反逆を意味するぅっ。公務執行妨害及び国家反逆罪で捕らえられたくなければ下がれ! 下がれぃっ!」
「……っ」
そう言われてはさすがのジュリアも無理強いはできない。何せ彼の携えた書簡は紛れもなく本物であり、その証に王家の印がくっきりと押されているのであった。
使者達に自ら両腕を差し出し大人しく連行されながら、ふとルディは振り返って「ジュリア」と彼女を呼んだ。
「貴方のことだけが心配です。くれぐれも防衛体制を整えてください」
「人のことを心配している場合!? そんな暇があるなら自分の身でも案じていなさい!!」
腹立たしさに唸るジュリアにふっ、と微笑むとそのままルディは立ち去ってしまった。
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