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バッド・アップル3
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「ぷっはっは。随分成長したな、レイ」
ウィルフレッドはゲラゲラと腹を抱えて笑った。目尻からは涙が出ている。
「……新しく買ったばかりだったのに……」
レイは捕まえたバッド・アップルを背負いかごの中に入れると、しょんぼりと自身に浄化魔術をかけた。土埃もバッド・アップルの汁でできたしみも綺麗に消えはしたが、新品を自ら汚してしまった悔しさは、メンタルにグサッときた。
「いやぁ、初めて口寄せる相手で、あれだけの技を引き出せれば上々だ。本来、口寄せ魔術は難しいんだぞ。部分的にしか技を引き出せない奴の方がほとんどだ」
ウィルフレッドは目尻の涙を拭いながら、一応フォローをしてくれた。
「……まさか、あんな風に飛び込むとは思ってもなかったです……」
レイが口先を尖らせて呟くと、
「七代目のご主人様はよく獲物に飛び付いてましたよ。獲物を逃すよりは、自ら飛び込んで捕まえた方が良い、と。よく泥だらけになられてましたね」
レヴィが淡々と、七代目剣聖の補足情報を教えてくれた。
「もっと早くに教えてよぉ……」
レイはがっくりと肩を落とした。
ウィルフレッドは笑いがぶり返して、苦しそうにお腹を抱えて震えていた。
***
「そろそろりんご畑の中心地に近づいて来たからな。一気にバッド・アップルを追い込むぞ」
ウィルフレッドは、りんご畑内に結界を張った——バッド・アップルを外へ逃さないためだ。
「レヴィはガンガン浄化の鈴を鳴らして、中心地にバッド・アップルを追い立ててくれ。中心に集まったバッド・アップルをみんなで一網打尽にするんだ」
「分かりました」
ウィルフレッドに指示され、レヴィはこくりと頷いた。
「じゃあ、最後の合図を上げるぞ」
ウィルフレッドが片手を空に向けて上げた。光魔術を放つ。青空に、赤々と警告色のような光魔術が弾けた。
すると、リィーンリンリンリーンと、りんご畑のそこら中から猛烈な浄化の鈴の音が聞こえてきた。
捕獲役として集まったユグドラの住民たちが、りんご畑の中心地に向かって一気に走り出した。
レイが呆気にとられていると、
「ほら、レイ、行くぞ! 他のみんなにバッド・アップルを狩られちまうぞ!」
ウィルフレッドに急かされるように手招きをされた。
「はいっ!」
レイはとにかく返事をして、ウィルフレッドたちと一緒に駆け出した。レヴィも、浄化の鈴を勢いよく振りながら、それについて行った。
「きゃっ、何っ!?」
「眩しっ!!」
りんご畑の中心地に近づくと、レイとウィルフレッドは、目もろくに開けていられないほどの眩しさに、声をあげた。
そこでは、ピカピカッと大量の光をばら撒く何かが、高速でそこら中を動き回っていたのだ。
辺りは眩しい光に包まれ、先に来ていたユグドラの住民たちもよく前が見えていないようで、他の人にぶつかったり、足元にいるバッド・アップルにつまづいたりしていた。
「全く。眩しいな」
ニールが影魔術を放った。光り輝いて動いている何かの周りに、暗い影が差す。
サングラスをかけたかのように光量が少し落ち着いたため、レイが瞑っていた目を開けて確かめてみると、そこにいたのは——
「えっ!? りんご!?」
レイはびっくりして、高速移動するそれを目で追った。
ニールの影魔術で影に覆われてはいるが、黄金色に輝く大きなバッド・アップルが、ピカピカッと光ってみんなの目を眩まそうとしていたのだ。
光量は落ちてはいるが、まだ直視するには少し眩しすぎる。
「変異種のバッド・アップルだな。おそらく、ごく稀に実る黄金りんごがアンデッド化されたんだろう」
ニールが目の上に手をかざしながら、冷静に分析した。
「見えるようになりゃ、こっちのもんだ! 大人しく捕まりやがれ!」
ユグドラの住民の一人が、変異種のバッド・アップルに勢いよく飛び付いた。
変異種のバッド・アップルは、高速移動のすり抜けざまに、彼の目の前で一瞬だけ一際強く光を放ち、あっさりと逃げた。
「ぐわぁ! 目がぁ、目がぁあっ!!」
ユグドラの住民は、両目を手で押さえて、地面を転がり回った。
そんな彼の様子を見ていた他のユグドラの住民たちは、ごくりと唾を飲んで、尻込みをした。
「あのバッド・アップル、凶暴すぎる……」
「よりにもよって目の前であんなことを……」
「しかも、スピードが早すぎるだろう! あんなもの、追いつけん!」
ユグドラの住民たちは、ざわざわとそんなことを口にしていた。
「おい、大丈夫か!? 今、治癒魔術をかけてやるぞ!!」
ウィルフレッドは、地面に転がったユグドラの住民に駆け寄ると、すぐさま治療を始めた。
「レイ、十一代目のご主人様です! かの方なら、あのバッド・アップルのスピードについて行けます! 『ストーキング』のスキルです!」
「ストー……えぇっ!!?」
(なんて名前のスキル!!)
レヴィに助言され、あんまりなスキル名の方にレイは心の中でツッコミを入れた。
「レイ、あのバッド・アップルはこの袋に入れた方がいい。中の物の光を外に漏らさない魔道具だ。これに入れてしまえば、眩しくなくなる」
ニールは、レイに真っ黒な袋を手渡した。
(なんで私が捕まえることになってるの!?)
「……あれ? レヴィも十一代目様のスキルは使えるんじゃないの?」
「私は鈴役ですから」
レイが不思議に思って尋ねると、レヴィはキリッとした顔で答えた。どうやら浄化の鈴を任せてもらえたことが相当嬉しかったようだ。
(んもう、仕方がないなぁ……十一代目様!)
レイは口寄せ魔術を使って、十一代目剣聖を呼び起こした。
(ストーキング!)
口には出しづらい、何とも言えないスキル名も、心の中で呟く。
いつものように、レイは自動で身体強化魔術をかけていた。
そして瞬時に、高速移動している黄金色のバッド・アップルの背後に回った。
変異種のバッド・アップルが、いきなり背後を取られてギクリとビクついたのが、レイには手に取るように分かった。
「えいっ!」
レイは、ニールから借りた真っ黒な袋を、変異種のバッド・アップルにバサリとかぶせた。すかさず、きゅっと袋の口を閉じる。
袋内では変異種のバッド・アップルが、モゴモゴ、ゴソゴソとしばらくは激しく暴れていた。ただ、少しすると観念したのか、袋の中身は大人しくなった。
「ふぅ。これで、もう大丈夫……ヒィッ!?」
レイがほっと息を吐きかけた瞬間、袋の中身が異様な念を放ち始めた。
確かに、真っ黒い袋からは光は一切漏れていなかった。
だが、バッド・アップルの微妙な振動と、「も゛も゛も゛……かゆい、うまい……」と呪うようなおぞましい呻き声だけは、しっかりと袋から漏れ出ていた。
(このバッド・アップル! 絶対、捕まえたことを恨んでるでしょ!?)
レイは気持ち悪い物を持つように、袋を指先で摘んで体から離して持った。
バッド・アップルに目は付いていないうえ、さらに袋の中に入っているはずなのに、レイには変異種のバッド・アップルの視線と圧がバッチリと感じられた。
「よぉ~し。面倒くさいバッド・アップルも捕まえたし、残りのやつもさっさと捕まえるか!」
ウィルフレッドは、レイが摘んで持っていた袋を取ると、彼女の背負いかごの蓋を開けて、ボコンッと中に突っ込んだ。もちろん、逃げられないようにきっちりと蓋も閉める。
「師匠ぉ!! 何してるんですかぁ!!?」
レイは渾身の抗議の声をあげた。
背中に特級呪物が増えたのである。当たり前である。
「これはレイが捕まえたんだから、レイの獲物だ。大丈夫、分かってるぞ! 黄金りんごは、みんな欲しがるからな!」
ウィルフレッドは、にかっといい笑顔でレイに笑いかけた。
「そういうことじゃないですっ!!!」
レイは渾身のツッコミを入れていた。
***
バッド・アップルを全て捕獲した後、捕獲役たちは捕まえたりんごを持って、フェリクスの元へと向かった。
フェリクスが展開している浄化魔術の範囲内に足を踏み入れると、背負いかごの中のバッド・アップルたちは、シュウシュウと微かな音を立てて浄化された。
浄化済みのバッド・アップルは、売りに出せるものはまとめてニールが仕入れるようだ。
早速、農園主と捕獲したバッド・アップルの数の確認と商談に入っている。
「レイは珍しく随分やんちゃしたね。呪われかけてるよ」
フェリクスはレイの姿を見て、心配そうに眉を下げた。
フェリクスが軽くレイの肩を払うと、フッとレイの周りの空気が軽くなった。
「やっぱり! あの黄金りんご!!!」
レイは恨めしげに叫んだ。
「うん? 黄金りんご?」
「これですね」
フェリクスがきょとんと首を捻ると、レヴィが真っ黒い袋の中から、浄化済みの黄金りんごを取り出した。
「へぇ。珍しいね。今年は黄金りんごもアンデッド化されてたんだね。大変だっただろう?」
「ふぁい……」
フェリクスが労うように優しくレイの頭を撫でると、レイはほっこりと少し癒された。
「レイ! 琥珀が捕まえた抉れりんごなんだが、このままじゃ売れないし、農園主から許可取って、もらっておいたぞ!」
ウィルフレッドが嬉しそうに、琥珀がケリケリしてしまったために三分の一が抉れてしまったりんごを抱えて持って来た。
「えっ!?」
(ま、まさか……)
レイは何やらいや~な予感がしていた。ぎこちなく、師匠ウィルフレッドの方を振り向く。
「アニータさんに、りんご料理を作ってもらおう!」
ウィルフレッドは、満面の笑みで最後通牒を突きつけた。
ウィルフレッドはゲラゲラと腹を抱えて笑った。目尻からは涙が出ている。
「……新しく買ったばかりだったのに……」
レイは捕まえたバッド・アップルを背負いかごの中に入れると、しょんぼりと自身に浄化魔術をかけた。土埃もバッド・アップルの汁でできたしみも綺麗に消えはしたが、新品を自ら汚してしまった悔しさは、メンタルにグサッときた。
「いやぁ、初めて口寄せる相手で、あれだけの技を引き出せれば上々だ。本来、口寄せ魔術は難しいんだぞ。部分的にしか技を引き出せない奴の方がほとんどだ」
ウィルフレッドは目尻の涙を拭いながら、一応フォローをしてくれた。
「……まさか、あんな風に飛び込むとは思ってもなかったです……」
レイが口先を尖らせて呟くと、
「七代目のご主人様はよく獲物に飛び付いてましたよ。獲物を逃すよりは、自ら飛び込んで捕まえた方が良い、と。よく泥だらけになられてましたね」
レヴィが淡々と、七代目剣聖の補足情報を教えてくれた。
「もっと早くに教えてよぉ……」
レイはがっくりと肩を落とした。
ウィルフレッドは笑いがぶり返して、苦しそうにお腹を抱えて震えていた。
***
「そろそろりんご畑の中心地に近づいて来たからな。一気にバッド・アップルを追い込むぞ」
ウィルフレッドは、りんご畑内に結界を張った——バッド・アップルを外へ逃さないためだ。
「レヴィはガンガン浄化の鈴を鳴らして、中心地にバッド・アップルを追い立ててくれ。中心に集まったバッド・アップルをみんなで一網打尽にするんだ」
「分かりました」
ウィルフレッドに指示され、レヴィはこくりと頷いた。
「じゃあ、最後の合図を上げるぞ」
ウィルフレッドが片手を空に向けて上げた。光魔術を放つ。青空に、赤々と警告色のような光魔術が弾けた。
すると、リィーンリンリンリーンと、りんご畑のそこら中から猛烈な浄化の鈴の音が聞こえてきた。
捕獲役として集まったユグドラの住民たちが、りんご畑の中心地に向かって一気に走り出した。
レイが呆気にとられていると、
「ほら、レイ、行くぞ! 他のみんなにバッド・アップルを狩られちまうぞ!」
ウィルフレッドに急かされるように手招きをされた。
「はいっ!」
レイはとにかく返事をして、ウィルフレッドたちと一緒に駆け出した。レヴィも、浄化の鈴を勢いよく振りながら、それについて行った。
「きゃっ、何っ!?」
「眩しっ!!」
りんご畑の中心地に近づくと、レイとウィルフレッドは、目もろくに開けていられないほどの眩しさに、声をあげた。
そこでは、ピカピカッと大量の光をばら撒く何かが、高速でそこら中を動き回っていたのだ。
辺りは眩しい光に包まれ、先に来ていたユグドラの住民たちもよく前が見えていないようで、他の人にぶつかったり、足元にいるバッド・アップルにつまづいたりしていた。
「全く。眩しいな」
ニールが影魔術を放った。光り輝いて動いている何かの周りに、暗い影が差す。
サングラスをかけたかのように光量が少し落ち着いたため、レイが瞑っていた目を開けて確かめてみると、そこにいたのは——
「えっ!? りんご!?」
レイはびっくりして、高速移動するそれを目で追った。
ニールの影魔術で影に覆われてはいるが、黄金色に輝く大きなバッド・アップルが、ピカピカッと光ってみんなの目を眩まそうとしていたのだ。
光量は落ちてはいるが、まだ直視するには少し眩しすぎる。
「変異種のバッド・アップルだな。おそらく、ごく稀に実る黄金りんごがアンデッド化されたんだろう」
ニールが目の上に手をかざしながら、冷静に分析した。
「見えるようになりゃ、こっちのもんだ! 大人しく捕まりやがれ!」
ユグドラの住民の一人が、変異種のバッド・アップルに勢いよく飛び付いた。
変異種のバッド・アップルは、高速移動のすり抜けざまに、彼の目の前で一瞬だけ一際強く光を放ち、あっさりと逃げた。
「ぐわぁ! 目がぁ、目がぁあっ!!」
ユグドラの住民は、両目を手で押さえて、地面を転がり回った。
そんな彼の様子を見ていた他のユグドラの住民たちは、ごくりと唾を飲んで、尻込みをした。
「あのバッド・アップル、凶暴すぎる……」
「よりにもよって目の前であんなことを……」
「しかも、スピードが早すぎるだろう! あんなもの、追いつけん!」
ユグドラの住民たちは、ざわざわとそんなことを口にしていた。
「おい、大丈夫か!? 今、治癒魔術をかけてやるぞ!!」
ウィルフレッドは、地面に転がったユグドラの住民に駆け寄ると、すぐさま治療を始めた。
「レイ、十一代目のご主人様です! かの方なら、あのバッド・アップルのスピードについて行けます! 『ストーキング』のスキルです!」
「ストー……えぇっ!!?」
(なんて名前のスキル!!)
レヴィに助言され、あんまりなスキル名の方にレイは心の中でツッコミを入れた。
「レイ、あのバッド・アップルはこの袋に入れた方がいい。中の物の光を外に漏らさない魔道具だ。これに入れてしまえば、眩しくなくなる」
ニールは、レイに真っ黒な袋を手渡した。
(なんで私が捕まえることになってるの!?)
「……あれ? レヴィも十一代目様のスキルは使えるんじゃないの?」
「私は鈴役ですから」
レイが不思議に思って尋ねると、レヴィはキリッとした顔で答えた。どうやら浄化の鈴を任せてもらえたことが相当嬉しかったようだ。
(んもう、仕方がないなぁ……十一代目様!)
レイは口寄せ魔術を使って、十一代目剣聖を呼び起こした。
(ストーキング!)
口には出しづらい、何とも言えないスキル名も、心の中で呟く。
いつものように、レイは自動で身体強化魔術をかけていた。
そして瞬時に、高速移動している黄金色のバッド・アップルの背後に回った。
変異種のバッド・アップルが、いきなり背後を取られてギクリとビクついたのが、レイには手に取るように分かった。
「えいっ!」
レイは、ニールから借りた真っ黒な袋を、変異種のバッド・アップルにバサリとかぶせた。すかさず、きゅっと袋の口を閉じる。
袋内では変異種のバッド・アップルが、モゴモゴ、ゴソゴソとしばらくは激しく暴れていた。ただ、少しすると観念したのか、袋の中身は大人しくなった。
「ふぅ。これで、もう大丈夫……ヒィッ!?」
レイがほっと息を吐きかけた瞬間、袋の中身が異様な念を放ち始めた。
確かに、真っ黒い袋からは光は一切漏れていなかった。
だが、バッド・アップルの微妙な振動と、「も゛も゛も゛……かゆい、うまい……」と呪うようなおぞましい呻き声だけは、しっかりと袋から漏れ出ていた。
(このバッド・アップル! 絶対、捕まえたことを恨んでるでしょ!?)
レイは気持ち悪い物を持つように、袋を指先で摘んで体から離して持った。
バッド・アップルに目は付いていないうえ、さらに袋の中に入っているはずなのに、レイには変異種のバッド・アップルの視線と圧がバッチリと感じられた。
「よぉ~し。面倒くさいバッド・アップルも捕まえたし、残りのやつもさっさと捕まえるか!」
ウィルフレッドは、レイが摘んで持っていた袋を取ると、彼女の背負いかごの蓋を開けて、ボコンッと中に突っ込んだ。もちろん、逃げられないようにきっちりと蓋も閉める。
「師匠ぉ!! 何してるんですかぁ!!?」
レイは渾身の抗議の声をあげた。
背中に特級呪物が増えたのである。当たり前である。
「これはレイが捕まえたんだから、レイの獲物だ。大丈夫、分かってるぞ! 黄金りんごは、みんな欲しがるからな!」
ウィルフレッドは、にかっといい笑顔でレイに笑いかけた。
「そういうことじゃないですっ!!!」
レイは渾身のツッコミを入れていた。
***
バッド・アップルを全て捕獲した後、捕獲役たちは捕まえたりんごを持って、フェリクスの元へと向かった。
フェリクスが展開している浄化魔術の範囲内に足を踏み入れると、背負いかごの中のバッド・アップルたちは、シュウシュウと微かな音を立てて浄化された。
浄化済みのバッド・アップルは、売りに出せるものはまとめてニールが仕入れるようだ。
早速、農園主と捕獲したバッド・アップルの数の確認と商談に入っている。
「レイは珍しく随分やんちゃしたね。呪われかけてるよ」
フェリクスはレイの姿を見て、心配そうに眉を下げた。
フェリクスが軽くレイの肩を払うと、フッとレイの周りの空気が軽くなった。
「やっぱり! あの黄金りんご!!!」
レイは恨めしげに叫んだ。
「うん? 黄金りんご?」
「これですね」
フェリクスがきょとんと首を捻ると、レヴィが真っ黒い袋の中から、浄化済みの黄金りんごを取り出した。
「へぇ。珍しいね。今年は黄金りんごもアンデッド化されてたんだね。大変だっただろう?」
「ふぁい……」
フェリクスが労うように優しくレイの頭を撫でると、レイはほっこりと少し癒された。
「レイ! 琥珀が捕まえた抉れりんごなんだが、このままじゃ売れないし、農園主から許可取って、もらっておいたぞ!」
ウィルフレッドが嬉しそうに、琥珀がケリケリしてしまったために三分の一が抉れてしまったりんごを抱えて持って来た。
「えっ!?」
(ま、まさか……)
レイは何やらいや~な予感がしていた。ぎこちなく、師匠ウィルフレッドの方を振り向く。
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