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ランクアップ試験5〜Bランクへ〜
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「やったぁ!」
「やりましたね!」
レイとレヴィは同時に歓声をあげた。
今日はランクアップ試験の合格発表の日だ。
クリスタンロッキーの冒険者ギルドのホールには、依頼ボードの隣に合格者の名前が張り出されていた。
「レイもレヴィも、ランクアップおめでとう!」
ルーファスが王子様のような優しげな微笑みを浮かべて、祝いの言葉を口にした。
レイの頭を優しく撫で、レヴィの肩をポンッと叩く。
「ふふっ、ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
レイは満面の笑みで、レヴィもほくほくと嬉しそうにお礼を言った。
「お、いたいた! レヴィ、お嬢ちゃん、合格おめでとう!」
「やはり、二人とも合格したようだな。おめでとう!」
その時、不意にレイとレヴィは声をかけられた。
声がした方を振り向くと、笑顔のビョルンとニルスがいた。
「ビョルンさん、ニルスさん、ありがとうございます」
「ありがとうございます! ビョルンさんも、ニルスさんも、ランクアップおめでとうございます!」
レヴィは微笑んで、レイも満面の笑みでこたえた。
「君たちが試験でレイとレヴィと同じチームになった方たちかな?」
ルーファスが社交的な笑みを浮かべて、ニルスとビョルンに話しかけた。
「あなたは?」
ニルスが目を丸くして尋ねた。
「二人と同じパーティーのルーファスです。レイがノームに攫われないよう守ってくださったと聞きましたよ。ありがとうございます」
ルーファスがにっこりとお礼を言った。
「いいえ。私たちも二人に随分助けられましたよ」
「ああ。二人のおかげで無事に実技を合格できたしな」
ニルスとビョルンは、少し照れながら答えた。
レイたちは、ニルスとビョルンと少し世間話をした後、和やかに別れた。
二人を見送った後、ルーファスはくるりとレイとレヴィの方を振り向いた。
「二人とも合格したし、今夜はいいものを食べようか?」
「「やった!」」
ルーファスの提案に、レイは黒曜石のような瞳をキラキラさせて賛成した。
レヴィもいつにもなくパァッと顔色を明るくして喜んだ。
***
「「「乾杯っ!」」」
ルーファスとレイとレヴィは、きのこの帽子亭の食堂で、グラスを傾けた。
ランクアップ試験に合格したお祝いなので、ルーファスとレヴィは赤ワインを、レイはぶどうジュースで乾杯だ。
今夜のメニューは、さまざまな種類のきのこのフリッター、きのこと蒸し鶏のサラダ、きのことひき肉のラザニア、きのことオニオンのスープだ。お祝いなので、デザートにケーキもつけてもらった。
♫キツネノパイプは火属性~
煙あるとこ火も立ちぬ~
きののきのっこきのこ~
「この歌も今日で聞き納めですね」
「……う、うん……」
レヴィが宿の亭主のマッシュの歌にしみじみと聴き入っていると、レイは遠い目をした。
(筆記試験ではものすごくお世話になったけど、実技試験では大変な目に遭ったからなぁ……)
レイがなんとも言えない気持ちで黙々とラザニアを食べていると、
「レイは王都に戻ったら、もう冒険者はやらないの?」
ルーファスが、優しく尋ねてきた。
「う~ん、どうなんでしょう? たぶん黒の塔に入ったら、そっちのお仕事につきっきりになりそうです。レヴィも、騎士団の方に入っちゃいますし……でも、たまには冒険に行きたいですよね」
レイは、はにかんで答えた。
ユグドラを出てからは、冒険者として、ドラゴニア王国だけでなく、遥か遠く砂漠の国サハリア王国まで、西へ東へとさまざまな国に行った。
それぞれの地でいろんな人々と出会い、たくさんの思い出もできた。
また、冒険者として薬草を摘みに行ったり、野営をしたり、ダンジョンに潜ったり、商人の護衛任務についたり……魔物の討伐依頼に至っては、黒っぽい竜をみんなで倒した。
——大変なこともあったけれど、どれもこれもレイにとっていい思い出だ。
(黒の塔でどんなお仕事をするのかまだよく分からないけど、たまには冒険には行けたらいいなぁ……)
レイはしみじみと、これまでの冒険の思い出を思い返していた。
「その時は、僕も一緒にいいかな?」
ルーファスが少し躊躇うように尋ねた。淡い黄色の瞳は、少し寂しそうに沈んでいる。
「もちろんですよ! 一緒に冒険しましょう!」
レイはにっこりと微笑んで答えた。
ルーファスは「うん、ありがとう」と、憂いを払うように強く微笑み返した。
「Bランクに上がりましたし、次は王都に戻るんですか? ニールにノームの変身帽子のことを訊くんですよね?」
レヴィはオニオンスープを飲み干してホッと一息つくと、レイに確認した。
「そうだね。あと、一度ユグドラにも戻って、合格したって報告もしたいね。久々にみんなにも会いたいし!」
(結構背が伸びたから、みんなびっくりするかな?)
レイは光竜の里産のお米を食べるようになってから、ぐーんと背が伸びるようになった。
師匠のウィルフレッドや、仲の良いお手伝いエルフのシェリーの驚く顔を想像して、わくわくと胸を躍らせる。
「ノームの変身帽子か……僕も初めて聞いたよ。変身魔術は上級魔術だし、それの魔術付与はさらに高等魔術だからね。変身アイテムなんて滅多に見ないよ」
ルーファスがしみじみと言った。
「えっ、そうだったんですね! 周りの人はみんな変身魔術を使ってるから、あまり実感がわかなかったです!」
レイは空間収納から、ノームの変身帽子を取り出した。若干パーティー感のあるポンポン付きの三角帽子をまじまじと見つめた。
(……ただ単に耳が伸びて尖るだけの帽子って思ってたけど……)
正直、レイはこの帽子の効果にはがっかりしていた。
だが、ルーファスの説明を聞いて、賢明な彼女は、このことは自分の心の中にひっそりとしまっておくことにした。
「特に、気配を別の生き物に変えられるレベルのものは珍しいよ」
ルーファスは、レイの手元の三角帽子を取ると、自らかぶった。彼の耳が若干伸び、その先がちょこんと尖る。
レイはそんなルーファスの姿を見て、衝撃を受けた。
(……!!? 正しく麗しきエルフ!!!)
若干はっちゃけた感じの三角帽子は少々うるさいが、物語に出てくるような王子様のように整った美貌のルーファスは、耳が長く尖ると、まるで幻想的で麗しいエルフのように見えた。
竜の強くどっしりとした気配が、妖精の儚く可憐な気配に変わり、彼の淡い色合いの金髪や瞳も、余計にエルフ感に拍車をかけていた。
中身おっさんなエルフのウィルフレッドも霞むレベルの、麗しきエルフ具合だ。
「……いい……」
「えっ?」
「ルーファスが、素敵すぎます……」
「? うん? ありがとう?」
「今日は一日、その姿でお願いします」
「えぇ……」
レイにキラキラした憧れの瞳で見つめられ、ルーファスは渋々、今夜は変身帽子をかぶることにした。
「……ルーファス、ずるいです……」
みんなにノームの変身帽子は似合わないと言われたレヴィだけは、口先を尖らせていた。
「やりましたね!」
レイとレヴィは同時に歓声をあげた。
今日はランクアップ試験の合格発表の日だ。
クリスタンロッキーの冒険者ギルドのホールには、依頼ボードの隣に合格者の名前が張り出されていた。
「レイもレヴィも、ランクアップおめでとう!」
ルーファスが王子様のような優しげな微笑みを浮かべて、祝いの言葉を口にした。
レイの頭を優しく撫で、レヴィの肩をポンッと叩く。
「ふふっ、ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
レイは満面の笑みで、レヴィもほくほくと嬉しそうにお礼を言った。
「お、いたいた! レヴィ、お嬢ちゃん、合格おめでとう!」
「やはり、二人とも合格したようだな。おめでとう!」
その時、不意にレイとレヴィは声をかけられた。
声がした方を振り向くと、笑顔のビョルンとニルスがいた。
「ビョルンさん、ニルスさん、ありがとうございます」
「ありがとうございます! ビョルンさんも、ニルスさんも、ランクアップおめでとうございます!」
レヴィは微笑んで、レイも満面の笑みでこたえた。
「君たちが試験でレイとレヴィと同じチームになった方たちかな?」
ルーファスが社交的な笑みを浮かべて、ニルスとビョルンに話しかけた。
「あなたは?」
ニルスが目を丸くして尋ねた。
「二人と同じパーティーのルーファスです。レイがノームに攫われないよう守ってくださったと聞きましたよ。ありがとうございます」
ルーファスがにっこりとお礼を言った。
「いいえ。私たちも二人に随分助けられましたよ」
「ああ。二人のおかげで無事に実技を合格できたしな」
ニルスとビョルンは、少し照れながら答えた。
レイたちは、ニルスとビョルンと少し世間話をした後、和やかに別れた。
二人を見送った後、ルーファスはくるりとレイとレヴィの方を振り向いた。
「二人とも合格したし、今夜はいいものを食べようか?」
「「やった!」」
ルーファスの提案に、レイは黒曜石のような瞳をキラキラさせて賛成した。
レヴィもいつにもなくパァッと顔色を明るくして喜んだ。
***
「「「乾杯っ!」」」
ルーファスとレイとレヴィは、きのこの帽子亭の食堂で、グラスを傾けた。
ランクアップ試験に合格したお祝いなので、ルーファスとレヴィは赤ワインを、レイはぶどうジュースで乾杯だ。
今夜のメニューは、さまざまな種類のきのこのフリッター、きのこと蒸し鶏のサラダ、きのことひき肉のラザニア、きのことオニオンのスープだ。お祝いなので、デザートにケーキもつけてもらった。
♫キツネノパイプは火属性~
煙あるとこ火も立ちぬ~
きののきのっこきのこ~
「この歌も今日で聞き納めですね」
「……う、うん……」
レヴィが宿の亭主のマッシュの歌にしみじみと聴き入っていると、レイは遠い目をした。
(筆記試験ではものすごくお世話になったけど、実技試験では大変な目に遭ったからなぁ……)
レイがなんとも言えない気持ちで黙々とラザニアを食べていると、
「レイは王都に戻ったら、もう冒険者はやらないの?」
ルーファスが、優しく尋ねてきた。
「う~ん、どうなんでしょう? たぶん黒の塔に入ったら、そっちのお仕事につきっきりになりそうです。レヴィも、騎士団の方に入っちゃいますし……でも、たまには冒険に行きたいですよね」
レイは、はにかんで答えた。
ユグドラを出てからは、冒険者として、ドラゴニア王国だけでなく、遥か遠く砂漠の国サハリア王国まで、西へ東へとさまざまな国に行った。
それぞれの地でいろんな人々と出会い、たくさんの思い出もできた。
また、冒険者として薬草を摘みに行ったり、野営をしたり、ダンジョンに潜ったり、商人の護衛任務についたり……魔物の討伐依頼に至っては、黒っぽい竜をみんなで倒した。
——大変なこともあったけれど、どれもこれもレイにとっていい思い出だ。
(黒の塔でどんなお仕事をするのかまだよく分からないけど、たまには冒険には行けたらいいなぁ……)
レイはしみじみと、これまでの冒険の思い出を思い返していた。
「その時は、僕も一緒にいいかな?」
ルーファスが少し躊躇うように尋ねた。淡い黄色の瞳は、少し寂しそうに沈んでいる。
「もちろんですよ! 一緒に冒険しましょう!」
レイはにっこりと微笑んで答えた。
ルーファスは「うん、ありがとう」と、憂いを払うように強く微笑み返した。
「Bランクに上がりましたし、次は王都に戻るんですか? ニールにノームの変身帽子のことを訊くんですよね?」
レヴィはオニオンスープを飲み干してホッと一息つくと、レイに確認した。
「そうだね。あと、一度ユグドラにも戻って、合格したって報告もしたいね。久々にみんなにも会いたいし!」
(結構背が伸びたから、みんなびっくりするかな?)
レイは光竜の里産のお米を食べるようになってから、ぐーんと背が伸びるようになった。
師匠のウィルフレッドや、仲の良いお手伝いエルフのシェリーの驚く顔を想像して、わくわくと胸を躍らせる。
「ノームの変身帽子か……僕も初めて聞いたよ。変身魔術は上級魔術だし、それの魔術付与はさらに高等魔術だからね。変身アイテムなんて滅多に見ないよ」
ルーファスがしみじみと言った。
「えっ、そうだったんですね! 周りの人はみんな変身魔術を使ってるから、あまり実感がわかなかったです!」
レイは空間収納から、ノームの変身帽子を取り出した。若干パーティー感のあるポンポン付きの三角帽子をまじまじと見つめた。
(……ただ単に耳が伸びて尖るだけの帽子って思ってたけど……)
正直、レイはこの帽子の効果にはがっかりしていた。
だが、ルーファスの説明を聞いて、賢明な彼女は、このことは自分の心の中にひっそりとしまっておくことにした。
「特に、気配を別の生き物に変えられるレベルのものは珍しいよ」
ルーファスは、レイの手元の三角帽子を取ると、自らかぶった。彼の耳が若干伸び、その先がちょこんと尖る。
レイはそんなルーファスの姿を見て、衝撃を受けた。
(……!!? 正しく麗しきエルフ!!!)
若干はっちゃけた感じの三角帽子は少々うるさいが、物語に出てくるような王子様のように整った美貌のルーファスは、耳が長く尖ると、まるで幻想的で麗しいエルフのように見えた。
竜の強くどっしりとした気配が、妖精の儚く可憐な気配に変わり、彼の淡い色合いの金髪や瞳も、余計にエルフ感に拍車をかけていた。
中身おっさんなエルフのウィルフレッドも霞むレベルの、麗しきエルフ具合だ。
「……いい……」
「えっ?」
「ルーファスが、素敵すぎます……」
「? うん? ありがとう?」
「今日は一日、その姿でお願いします」
「えぇ……」
レイにキラキラした憧れの瞳で見つめられ、ルーファスは渋々、今夜は変身帽子をかぶることにした。
「……ルーファス、ずるいです……」
みんなにノームの変身帽子は似合わないと言われたレヴィだけは、口先を尖らせていた。
14
◆関連作品
『砂漠の詩』
『雨の回廊』編の過去編スピンオフです。
『冒険者を辞めたら天職でした 〜パーティーを追放された凄腕治癒師は、大聖者と崇められる〜』
『冒険者パーティーを追放された凄腕治癒師を拾いました』編のスピンオフです。
『ジャスティンと魔法少女のステッキ』
『魔法少女』編のスピンオフです。
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『冒険者を辞めたら天職でした 〜パーティーを追放された凄腕治癒師は、大聖者と崇められる〜』
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