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 休憩室に入って来たのは国王様だった。

「やぁ、カレンくん。さっきぶりだね」
「そ、そうですね」

 私は、さっきとは打って変わって、気のいいおじいさんの様になっている国王様に驚いていた。

「国王様、どうしてここに?」
「国王様なんてよしてくれ、ここではダムクさんとでも呼んでくれ」
「分かりました、ダムクさん。それで、ここに来た要件ってなんですか?」
「あぁ、君に紹介したい人がいてね」

 もしかして、王子様とかじゃないだろうか? 私は嫌だ! なんか、めんどくさそうだし。

「入って来てくれ」

 ダムクさんが、扉の方を見て呼ぶと、

「失礼します」

 少女のような声が聞こえ、女性が入って来た。

「紹介しよう。私の娘のリリー・ザンリー・シャオルクだ」
「ご紹介に預かりました。シャオルク王国第二王女、リリー・ザンリー・シャオルクです。リリーと呼んでください!」
「初めましてリリー王女様。カレンです」

 王子様じゃなくて隠れてガッツポーズをしてしまった。にしても、王女様か、私と同じぐらいの年かかな? ダムクさんと同じ金色のサラサラと腰まである長い髪。それに深い青の瞳。身長は160といったところかな。そこに、可愛らしいドレスを身にまとっている。

「なんで、王女様を紹介したんですか?」
「それはだな......」
「私から言います。とても恥ずかしいんですが......。わ、私と! お友達になっていただけませんか!?」
「え!?」
「ダメ......ですか?」
「理由を聞かせてくれませか?」
「実は……」

 王女で、ずっと友達がいなくて、兄妹はいて仲良いが、あまり会えないらしい。だから、今回この城来る人が、女性で同じぐらいの年だと知って、友達を作るチャンスだと思った。と、言うことだ。

「だったら、今から一緒に買い物に行きませか?」
「買い物ですか!? 行きたいです! いいですねお父様?」
「あぁ、大丈夫だぞ。楽しんでこいよ」
「はい!」

 それから、王女様がお忍びの服装に着替えて、街に出かけた。

「私のことは、リリーと呼んでくださいね!」
「わかりました。リリーさん」
「ダメです! 敬語も禁止! 呼び捨てで呼んでください!」
「わかったよ。リリー」

 私は、まだリリーとは友達にはなっていない。それは、きちんと理由がある。一緒に居たくない人や、一緒に居て疲れる人とは友達にはなりたくないから、今回の買い物でどうなのかを見極めるためだ。でも、今までの会話でだいたい決まってるけどね。

「それじゃ、カレンさんどこにいきますか?」
「私のことも呼び捨てにしてくださいよ!」
「わかりました。カレン」
「お昼まで時間ありますし、王都を案内してください」
「カレンは、王都に来てそれほど時間たっていませんでしたね。わかりました、任せてください!」

 それから、王都の中心街をリリーに案内してもらった。

「そういえば、明日はパレードの主役ですね!」
「え!? パレードの主役?」
「あれ? 聞いてませんでしたか?」
「聞いてないわよ! それって、馬車に乗って街中を回るやつ?」
「知ってたんですね」

 私は、城のテラスから顔を出す程度だと思っていたら、想像の範疇を超えていた。

「嘘やん」
「大丈夫ですよ。私も一緒に乗ることになっているんでよ」
「それなら、少しは安心できるね」

 まさかの話をされたが、恙無く散策は終わり、城に戻って来た。

「リリー、これで私たちは友達ね」
「本当!? ありがとう!」

 そう言って、リリーは私の手を両手で掴んで来た。ブンブン!

「そんなに激しく振らないでよ」
「嬉しくて、ついね」
「また明日、朝に来るからね」
「そっか~、キャシィさんの宿に戻るんだね。泊まっていけばいいのに」
「また、王都に来た時に、その楽しみはとっておくよ」
「そっか、じゃあ、また明日ね」

 そうして、城を出て宿に戻り、夜が明けた。

「おはようございます」
「カレンさん、今日は楽しみにしてるわよ」
「パレード、ですか」
「緊張するの?」
「しますよ」
「リリー王女も一緒なんでしょ? 大丈夫よ」

 そう言って、送り出してくれた。キャシィさんが応援してくれると、なんだか大丈夫な気がして来たよ。

「カレン様、おはようございます」
「おはようございます。門番さん」
「今日のパレード楽しみにしています!」
「はい」

 そうして、朝早くから城に入り、パレードが始まった。

「あれが、英雄のカレンだってよ。まだ子供じゃねぇか」
「俺、あの時ルシフェルにいたから見てたけど、あれは凄かったぜ。カレンがいなかったら今頃、ここに俺は居なかっただろうな」
「まじかよ」

 ある人はこんな会話をしながら。またある人は、

「あの子をモデルとした新しい商品を売り出せば、ぐふふ」
「何考えてるんだい! このバカ!」ゴチン!
「痛いよ。うっ! 分かったよ、やめるよ」

 こんな商売の会話がなっていたり、

「あれが、英雄。まるで聖女じゃないか。あれは、神が使わした天使なのかもしれない」

 こんな、宗教でもできそうな独り言を言っている人もいて、カレンは人気者だ。そして、王様の演説が始まった。

「皆の者! 今回は、カレンの勇気ある行動。そして、ダンジョン都市ルシフェルを護った功績から、カレンに、勲章を授与する!」
「「「「「ウオォォォォォォオ!」」」」」

 カレンは、豪華な馬車の上で立ち上がり、王様から金の刺繍がなされ、青色のブローチを授与された。

 そして、パレードがお昼前に終わり、今からお祭りの始まりだ。

「カレン。一緒に行きましょう!」
「いいわよリリー!」

 私は、パレードを無事終わらせて(ニコニコしながら手を振っていただけ)、今は純粋にお祭りを楽しんでいた。
 この世界のお祭りはとても大きく、都市丸ごとを使ったお祭りになっている。屋台や、闘技場、サーカスなど色々がひしめき合っている。

「カレンさん!」

 後ろから名前を呼ばれて、なんだろう? と、思いながら後ろを見ると、夫婦が立っていた。

「なんですか?」
「今回は、私たち、みんなを助けていただき本当に、ありがとうございました!」
「カレンさんが居なければ、今頃ルシフェルにいた人たちはもう存在していなかったでしょう。だから、私たちは、カレンさんに大きな、大きな恩があります。それを一生かけて、返させてください!」
「そんなことしなくていいですよ。倒したくて倒しただけですから」

 睡眠を邪魔された腹いせに倒したなんて言えない。

「いえ! 勝手に恩を返させていただきます。あっちに帰ったら驚きますよ」
「先回りされていた」

 あっちに帰ってから、どんな事になるのか、想像ができない。
 そして、それからも、いろんな人にお礼を言われて、ちょっと疲れた。ので、城に戻って来た。それに、もう夜遅くてお祭りも終わりそうだ。

「疲れたよ。リリー」
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