91 / 151
遅刻魔は救世主
しおりを挟む
その日は、クロたちともふもふしてそのまま寝てしまった。
そして、次の日。今日から僕はちゃんと授業を受けられる。
「それじゃ、一時限目を始める……って、またあの子遅刻?」
僕は朝のHRが終わったらクラスを離れるので未だに隣の人を見たことが無かった。
頬杖をついて出入り口を見ていると、タッタッタッと走る音が聞こえ、ドアがバンッ!! と開いた。
「す、すみません!!」
「まったく、また遅刻?」
「すみません。お手伝いが時間かかってしまって」
「分かってるわ。それに、まだ授業も始まってなかったから良いわ。早く席につきなさい」
「ありがとうございます」
その子は、少し身長の高い女の子だった。
「あれ? 君誰?」
「はじめまして。この間編入して来たイサミです」
「あぁ、あの子か。試合観たわよ」
「っ!? そ、そう、ですか」
「ありがとうね」
「……え?」
僕は、そこで感謝の言葉を貰えるとは思わなかった。怖いだとか、恐怖の感情を言ってくるのかと思っていたからだ。
「私、だけじゃないわね。あの、ファンクラブには他の生徒達も先生達も迷惑していたのよ。ほんと、それを解散までさせてくれたんだから、ありがたいわ」
「……そうなんだ」
「知らなかったの?」
「知らなかったです。みんな、僕の事怖がって近づいて来ませんから」
あの日、ファンクラブのリーダーを倒した後、出入り口にミルさん達が立っていた。まるで、化物を見る目で僕のことを見ていた。
異世界は、確かに危険がいっぱいだ。だから力は必要だ。でも、行き過ぎた力は唯の恐怖にしか映らない。
「あぁ、確かにあれは怖かったね。でも、あれは、『高嶺の花束』の人達のために怒ってたんでしょ?」
「うん」
「だったら、シャキッとしなさいよ。あれで、『高嶺の花束』の人達は確かに救われたんだから」
「……ありがとう」
「そうだ。私の名前言ってなかったわね。リュメルよ。よろしくね」
「うん。リュメルさん? よろしくお願いします」
僕がそう言うと、リュメルさんは目をパチパチしていた。
「そ、その。僕、皆さんより年下なので」
「え? 何才?」
「9才です」
「……ぷ、アハハハハ!!」
「そこ! うるさいわよ!」
「「す、すみません」」
「リュメルで良いわよ。よろしくね、イサミ」
「はい!」
僕は、救われた。リュメルのお陰で救われた。
僕はずっと怖かった。本当は、ミルさんたちの事を助けようとして、僕の方が迷惑だったんじゃないのかと思っていた。
でも、リュメルのお陰で僕は、そうじゃなく、本当にミルさんたちは救われたたと知れたことが出来た。
僕がやった事は間違いじゃなかった。
今日のお昼。僕はミルさん達に会いに行く事を決意した。
そして、次の日。今日から僕はちゃんと授業を受けられる。
「それじゃ、一時限目を始める……って、またあの子遅刻?」
僕は朝のHRが終わったらクラスを離れるので未だに隣の人を見たことが無かった。
頬杖をついて出入り口を見ていると、タッタッタッと走る音が聞こえ、ドアがバンッ!! と開いた。
「す、すみません!!」
「まったく、また遅刻?」
「すみません。お手伝いが時間かかってしまって」
「分かってるわ。それに、まだ授業も始まってなかったから良いわ。早く席につきなさい」
「ありがとうございます」
その子は、少し身長の高い女の子だった。
「あれ? 君誰?」
「はじめまして。この間編入して来たイサミです」
「あぁ、あの子か。試合観たわよ」
「っ!? そ、そう、ですか」
「ありがとうね」
「……え?」
僕は、そこで感謝の言葉を貰えるとは思わなかった。怖いだとか、恐怖の感情を言ってくるのかと思っていたからだ。
「私、だけじゃないわね。あの、ファンクラブには他の生徒達も先生達も迷惑していたのよ。ほんと、それを解散までさせてくれたんだから、ありがたいわ」
「……そうなんだ」
「知らなかったの?」
「知らなかったです。みんな、僕の事怖がって近づいて来ませんから」
あの日、ファンクラブのリーダーを倒した後、出入り口にミルさん達が立っていた。まるで、化物を見る目で僕のことを見ていた。
異世界は、確かに危険がいっぱいだ。だから力は必要だ。でも、行き過ぎた力は唯の恐怖にしか映らない。
「あぁ、確かにあれは怖かったね。でも、あれは、『高嶺の花束』の人達のために怒ってたんでしょ?」
「うん」
「だったら、シャキッとしなさいよ。あれで、『高嶺の花束』の人達は確かに救われたんだから」
「……ありがとう」
「そうだ。私の名前言ってなかったわね。リュメルよ。よろしくね」
「うん。リュメルさん? よろしくお願いします」
僕がそう言うと、リュメルさんは目をパチパチしていた。
「そ、その。僕、皆さんより年下なので」
「え? 何才?」
「9才です」
「……ぷ、アハハハハ!!」
「そこ! うるさいわよ!」
「「す、すみません」」
「リュメルで良いわよ。よろしくね、イサミ」
「はい!」
僕は、救われた。リュメルのお陰で救われた。
僕はずっと怖かった。本当は、ミルさんたちの事を助けようとして、僕の方が迷惑だったんじゃないのかと思っていた。
でも、リュメルのお陰で僕は、そうじゃなく、本当にミルさんたちは救われたたと知れたことが出来た。
僕がやった事は間違いじゃなかった。
今日のお昼。僕はミルさん達に会いに行く事を決意した。
0
お気に入りに追加
241
あなたにおすすめの小説
幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜
海月 結城
ファンタジー
ストーカーが幼馴染みをナイフで殺そうとした所を庇って死んだ俺は、気が付くと異世界に転生していた。だが、目の前に見えるのは生い茂った木々、そして、赤ん坊の鳴き声が3つ。
そんな俺たちが捨てられていたのが孤児院だった。子供は俺たち3人だけ。そんな俺たちが5歳になった時、2人の片目の中に変な紋章が浮かび上がった。1人は悪の化身魔王。もう1人はそれを打ち倒す勇者だった。だけど、2人はそんなことに興味ない。
しかし、世界は2人のことを放って置かない。勇者と魔王が復活した。まだ生まれたばかりと言う事でそれぞれの組織の思惑で2人を手駒にしようと2人に襲いかかる。
けれども俺は知っている。2人の力は強力だ。一度2人が喧嘩した事があったのだが、約半径3kmのクレーターが幾つも出来た事を。俺は、2人が戦わない様に2人を守護するのだ。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】天候を操れる程度の能力を持った俺は、国を富ませる事が最優先!~何もかもゼロスタートでも挫けずめげず富ませます!!~
うどん五段
ファンタジー
幼い頃から心臓の悪かった中村キョウスケは、親から「無駄金使い」とののしられながら病院生活を送っていた。
それでも勉強は好きで本を読んだりニュースを見たりするのも好きな勤勉家でもあった。
唯一の弟とはそれなりに仲が良く、色々な遊びを教えてくれた。
だが、二十歳までしか生きられないだろうと言われていたキョウスケだったが、医療の進歩で三十歳まで生きることができ、家での自宅治療に切り替わったその日――階段から降りようとして両親に突き飛ばされ命を落とす。
――死んだ日は、土砂降りの様な雨だった。
しかし、次に目が覚めた時は褐色の肌に銀の髪をした5歳くらいの少年で。
自分が転生したことを悟り、砂漠の国シュノベザール王国の第一王子だと言う事を知る。
飢えに苦しむ国民、天候に恵まれないシュノベザール王国は常に飢えていた。だが幸いな事に第一王子として生まれたシュライは【天候を操る程度の能力】を持っていた。
その力は凄まじく、シュライは自国を豊かにするために、時に鬼となる事も持さない覚悟で成人と認められる15歳になると、頼れる弟と宰相と共に内政を始める事となる――。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載中です。
無断朗読・無断使用・無断転載禁止。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる