上 下
75 / 147

ダンジョン攻略~2~

しおりを挟む
 荒廃する世界を攻略するダンジョン。
 今まで読んできたどのラノベにも載っていないダンジョン。
 地球での知識など殆ど役に立たないだろう。

 そんな事を考えながら荒れ狂う平原を歩くこと数分、僕たちは一体の魔物に出くわした。
 その魔物は、地面の中を泳ぐように移動し、イルカのように跳ねて現れた。
 そんな魔物の容姿もまるで海の生き物のようだった。と言うか、ほとんど魚を変わらない。何か違うところを挙げろと言われたら、手が四本あるのとその大きな巨体だろう。

「こんな序盤で詰まるわけにもいかないよな」
「お、フォレス、やるのか?」
「うん、ちょっと、離れてて」

 こういった魔物はラノベで良く見た。物理攻撃は絶対的に無力化してくる。そして、生半可な魔法も効かない。だから、中級者には絶望的な相手なわけだ。
 だがしかし、僕にはそんなの防御力などあったないようなものだ。

「悪いな、ここで過ごした時間が外と同じ時間だとは限らないから、速めに終わらせるぞ」

 そいつ、適当に『ランドフィッシュ』とでも呼んでおこう。
 ランドフィッシュは、僕の言葉を理解したのか、大きな咆哮を挙げて地面に潜り込んだ。
 地面に潜ると、ランドフィッシュの移動音が全く聞こえない。
 それに、地面の中でランドフィッシュは地面と魔力を統一することで自分の魔力を隠すことが出来る。

 それがとても面倒だ。
 音も聞こえない、魔力で探知も出来ない。だから、何処から出てくるのかが分からない。

「全く、面倒くさい魔物が居たもんだな」
「これからは、こんな魔物がうじゃうじゃ出てくるぞ!」

 あれだな、こいつを倒したら『私はこのダンジョンで最弱』とか言ってきそうだ。

「さて、これを使うのも久しぶりだな」

 僕は、久しぶりの重力魔法を発動しようとしていた。
 最近は全く使っていなかったが、それはみんなの前でのことだ。こっそり一人での練習は行っていた。

 初めて使ったときは魔力消費が激しすぎて気絶して倒れてしまったが、その頃よりかは魔力の総量は増えている。

「今までは下向きにだけベクトルを操ることが出来たけど、それじゃ、お前みたいに硬そうなやつには意味ないんじゃないかと思うんだ。ま、やってみるか」

 地面にいるランドフィッシュは探知不可能。それでも、必ずこっちに攻撃を仕掛けるはずだ、ならば、この周り一帯を潰してしまえばいい。

 そして、人差し指を下に向けたと同時に周りの地面、自分を中心に横30メートル、360度の地面が縦10メートルほど10秒間押しつぶされた。
 そこに、ランドフィッシュも死んだように潰されて存在していた。が、閉じていた瞼が開き眼光が煌めいた。

 そいつは、体をグっと縮めて僕に向かって思いっきり跳ねた。
 一瞬で目の前に跳ねてきたそいつの尻尾による攻撃を僕は目で追えず壁に飛ばされた。

 壁にぶち当たったことにより、血と一緒に肺から空気が無理やり吐き出された。

「痛いな、けどまぁ、魔力を背中に集めててよかった」

 少し痛かったが、これであいつが地面に潜ることは難しくなっただろう。

「それじゃ、行くよ」

 僕は壁に足を付けて、思いっきり跳んで全力で殴った。
 そいつの頭部に当たると、ドゴッと大きな音を出して潰れた。
 こっちを見ていた瞳は白目を剝き出しにし、体は2度と動かなかった。

「ふぅ、これで終わりだな」

 戦闘が終わりみんなのいる場所に戻った。

「それじゃ、行こうか」

 終わりに向けて僕たちは向かった。
 向かっている最中、さっきの戦闘のことで何個か質問を受けた。

「なぁ、最後殴る前に壁から跳んだけど、なんか速くなかったか?」
「あれは、自分が跳んだ方向にベクトルを操作して落下速度を加速させたんだよ」
「もう一つ、殴った時もなんであんなに威力上がってたんだ? 確かにフォレスは強いけど、あんなに硬い魔物の頭部をどうやって凹ませたんだ? 弱点の頭部は相当に硬いだろ?」
「それも、さっきとほぼ同じだよ。拳周辺のベクトルを操作したんだよ。強さはさっきの5倍ぐらいはあるけどね」
「フォレスは、大丈夫なの? 気絶とかしない?」
「大丈夫だよ、カリーナ。魔力総量もだいぶ増えたからね」

 そして、終わりに向かって歩いていると、なにか人影が見えた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

憤怒のアーティファクト~伝説のおっさん、娘を探すために現役に復帰し無双する~

ゆる弥
ファンタジー
溺愛していた娘は五年前に探索者として家を出た。 毎日無事を祈っていたが、まさかこんな事になるとは。 消息不明になった娘は俺が探し出す。 現役時代、伝説の探索者であったおっさんの愛娘を捜索する旅が始まる。

【完結】天候を操れる程度の能力を持った俺は、国を富ませる事が最優先!~何もかもゼロスタートでも挫けずめげず富ませます!!~

うどん五段
ファンタジー
幼い頃から心臓の悪かった中村キョウスケは、親から「無駄金使い」とののしられながら病院生活を送っていた。 それでも勉強は好きで本を読んだりニュースを見たりするのも好きな勤勉家でもあった。 唯一の弟とはそれなりに仲が良く、色々な遊びを教えてくれた。 だが、二十歳までしか生きられないだろうと言われていたキョウスケだったが、医療の進歩で三十歳まで生きることができ、家での自宅治療に切り替わったその日――階段から降りようとして両親に突き飛ばされ命を落とす。 ――死んだ日は、土砂降りの様な雨だった。 しかし、次に目が覚めた時は褐色の肌に銀の髪をした5歳くらいの少年で。 自分が転生したことを悟り、砂漠の国シュノベザール王国の第一王子だと言う事を知る。 飢えに苦しむ国民、天候に恵まれないシュノベザール王国は常に飢えていた。だが幸いな事に第一王子として生まれたシュライは【天候を操る程度の能力】を持っていた。 その力は凄まじく、シュライは自国を豊かにするために、時に鬼となる事も持さない覚悟で成人と認められる15歳になると、頼れる弟と宰相と共に内政を始める事となる――。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載中です。 無断朗読・無断使用・無断転載禁止。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...