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冒険者登録1
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セルバの街、中央出入り口の近くに冒険者ギルドはある。
ライオネル——ことライに連れられて、レイ、レヴィ、琥珀は冒険者ギルドにやって来た。
琥珀はレイのローブのフードの中に、すっぽりおさまっている。
セルバの街の冒険者ギルドは、煉瓦造りの大きな建物だ。
正面の大きな木戸を潜って中に入ると、昼過ぎの時間帯のためか、冒険者たちはそのほとんどが外に出ているらしく、ギルド内は人が少ない。
ライは堂々と受付カウンターまで行くと、受付の女性に要件を伝えた。
クリーム色の髪を真ん中分けにしたクールなボブヘアの女性だ。
「こいつらの冒険者登録をしたいんだが。あと、使い魔登録が一匹ある」
「かしこまりました。失礼ですが、あなたは?」
「ああ、俺はもう登録してるから大丈夫だ。今日は単なる付き添いだ」
「そうですか。そうしましたら、登録される方はこちらの用紙にご記入をお願いします。使い魔分の用紙はこちらです。使い魔登録は後程、専用の魔道具でも登録いたします。登録内容に誤りがありますと取り消しになる場合がございますので、ご注意ください」
レイとレヴィは登録用紙を記入した。レイは魔術師として、レヴィは剣士として登録する。
受付の女性は記入された用紙を受け取ると、チェックを始めた。彼女はある項目を見ると、ふと動きを止めた。
「レイさんの魔力属性は何でしょうか?」
「水です」
レイは全属性適性があるが、普通の人間はそこまでいくつも適性を持っているわけではない。今回は一番得意な水属性のみ登録しようとみんなで話し合って決めていたのだ。
「魔術師の場合は後程、実技試験があります。剣技などは練習すれば上達するので問題ないのですが、魔術は使えないと登録内容が誤りになります。水属性であれば、ひとまずコップ一杯分でも出せれば合格です……あと、こちらの使い魔についてですが……」
「どうかしたか?」
訝しげな表情の受付の女性に、ライが尋ねた。
「……いえ、あまりにも珍しいので……上の者に確認して参りますので、少々お待ちください」
受付の女性は奥の方へ引っ込んで行った。
ライとレイは互いの顔を見合わせた。
「まぁ、琥珀は確かに人に懐くような種類の魔物ではないからな」
「そういえば、師匠にも使い魔にする人は滅多にいないと言われました」
二人が話し込んでいると、ギルドの奥の部屋から筋骨隆々とした大男が出てきた。彼の後ろからは先程の受付の女性がついて来ている。
「よう。俺はセルバの冒険者ギルドマスターのオーガストだ。使い魔登録について話がしたいんだが、ちょっとそこの応接室まで来てくれるか?」
「ああ、分かった」
ギルドマスターは冒険者上がりの者も多いというが、オーガストもそのようだ。腕や顔には薄らと消えない傷が幾つもあり、他を圧倒するような存在感がある。堂々と落ち着いた雰囲気には、幾つもの修羅場をくぐり抜けてきたような貫禄もある。
オーガストに促され、レイたちはギルドの応接室へと移動した。
応接室には木製の無骨なローテーブルが一つと、使い古してくたびれた大きな革のソファが二つ置いてあり、壁際には年季の入ったチェストが置いてある。
奥側のソファにオーガストが一人で座り、入り口に近い方のソファには、ライとレイとレヴィが三人で座った。
「今回登録するのはレイとレヴィで、レイの使い魔がキラーベンガル、ってことでいいんだな? ……それであんたは?」
「Aランク冒険者のライだ。冒険者証もあるから出そうか? 今日は二人の付き添いだ」
「……Aランク冒険者? すまない、そのぐらいのランクの冒険者は大抵チェックしているんだが……」
「ああ、かなりブランクがあるからな。冒険者をやっていたのは百五十年前だしな」
「そんなに前なのか!? あんた、随分魔力量があるんだな」
オーガストは驚愕の表情でライを見つめた。
ライは苦笑いだ。
こちらの世界では、魔力量が多い者は長生きだ。人間の魔力量の多い魔術師は、三百歳ぐらいは生きる。
ライは人間に擬態しているため、実際には二千年以上は生きているが……
「話を戻そうか……レイの使い魔がキラーベンガルで合っている」
ライが目線で、レイのローブのフードの中にいる琥珀を指した。
レイが「琥珀おいで」と言うと、のそのそとフードから琥珀が出て来て、そのままレイの膝上まで移動した。
その様子をじっとオーガストは見ていた。
「模様はキラーベンガルだが、随分小さくないか? 幼生体か?」
「成体ですよ。縮小化魔術で今は小さくなってます。元の大きさに戻しましょうか?」
「ああ、見たいな」
「琥珀」
琥珀は「な~ん」と一声鳴いて縮小化魔術を解くと、元のライオンサイズの大きさになった。
オーガストは顔色を悪くしつつも、琥珀を見つめていた。
レイが琥珀を撫でると、琥珀はすりすりと頭をレイに擦り付けた。
「……もう十分だ。小さいサイズに戻してくれ……他のギルド職員や冒険者が怖がるし騒ぎになるから、ギルド内や街中では小さいサイズのままにしてくれ。あとは、まあ、それだけ懐いてるからな、レイが主人だということも分かった」
オーガストは顔を強張らせながら、琥珀についての注意事項を述べた。
レイはこくりと頷くと、琥珀を小さくさせて膝の上に乗せた。
琥珀は香箱を組むと、ゴロゴロと機嫌良く喉を鳴らしている。
「ここだけ見てると、猫のようだな……このまま使い魔登録するか」
オーガストは応接室のチェストの中から使い魔登録用の魔道具を取り出して持って来た。
A3サイズぐらいの板状のもので、表示用ディスプレイのような部分が一つと、人の手がおさまるぐらいの大きさの円が二つ付いている。円の片方にはコードが付いていて、取り外せるようだった。
「主人がこっちに手を置いて、使い魔がこっちに体の一部を置くか、くっつけるんだ」
レイは片方の円に手を置いた。コード付きの円は、使い魔用のものだった。
「琥珀、こっちに手置いて」
琥珀がかわいらしい前足をふにっとコード付きの円の方に置いた。
魔道具が淡く光ると、ディスプレイの上に、左右の端に穴の空いた細長いプレート状のタグが一瞬で現れた。
(!? 何これ、凄い!)
レイは目を丸くした。
「これが使い魔用のタグだな。首輪とかに付けて身につけさせてくれ。もし無くした場合は、再発行に料金が発生するから気を付けてくれ」
「分かりました。後でリボンにつけてあげるね」
レイは琥珀の頭を撫でながら言った。
琥珀もゴロゴロと喉で返事をする。
「レイは魔術師だから、このまま実技を見るか」
オーガストがソファから立ち上がり、太い親指で出入口の方をぐいっと指差した。
レイたちはさらに移動することになった。
ライオネル——ことライに連れられて、レイ、レヴィ、琥珀は冒険者ギルドにやって来た。
琥珀はレイのローブのフードの中に、すっぽりおさまっている。
セルバの街の冒険者ギルドは、煉瓦造りの大きな建物だ。
正面の大きな木戸を潜って中に入ると、昼過ぎの時間帯のためか、冒険者たちはそのほとんどが外に出ているらしく、ギルド内は人が少ない。
ライは堂々と受付カウンターまで行くと、受付の女性に要件を伝えた。
クリーム色の髪を真ん中分けにしたクールなボブヘアの女性だ。
「こいつらの冒険者登録をしたいんだが。あと、使い魔登録が一匹ある」
「かしこまりました。失礼ですが、あなたは?」
「ああ、俺はもう登録してるから大丈夫だ。今日は単なる付き添いだ」
「そうですか。そうしましたら、登録される方はこちらの用紙にご記入をお願いします。使い魔分の用紙はこちらです。使い魔登録は後程、専用の魔道具でも登録いたします。登録内容に誤りがありますと取り消しになる場合がございますので、ご注意ください」
レイとレヴィは登録用紙を記入した。レイは魔術師として、レヴィは剣士として登録する。
受付の女性は記入された用紙を受け取ると、チェックを始めた。彼女はある項目を見ると、ふと動きを止めた。
「レイさんの魔力属性は何でしょうか?」
「水です」
レイは全属性適性があるが、普通の人間はそこまでいくつも適性を持っているわけではない。今回は一番得意な水属性のみ登録しようとみんなで話し合って決めていたのだ。
「魔術師の場合は後程、実技試験があります。剣技などは練習すれば上達するので問題ないのですが、魔術は使えないと登録内容が誤りになります。水属性であれば、ひとまずコップ一杯分でも出せれば合格です……あと、こちらの使い魔についてですが……」
「どうかしたか?」
訝しげな表情の受付の女性に、ライが尋ねた。
「……いえ、あまりにも珍しいので……上の者に確認して参りますので、少々お待ちください」
受付の女性は奥の方へ引っ込んで行った。
ライとレイは互いの顔を見合わせた。
「まぁ、琥珀は確かに人に懐くような種類の魔物ではないからな」
「そういえば、師匠にも使い魔にする人は滅多にいないと言われました」
二人が話し込んでいると、ギルドの奥の部屋から筋骨隆々とした大男が出てきた。彼の後ろからは先程の受付の女性がついて来ている。
「よう。俺はセルバの冒険者ギルドマスターのオーガストだ。使い魔登録について話がしたいんだが、ちょっとそこの応接室まで来てくれるか?」
「ああ、分かった」
ギルドマスターは冒険者上がりの者も多いというが、オーガストもそのようだ。腕や顔には薄らと消えない傷が幾つもあり、他を圧倒するような存在感がある。堂々と落ち着いた雰囲気には、幾つもの修羅場をくぐり抜けてきたような貫禄もある。
オーガストに促され、レイたちはギルドの応接室へと移動した。
応接室には木製の無骨なローテーブルが一つと、使い古してくたびれた大きな革のソファが二つ置いてあり、壁際には年季の入ったチェストが置いてある。
奥側のソファにオーガストが一人で座り、入り口に近い方のソファには、ライとレイとレヴィが三人で座った。
「今回登録するのはレイとレヴィで、レイの使い魔がキラーベンガル、ってことでいいんだな? ……それであんたは?」
「Aランク冒険者のライだ。冒険者証もあるから出そうか? 今日は二人の付き添いだ」
「……Aランク冒険者? すまない、そのぐらいのランクの冒険者は大抵チェックしているんだが……」
「ああ、かなりブランクがあるからな。冒険者をやっていたのは百五十年前だしな」
「そんなに前なのか!? あんた、随分魔力量があるんだな」
オーガストは驚愕の表情でライを見つめた。
ライは苦笑いだ。
こちらの世界では、魔力量が多い者は長生きだ。人間の魔力量の多い魔術師は、三百歳ぐらいは生きる。
ライは人間に擬態しているため、実際には二千年以上は生きているが……
「話を戻そうか……レイの使い魔がキラーベンガルで合っている」
ライが目線で、レイのローブのフードの中にいる琥珀を指した。
レイが「琥珀おいで」と言うと、のそのそとフードから琥珀が出て来て、そのままレイの膝上まで移動した。
その様子をじっとオーガストは見ていた。
「模様はキラーベンガルだが、随分小さくないか? 幼生体か?」
「成体ですよ。縮小化魔術で今は小さくなってます。元の大きさに戻しましょうか?」
「ああ、見たいな」
「琥珀」
琥珀は「な~ん」と一声鳴いて縮小化魔術を解くと、元のライオンサイズの大きさになった。
オーガストは顔色を悪くしつつも、琥珀を見つめていた。
レイが琥珀を撫でると、琥珀はすりすりと頭をレイに擦り付けた。
「……もう十分だ。小さいサイズに戻してくれ……他のギルド職員や冒険者が怖がるし騒ぎになるから、ギルド内や街中では小さいサイズのままにしてくれ。あとは、まあ、それだけ懐いてるからな、レイが主人だということも分かった」
オーガストは顔を強張らせながら、琥珀についての注意事項を述べた。
レイはこくりと頷くと、琥珀を小さくさせて膝の上に乗せた。
琥珀は香箱を組むと、ゴロゴロと機嫌良く喉を鳴らしている。
「ここだけ見てると、猫のようだな……このまま使い魔登録するか」
オーガストは応接室のチェストの中から使い魔登録用の魔道具を取り出して持って来た。
A3サイズぐらいの板状のもので、表示用ディスプレイのような部分が一つと、人の手がおさまるぐらいの大きさの円が二つ付いている。円の片方にはコードが付いていて、取り外せるようだった。
「主人がこっちに手を置いて、使い魔がこっちに体の一部を置くか、くっつけるんだ」
レイは片方の円に手を置いた。コード付きの円は、使い魔用のものだった。
「琥珀、こっちに手置いて」
琥珀がかわいらしい前足をふにっとコード付きの円の方に置いた。
魔道具が淡く光ると、ディスプレイの上に、左右の端に穴の空いた細長いプレート状のタグが一瞬で現れた。
(!? 何これ、凄い!)
レイは目を丸くした。
「これが使い魔用のタグだな。首輪とかに付けて身につけさせてくれ。もし無くした場合は、再発行に料金が発生するから気を付けてくれ」
「分かりました。後でリボンにつけてあげるね」
レイは琥珀の頭を撫でながら言った。
琥珀もゴロゴロと喉で返事をする。
「レイは魔術師だから、このまま実技を見るか」
オーガストがソファから立ち上がり、太い親指で出入口の方をぐいっと指差した。
レイたちはさらに移動することになった。
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◆関連作品
『砂漠の詩』
『雨の回廊』編の過去編スピンオフです。
『冒険者を辞めたら天職でした 〜パーティーを追放された凄腕治癒師は、大聖者と崇められる〜』
『冒険者パーティーを追放された凄腕治癒師を拾いました』編のスピンオフです。
『ジャスティンと魔法少女のステッキ』
『魔法少女』編のスピンオフです。
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『冒険者を辞めたら天職でした 〜パーティーを追放された凄腕治癒師は、大聖者と崇められる〜』
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