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はじめての野営1
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初めてのマッドボアの討伐後、討伐系の依頼はこのチームでいけると踏んだライは、セルバ周辺に生息しているC~Eランクの討伐依頼を積極的に銀の不死鳥で受けた。
毎回、講師ライによる詳しい解説付きだ。
魔物の基本的な知識はもちろん、魔物がどんな痕跡を残し、痕跡からどのようなことが分かるのか、狩りのコツなど、ライの講義は整理されていて、非常に分かりやすかった。
セルバ周辺の低ランク魔物を一通り討伐した後、ライは銀の不死鳥チームに提案した。
「そろそろBランクの魔物の討伐もやってみるか。Bランク魔物は基本的に、人里近くには住んでいない。今回は野営の練習もするぞ」
「野営、はじめてです」
「私も(この体では)はじめてですね」
レイは目をキラキラさせて、レヴィは淡々と答えた。
***
レイたちは、ギルド内の依頼ボードの前に来ていた。
「……討伐依頼、無いですね」
「さすがにBランクまでいくと、そう都合良く依頼は出てないな」
レイは依頼ボードを眺めて、肩を落としていた。
ライは腕を組んで思案顔だ。
「ライさん、ちょっとすみません」
「どうかされました?」
ライは、ギルド受付のシドニーに声をかけられた。
「ギルマスが銀の不死鳥メンバーをお呼びです。相談があるそうです」
シドニーが手で指し示した方を見ると、ギルドマスターのオーガストが手招きをしていた。
「ありがとう。すぐ向かいます」
ライが銀の不死鳥メンバーを振り向くと、レイとレヴィは頷いた。
「悪いな、呼び出しちまって」
応接室では、奥のソファにオーガストがどっかりと座り、入り口すぐのソファには、ライを真ん中に、レイとレヴィが左右から挟み込むように座っている。
「ここ二週間ほどの銀の不死鳥の活躍は見させてもらった。セルバ周辺の魔物は一通り狩ったんじゃないのか?」
「ああ、そうだな」
オーガストの確認に、ライが頷いた。
「そこでだ、銀の不死鳥に、これを依頼したい」
オーガストがピラリと一枚、テーブルの上に依頼票を置いた——ランクBの採集依頼だ。
「これは依頼ボードに無かったぞ」
「一回、依頼ボードに出したんだが、他のBランクチームが失敗してな。この薬草を採集できる地域周辺でBランク魔物が目撃されたんだが……もしかしたら変異種かもしれないんだ」
「変異種か……下手したらAランクになってるな」
「Bランク魔物はコカトリスだ。通常とは色が違くて、緑色の蛇尾で、風魔術を撃つらしい」
「コカトリスで風魔術か……少し厄介だな」
変異種の魔物は通常、見た目が違う。色が違ったり、角や牙の大きさや数が違ったり、体のサイズが極端に大きかったりするのだ。
色が違う場合は、本来その魔物なら使えないような属性の魔術やスキルが使えたりする。角や牙の数が多かったり、体が大きいものは、単純に固かったり力が強くなっていたりする——どちらにしろ、変異種は通常よりもランクが一つ上がっていることが多い。
「ライもブランクはあるだろうが、ここ二週間はほぼ毎日、何かしら討伐依頼を受けて、そろそろあったまってきた頃なんじゃないか? 解体工房の方からも、銀の不死鳥が狩ってきた魔物は状態が良い、と報告が来ている。腕の良い証拠だ。レヴィもレイもまだ新人だが、使い魔もランクが高いし、俺は銀の不死鳥ならこの依頼をこなせると踏んでる。どうだ、受けてみるか?」
オーガストは、銀の不死鳥メンバーをゆっくりと見回した。
ライはレイを見た。レイはこくりと頷いた。
「分かった。この依頼、受けよう。どこら辺にその変異種が出たかは分かるか?」
ライは空間収納から地図を取り出すと、テーブルの上に開き、ぐっと身を乗り出した。
「ありがとう。助かる。変異種の目撃情報は……」
オーガストから情報を引き出せるだけ引き出すと、ライたちは依頼の準備をしにギルドを後にした。
***
次の日の早朝、レイたちはセルバの街を出立した。
空色の戦斧亭の亭主には、依頼で一泊か二泊ほど、外泊すると伝えてある。
人の気配が無くなった地点から、琥珀もレイのローブのフードから出て来て、元のライオンサイズの大きさに戻った。周囲を警戒しながら、レイの横に並んで歩いている。
銀の不死鳥がよく狩りをしている場所を超え、どんどん西の森の奥へと進んで行くと、一気に森の雰囲気が変わった。
森の見た目は変わらないが、魔力の密度が上がったようで、少しだけ重たいプレッシャーを感じる。
(……ここ最近入ってた森と、全然違う。気を引き締めないと……)
レイは森の違いを繊細に感じて、ぶるりと身震いした。
「ここら辺から魔物のランクが上がるな。十分に気をつけろよ。空色の戦斧亭の亭主に聞いたんだが、もう少し進んだところに拓けた場所があるらしい。ここら辺の冒険者は森の奥に行くのに、そこで一泊するそうだ。今夜はそこで野営だ」
「「了解です!」」
「グルル」
ライが歩きながら説明し、二人と一頭は、きりりと返事をした。
しばらく歩くと、小さな広場にたどり着いた。倒木が二本置かれ、その間に冒険者が火おこしをした跡が残っていた。
「おそらくここが冒険者のキャンプ地だな。日が暮れる前にキャンプを張ろう。レイ、結界を頼めるか?」
「はい!」
レイは一瞬で防御結界を小さな広場全体にかけた。
ライが空間収納からキャンプ用品を取り出し、レヴィがそれを受け取ってテントの準備を始めた。
琥珀はずっと警戒役をしていたので、ここでは休憩だ。レイが魔術で出した水をゴクゴクと美味しそうに飲んでいる。
テントを立てたら、ライとレヴィは焚き火用の火口や焚き木を探しに行った。
レイは夕飯用のスープの準備だ。空間収納から鍋と食材を取り出して、材料を切っておく。塩漬けした干し肉と、キャベツだ。ライが猫科魔物なので、猫が食べられなさそうな食材はできるだけ避けておいた。
レヴィが焚き木と一緒にきのこも採ってきたので、水魔術で洗って切っておく。
レヴィはその間に火おこしだ。集めた火口に魔術で火をつけ、焚き木を足して大きくしていく。焚き火の準備ができたら、鍋を置いて、食材を軽く炒め、魔術で水を入れる。あとは蓋をして待つだけだ。
レイが空間収納からパンを取り出していると、ライが戻って来た。野うさぎを狩って来たようだ。
「わっ! 野うさぎですか。結構大きいですね」
「すまない、目に入って思わず狩ってしまった」
ライが珍しく、少しばつが悪そうに目線を外している。
人がたくさんいる街では無いそうなのだが、森の中だと本能的に狩りをしたくなることがあるらしい。「俺もまだまだだな……」とライは少し肩を落としていた。
うさぎは熟成が必要なので、すぐには食べられない。下処理だけして、空間収納に入れて、セルバに戻ってから食べることになった。
焚き火を囲んで、夕食になった。夕闇の中にオレンジ色の炎がゆらめき、パチパチと焚き木が爆ぜる音が小さく響く。
干し肉の塩味が滲み出たスープは、素朴ながらも美味しかった。パンは軽く焚き火で温めて、スープに浸して食べている。
「キャンプで食べるご飯って、何だかわくわくしますね。贅沢じゃないけど、いつもよりも美味しい気がします」
「確かに、特別な感じがしていいな」
レイがほくほくした顔でスープを飲んで呟き、ライもほろりと頬を緩ませて答えた。
「明日は、依頼にあった薬草を採りに行く。途中でコカトリスに出くわしたら、狩るぞ。休める時はしっかり休んでおけ」
「「はい!」」
ライの言葉に、レイとレヴィはしっかり頷いた。
その時、レイは、通信の魔道具がぴかぴかと光るのを感じた。
通信の魔道具は、青い魔石でできていて、平べったい形をしている。空間収納に入れておいても、連絡が来れば持ち主に分かるような魔術もかかっているのだ。
レイが空間収納から取り出すと、ウィルフレッドに繋がった。
『よう、レイ。今、大丈夫か? ウィルフレッドだ』
「師匠、どうしたんですか?」
『近いうちに、一度ユグドラに戻って来てくれないか? フェリクスが来るんだ。いつ頃なら大丈夫そうか?』
「義父さんが? ……どうしましょう?」
レイはライの方を振り向いた。
「遅くとも明後日にはセルバに戻れるだろうから、早くとも三日後だろうな」
ライは顎に無骨な手をのせて、ふむ、と考え込んでいる。
『ライオネル殿もそこにいるのか?』
「そうなんです。今、ちょうどギルドの依頼で外に出てて、野営をしているんです。三日後以降でも大丈夫ですか?」
『フェリクスに確認してみるな。決まったらまた連絡する。じゃあ、気をつけて行けよ』
ぷつりとそこで通信が途切れた。
「私とレヴィは、この依頼が終わったら一度、ユグドラに戻りますね」
「分かった。俺はその間は休みだな」
レイたちは顔を見合わせて、頷き合った。
レイが張った結界はあるが、今回は冒険者としての手解きだ。練習のためにも、交代で見張りをすることになった。
レヴィがのそのそとテントの中に入って行き、まずはライとレイが見張りについた。
琥珀は大欠伸をして、レイの足元にごろごろと寝転んでいる。
レイが毛布に包まってごろんと仰向けに空を見上げると、満点の星空だった。森の中の凛と澄んだ空気の中で、くっきりと明るく輝いている。
「わぁ、綺麗~!」
「そのまま寝るなよ。今は見張り役だからな」
「は~い!」
ライが焚き火に木をくべながら、やんわりと注意した。
(……明日はBランク魔物と戦うかも……)
レイははじめての野営と明日の戦いへの高揚感に、少しだけ胸が早鳴った。
まだしばらくは目が冴えて、寝付けそうになかった。
毎回、講師ライによる詳しい解説付きだ。
魔物の基本的な知識はもちろん、魔物がどんな痕跡を残し、痕跡からどのようなことが分かるのか、狩りのコツなど、ライの講義は整理されていて、非常に分かりやすかった。
セルバ周辺の低ランク魔物を一通り討伐した後、ライは銀の不死鳥チームに提案した。
「そろそろBランクの魔物の討伐もやってみるか。Bランク魔物は基本的に、人里近くには住んでいない。今回は野営の練習もするぞ」
「野営、はじめてです」
「私も(この体では)はじめてですね」
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***
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「さすがにBランクまでいくと、そう都合良く依頼は出てないな」
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ライは腕を組んで思案顔だ。
「ライさん、ちょっとすみません」
「どうかされました?」
ライは、ギルド受付のシドニーに声をかけられた。
「ギルマスが銀の不死鳥メンバーをお呼びです。相談があるそうです」
シドニーが手で指し示した方を見ると、ギルドマスターのオーガストが手招きをしていた。
「ありがとう。すぐ向かいます」
ライが銀の不死鳥メンバーを振り向くと、レイとレヴィは頷いた。
「悪いな、呼び出しちまって」
応接室では、奥のソファにオーガストがどっかりと座り、入り口すぐのソファには、ライを真ん中に、レイとレヴィが左右から挟み込むように座っている。
「ここ二週間ほどの銀の不死鳥の活躍は見させてもらった。セルバ周辺の魔物は一通り狩ったんじゃないのか?」
「ああ、そうだな」
オーガストの確認に、ライが頷いた。
「そこでだ、銀の不死鳥に、これを依頼したい」
オーガストがピラリと一枚、テーブルの上に依頼票を置いた——ランクBの採集依頼だ。
「これは依頼ボードに無かったぞ」
「一回、依頼ボードに出したんだが、他のBランクチームが失敗してな。この薬草を採集できる地域周辺でBランク魔物が目撃されたんだが……もしかしたら変異種かもしれないんだ」
「変異種か……下手したらAランクになってるな」
「Bランク魔物はコカトリスだ。通常とは色が違くて、緑色の蛇尾で、風魔術を撃つらしい」
「コカトリスで風魔術か……少し厄介だな」
変異種の魔物は通常、見た目が違う。色が違ったり、角や牙の大きさや数が違ったり、体のサイズが極端に大きかったりするのだ。
色が違う場合は、本来その魔物なら使えないような属性の魔術やスキルが使えたりする。角や牙の数が多かったり、体が大きいものは、単純に固かったり力が強くなっていたりする——どちらにしろ、変異種は通常よりもランクが一つ上がっていることが多い。
「ライもブランクはあるだろうが、ここ二週間はほぼ毎日、何かしら討伐依頼を受けて、そろそろあったまってきた頃なんじゃないか? 解体工房の方からも、銀の不死鳥が狩ってきた魔物は状態が良い、と報告が来ている。腕の良い証拠だ。レヴィもレイもまだ新人だが、使い魔もランクが高いし、俺は銀の不死鳥ならこの依頼をこなせると踏んでる。どうだ、受けてみるか?」
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ライはレイを見た。レイはこくりと頷いた。
「分かった。この依頼、受けよう。どこら辺にその変異種が出たかは分かるか?」
ライは空間収納から地図を取り出すと、テーブルの上に開き、ぐっと身を乗り出した。
「ありがとう。助かる。変異種の目撃情報は……」
オーガストから情報を引き出せるだけ引き出すと、ライたちは依頼の準備をしにギルドを後にした。
***
次の日の早朝、レイたちはセルバの街を出立した。
空色の戦斧亭の亭主には、依頼で一泊か二泊ほど、外泊すると伝えてある。
人の気配が無くなった地点から、琥珀もレイのローブのフードから出て来て、元のライオンサイズの大きさに戻った。周囲を警戒しながら、レイの横に並んで歩いている。
銀の不死鳥がよく狩りをしている場所を超え、どんどん西の森の奥へと進んで行くと、一気に森の雰囲気が変わった。
森の見た目は変わらないが、魔力の密度が上がったようで、少しだけ重たいプレッシャーを感じる。
(……ここ最近入ってた森と、全然違う。気を引き締めないと……)
レイは森の違いを繊細に感じて、ぶるりと身震いした。
「ここら辺から魔物のランクが上がるな。十分に気をつけろよ。空色の戦斧亭の亭主に聞いたんだが、もう少し進んだところに拓けた場所があるらしい。ここら辺の冒険者は森の奥に行くのに、そこで一泊するそうだ。今夜はそこで野営だ」
「「了解です!」」
「グルル」
ライが歩きながら説明し、二人と一頭は、きりりと返事をした。
しばらく歩くと、小さな広場にたどり着いた。倒木が二本置かれ、その間に冒険者が火おこしをした跡が残っていた。
「おそらくここが冒険者のキャンプ地だな。日が暮れる前にキャンプを張ろう。レイ、結界を頼めるか?」
「はい!」
レイは一瞬で防御結界を小さな広場全体にかけた。
ライが空間収納からキャンプ用品を取り出し、レヴィがそれを受け取ってテントの準備を始めた。
琥珀はずっと警戒役をしていたので、ここでは休憩だ。レイが魔術で出した水をゴクゴクと美味しそうに飲んでいる。
テントを立てたら、ライとレヴィは焚き火用の火口や焚き木を探しに行った。
レイは夕飯用のスープの準備だ。空間収納から鍋と食材を取り出して、材料を切っておく。塩漬けした干し肉と、キャベツだ。ライが猫科魔物なので、猫が食べられなさそうな食材はできるだけ避けておいた。
レヴィが焚き木と一緒にきのこも採ってきたので、水魔術で洗って切っておく。
レヴィはその間に火おこしだ。集めた火口に魔術で火をつけ、焚き木を足して大きくしていく。焚き火の準備ができたら、鍋を置いて、食材を軽く炒め、魔術で水を入れる。あとは蓋をして待つだけだ。
レイが空間収納からパンを取り出していると、ライが戻って来た。野うさぎを狩って来たようだ。
「わっ! 野うさぎですか。結構大きいですね」
「すまない、目に入って思わず狩ってしまった」
ライが珍しく、少しばつが悪そうに目線を外している。
人がたくさんいる街では無いそうなのだが、森の中だと本能的に狩りをしたくなることがあるらしい。「俺もまだまだだな……」とライは少し肩を落としていた。
うさぎは熟成が必要なので、すぐには食べられない。下処理だけして、空間収納に入れて、セルバに戻ってから食べることになった。
焚き火を囲んで、夕食になった。夕闇の中にオレンジ色の炎がゆらめき、パチパチと焚き木が爆ぜる音が小さく響く。
干し肉の塩味が滲み出たスープは、素朴ながらも美味しかった。パンは軽く焚き火で温めて、スープに浸して食べている。
「キャンプで食べるご飯って、何だかわくわくしますね。贅沢じゃないけど、いつもよりも美味しい気がします」
「確かに、特別な感じがしていいな」
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「「はい!」」
ライの言葉に、レイとレヴィはしっかり頷いた。
その時、レイは、通信の魔道具がぴかぴかと光るのを感じた。
通信の魔道具は、青い魔石でできていて、平べったい形をしている。空間収納に入れておいても、連絡が来れば持ち主に分かるような魔術もかかっているのだ。
レイが空間収納から取り出すと、ウィルフレッドに繋がった。
『よう、レイ。今、大丈夫か? ウィルフレッドだ』
「師匠、どうしたんですか?」
『近いうちに、一度ユグドラに戻って来てくれないか? フェリクスが来るんだ。いつ頃なら大丈夫そうか?』
「義父さんが? ……どうしましょう?」
レイはライの方を振り向いた。
「遅くとも明後日にはセルバに戻れるだろうから、早くとも三日後だろうな」
ライは顎に無骨な手をのせて、ふむ、と考え込んでいる。
『ライオネル殿もそこにいるのか?』
「そうなんです。今、ちょうどギルドの依頼で外に出てて、野営をしているんです。三日後以降でも大丈夫ですか?」
『フェリクスに確認してみるな。決まったらまた連絡する。じゃあ、気をつけて行けよ』
ぷつりとそこで通信が途切れた。
「私とレヴィは、この依頼が終わったら一度、ユグドラに戻りますね」
「分かった。俺はその間は休みだな」
レイたちは顔を見合わせて、頷き合った。
レイが張った結界はあるが、今回は冒険者としての手解きだ。練習のためにも、交代で見張りをすることになった。
レヴィがのそのそとテントの中に入って行き、まずはライとレイが見張りについた。
琥珀は大欠伸をして、レイの足元にごろごろと寝転んでいる。
レイが毛布に包まってごろんと仰向けに空を見上げると、満点の星空だった。森の中の凛と澄んだ空気の中で、くっきりと明るく輝いている。
「わぁ、綺麗~!」
「そのまま寝るなよ。今は見張り役だからな」
「は~い!」
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(……明日はBランク魔物と戦うかも……)
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16
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