異世界転生者〜バケモノ級ダンジョンの攻略〜

海月 結城

文字の大きさ
上 下
19 / 39

帰還〜出発〜

しおりを挟む
「疲れたよ、リリー」

 パレードが終わり、さっきは言わなかったが、屋敷もチラッと見せてもらった。あれは凄かったよ。もうね、ボロボロになってて埃まみれなんだよ。掃除が大変そう。ま、そこは魔法で補うけどね。
 で、今はリリーと2人でテラスで紅茶を飲んでいる。

「はいはい、お疲れ様。カレンは甘えん坊なんだねぇ」
「両親に会えてないからね」
「カレンの両親って気になるな。誰なんですか?」
「ん~? 今は内緒よ」
「ケチ~。そう言えば、いつ戻るんですか?」
「明後日だよ」
「その間どうするんですか?」
「明日は、ギルドに顔だして、簡単な依頼でも受けるよ。それが終わったら暇ね」
「依頼を、受け終わったら、また色々とお話ししましょう!」
「いいよ」

 そうして、宿に戻って眠りについた。帰る道にも人が沢山いて、滅茶苦茶話しかけられて、大変だったよ。
 そして、夜が明けて、私はギルドの扉を開けた。やはりそこには、朝早いのもあり、ガヤガヤと騒いでいる人たちはおらず、掲示板と睨めっこしている人が数人いる程度だった。

「おはようございます。今日はどういったご用事ですか?」
「クエストを受けに来ました。これが、ギルドカードです」
「っ!? Aランク冒険者様でしか!」

 受付嬢にはエルフが多いいらしい。今回の受付嬢も金髪の長い髪に長い耳。透き通った緑色の眼をした。とても綺麗なエルフだった。そして、そこで初めて私と目があった。

「あ、あ、貴女は、英雄様じゃないですか!?」
「え?」

 不意を突かれ、アホな声を出してしまった。

「え? 違うんですか? カレンさんですね?」
「あ、あぁ、そうですよ」
「お目にかかれて光栄ですよ!」
「恥ずかしいので、やめてくださいよ~」

 私は15歳なのだ。とても嬉しいが、恥ずかしい。

「そうですね。一冒険者として扱わないとダメですよね。それで、なんの依頼を受けるんですか?」
「何か余り物ないですか? 1日で終わるようなものでお願いします」
「わかりました!」

 張り切った様子で後ろの膜の中に消えていき、少し経った後紙を持って、戻って来た。

「こちらが、余ったクエストになります」

 そう言って6枚の紙を机の上に出した。採取系が4枚、街中掃除が1枚、教会のお手伝いが1枚。討伐系はなかった。

「この依頼にします」
「わかりました。では、この紙を持ってここに行ってください。ここにサインを貰ってまた来てください。それで依頼完了になります」
「わかりました」

 そして、目的地に歩いていると、どんどん人が少ないところに入って行った。

「ここだよね。すみませーん、ギルドからクエストを受けて来たものでーす」

 扉をコンコン叩いて、そう言うと、建物の横から白い服を着た女の人が来た。

「おはようございます。私は、ここの教会で聖女をしています。マリと言います。今日はよろしくお願いします」
「冒険者のカレンです。何をすればいいですか?」
「そうですね」

 マリさんが考えていると、後ろの方から声が聞こえた。

「マーちゃん。誰、この人?」
「クゥちゃん、この人はね、お手伝いさんのカレンさんよ」
「クゥちゃんって言うの? 私はカレンよ。今日はよろしくね」

 しかし、クゥちゃんは、まだ警戒をしているのか、まりさんの後ろに隠れてしまった。

「すみませんね。まだ警戒しているみたいで」
「いいですよ。私のことを初めてみたんだから、そうなるのは当たり前ですよ」

 今回の依頼は、子供の相手をすることなので、何をしようか考えながら、教会内を歩いていると、後ろからクゥちゃんが付いてきていた。

「どうしたのクゥちゃん?」
「何してるのかなって」
「そうだ。ここに居て、何か助けて欲しいこと何かない?」

 クゥちゃんが、少し考えるように、手を顎に置き、う~ん、と唸ってる。何か考えついたのか、

「こっちきて!」

 私の手を掴みながら、外に向かって走って行く。外に広がっていたのは、荒れた畑だった。

「みんなで頑張った。けど、上手く育たない」
「これは......。簡単だね」

 私は、土の魔法で、土を動かした。

「何やってるの?」
「土をならしているのよ。ここら辺に落ち葉とかない?」
「あるよ」
「だったら、そこで見てるみんなも、手伝ってくれるかな?」

 私が土をならしている時から柱の陰から、5人の子供達がこっちを見ていた。なので、警戒心を無くすために、手伝ってもらうことにした。その思惑は成功し、警戒心は無くなり、キラキラした目でこっちを見ていた。

「持ってきた落ち葉、この畑の中に撒いてくれるかな?」
「「「「「「はーい!」」」」」」
「撒いたら、『流動』」

 これで、グルグルと土と落ち葉は回転し始めた。

「うわぁ、すげ~」
「カッコいい!」

 子供達は、多種多様な反応を見せてくれる。

「よし、これで終わり。あとは、種をまいて、育つのを待つだけだよ。水は、1日1回、お昼にやってね」
「はーい!」

 それからは、警戒心が無くなった子供達と、夕方まで遊んだ。

「ねぇ、もう帰っちゃうの?」
「やることがあるからね~」
「また来てくれる?」
「みんなが、良い子にしてたらまた来るよ」
「わかった、良い子で待ってる」

 子供達は名残惜しいのか、私の服を掴んで離さない。

「これは、みんなにプレゼントだよ」

 そう言って、亜空間から魔石を取り出した。

「これにこうしてっと。完成! はいどうぞ」
「なにこれ?」
「お守りよ。もし、怖いとがあったら、それに、助けてって念じて見てね」
「わかった」

 そして、教会を出た。その時に、紙にサインをもらい、クエスト完了になった。ので、ギルドに向かった。

「クエスト完了しました。確認お願いします」
「はい、確認しました。こちら報酬金になります」
「ありがとうございます。では、」
「ちょっと待ってください。ショーンさんから、カレンさんに伝えて欲しいことがあると言われてます。明日の朝、日が昇る頃に西門前に集合だそうです」
「わかりました」

 それからは、この街でお世話になった人たちに別れの挨拶をして来た。
 そして、朝。
 西門前に向かうと、金の爪の人たち以外に、リリーまでいた。別れの挨拶忘れてた。

「キャシィさんから聞きましたよ! なんで私のところに来てくれないんですか!」
「ごめんね、リリー。忘れてた」
「ムキィー! 忘れてたってなんですか! 友達ですよね!? 酷いじゃないですか!」
「ごめんって、今度一緒に遊んであげるから」
「あ、なら、許します」

 この光景を見た人は思った。チョロいと。

「皆さん、お集まりですね。では、護衛の方お願いします」

 そうして、騒がしい王都での数日間は終わり、また、ダンジョン攻略に戻ることになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...