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帰宅
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「ニール、ただいまです!」
レイは、王都ガシュラの外れにあるバレット邸に戻ってくると、元気よく挨拶をした。
「おかえり。どこも怪我はなさそうだね、良かった。それに、また少し大きくなったかな?」
ニールはレイを抱き上げると、目尻に皺を寄せて嬉しそうに微笑んだ。
久々に見る艶麗な美貌は、破壊力抜群で目に毒だ。
「ふふっ。旅の間も、いっぱいお米を食べましたからね!」
レイは、少し自慢げに胸を張った。
「レイ、おかえり」
「義父さん!? どうしてここに!?」
バレット邸の奥から出てきたのは、フェリクスだ。今日は休みの日なのか、大司教の衣装ではなく、品の良いシャツを着ている。
蜂蜜のようにとろりと濃い黄金眼は、レイとの再会を喜ぶようにキラリと煌めいていた。
ニールはレイの脇を支えて、フェリクスに彼女を手渡した。フェリクスも愛おしげにレイを抱き上げる。
「ルーファスから今日ぐらいに王都に着くって連絡があったんだよ。本当だ。少し大きくなったね」
フェリクスもふわりとあたたかく微笑んだ。優しくレイの背中を撫でる。
「ルーファスもレヴィもおかえり」
フェリクスは、バレット邸の出入り口の方に声をかけた。
そこには、旅で少し疲れた様子のルーファスと、レヴィがいた。
「ただいま」
「ただいま戻りました、フェリクス様」
レヴィは淡々と、ルーファスも卒なく挨拶をした。
「立ち話もなんですから、客室に行きましょう」
ニールに先導され、一同はバレット邸の客室に向かった。
***
バレット邸の客室は、屋敷の一階にある。
客室の壁には針葉樹の森を描いた大きな風景画が飾られており、風雅な黒檀のチェストの上には、南国風の立派な花瓶が飾られ、芳しい香りを放つ生花がいけられている。
床に敷かれているカーペットは、遠くサハリア王国から持ち込まれた伝統的な織物だ。
東西南北各地の調度品が一同に会しているのは、手広く商売をしているバレット商会ならではだ。
高級品ばかりが置いてあるというわけではなく、商談もできるように全体的に上品に心地良く整えられていて、嫌味が無い——ニールらしく、実益と適度の見栄えと気配りがバランス良く考えられた、隙のない部屋だ。
全員が黒檀のテーブル席に着くと、メイドが紅茶を淹れて下がって行った。
「レイ、試験はどうだった?」
早速、紅茶で喉を潤した後、フェリクスが相合を崩して尋ねた。
「バッチリ合格しましたよ! 実技試験はレヴィと同じチームでした!」
レイは元気よく答えた。久々に義父と会えて嬉しいのだ。
「レイはきのこの歌でバフが付いて、ノームの土人形にモテてましたよ」
レヴィの一言に、フェリクスとニールの笑顔が一瞬にしてピシリと固まった。
「そうなんです! ノームの里に連れ攫われそうになって、大変だったんですよ!」
レイもレヴィの言葉に相槌を打つ。
「……ノームはもう滅んでもいいんじゃないかな?」
「フェリクス様! 落ち着いてください!」
フェリクスが固まった笑顔のままボソッと呟き、ルーファスがすぐさま血相を変えて懇願した。
「ええ。ノームとの取引はいろいろと考えさせていただきましょう」
ニールも暗い微笑みを浮かべ、何やら物騒なことを口にした。
「ニール様も!」
ルーファスは、今度はニールの方を真っ青な顔色のまま振り向いた。
「でも、もう『ノームにモテる』バフは消えましたし、大丈夫ですよ。それに、ノームにも勝てたので、レアアイテムをもらってきました!」
レイは意気揚々と、空間収納から戦利品のノームの変身帽子を取り出して、テーブルの上に置いた。
ポンポン付きの三角帽子は、この場に似合わず、少しはっちゃけた雰囲気を醸し出していた。
「「…………」」
フェリクスは一切表情を崩さず、ニールは目を眇めて、三角帽子を見つめた。
「うん、珍しい物をもらったね。こういった物は、まず作れる者が少ないからね。大事にするといいよ」
フェリクスは微笑みを浮かべて言った。
「俺でもこの手のものはあまり見かけないな。まず市場には出回らないし、この手の品を他の種族の者にそう簡単に渡すとは考えにくい……レイは相当気に入られたな」
ニールは三角帽子に手を伸ばした。真剣に、帽子をくるくると回し見て、「魔術付与も丁寧だし、種族の気配を変える魔術も珍しいな」と呟く。
「いつ何に使えるか分からないから、大事に取っておいた方がいいな。次は手に入らない可能性が高い。……値段をつけるのは難しいな。ただ、高額にはなる」
ニールは丁寧に三角帽子を折りたたむと、レイに手渡した。
レイは三角帽子を受け取ると、不意にそれをかぶった。
にゅっとレイの耳が少し伸びて、先が尖る。
「どうでしょう?」
レイはいたずらっぽい笑顔を浮かべて尋ねた。
「「「!!?」」」
妖精らしくなったレイを見て、フェリクス、ニール、ルーファスの三人がピシリと固まった。
「とってもかわいい妖精さんだ」
フェリクスがこれでもかと目尻を下げて、レイを褒め称えた。ほこほこと幸せそうなオーラが漏れている。
「ここまで気配が妖精に変わるのか。余計に守りたい雰囲気になるな」
ニールはいつになく色鮮やかな黄金眼を丸く見開いて、ぽろりと呟いた。
「レイはかわいいね」
ルーファスは王子様のように整った優しげな顔に、慈愛の微笑みを浮かべていた。
「……レイ、ずるいです……」
レヴィだけは、少し拗ねていた。みんなにノームの変身帽子は似合わないと言われたことを、まだ気にしているようだった。
「そういえば、一度、ユグドラにも報告に行きたいです。久々にみんなにも会いたいですし」
レイは三角帽子を脱ぐと、王都に戻って来るまでに考えていたことを切り出した。
「そうだねぇ。それなら、一緒にりんご狩りに行こうか? ユグドラの方でそろそろやるんじゃないかな?」
「りんご狩り!? 行ってみたいです!」
フェリクスの誘いに、レイははしゃいで即答した。
(りんご狩り、楽しそう!)
旬のりんご狩りに、レイの心は踊った。
りんごはそのまま食べてもおいしいが、りんごジュースにアップルパイ、ジャムにコンポート、ケーキやヨーグルトのトッピングにと、レイが大好きなメニューが多い。旬なら、なおさら味には期待できる。
「ああ。そういえば、もうそんな時期ですね。ユグドラ産のりんごは魔力が豊富で、香り高いですし、シードルやブランデーの材料としても人気ですから。今年も仕入れさせていただきますよ」
ニールが商売人らしい雰囲気になって、目を細めた。どうやら早くも、りんごの仕入れや得意先についてなど諸々商売のことを思い浮かべているようだ。
「今年のりんごは、去年の花祭りの影響で特に魔力が豊富だから、いつも以上に元気に暴れてるみたいなんだよ。ウィルも人手を欲しがってたしね」
フェリクスがのほほんと語った。
「りんごが、暴れ……???」
レイは、りんごに全くふさわしくない表現に、目が点になった。
(……なんか、いや~な予感が……)
この世界には魔力がある。そして、魔力が影響すれば、ちっぽけな人間の想像をはるかに超えるような超常現象が簡単に起こってしまう——りんごが元気に暴れ回っていてもおかしくはないのだ。
「レイ、是非りんご狩りに行きましょう!」
レヴィが、いつになくキラキラした瞳をレイに向けてきた。
初めてのりんご狩り体験にわくわくしているようだ。
「ウィルには、僕とレイとレヴィで行くって伝えておくね」
「今年のりんごは期待できそうですね。私も行きましょう」
「おや? じゃあ、ニールのことも伝えておくよ」
「恐れ入ります」
フェリクスとニールの間で、どんどんりんご狩りの話が進んでいく。
(……どうしよう、今さらりんご狩りに行きたくないって言えない雰囲気……)
レイは一人、気まずい気持ちを飲み込んだ。
***
ニールとレイとレヴィは、フェリクスとルーファスが教会に戻るため、バレット邸の車寄せまで見送りに出た。
「ルーファスはりんご狩りに来ないんですか?」
レイが少し寂しげにルーファスを見上げると、彼は困ったように眉を下げた。
「ごめんね。たぶん、教会の方に仕事が溜まってると思うから、今回は難しいかな……」
ルーファスが、心底残念そうに伝えた。
レイも「そうですか、残念です……」とガックリと肩を落とした。
レイは不意に両手できゅっとルーファスの手を握った。じっと、彼の淡い黄色の瞳を見つめる。
「ルーファスと一緒にたくさん旅ができて楽しかったです。ルーファスがいろいろ気を配って守ってくれたから、安心して冒険ができましたし、無事にBランク冒険者にもなれました。本当にありがとうございます! これからは黒の塔の仕事ばかりになっちゃうかもしれないですけど、でも、またいつか一緒に冒険しましょう!」
レイは精一杯の笑顔でルーファスにお礼を言った。ちょっぴり、ぐすりと鼻を啜る。
「僕もレイと一緒に旅ができて楽しかったよ。新しい仕事でも、元気に頑張ってね」
ルーファスは少しだけかがむと、ふわりとレイをハグをした。ぽんぽんと優しく彼女の背中を叩く。
「ばいっ!」
レイはぐしぐしと泣きながら、力一杯返事をした。むぎゅっとルーファスに抱きついて、そのままぐずぐずと彼の胸に顔を押し付けた。
ルーファスは、レイが落ち着くまでずっと、優しく彼女の背中を撫でていた。
レイは泣き止むと、フェリクスとルーファスを乗せた馬車が見えなくなるまで、大きく手を振って見送った。
レイは、王都ガシュラの外れにあるバレット邸に戻ってくると、元気よく挨拶をした。
「おかえり。どこも怪我はなさそうだね、良かった。それに、また少し大きくなったかな?」
ニールはレイを抱き上げると、目尻に皺を寄せて嬉しそうに微笑んだ。
久々に見る艶麗な美貌は、破壊力抜群で目に毒だ。
「ふふっ。旅の間も、いっぱいお米を食べましたからね!」
レイは、少し自慢げに胸を張った。
「レイ、おかえり」
「義父さん!? どうしてここに!?」
バレット邸の奥から出てきたのは、フェリクスだ。今日は休みの日なのか、大司教の衣装ではなく、品の良いシャツを着ている。
蜂蜜のようにとろりと濃い黄金眼は、レイとの再会を喜ぶようにキラリと煌めいていた。
ニールはレイの脇を支えて、フェリクスに彼女を手渡した。フェリクスも愛おしげにレイを抱き上げる。
「ルーファスから今日ぐらいに王都に着くって連絡があったんだよ。本当だ。少し大きくなったね」
フェリクスもふわりとあたたかく微笑んだ。優しくレイの背中を撫でる。
「ルーファスもレヴィもおかえり」
フェリクスは、バレット邸の出入り口の方に声をかけた。
そこには、旅で少し疲れた様子のルーファスと、レヴィがいた。
「ただいま」
「ただいま戻りました、フェリクス様」
レヴィは淡々と、ルーファスも卒なく挨拶をした。
「立ち話もなんですから、客室に行きましょう」
ニールに先導され、一同はバレット邸の客室に向かった。
***
バレット邸の客室は、屋敷の一階にある。
客室の壁には針葉樹の森を描いた大きな風景画が飾られており、風雅な黒檀のチェストの上には、南国風の立派な花瓶が飾られ、芳しい香りを放つ生花がいけられている。
床に敷かれているカーペットは、遠くサハリア王国から持ち込まれた伝統的な織物だ。
東西南北各地の調度品が一同に会しているのは、手広く商売をしているバレット商会ならではだ。
高級品ばかりが置いてあるというわけではなく、商談もできるように全体的に上品に心地良く整えられていて、嫌味が無い——ニールらしく、実益と適度の見栄えと気配りがバランス良く考えられた、隙のない部屋だ。
全員が黒檀のテーブル席に着くと、メイドが紅茶を淹れて下がって行った。
「レイ、試験はどうだった?」
早速、紅茶で喉を潤した後、フェリクスが相合を崩して尋ねた。
「バッチリ合格しましたよ! 実技試験はレヴィと同じチームでした!」
レイは元気よく答えた。久々に義父と会えて嬉しいのだ。
「レイはきのこの歌でバフが付いて、ノームの土人形にモテてましたよ」
レヴィの一言に、フェリクスとニールの笑顔が一瞬にしてピシリと固まった。
「そうなんです! ノームの里に連れ攫われそうになって、大変だったんですよ!」
レイもレヴィの言葉に相槌を打つ。
「……ノームはもう滅んでもいいんじゃないかな?」
「フェリクス様! 落ち着いてください!」
フェリクスが固まった笑顔のままボソッと呟き、ルーファスがすぐさま血相を変えて懇願した。
「ええ。ノームとの取引はいろいろと考えさせていただきましょう」
ニールも暗い微笑みを浮かべ、何やら物騒なことを口にした。
「ニール様も!」
ルーファスは、今度はニールの方を真っ青な顔色のまま振り向いた。
「でも、もう『ノームにモテる』バフは消えましたし、大丈夫ですよ。それに、ノームにも勝てたので、レアアイテムをもらってきました!」
レイは意気揚々と、空間収納から戦利品のノームの変身帽子を取り出して、テーブルの上に置いた。
ポンポン付きの三角帽子は、この場に似合わず、少しはっちゃけた雰囲気を醸し出していた。
「「…………」」
フェリクスは一切表情を崩さず、ニールは目を眇めて、三角帽子を見つめた。
「うん、珍しい物をもらったね。こういった物は、まず作れる者が少ないからね。大事にするといいよ」
フェリクスは微笑みを浮かべて言った。
「俺でもこの手のものはあまり見かけないな。まず市場には出回らないし、この手の品を他の種族の者にそう簡単に渡すとは考えにくい……レイは相当気に入られたな」
ニールは三角帽子に手を伸ばした。真剣に、帽子をくるくると回し見て、「魔術付与も丁寧だし、種族の気配を変える魔術も珍しいな」と呟く。
「いつ何に使えるか分からないから、大事に取っておいた方がいいな。次は手に入らない可能性が高い。……値段をつけるのは難しいな。ただ、高額にはなる」
ニールは丁寧に三角帽子を折りたたむと、レイに手渡した。
レイは三角帽子を受け取ると、不意にそれをかぶった。
にゅっとレイの耳が少し伸びて、先が尖る。
「どうでしょう?」
レイはいたずらっぽい笑顔を浮かべて尋ねた。
「「「!!?」」」
妖精らしくなったレイを見て、フェリクス、ニール、ルーファスの三人がピシリと固まった。
「とってもかわいい妖精さんだ」
フェリクスがこれでもかと目尻を下げて、レイを褒め称えた。ほこほこと幸せそうなオーラが漏れている。
「ここまで気配が妖精に変わるのか。余計に守りたい雰囲気になるな」
ニールはいつになく色鮮やかな黄金眼を丸く見開いて、ぽろりと呟いた。
「レイはかわいいね」
ルーファスは王子様のように整った優しげな顔に、慈愛の微笑みを浮かべていた。
「……レイ、ずるいです……」
レヴィだけは、少し拗ねていた。みんなにノームの変身帽子は似合わないと言われたことを、まだ気にしているようだった。
「そういえば、一度、ユグドラにも報告に行きたいです。久々にみんなにも会いたいですし」
レイは三角帽子を脱ぐと、王都に戻って来るまでに考えていたことを切り出した。
「そうだねぇ。それなら、一緒にりんご狩りに行こうか? ユグドラの方でそろそろやるんじゃないかな?」
「りんご狩り!? 行ってみたいです!」
フェリクスの誘いに、レイははしゃいで即答した。
(りんご狩り、楽しそう!)
旬のりんご狩りに、レイの心は踊った。
りんごはそのまま食べてもおいしいが、りんごジュースにアップルパイ、ジャムにコンポート、ケーキやヨーグルトのトッピングにと、レイが大好きなメニューが多い。旬なら、なおさら味には期待できる。
「ああ。そういえば、もうそんな時期ですね。ユグドラ産のりんごは魔力が豊富で、香り高いですし、シードルやブランデーの材料としても人気ですから。今年も仕入れさせていただきますよ」
ニールが商売人らしい雰囲気になって、目を細めた。どうやら早くも、りんごの仕入れや得意先についてなど諸々商売のことを思い浮かべているようだ。
「今年のりんごは、去年の花祭りの影響で特に魔力が豊富だから、いつも以上に元気に暴れてるみたいなんだよ。ウィルも人手を欲しがってたしね」
フェリクスがのほほんと語った。
「りんごが、暴れ……???」
レイは、りんごに全くふさわしくない表現に、目が点になった。
(……なんか、いや~な予感が……)
この世界には魔力がある。そして、魔力が影響すれば、ちっぽけな人間の想像をはるかに超えるような超常現象が簡単に起こってしまう——りんごが元気に暴れ回っていてもおかしくはないのだ。
「レイ、是非りんご狩りに行きましょう!」
レヴィが、いつになくキラキラした瞳をレイに向けてきた。
初めてのりんご狩り体験にわくわくしているようだ。
「ウィルには、僕とレイとレヴィで行くって伝えておくね」
「今年のりんごは期待できそうですね。私も行きましょう」
「おや? じゃあ、ニールのことも伝えておくよ」
「恐れ入ります」
フェリクスとニールの間で、どんどんりんご狩りの話が進んでいく。
(……どうしよう、今さらりんご狩りに行きたくないって言えない雰囲気……)
レイは一人、気まずい気持ちを飲み込んだ。
***
ニールとレイとレヴィは、フェリクスとルーファスが教会に戻るため、バレット邸の車寄せまで見送りに出た。
「ルーファスはりんご狩りに来ないんですか?」
レイが少し寂しげにルーファスを見上げると、彼は困ったように眉を下げた。
「ごめんね。たぶん、教会の方に仕事が溜まってると思うから、今回は難しいかな……」
ルーファスが、心底残念そうに伝えた。
レイも「そうですか、残念です……」とガックリと肩を落とした。
レイは不意に両手できゅっとルーファスの手を握った。じっと、彼の淡い黄色の瞳を見つめる。
「ルーファスと一緒にたくさん旅ができて楽しかったです。ルーファスがいろいろ気を配って守ってくれたから、安心して冒険ができましたし、無事にBランク冒険者にもなれました。本当にありがとうございます! これからは黒の塔の仕事ばかりになっちゃうかもしれないですけど、でも、またいつか一緒に冒険しましょう!」
レイは精一杯の笑顔でルーファスにお礼を言った。ちょっぴり、ぐすりと鼻を啜る。
「僕もレイと一緒に旅ができて楽しかったよ。新しい仕事でも、元気に頑張ってね」
ルーファスは少しだけかがむと、ふわりとレイをハグをした。ぽんぽんと優しく彼女の背中を叩く。
「ばいっ!」
レイはぐしぐしと泣きながら、力一杯返事をした。むぎゅっとルーファスに抱きついて、そのままぐずぐずと彼の胸に顔を押し付けた。
ルーファスは、レイが落ち着くまでずっと、優しく彼女の背中を撫でていた。
レイは泣き止むと、フェリクスとルーファスを乗せた馬車が見えなくなるまで、大きく手を振って見送った。
18
◆関連作品
『砂漠の詩』
『雨の回廊』編の過去編スピンオフです。
『冒険者を辞めたら天職でした 〜パーティーを追放された凄腕治癒師は、大聖者と崇められる〜』
『冒険者パーティーを追放された凄腕治癒師を拾いました』編のスピンオフです。
『ジャスティンと魔法少女のステッキ』
『魔法少女』編のスピンオフです。
『砂漠の詩』
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『冒険者を辞めたら天職でした 〜パーティーを追放された凄腕治癒師は、大聖者と崇められる〜』
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