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閑話 魔法猫とキャットタワー(ミランダの魔法猫キャシー視点)
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あたしはキャシー。ミランダの使い魔をやってるわ。
ミランダはあたしと同じ、高貴なバイオレット色の瞳の三大魔女よ。抱っこしてもらうと、温かくてふんわり柔らかくてぷにぷにしてるのも気に入ってるわ。
最近、ユグドラの樹、中層階の団欒室にキャットタワーなるものができたの。異世界から召喚されたレイって女の子と、ドワーフのモーガンが作ったみたい。
この前、レイがモーガンにいろいろ説明していたのは見たわ。
レイの話を聞いたモーガンは目をキラキラさせて、「よし、作るか!」って言って団欒室から急に飛び出して行ったから、びっくりしたのよ! もう!
***
レイは魔法猫が好きそうだった。
いつもあたしたち魔法猫のことを目で追ってたし、隙あらばなでなでしようとしてくるもの。
この前、お使いでドワーフのメルヴィンに手紙を届けに行ったら、一緒にレイもいて、撫でてこようとしたから猫パンチしたわ。
『ダメよ、ダメダメ! 淑女たるもの、挨拶も無しになでなではダメよ!』
躾の猫パンチをすれば、レイは眉を八の字にして悲しそうにこっちを見てきた。
『ゔ……そんな顔してもダメよ! マナーなんだからね!』
レイはまだまだ子供だからね。今のうちからちゃんと躾けないと、将来、淑女として恥ずかしいことになるんだから!
モーガンは魔法猫愛好家よ。
あたしもよくおやつをもらったり、なでなでさせてあげたりしてるわ。
モーガンは特に、癖のある魔法猫が好きみたいなの。使い魔が三匹いて、みんな魔法猫で種類が違うのよ。
ビビリのジョーは、ペチャ鼻で赤毛の長毛よ。葡萄酒色の目をしているわ。すぐにシャーッて怒る割に、びっくりするぐらい素早く隠れちゃうの。
のんびり屋でマイペースなボブは、垂れ耳でまんまるなお顔をしてるわ。グレーの縞々柄にライラック色の目がかわいいの。
せっかちなアビーは短足なのよ。でも、真っ白な毛色にあたしと同じバイオレット色の瞳は、なかなか良いんじゃない。
ある日、レイが団欒室に見慣れない猫を連れて来た。オレンジブラウンの毛色に黒いツヤツヤとしたロゼット模様、スマートな体型の……猫なの?
ビビリのジョーがいきなりシャーッと威嚇をした。
猫? 猫って何?
あたしはポカンとした。
あたしの知識が正しければ、あれはAランク魔物のキラーベンガル。キラーベンガルって魔法猫なの?
魔法猫は実は総称だったりする。
魔法猫は人間や亜人たちから使い魔としてとっても人気があって、愛猫家も多くて、大事に保護されてきたから、たくさんの種類が生まれてきた歴史がある。
細かく見ていけば、魔法猫は百種類以上いたりする。元が家猫の系譜のものもいれば、魔物の系譜のものも、妖精や精霊のように自然発生の系譜というのもある。
魔物の系譜のものが魔法猫に含まれるなら、魔物のキラーベンガルも魔法猫に含まれる……のかしら?
あたしは意を決して、レイが連れて来た猫に近づいた。
おヒゲをピンと張って、一歩下がった所から匂いを嗅いでみる……敵意はないみたい。
ビビリはシャーッした後にソファの裏に転がり込むように隠れて、ちょこちょこ顔を覗かせてこっちを見ている。
『あなた、名前は? あたしはキャシーよ』
『琥珀』
『いい名前ね』
ちょいちょい猫ジャブパンチを仕掛けて様子を見てみる。
琥珀も目をきらりと輝かせてのってきた。
猫パンチの応酬の後、琥珀に飛び掛かって、二匹してゴロンゴロンと団欒室を鞠のように転がり回ったわ。
ふぅっと一息ついて、寝そべりながらあたしは琥珀に言ったわ。
『爪の出し方もほどほどだし、甘噛みも出来てるから仕方ないわね、仲間に入れてあげるわ』
認めてあげたの。
『やった! ありがとう!』
琥珀は寝転がりつつ、ぶんっぶんっと尻尾を大きくゆっくり振って嬉しそうだった。
それから暫くして、団欒室にキャットタワーなるものが置かれたわ。琥珀に聞いたら、レイの元の世界には、こういう猫が遊びつつ休めるような物があったらしいの。
キャットタワーは、一番下の段にふわふわのハンモックがついていて、一番上の段にはクッション付きの見晴らし台が付いてるの。中間にはいくつか台が付いていて、途中に羽のおもちゃがぶら下がっていたり、小部屋があったりするの。
なかなか面白そうじゃない。
あたしは、おヒゲもひくひく匂いを嗅ぎながらキャットタワーを観察した。
マイペースなボブは、早くも一番上のクッションに陣取って寝転がってたわ。
短足のアビーは、ちょっと悔しそうに一番下のハンモックでふて寝してたわ。
ビビリはキャットタワーの匂いをこわごわ嗅ぎつつ、ちらちらとみんなの様子を窺ってたわ。
レイと琥珀は、キャットタワーにぶら下がってる羽のおもちゃで遊んでるわ。
……あの羽、Bランク魔物の羽じゃないかしら。何、こんな所に使ってるのよ……
柱部分に巻かれた縄には保護魔術が掛けられてて、爪を研ぐのに良さそうね。
バリバリバリバリ……
悪くないわね。
モーガンが満面の笑顔でこっちを見てるのが、ちょっと気持ち悪かったかも。
***
そういえば、レイとモーガンがまた団欒室でひそひそ話してたわね。
「モーガン、キャットウォークって知ってます?」
「……何だと!? そんなものが!?」
モーガンったら、また慌てて飛び出して行ったんだから! もう、びっくりさせないでよ!!
ミランダはあたしと同じ、高貴なバイオレット色の瞳の三大魔女よ。抱っこしてもらうと、温かくてふんわり柔らかくてぷにぷにしてるのも気に入ってるわ。
最近、ユグドラの樹、中層階の団欒室にキャットタワーなるものができたの。異世界から召喚されたレイって女の子と、ドワーフのモーガンが作ったみたい。
この前、レイがモーガンにいろいろ説明していたのは見たわ。
レイの話を聞いたモーガンは目をキラキラさせて、「よし、作るか!」って言って団欒室から急に飛び出して行ったから、びっくりしたのよ! もう!
***
レイは魔法猫が好きそうだった。
いつもあたしたち魔法猫のことを目で追ってたし、隙あらばなでなでしようとしてくるもの。
この前、お使いでドワーフのメルヴィンに手紙を届けに行ったら、一緒にレイもいて、撫でてこようとしたから猫パンチしたわ。
『ダメよ、ダメダメ! 淑女たるもの、挨拶も無しになでなではダメよ!』
躾の猫パンチをすれば、レイは眉を八の字にして悲しそうにこっちを見てきた。
『ゔ……そんな顔してもダメよ! マナーなんだからね!』
レイはまだまだ子供だからね。今のうちからちゃんと躾けないと、将来、淑女として恥ずかしいことになるんだから!
モーガンは魔法猫愛好家よ。
あたしもよくおやつをもらったり、なでなでさせてあげたりしてるわ。
モーガンは特に、癖のある魔法猫が好きみたいなの。使い魔が三匹いて、みんな魔法猫で種類が違うのよ。
ビビリのジョーは、ペチャ鼻で赤毛の長毛よ。葡萄酒色の目をしているわ。すぐにシャーッて怒る割に、びっくりするぐらい素早く隠れちゃうの。
のんびり屋でマイペースなボブは、垂れ耳でまんまるなお顔をしてるわ。グレーの縞々柄にライラック色の目がかわいいの。
せっかちなアビーは短足なのよ。でも、真っ白な毛色にあたしと同じバイオレット色の瞳は、なかなか良いんじゃない。
ある日、レイが団欒室に見慣れない猫を連れて来た。オレンジブラウンの毛色に黒いツヤツヤとしたロゼット模様、スマートな体型の……猫なの?
ビビリのジョーがいきなりシャーッと威嚇をした。
猫? 猫って何?
あたしはポカンとした。
あたしの知識が正しければ、あれはAランク魔物のキラーベンガル。キラーベンガルって魔法猫なの?
魔法猫は実は総称だったりする。
魔法猫は人間や亜人たちから使い魔としてとっても人気があって、愛猫家も多くて、大事に保護されてきたから、たくさんの種類が生まれてきた歴史がある。
細かく見ていけば、魔法猫は百種類以上いたりする。元が家猫の系譜のものもいれば、魔物の系譜のものも、妖精や精霊のように自然発生の系譜というのもある。
魔物の系譜のものが魔法猫に含まれるなら、魔物のキラーベンガルも魔法猫に含まれる……のかしら?
あたしは意を決して、レイが連れて来た猫に近づいた。
おヒゲをピンと張って、一歩下がった所から匂いを嗅いでみる……敵意はないみたい。
ビビリはシャーッした後にソファの裏に転がり込むように隠れて、ちょこちょこ顔を覗かせてこっちを見ている。
『あなた、名前は? あたしはキャシーよ』
『琥珀』
『いい名前ね』
ちょいちょい猫ジャブパンチを仕掛けて様子を見てみる。
琥珀も目をきらりと輝かせてのってきた。
猫パンチの応酬の後、琥珀に飛び掛かって、二匹してゴロンゴロンと団欒室を鞠のように転がり回ったわ。
ふぅっと一息ついて、寝そべりながらあたしは琥珀に言ったわ。
『爪の出し方もほどほどだし、甘噛みも出来てるから仕方ないわね、仲間に入れてあげるわ』
認めてあげたの。
『やった! ありがとう!』
琥珀は寝転がりつつ、ぶんっぶんっと尻尾を大きくゆっくり振って嬉しそうだった。
それから暫くして、団欒室にキャットタワーなるものが置かれたわ。琥珀に聞いたら、レイの元の世界には、こういう猫が遊びつつ休めるような物があったらしいの。
キャットタワーは、一番下の段にふわふわのハンモックがついていて、一番上の段にはクッション付きの見晴らし台が付いてるの。中間にはいくつか台が付いていて、途中に羽のおもちゃがぶら下がっていたり、小部屋があったりするの。
なかなか面白そうじゃない。
あたしは、おヒゲもひくひく匂いを嗅ぎながらキャットタワーを観察した。
マイペースなボブは、早くも一番上のクッションに陣取って寝転がってたわ。
短足のアビーは、ちょっと悔しそうに一番下のハンモックでふて寝してたわ。
ビビリはキャットタワーの匂いをこわごわ嗅ぎつつ、ちらちらとみんなの様子を窺ってたわ。
レイと琥珀は、キャットタワーにぶら下がってる羽のおもちゃで遊んでるわ。
……あの羽、Bランク魔物の羽じゃないかしら。何、こんな所に使ってるのよ……
柱部分に巻かれた縄には保護魔術が掛けられてて、爪を研ぐのに良さそうね。
バリバリバリバリ……
悪くないわね。
モーガンが満面の笑顔でこっちを見てるのが、ちょっと気持ち悪かったかも。
***
そういえば、レイとモーガンがまた団欒室でひそひそ話してたわね。
「モーガン、キャットウォークって知ってます?」
「……何だと!? そんなものが!?」
モーガンったら、また慌てて飛び出して行ったんだから! もう、びっくりさせないでよ!!
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◆関連作品
『砂漠の詩』
『雨の回廊』編の過去編スピンオフです。
『冒険者を辞めたら天職でした 〜パーティーを追放された凄腕治癒師は、大聖者と崇められる〜』
『冒険者パーティーを追放された凄腕治癒師を拾いました』編のスピンオフです。
『ジャスティンと魔法少女のステッキ』
『魔法少女』編のスピンオフです。
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『雨の回廊』編の過去編スピンオフです。
『冒険者を辞めたら天職でした 〜パーティーを追放された凄腕治癒師は、大聖者と崇められる〜』
『冒険者パーティーを追放された凄腕治癒師を拾いました』編のスピンオフです。
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