異世界転生者〜バケモノ級ダンジョンの攻略〜

海月 結城

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行方不明

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 時は遡り約二ヶ月前

「ねぇ、カレンさんがダンジョンから戻ってこなくなって一週間が経ったよ」
「そうだね。泊まりがけって言ってたけど、長いよね」
「三日ぐらいで帰ってくるのが普通なんだけどね。カレンさんは普通じゃないからきっと来週帰ってくるよ」
「そうだよね~」

 シャルは放心状態で数々の仕事をこなしている。

「えっと、Dランクの依頼ですね。貴方は、これです。文句は受け付けません。次の貴方はCランクですね、これです。次の方......」

 こんな感じで、永遠に受け付けを行なっている。しかも、みんなちゃんと依頼を遂行してくるし、ちゃんと仕事してるから、放心状態でも攻める点が見当たらないのだ。

「シャル。お昼だよ~」
「はーい。今行くよ」

 お昼の時だけ魂が戻ってくる。不思議な人。

「ねぇ、シャル」
「ん? 何?」
「いつまで、そんな受け付けの仕方してるのよ」
「カレンさんが帰ってくるまでよ。今の私にはカレンパワーが足りない。そこを尽きかけているわ」
「なによ、それ」

 それからは、適当な会話に花を咲かせながら昼食を食べていた。

 それから一週間が経過した。

「遅いわ。遅すぎるわ」
「ちょっと、シャル? 大丈夫?」
「えぇ、大丈夫ですわ」
「いやいや、言葉遣いが変化してるよ。そんなお嬢様言葉なんて使ってなかったでしょ!?」
「何を言っているのかしら? 私は何も変わっていませんわ」

 シャルはカレンが帰ってこないことにストレスを感じていた。そのせいで、昔の言葉遣いが出てきてしまっていた。

「もしかして、カレンさん......」
「そ、そんなことあるわけないですわ!? カレンさんが死ぬなんて......あってはありません」

 シャルの語尾は小さくなり、カレンが生きていると思うことが出来なくなっていた。

「シャル。そろそろあれ出しましょう」
「......う、うん」

 そして、そのギルドにはカレンの捜索願いが出された。
 最初はみんな、そんなことはあり得ない! と、言っていたが、みんなで必ず見つけ出すと、冒険者はダンジョンに潜っていった。その頃の冒険者たちの功績は素晴らしいものだった。
 Dランクの者がCランク又はBランクまで上がり、Cランクの者がBランク又はAランクまで上がるという、素晴らしい者だった。しかし、それでもカレンを見つけることは出来なかった。
 カレンの捜索願いが出されてさらに一ヶ月が経った。
 受付にシャルの姿は見当たらない。

「はい。これが依頼の報告よ」
「シャ、シャル。大丈夫?」
「えぇ、大丈夫よ。みんなが見つけられないなら、私が見つけるわ!」

 シャルは冒険者になっていた。元々、Cランクの実力を持っていたシャルはカレンが攻略中のダンジョンを一人で二十三階まで攻略していた。それも、たった二週間でだ。
 カレンと比べればとても遅いが、他の人から見たら途轍も無い速さでの攻略だった。

「はい、これが報酬よ」
「ありがとう」

 そして、シャルは夜にも関わらずダンジョンに向かった。しかし、衛兵に止められていた。

 そして、もう一人カレンの事をとても心配している人がいる。それは、ネールちゃんだ。ほぼ毎日朝、昼、夜のどれかでここで食べていたカレンが最近全然帰ってこないことから、ネールちゃんも仕事に集中出来ていなかった。

「ぼーー。ぼーー。ぼーー」

 ネールちゃんは口でぼーーっと言いながら突っ立っていた。

「あれはもうダメよね」
「そうだなぁ。あれじゃ仕事にならんな」
「ちょっと喝を入れてくるわ」

 キャシィは、ネールちゃんに近づき持っていたおぼんでネールちゃんの頭をひっぱたいた。

「イッッッッタ!! ちょっとお母さん! 何するの!!??」
「そんな呆けていたら、いざカレンさんが帰ってきたらどうするのよ? そんな格好のネールちゃんはカレンさんは好きじゃ無いと思うわよ」
「......分かってるよ。けど、本当のお姉ちゃんだと思ってた人が、死んじゃったかもって思うとどうしていいか分からなくて......」
「......ネール」

 そこにいた昼食を食べていた人たちもカレンの事はよく知っている。この街をすくった英雄でもあり、実の娘だと思って接している人もいたりする。だからこそ、カレンがいない今をみんな悲しんでいた。

「ネール。きっとカレンさんは生きているわよ」
「どうして、そう思うの? 私を励ますためだけに言っているだけなら、怒るよ」
「そんなんじゃ無いわよ。ママね、思うんだ。カレンさんは何か不思議な力が守ってるんじゃ無いかなって。それに、人を惹きつける、そんな魅力を持っている人なのよ。そんな人が簡単に死ぬなんてあり得ないわ。だから、私は信じてるのよ。カレンさんは生きていると、何者かが、カレンさんを生かしているんじゃないかなって」

 それを聞いたネールちゃんは、号泣していた。

「う、うわぁぁぁぁぁあ。ママ~~~~」
「よしよし、だから、ネールちゃんは元気な姿を見てもらえるように、元気に仕事しなさい」
「う、うぅ、うん。分かったよ」

 それからのネールちゃんは今までよりも元気いっぱいに宿屋『猫のまんぷく亭』の看板娘をやっていた。
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