200 / 347
英雄レグルス
しおりを挟む
「ここがレグリアの街……かなり大きいですね」
(ユグドラ防衛戦で活躍した剣聖レグルスが生まれ育った街……)
レイはカーテンを少しだけ開けて、馬車の窓の外を眺めた。
レグリアは、シルクロード上にある宿場町の中でもかなり大きな街だ。
英雄が生まれ育った街というだけではなく、レグリアがある東ロムルという国の中でも五本の指に入るほどの主要都市だ。
レンガ積みの大きな建物が立ち並び、道には石畳が敷かれ、キャラバンや商人の荷馬車だけでなく、貴族と思しき紋章の入った馬車も行き交っている。
街の中を横切るように大きな運河が走り、さまざまな店や飲食店が集うショッピングモールには、ガラス製のアーケード屋根がかけられ、この街の人気スポットになっている。
英雄広場の中心には、この街出身の英雄レグルスの銅像が建てられ、住民たちの憩いの場となっている。
広場正面には歌劇場があり、英雄劇だけでなく、さまざまなオペラや演劇などが上演されている。
「レヴィ、十六代目様はどんな方だったの?」
「十六代目のご主人様は、元々は冒険者でした。剣技は豪剣ですが柔軟さもあり、私の手入れは丁寧な方でしたよ」
「そ、そうなんだ……」
(確かにざっくりと訊いたのは悪かったけど……)
レイは「聞きたかったのはそういうことじゃない感」が溢れる回答に、思わず面食らった。
「ニール、英雄さんはどんな方でした? ユグドラ防衛戦で一緒だったんですよね?」
「そうだね……クソいけすかない奴、だったな」
「え゛っ……」
ニールは馬車の窓からレグリアの街を眺めながら、さらりと爆弾発言を放った。
(聞いちゃまずかったかな??)
言葉遣いまで荒れているニールに、レイは思わず固まってしまった。
直接英雄を知る二人の回答に、レイの英雄イメージは迷宮入りしてしまった。
「会長、着きました」
馬車がホテル前の車寄せにピタリと停まると、外から声がかけられた。
商隊兵のリーダーのリンダが、そのまま馬車の扉を開ける。
「ご苦労様です」
ニールが労いの言葉をかけ、馬車を降りた。
彼はそのままレイが馬車を降りるのに、手を貸した。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
ニールがにこにこと笑いかけている後ろでは、リンダがじと目でこちらを見ていた。
「わぁ! 大きなホテルですね!」
本日の宿は、立派なレンガ積みの三階建ての建物だ。車寄せも広く、前庭は綺麗に整えられ、白い薔薇が咲いていた。
貴族が泊まるのにも申し分のないホテルだ。
「レイもいるし、せっかくだから良いところに泊まろうと思ってね」
そこまで言うと、ニールは少し屈んで、レイの耳元に口を寄せた。
「それに、それなりの大店の主人が、こういう所であまり安い宿をとるわけにはいかないんだ。ここはシルクロードで、商人なんて掃いて捨てるほどいる。下手に安宿を手配すれば、『経営難だ』ってあらぬ噂が立って、取引が流れる可能性もあるからね」
「……結構、面倒臭いんですね」
「必要経費みたいなものだ」
やれやれと、ニールは肩をすくめた。
ホテル内は、隅々まで綺麗に整えられ、広々としたロビーには大輪の百合の花が生けられていた。
ロビーや廊下に飾られている花瓶などの調度品は、各地の交易品が行き交うシルクロードの土地柄のためか、レイが今まで見たこともない生き物が独特な絵柄で描かれていたり、特殊な加工が施されていて淡く発光していたりと、さまざまだ。ただ、どれも品が良く上等そうで、このホテルにしっくりときていた。
ニールの部屋は二階の角部屋で、レイの部屋のすぐ隣だ。ニールの部屋の反対側の隣は、ルーファスとレヴィの部屋になっている。
キャラバンの商人や商隊兵のメンバーは、一階の部屋のようだ。
「少し落ち着いたら、街を見に行かないか? 案内するよ」
「いいんですか!? やった!」
ニールの提案に、レイは瞳をキラキラさせて、賛成した。
「ニール様、レイ。少しご相談が……」
「どうかしました?」
廊下でルーファスに声をかけられ、ニールがすぐさま防音結界を展開した。
「レグリア滞在中は、何日か教会の方に顔を出そうかと思いまして。もちろん、護衛は交代で行いますので、ご不便はお掛けしません」
ルーファスは、申し訳なさそうにニールの様子を窺った。
「分かりました。それで構いません。私がいれば、レイに護衛は不要でしょうし」
「私の方が護衛なのに……」
レイはむすっと頬を膨らまして、ニールを見上げた。
ニールはそれを見て、苦笑する。
ルーファスは、レイに目線を合わせて中腰になった。
「レイ。ニール様がいれば、手出しするような奴はいないとは思うけど、言うことをよく聞いて、良い子にしてるんだよ」
「もう! ルーファスまで! 私はそこまで子供じゃないですよ!」
「返事は?」
「……はい」
ルーファスにものすごく良い笑顔で凄まれ、レイは渋々頷いた。美人の含みのある整いすぎた笑顔ほど、怖いものはないのだ。
ニールはその様子を半目で眺め、「本当に母親ですか……」と呆れて呟いていた。
その後ニールは、レイとレヴィを連れて、レグリアのショッピングモールへと向かった。
ホテルからショッピングモールへ向かう途中には、英雄広場がある。
英雄広場の中央には、十六代目剣聖レグルスを讃える銅像が立っていた。見上げるほどに背が高く、立派な銅像の周りは花壇になっていて、純白の鈴蘭が植えられ、小さく儚げな花を咲かせていた。
レイはふと、英雄の像を見上げた。
「……」
「どうかした?」
ニールが、立ち止まったレイの方を振り返った。
「いえ。英雄さんは、レヴィが変身した姿を何度か見たことがあるんですが、改めて有名な方だったんだなって、しみじみと感じちゃって……」
レイはおずおずと躊躇いがちに話し始めた。ニールが英雄に対してあまり良い感情を持っていないようなので、この話題をあまり口にしない方がいい気がしたのだ。
「ああ。そういうことか。この街では嫌というほど英雄関連ものは目にするから、直に慣れるよ」
ニールは素っ気なく答えた。
「う、うん。そうですね……」
レイも曖昧に相槌を打つ。
(他にどういう意味があったんだろう?? 過去に、ニールと英雄さんの間に何かあったのかな……?)
ニールに「ほら、もう行くよ」とやけに良い笑顔で促され、レイたちはショッピングモールの方へと向かった。
ショッピングモールに続くメイン通りには、道の左右に服飾店や雑貨屋、レストランやカフェなどさまざまな店が立ち並び、たくさんの人々で賑わっていた。
ガラスの天井を持つアーケード内では、特に老舗や高級店が立ち並んでいるようで、店の窓側のディスプレイには、商品が工夫を凝らして飾られ、眺めているだけでも華やかで、レイたちの目を楽しませた。
レイたちは、ニールおすすめのカフェに入った。
「わぁ! 美味しそう~!!」
レイは紅茶と、真ん中を割ってたっぷりと生クリームが挟まったシュークリームを、ニールはブラックコーヒーと一口チョコレートを、レヴィは特製のクッキーが添えられたカプチーノを注文した。
窓際の席で、アーケード内を行き交う人々を眺めながら、三人はほっと一息ついた。
「ここには何度も来たことはありますが、この姿で来たのは初めてです。この目線の高さだと、見えるものが違くて楽しいですね」
レヴィが窓から外の様子をゆったりと眺めながら言った。
あまり表情には表れないが、ちょっぴり嬉しそうだ。
「ふふっ。素敵なお店も多いし、目移りしちゃうよね。ディスプレイが洗練されてるお店が多いからかな?」
レイも、ふかふか甘々のシュークリームを堪能しながら頷く。
「おや? それは興味深い。是非とも我が商会にも取り入れたいな。レイはどの店のが気に入ったのかな?」
ニールが、シュークリームをおいしそうに頬張るレイを、微笑ましげに覗き込んだ。
「う~ん、それなら……」
レイは、カフェに来るまでに通った場所にあったお店を思い浮かべていった。なんとなく気になった店をいくつもあげる。
ニールはうんうんと笑顔で、彼女の話に相槌を打っていた。
ひとしきりおしゃべりをした後、
「そういえば、明後日は観劇だね。レグリア劇場にはもう予約しておいたよ」
ニールがコーヒーを一口飲んで、一区切りつけるように言った。
「……ニールはいいんですか?」
「何をかな?」
「その、あまり英雄さんのことを……」
レイが表情を翳らせて呟くと、
「ああ。そのことなら気にしなくていいよ。演劇は関係ないから、普通に楽しんでくれて大丈夫だよ」
ニールは「困らせたね」、とレイの頭を撫でた。
「ニール、辛かったら言ってくださいね。私一人でも行きますし!」
レイは真っ直ぐにニールを見つめて、力強く言った。
いつも気を遣ってくれる優しい契約の竜の負担になりたくなくて、大したことはできないけど彼の力になりたくて。
「おや? ご主人様は俺を置いていかれるので? それはそれは、お冷たい」
ニールは茶化すように、あからさまに悲しそうな表情をした。
「えっ、そういう意味じゃ……」
「なら、俺も連れて行っていただけますよね?」
一瞬たじろいだレイに、ニールはすかさず念を押すように尋ねた。色鮮やかな黄金眼は、愉しげに三日月型になっている。
「むぅ……イジワルするようなら置いていきます」
レイは少しだけ頬を膨らませて呟いた。
「おお、怖い」
ニールは全く怖くなさそうに、目尻に皺を寄せて朗らかに微笑んだ。
(ユグドラ防衛戦で活躍した剣聖レグルスが生まれ育った街……)
レイはカーテンを少しだけ開けて、馬車の窓の外を眺めた。
レグリアは、シルクロード上にある宿場町の中でもかなり大きな街だ。
英雄が生まれ育った街というだけではなく、レグリアがある東ロムルという国の中でも五本の指に入るほどの主要都市だ。
レンガ積みの大きな建物が立ち並び、道には石畳が敷かれ、キャラバンや商人の荷馬車だけでなく、貴族と思しき紋章の入った馬車も行き交っている。
街の中を横切るように大きな運河が走り、さまざまな店や飲食店が集うショッピングモールには、ガラス製のアーケード屋根がかけられ、この街の人気スポットになっている。
英雄広場の中心には、この街出身の英雄レグルスの銅像が建てられ、住民たちの憩いの場となっている。
広場正面には歌劇場があり、英雄劇だけでなく、さまざまなオペラや演劇などが上演されている。
「レヴィ、十六代目様はどんな方だったの?」
「十六代目のご主人様は、元々は冒険者でした。剣技は豪剣ですが柔軟さもあり、私の手入れは丁寧な方でしたよ」
「そ、そうなんだ……」
(確かにざっくりと訊いたのは悪かったけど……)
レイは「聞きたかったのはそういうことじゃない感」が溢れる回答に、思わず面食らった。
「ニール、英雄さんはどんな方でした? ユグドラ防衛戦で一緒だったんですよね?」
「そうだね……クソいけすかない奴、だったな」
「え゛っ……」
ニールは馬車の窓からレグリアの街を眺めながら、さらりと爆弾発言を放った。
(聞いちゃまずかったかな??)
言葉遣いまで荒れているニールに、レイは思わず固まってしまった。
直接英雄を知る二人の回答に、レイの英雄イメージは迷宮入りしてしまった。
「会長、着きました」
馬車がホテル前の車寄せにピタリと停まると、外から声がかけられた。
商隊兵のリーダーのリンダが、そのまま馬車の扉を開ける。
「ご苦労様です」
ニールが労いの言葉をかけ、馬車を降りた。
彼はそのままレイが馬車を降りるのに、手を貸した。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
ニールがにこにこと笑いかけている後ろでは、リンダがじと目でこちらを見ていた。
「わぁ! 大きなホテルですね!」
本日の宿は、立派なレンガ積みの三階建ての建物だ。車寄せも広く、前庭は綺麗に整えられ、白い薔薇が咲いていた。
貴族が泊まるのにも申し分のないホテルだ。
「レイもいるし、せっかくだから良いところに泊まろうと思ってね」
そこまで言うと、ニールは少し屈んで、レイの耳元に口を寄せた。
「それに、それなりの大店の主人が、こういう所であまり安い宿をとるわけにはいかないんだ。ここはシルクロードで、商人なんて掃いて捨てるほどいる。下手に安宿を手配すれば、『経営難だ』ってあらぬ噂が立って、取引が流れる可能性もあるからね」
「……結構、面倒臭いんですね」
「必要経費みたいなものだ」
やれやれと、ニールは肩をすくめた。
ホテル内は、隅々まで綺麗に整えられ、広々としたロビーには大輪の百合の花が生けられていた。
ロビーや廊下に飾られている花瓶などの調度品は、各地の交易品が行き交うシルクロードの土地柄のためか、レイが今まで見たこともない生き物が独特な絵柄で描かれていたり、特殊な加工が施されていて淡く発光していたりと、さまざまだ。ただ、どれも品が良く上等そうで、このホテルにしっくりときていた。
ニールの部屋は二階の角部屋で、レイの部屋のすぐ隣だ。ニールの部屋の反対側の隣は、ルーファスとレヴィの部屋になっている。
キャラバンの商人や商隊兵のメンバーは、一階の部屋のようだ。
「少し落ち着いたら、街を見に行かないか? 案内するよ」
「いいんですか!? やった!」
ニールの提案に、レイは瞳をキラキラさせて、賛成した。
「ニール様、レイ。少しご相談が……」
「どうかしました?」
廊下でルーファスに声をかけられ、ニールがすぐさま防音結界を展開した。
「レグリア滞在中は、何日か教会の方に顔を出そうかと思いまして。もちろん、護衛は交代で行いますので、ご不便はお掛けしません」
ルーファスは、申し訳なさそうにニールの様子を窺った。
「分かりました。それで構いません。私がいれば、レイに護衛は不要でしょうし」
「私の方が護衛なのに……」
レイはむすっと頬を膨らまして、ニールを見上げた。
ニールはそれを見て、苦笑する。
ルーファスは、レイに目線を合わせて中腰になった。
「レイ。ニール様がいれば、手出しするような奴はいないとは思うけど、言うことをよく聞いて、良い子にしてるんだよ」
「もう! ルーファスまで! 私はそこまで子供じゃないですよ!」
「返事は?」
「……はい」
ルーファスにものすごく良い笑顔で凄まれ、レイは渋々頷いた。美人の含みのある整いすぎた笑顔ほど、怖いものはないのだ。
ニールはその様子を半目で眺め、「本当に母親ですか……」と呆れて呟いていた。
その後ニールは、レイとレヴィを連れて、レグリアのショッピングモールへと向かった。
ホテルからショッピングモールへ向かう途中には、英雄広場がある。
英雄広場の中央には、十六代目剣聖レグルスを讃える銅像が立っていた。見上げるほどに背が高く、立派な銅像の周りは花壇になっていて、純白の鈴蘭が植えられ、小さく儚げな花を咲かせていた。
レイはふと、英雄の像を見上げた。
「……」
「どうかした?」
ニールが、立ち止まったレイの方を振り返った。
「いえ。英雄さんは、レヴィが変身した姿を何度か見たことがあるんですが、改めて有名な方だったんだなって、しみじみと感じちゃって……」
レイはおずおずと躊躇いがちに話し始めた。ニールが英雄に対してあまり良い感情を持っていないようなので、この話題をあまり口にしない方がいい気がしたのだ。
「ああ。そういうことか。この街では嫌というほど英雄関連ものは目にするから、直に慣れるよ」
ニールは素っ気なく答えた。
「う、うん。そうですね……」
レイも曖昧に相槌を打つ。
(他にどういう意味があったんだろう?? 過去に、ニールと英雄さんの間に何かあったのかな……?)
ニールに「ほら、もう行くよ」とやけに良い笑顔で促され、レイたちはショッピングモールの方へと向かった。
ショッピングモールに続くメイン通りには、道の左右に服飾店や雑貨屋、レストランやカフェなどさまざまな店が立ち並び、たくさんの人々で賑わっていた。
ガラスの天井を持つアーケード内では、特に老舗や高級店が立ち並んでいるようで、店の窓側のディスプレイには、商品が工夫を凝らして飾られ、眺めているだけでも華やかで、レイたちの目を楽しませた。
レイたちは、ニールおすすめのカフェに入った。
「わぁ! 美味しそう~!!」
レイは紅茶と、真ん中を割ってたっぷりと生クリームが挟まったシュークリームを、ニールはブラックコーヒーと一口チョコレートを、レヴィは特製のクッキーが添えられたカプチーノを注文した。
窓際の席で、アーケード内を行き交う人々を眺めながら、三人はほっと一息ついた。
「ここには何度も来たことはありますが、この姿で来たのは初めてです。この目線の高さだと、見えるものが違くて楽しいですね」
レヴィが窓から外の様子をゆったりと眺めながら言った。
あまり表情には表れないが、ちょっぴり嬉しそうだ。
「ふふっ。素敵なお店も多いし、目移りしちゃうよね。ディスプレイが洗練されてるお店が多いからかな?」
レイも、ふかふか甘々のシュークリームを堪能しながら頷く。
「おや? それは興味深い。是非とも我が商会にも取り入れたいな。レイはどの店のが気に入ったのかな?」
ニールが、シュークリームをおいしそうに頬張るレイを、微笑ましげに覗き込んだ。
「う~ん、それなら……」
レイは、カフェに来るまでに通った場所にあったお店を思い浮かべていった。なんとなく気になった店をいくつもあげる。
ニールはうんうんと笑顔で、彼女の話に相槌を打っていた。
ひとしきりおしゃべりをした後、
「そういえば、明後日は観劇だね。レグリア劇場にはもう予約しておいたよ」
ニールがコーヒーを一口飲んで、一区切りつけるように言った。
「……ニールはいいんですか?」
「何をかな?」
「その、あまり英雄さんのことを……」
レイが表情を翳らせて呟くと、
「ああ。そのことなら気にしなくていいよ。演劇は関係ないから、普通に楽しんでくれて大丈夫だよ」
ニールは「困らせたね」、とレイの頭を撫でた。
「ニール、辛かったら言ってくださいね。私一人でも行きますし!」
レイは真っ直ぐにニールを見つめて、力強く言った。
いつも気を遣ってくれる優しい契約の竜の負担になりたくなくて、大したことはできないけど彼の力になりたくて。
「おや? ご主人様は俺を置いていかれるので? それはそれは、お冷たい」
ニールは茶化すように、あからさまに悲しそうな表情をした。
「えっ、そういう意味じゃ……」
「なら、俺も連れて行っていただけますよね?」
一瞬たじろいだレイに、ニールはすかさず念を押すように尋ねた。色鮮やかな黄金眼は、愉しげに三日月型になっている。
「むぅ……イジワルするようなら置いていきます」
レイは少しだけ頬を膨らませて呟いた。
「おお、怖い」
ニールは全く怖くなさそうに、目尻に皺を寄せて朗らかに微笑んだ。
13
◆関連作品
『砂漠の詩』
『雨の回廊』編の過去編スピンオフです。
『冒険者を辞めたら天職でした 〜パーティーを追放された凄腕治癒師は、大聖者と崇められる〜』
『冒険者パーティーを追放された凄腕治癒師を拾いました』編のスピンオフです。
『ジャスティンと魔法少女のステッキ』
『魔法少女』編のスピンオフです。
『砂漠の詩』
『雨の回廊』編の過去編スピンオフです。
『冒険者を辞めたら天職でした 〜パーティーを追放された凄腕治癒師は、大聖者と崇められる〜』
『冒険者パーティーを追放された凄腕治癒師を拾いました』編のスピンオフです。
『ジャスティンと魔法少女のステッキ』
『魔法少女』編のスピンオフです。
お気に入りに追加
161
あなたにおすすめの小説

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界で婚活したら、とんでもないのが釣れちゃった?!
家具付
恋愛
五年前に、異世界に落っこちてしまった少女スナゴ。受け入れてくれた村にすっかりなじんだ頃、近隣の村の若い人々が集まる婚活に誘われる。一度は行ってみるべきという勧めを受けて行ってみたそこで出会ったのは……?
多種多様な獣人が暮らす異世界でおくる、のんびりほのぼのな求婚ライフ!の、はずだったのに。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる