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恋ィィイィッ!?
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「そういえば、また魔法少女が出たんだって!」
いつもの秘密の場所、いつものベンチに二人して座ると、ライラがキラキラと瞳を輝かせて話し始めた。
ライラは魔法少女のファンだ。
魔法少女の噂を聞く度に、熱心にキアラに話してくれた。
「年若い女の子なのに、王国騎士様のような大活躍ですって! 憧れちゃうわ~! 魔法少女キララの噂で王都中は大盛り上がりよ! 私も会ってみたいなぁ~」
ライラは夢見る少女のように、はしゃいだ声をあげた。
キアラはいつも嬉しいような恥ずかしいようなこそばゆい気持ちで、ライラの話に相槌を打っていた。
そして、ずっと「実は私が魔法少女キララなの」と告白できずにいた。
ここまで持ち上げられてしまっては、逆に言い出しづらかった。
「……そういえば、もしかしてキアラ、今日はどこか具合が悪いの?」
ライラが心配そうにキアラを覗き込んだ。
親友は、キアラのちょっとした変化も見逃さないのだ。
「う~ん、昨日からちょっと調子が悪いのよ。なぜか、ある人の顔が頭から離れなくて……」
キアラはギュッと顔をしかめて、指先でこめかみを揉んだ。
「それって、どんな人?」
「う~ん、若い男の人で……イケメンで、イケメンで、イケメンで……」
キアラはライラに訊かれて、昨夜出会った男性を思い返した。
少し気難しそうではあったが、整った理知的な顔立ち。
背が高く、程よく引き締まった体つきで、軍服風の真っ黒な制服がよく似合っていた。
優しげな美青年や騎士らしくマッチョで漢らしいタイプよりも、クールで知的なタイプがキアラの好みだった。
キアラの頬が、ボンッと真っ赤に熟れ上がった。
「やっぱり~」
ライラがニヤリと笑って、キアラの様子を眺めていた。
「な、ななな、何っ!?」
キアラは何が何だか分からなかったが、とにかく恥ずかしくて慌てた。
「それは、恋よ!」
「…………恋…………恋ィィイィッ!?」
親友にズビシと指摘され、キアラは熱くなった頬を押さえて叫んだ。
——その時、キアラ達の後方で、ガサガサと雑草を踏み荒らす音が聞こえてきた。
「へへっ。見ろよ、女の子がいるぜ」
「結構可愛いじゃねぇか」
「お嬢さん達~? 一緒に遊ばない?」
ヘラヘラとゲスい笑みを浮かべた男達が、キアラとライラを値踏みするように見つめていた。どんどん二人の元へ近づいて来ている。
「ど、どうしよう、キアラ……」
ライラが不安そうに、キアラに震える肩を寄せた。
「典型的な悪党ね……しかも、悪党その一~その三までいるし!」
キアラは気丈にも、悪党達をキッと睨み上げた。
(どうしよう……魔法少女キララに変身すれば、こんな悪党達なんてどうってことないけど……)
キアラは、ライラに自分が魔法少女だとあまりバレたくなかった。
今まで勇気がなくて言い出せなかったのに、今さら告げると気まずいということもあるが、何よりも彼女の夢を壊したくなかったのだ。
さらには、自分なんかが魔法少女だと知ったライラが、自分のことをどう思うのかも気になって仕方がなかった。
でも、今はピンチだ。
戦える力を、親友を守れる力を持っているのに、あんな街のチンピラみたいな小悪党達に捕まって、あーんなことやこーんなことをされるのは、絶対に避けたかった。
自分のちっぽけなプライドを優先させる時では無いとは、頭では分かっていた——
「キアラ、悪党の扱いが雑すぎるにゃん……はい、これで変身するにゃん!」
「にゃんタロー!?」
不意に現れたにゃんタローが、何もない空間から魔法少女のステッキを取り出した。
キアラの方に、ポンッと投げてよこす。
「……キアラ、それはまさか……?」
ライラの瞳が、期待でキラリン⭐︎と煌めいた。
(くっ……心の準備もできてないうちに、なし崩し的にバレたっぽい……)
キアラは、後でにゃんタローをしばき倒そうと心に決めた。決して、八つ当たりではない。そう、決して!
そして、腹を括った。
キアラは魔法少女のステッキをギュッと握りしめると、変身の呪文を叫んだ。もうヤケクソだった。
「ええい、女は度胸っ!!! ルクスルクスイントラメ! イルミナーレ!」
キアラが天高く掲げた魔法少女のステッキから、キラキラと虹色に輝く光が溢れ出した。
虹色の光は繭のようにキアラを包み込み、更に眩い光を放っていった。
「わぁ……!」
ライラは感動して、ただただ親友の変身シーンに見入っていた。
「うっ……」
「ぐぐっ……」
「くそ! 動けねぇ……!」
悪党達は身動きができず、呻き声をあげていた。
「変身バンク中の魔法少女は無防備にゃん! み~んな動けなくして、敵の攻撃を防いでるにゃん!」
にゃんタローが、自信満々に解説した。
光の繭がてっぺんから、リボンのようにシュルリシュルリと解けていくと、眩い光の中に一人の少女が立っていた。
金茶色の髪は元気そうなオレンジブラウン色に変わり、ツインテールにヘアアレンジされている。ゆっくりと見開かれた瞳は、綺麗な緑色から意志の強そうな栗色に変わっていた。
白とオレンジ色を基調としたファンシーな衣装で、丈の短いキュロットスカートからは、長く健康的な脚がのぞいている。
そしてキアラは、キュピーーーン⭐︎と決めポーズと口上をキメた。
「女の子をいじめようだなんて、とんだ悪党達ね!! 魔法少女キララが成敗してあげるわ!!!」
ライラは完全に魔法少女キララに魅入っていた。両手を祈るように胸元で組み、「尊い……」と口ずさんでいる。
いつもの秘密の場所、いつものベンチに二人して座ると、ライラがキラキラと瞳を輝かせて話し始めた。
ライラは魔法少女のファンだ。
魔法少女の噂を聞く度に、熱心にキアラに話してくれた。
「年若い女の子なのに、王国騎士様のような大活躍ですって! 憧れちゃうわ~! 魔法少女キララの噂で王都中は大盛り上がりよ! 私も会ってみたいなぁ~」
ライラは夢見る少女のように、はしゃいだ声をあげた。
キアラはいつも嬉しいような恥ずかしいようなこそばゆい気持ちで、ライラの話に相槌を打っていた。
そして、ずっと「実は私が魔法少女キララなの」と告白できずにいた。
ここまで持ち上げられてしまっては、逆に言い出しづらかった。
「……そういえば、もしかしてキアラ、今日はどこか具合が悪いの?」
ライラが心配そうにキアラを覗き込んだ。
親友は、キアラのちょっとした変化も見逃さないのだ。
「う~ん、昨日からちょっと調子が悪いのよ。なぜか、ある人の顔が頭から離れなくて……」
キアラはギュッと顔をしかめて、指先でこめかみを揉んだ。
「それって、どんな人?」
「う~ん、若い男の人で……イケメンで、イケメンで、イケメンで……」
キアラはライラに訊かれて、昨夜出会った男性を思い返した。
少し気難しそうではあったが、整った理知的な顔立ち。
背が高く、程よく引き締まった体つきで、軍服風の真っ黒な制服がよく似合っていた。
優しげな美青年や騎士らしくマッチョで漢らしいタイプよりも、クールで知的なタイプがキアラの好みだった。
キアラの頬が、ボンッと真っ赤に熟れ上がった。
「やっぱり~」
ライラがニヤリと笑って、キアラの様子を眺めていた。
「な、ななな、何っ!?」
キアラは何が何だか分からなかったが、とにかく恥ずかしくて慌てた。
「それは、恋よ!」
「…………恋…………恋ィィイィッ!?」
親友にズビシと指摘され、キアラは熱くなった頬を押さえて叫んだ。
——その時、キアラ達の後方で、ガサガサと雑草を踏み荒らす音が聞こえてきた。
「へへっ。見ろよ、女の子がいるぜ」
「結構可愛いじゃねぇか」
「お嬢さん達~? 一緒に遊ばない?」
ヘラヘラとゲスい笑みを浮かべた男達が、キアラとライラを値踏みするように見つめていた。どんどん二人の元へ近づいて来ている。
「ど、どうしよう、キアラ……」
ライラが不安そうに、キアラに震える肩を寄せた。
「典型的な悪党ね……しかも、悪党その一~その三までいるし!」
キアラは気丈にも、悪党達をキッと睨み上げた。
(どうしよう……魔法少女キララに変身すれば、こんな悪党達なんてどうってことないけど……)
キアラは、ライラに自分が魔法少女だとあまりバレたくなかった。
今まで勇気がなくて言い出せなかったのに、今さら告げると気まずいということもあるが、何よりも彼女の夢を壊したくなかったのだ。
さらには、自分なんかが魔法少女だと知ったライラが、自分のことをどう思うのかも気になって仕方がなかった。
でも、今はピンチだ。
戦える力を、親友を守れる力を持っているのに、あんな街のチンピラみたいな小悪党達に捕まって、あーんなことやこーんなことをされるのは、絶対に避けたかった。
自分のちっぽけなプライドを優先させる時では無いとは、頭では分かっていた——
「キアラ、悪党の扱いが雑すぎるにゃん……はい、これで変身するにゃん!」
「にゃんタロー!?」
不意に現れたにゃんタローが、何もない空間から魔法少女のステッキを取り出した。
キアラの方に、ポンッと投げてよこす。
「……キアラ、それはまさか……?」
ライラの瞳が、期待でキラリン⭐︎と煌めいた。
(くっ……心の準備もできてないうちに、なし崩し的にバレたっぽい……)
キアラは、後でにゃんタローをしばき倒そうと心に決めた。決して、八つ当たりではない。そう、決して!
そして、腹を括った。
キアラは魔法少女のステッキをギュッと握りしめると、変身の呪文を叫んだ。もうヤケクソだった。
「ええい、女は度胸っ!!! ルクスルクスイントラメ! イルミナーレ!」
キアラが天高く掲げた魔法少女のステッキから、キラキラと虹色に輝く光が溢れ出した。
虹色の光は繭のようにキアラを包み込み、更に眩い光を放っていった。
「わぁ……!」
ライラは感動して、ただただ親友の変身シーンに見入っていた。
「うっ……」
「ぐぐっ……」
「くそ! 動けねぇ……!」
悪党達は身動きができず、呻き声をあげていた。
「変身バンク中の魔法少女は無防備にゃん! み~んな動けなくして、敵の攻撃を防いでるにゃん!」
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金茶色の髪は元気そうなオレンジブラウン色に変わり、ツインテールにヘアアレンジされている。ゆっくりと見開かれた瞳は、綺麗な緑色から意志の強そうな栗色に変わっていた。
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そしてキアラは、キュピーーーン⭐︎と決めポーズと口上をキメた。
「女の子をいじめようだなんて、とんだ悪党達ね!! 魔法少女キララが成敗してあげるわ!!!」
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