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ユグドラ花祭り5
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花祭り二日目。
花の荒れは初日の夜がピークだったようで、多少乱れ飛ぶ花と花の間に隙間が見えるぐらいには落ち着いてきていた。
レイは今日は、リリスの形見分けでもらった黄色いワンピースを着ている。
花織りという花の妖精だけが織れる珍しい素材で作られている。非常に柔らかくて少しだけ透け感のある素材で、胸元にピンタックが入ったノーカラーのワンピースだ。
ウエストを飾る共布のリボンが付いていて、前面や袖口に付いているくるみボタンにも、ユグドラの花の花織りが使われている贅沢な一品だ。
髪はシェリーに毛先を巻いたポニーテールにしてもらい、髪留めのリボンには、ユグドラの花を付けてもらった。
今日のレイは、フェリクスと一緒に屋台巡りだ。
屋台と言っても、さすがに外には出せないので、室内のみで販売している。
ユグドラは魔力に溢れていて、魔術の扱いに長けた者が多いため、転移魔術を扱える者が多い。外に出られないこのような日は、転移魔術で来店することになる。お店もそこは認めていて、店舗内にわざわざ転移用のスペースを確保している所が多い。
レイは習い始めた転移魔術と空間収納魔術を使って、フェリクスと屋台巡りをする予定だ。
ユグドラの花祭りの屋台マップを見つつ、どこから周るかフェリクスと相談している。
「花蜜アイスは外せないです! あと、花茶も気になります」
「ここのポークサンドは美味しいよ。特製ソースが甘塩っぱくって美味しいんだ。まだ食べたことがないなら食べようか」
「ポークサンド!? 美味しそうです! それも行きましょう。あと、りんご飴も定番です」
「屋台で食べ物を買ったら空間収納にしまって、最後はユグドラの樹のバルコニースペースに転移してゴールにしようか。そこで食べよう」
「はい!」
レイは祭りも楽しみだが、実践的な転移魔術にもドキドキしている。まだ見える範囲でしか転移したことがないのだ。
(……間違って壁とかに転移しても近くの場所に弾かれて着地するから、一応、大丈夫。いざとなったら義父さんが手伝ってくれるし……)
「ゴーグルとマスクはどうしましょう?」
レイがフェリクスを見上げた。昨日よりもまだ荒れがおさまってはいるが、花吹雪で一面の黄色には変わらない。
「僕が結界を張っとくから無くても大丈夫だよ」
「それも後で教えてください!」
レイは魔術に慣れてきて、だんだんと魔術を使うのが楽しくなってきていた。新しい魔術も積極的に学ぶようにしている。魔力量無限で使い放題なのも、レイのチャレンジ精神を後押ししていた。
「それじゃあ、準備はいいですか?」
「大丈夫だよ」
「行きます!」
レイはフェリクスと手を繋ぐと、花蜜アイスの店に転移した。
一瞬の浮遊感の後、ふわりとアイス屋の転移用スペースに着地した。
「やった! ちゃんと来れました!」
「うん、バッチリだね。この調子でいこうか」
レイは喜びのあまりぴょこんと跳ねて、フェリクスに抱きついた。
フェリクスも、にこにことレイの頭を撫でている。
「いらっしゃい!」
「結構混んでますね」
レイは店内を見まわした。
転移でしか来れないはずだが、既に店内はユグドラの住民で賑わっている。
花蜜アイスは花祭りの間だけの限定品だ。バニラアイスに、琥珀色のユグドラの花蜜がかけられている。
特に今年は花蜜の質が良いと評判で、花蜜を使っている屋台はどこも人気のようだ。
「花蜜アイス、五つお願いします!」
「はいよ。今年の花蜜は特等だよ」
「ありがとう」
レイは花蜜アイスを受け取ると、空間収納に仕しまった。
空間収納内では時間が進まず、物が腐ることもアイスが溶けることもない。
ただ、収納できる量は魔力量に比例するため、適性があっても財布ぐらいしか入れられない人間も多い。
「じゃあ、次の店に行こうか」
「はい!」
レイとフェリクスは転移で屋台を周って、目的の品をゲットしては空間収納に入れていった。
最後にバルコニースペースにふわりと転移すると、レイはふうっと一息ついた。
無事にミッションコンプリートだ。
ユグドラの樹、高層階のバルコニースペースは、昼間は花見用のカフェスペースになっていた。
いつもは何も置いてないが、この祭り期間中は、花見ができるように丸テーブルと椅子が置かれ、ユグドラの住民に解放されている。残念ながらドリンクや食事は各自持ち込みだ。
奥の方の席で、ダリルが丸テーブルに突っ伏して伸びていた。
使い魔の黒猫のココが、慰めるようにダリルの手をザリザリと舐めている。
「ダリル、大丈夫ですか?」
レイは駆け寄って、声をかけた。
「ああ、レイか?」
ダリルはよろよろと顔を起こした。
「どうしたんですか? 何だかぐったりしてます?」
「今年は妖精たちの盛り上がりが酷くてな、防御結界を穴だらけにされて、全て張り直したんだ……妖精の本気が恐ろしすぎる……」
「魔物たちの盛り上がりも酷いんだ! あいつら何で花合戦なんかで怪我するの!?」
げっそりと話すダリルに、エルネストが隣のテーブルから参戦した。
エルネストは相当お疲れらしい。ただでさえこの猛花吹雪の中、外へは出たくないのに、怪我人が出たからと出動させられているのだ。しかも不慮の事故などではなく、遊んでて怪我したものだということも、余計に疲労感を感じさせる原因だ。
そこへ魔物たちと共にレヴィがやって来た。いつの間にか随分仲良くなったようで、気軽に肩を組んでいる。
彼らからは、何やら甘くて爽やかな香りが漂ってくる。
「レヴィ、見ないと思ってたらどこ行ってたの?」
「花合戦です。数年に一度、このユグドラでしかできないと聞いて……魔物を我が身ではなく花玉で倒すというのは、今しかできませんからね」
レヴィはキラキラと目を輝かせて、非常に楽しそうだ。
作られて初めて剣から人型になり、人生というものを謳歌してみたいレヴィは、何でも積極的に参加している。
「大概の怪我の原因はあいつだ! レイの無限魔力を使ってるから、花玉は硬いし、剣だから疲れ知らずだし、手加減ってものがなってないんだよ!」
エルネストがレヴィを指差して、睨み付けるように言った。
「っ!? うちのレヴィがすみません!」
レイは勢い良く九十度に頭を下げた。
(ここは持ち主として、きちんと躾けないと……)
レイもまさか聖剣に躾が必要だとは思ってもいなかった。剣の姿で剣聖と一緒に長年世界中を旅してきたため、なまじ知識も豊富だ。だが、どこか人としての感覚がまだ薄く、時々、他の人に迷惑をかけたり頓珍漢な言動をしたりする。
ここは持ち主としてしっかり教えなければ、とレイは考えた。
「レヴィ、生き物には限界があるんだから、手加減しないとだよ」
「その割にはユグドラの魔物たちは非常に強力ですが……」
「強力な魔物でも怪我すれば痛いんだよ」
レヴィがフェリクスの方を振り向いた。
「Sランクぐらいになれば大抵、痛覚無効スキルは持ってるかな」
フェリクスが元も子もない事実をあっさりと言った。
「実はそこまで痛くなかったの!? ……でも、痛覚無効スキル持ちじゃない魔物もいるし、怪我したらエルネストが治さなきゃで大変だから、無闇に怪我させちゃダメです!」
レイはレヴィの躾のために、むうっと怒ったような顔をした。普段怒り慣れていない分、わざとらしく作った顔が、周囲からは微笑ましく見られている。
「でも魔物たちからは手加減するなと言われてます……」
「諸悪の根源はあいつらか……」
エルネストが呆れたような声を上げて、緑色の髪の毛をくしゃりと握って頭を抱えた。
***
レイは買ってきた屋台の食べ物を空間収納から取り出すと、フェリクスたちと一緒にまったりと食べ始めた。
あまりにもエルネストとダリルが可哀想だったため、多めに買った花蜜アイスをあげた。
二人は感動すると「レイは優しいな」「いい嫁さんになるぞ」と褒めて、アイスに舌鼓を打っている。
レヴィは花合戦で仲良くなった魔物たちと屋台飯を食べている。
「この分だと明日は祝祭だね。レイは描画担当だっけ?」
「そうです。義父さんは?」
「僕は今回は東の祝詞上げだね。慣れたものだよ」
祝祭では、ユグドラの樹の東西南北に陣取り、祝いの魔術詠唱——祝詞上げをし、ユグドラの樹を通じて世界の魔力を調整していく。
これが終わると魔力が安定するため、ユグドラの花吹雪も落ち着いてくる。
東をフェリクスが担当するほか、西はウィルフレッド、南がミランダ、北をダリルが担当する。魔力量が多く、魔術に長けた者が祝詞上げをするのだ。
フェリクスはほぼ毎回、祝詞上げの担当をしている。
「魔術陣の描画も大事だからな。明日は朝早いだろうけど、頑張ってくれ」
ダリルが花蜜アイスを食べ終わって花茶を飲んでいる。甘いものを食べてほっとしたのか、ダリルは先程に比べて随分と落ち着いている。
花茶は、お茶にユグドラの花の香りづけをしたものだ。ユグドラの花の甘く爽やかな香りがほのかにして、特に女性に人気だ。
花茶は花が咲いた時期に大量にストックを作るため期間限定品ではないが、ユグドラ内でしか出回らない特産品だ。
「責任重大ですけど、すごく楽しみです。ヴェロニカとポリーが言うには、描画も一つのお祭りなんだそうです」
魔術陣の描画は、ヴェロニカとポリーが陣頭指揮をとる。
「『一つのお祭り』……そうか、レイは今回が初めてか……うん、頑張りなよ」
エルネストが何やら遠い目をして言った。
「頑張ります!」
レイはにっこりと微笑んで答えた。
レイが本当にこの言葉の意味を思い知るのは、次の日になってからだった。
花の荒れは初日の夜がピークだったようで、多少乱れ飛ぶ花と花の間に隙間が見えるぐらいには落ち着いてきていた。
レイは今日は、リリスの形見分けでもらった黄色いワンピースを着ている。
花織りという花の妖精だけが織れる珍しい素材で作られている。非常に柔らかくて少しだけ透け感のある素材で、胸元にピンタックが入ったノーカラーのワンピースだ。
ウエストを飾る共布のリボンが付いていて、前面や袖口に付いているくるみボタンにも、ユグドラの花の花織りが使われている贅沢な一品だ。
髪はシェリーに毛先を巻いたポニーテールにしてもらい、髪留めのリボンには、ユグドラの花を付けてもらった。
今日のレイは、フェリクスと一緒に屋台巡りだ。
屋台と言っても、さすがに外には出せないので、室内のみで販売している。
ユグドラは魔力に溢れていて、魔術の扱いに長けた者が多いため、転移魔術を扱える者が多い。外に出られないこのような日は、転移魔術で来店することになる。お店もそこは認めていて、店舗内にわざわざ転移用のスペースを確保している所が多い。
レイは習い始めた転移魔術と空間収納魔術を使って、フェリクスと屋台巡りをする予定だ。
ユグドラの花祭りの屋台マップを見つつ、どこから周るかフェリクスと相談している。
「花蜜アイスは外せないです! あと、花茶も気になります」
「ここのポークサンドは美味しいよ。特製ソースが甘塩っぱくって美味しいんだ。まだ食べたことがないなら食べようか」
「ポークサンド!? 美味しそうです! それも行きましょう。あと、りんご飴も定番です」
「屋台で食べ物を買ったら空間収納にしまって、最後はユグドラの樹のバルコニースペースに転移してゴールにしようか。そこで食べよう」
「はい!」
レイは祭りも楽しみだが、実践的な転移魔術にもドキドキしている。まだ見える範囲でしか転移したことがないのだ。
(……間違って壁とかに転移しても近くの場所に弾かれて着地するから、一応、大丈夫。いざとなったら義父さんが手伝ってくれるし……)
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レイがフェリクスを見上げた。昨日よりもまだ荒れがおさまってはいるが、花吹雪で一面の黄色には変わらない。
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「大丈夫だよ」
「行きます!」
レイはフェリクスと手を繋ぐと、花蜜アイスの店に転移した。
一瞬の浮遊感の後、ふわりとアイス屋の転移用スペースに着地した。
「やった! ちゃんと来れました!」
「うん、バッチリだね。この調子でいこうか」
レイは喜びのあまりぴょこんと跳ねて、フェリクスに抱きついた。
フェリクスも、にこにことレイの頭を撫でている。
「いらっしゃい!」
「結構混んでますね」
レイは店内を見まわした。
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特に今年は花蜜の質が良いと評判で、花蜜を使っている屋台はどこも人気のようだ。
「花蜜アイス、五つお願いします!」
「はいよ。今年の花蜜は特等だよ」
「ありがとう」
レイは花蜜アイスを受け取ると、空間収納に仕しまった。
空間収納内では時間が進まず、物が腐ることもアイスが溶けることもない。
ただ、収納できる量は魔力量に比例するため、適性があっても財布ぐらいしか入れられない人間も多い。
「じゃあ、次の店に行こうか」
「はい!」
レイとフェリクスは転移で屋台を周って、目的の品をゲットしては空間収納に入れていった。
最後にバルコニースペースにふわりと転移すると、レイはふうっと一息ついた。
無事にミッションコンプリートだ。
ユグドラの樹、高層階のバルコニースペースは、昼間は花見用のカフェスペースになっていた。
いつもは何も置いてないが、この祭り期間中は、花見ができるように丸テーブルと椅子が置かれ、ユグドラの住民に解放されている。残念ながらドリンクや食事は各自持ち込みだ。
奥の方の席で、ダリルが丸テーブルに突っ伏して伸びていた。
使い魔の黒猫のココが、慰めるようにダリルの手をザリザリと舐めている。
「ダリル、大丈夫ですか?」
レイは駆け寄って、声をかけた。
「ああ、レイか?」
ダリルはよろよろと顔を起こした。
「どうしたんですか? 何だかぐったりしてます?」
「今年は妖精たちの盛り上がりが酷くてな、防御結界を穴だらけにされて、全て張り直したんだ……妖精の本気が恐ろしすぎる……」
「魔物たちの盛り上がりも酷いんだ! あいつら何で花合戦なんかで怪我するの!?」
げっそりと話すダリルに、エルネストが隣のテーブルから参戦した。
エルネストは相当お疲れらしい。ただでさえこの猛花吹雪の中、外へは出たくないのに、怪我人が出たからと出動させられているのだ。しかも不慮の事故などではなく、遊んでて怪我したものだということも、余計に疲労感を感じさせる原因だ。
そこへ魔物たちと共にレヴィがやって来た。いつの間にか随分仲良くなったようで、気軽に肩を組んでいる。
彼らからは、何やら甘くて爽やかな香りが漂ってくる。
「レヴィ、見ないと思ってたらどこ行ってたの?」
「花合戦です。数年に一度、このユグドラでしかできないと聞いて……魔物を我が身ではなく花玉で倒すというのは、今しかできませんからね」
レヴィはキラキラと目を輝かせて、非常に楽しそうだ。
作られて初めて剣から人型になり、人生というものを謳歌してみたいレヴィは、何でも積極的に参加している。
「大概の怪我の原因はあいつだ! レイの無限魔力を使ってるから、花玉は硬いし、剣だから疲れ知らずだし、手加減ってものがなってないんだよ!」
エルネストがレヴィを指差して、睨み付けるように言った。
「っ!? うちのレヴィがすみません!」
レイは勢い良く九十度に頭を下げた。
(ここは持ち主として、きちんと躾けないと……)
レイもまさか聖剣に躾が必要だとは思ってもいなかった。剣の姿で剣聖と一緒に長年世界中を旅してきたため、なまじ知識も豊富だ。だが、どこか人としての感覚がまだ薄く、時々、他の人に迷惑をかけたり頓珍漢な言動をしたりする。
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「レヴィ、生き物には限界があるんだから、手加減しないとだよ」
「その割にはユグドラの魔物たちは非常に強力ですが……」
「強力な魔物でも怪我すれば痛いんだよ」
レヴィがフェリクスの方を振り向いた。
「Sランクぐらいになれば大抵、痛覚無効スキルは持ってるかな」
フェリクスが元も子もない事実をあっさりと言った。
「実はそこまで痛くなかったの!? ……でも、痛覚無効スキル持ちじゃない魔物もいるし、怪我したらエルネストが治さなきゃで大変だから、無闇に怪我させちゃダメです!」
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「でも魔物たちからは手加減するなと言われてます……」
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***
レイは買ってきた屋台の食べ物を空間収納から取り出すと、フェリクスたちと一緒にまったりと食べ始めた。
あまりにもエルネストとダリルが可哀想だったため、多めに買った花蜜アイスをあげた。
二人は感動すると「レイは優しいな」「いい嫁さんになるぞ」と褒めて、アイスに舌鼓を打っている。
レヴィは花合戦で仲良くなった魔物たちと屋台飯を食べている。
「この分だと明日は祝祭だね。レイは描画担当だっけ?」
「そうです。義父さんは?」
「僕は今回は東の祝詞上げだね。慣れたものだよ」
祝祭では、ユグドラの樹の東西南北に陣取り、祝いの魔術詠唱——祝詞上げをし、ユグドラの樹を通じて世界の魔力を調整していく。
これが終わると魔力が安定するため、ユグドラの花吹雪も落ち着いてくる。
東をフェリクスが担当するほか、西はウィルフレッド、南がミランダ、北をダリルが担当する。魔力量が多く、魔術に長けた者が祝詞上げをするのだ。
フェリクスはほぼ毎回、祝詞上げの担当をしている。
「魔術陣の描画も大事だからな。明日は朝早いだろうけど、頑張ってくれ」
ダリルが花蜜アイスを食べ終わって花茶を飲んでいる。甘いものを食べてほっとしたのか、ダリルは先程に比べて随分と落ち着いている。
花茶は、お茶にユグドラの花の香りづけをしたものだ。ユグドラの花の甘く爽やかな香りがほのかにして、特に女性に人気だ。
花茶は花が咲いた時期に大量にストックを作るため期間限定品ではないが、ユグドラ内でしか出回らない特産品だ。
「責任重大ですけど、すごく楽しみです。ヴェロニカとポリーが言うには、描画も一つのお祭りなんだそうです」
魔術陣の描画は、ヴェロニカとポリーが陣頭指揮をとる。
「『一つのお祭り』……そうか、レイは今回が初めてか……うん、頑張りなよ」
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