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勇者の帰還
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魔王城からの帰り道、不意にアクセルに声をかけられた。
「エトムント。私のものにならないか?」
えぇええっ!? 俺、男ですけど!? 可愛い婚約者もいますが!!?
——ってか、それは正ヒロインの女子高生に言うべきセリフ……
「…………」
俺がびっくりしすぎて何も言えないでいると、
「……いや、言葉選びが悪かったな。国に戻っても、側近として私を支えて欲しい、ということだ。今回の遠征で、互いの命を、背中を預け合った仲だ。これから王位を継いで政をしていくには、信頼できる仲間というのは重要だ……どうだろうか?」
アクセルが一番最初に見せてくれたような、はにかんだ笑顔を見せてくれた。
彼が素の時に見せてくれる純粋な笑顔だ。
「ああ。俺でよければ、アクセルの役に立とう」
俺が笑顔で快諾すると、アクセルは一瞬目を瞠って少し頬を赤らめたかと思うと、「ああ、よろしく頼む、エトムント!」とくしゃりとした笑顔で返してくれた。
周りのみんなも、俺たちのそんなやり取りを微笑ましげに眺めていた。
「さぁ、王都へ帰ろう! 皆が待っているぞ!」
「「「「おう!」」」」
アクセルの掛け声に、俺たちは笑顔で答えた。
——最初の顔合わせの時はどうなることやらと思ったけど、最後はみんなと仲良くなれて良かったよ。
***
「さすが! 私の最推しのエトムント様! 全スチル、コンプリートよ!! しかもまさか、魔王様まで味方にしちゃうだなんて!」
女神は、神界の女神の部屋に飾られた、攻略対象者たちの美麗スチルをニヤニヤと……いや、満面の笑みで眺めていた。
「これで魔族の国とも仲良くしてくれるなら、もう聖女を召喚する必要もないし……!」
女神はチラリとプラ◯ドポテトの方を見た。まだ全種類は味見していないのだ。
じゅるりと期待のよだれを飲み込む。
「世界は平和だし、他のポテチも召喚できるし、万々歳よ!!」
女神がはしゃいでバフンッと真っ白な雲にダイブすると、ふわふわっとちぎれ雲が舞い上がった。
「あら? これはボーナスかしら?」
キラキラしいエフェクト音と共に、神界の女神の部屋に現れたのは、額縁に入った勇者パーティーメンバーと魔王が仲良く肩を組む美麗スチルだった。
***
王都に戻ると、町中の人たちが盛大に祝ってくれた。
王宮側で用意してもらった凱旋のお披露目用の馬車に乗せられた。王都の大通りを通って王宮まで戻るパレードだ。
俺たちは、喜び歓声を上げる民衆に、笑顔で手を振った。
「ただいま、シビラ」
「お帰りなさい、エトムント!」
王城に到着すると、俺の胸にシビラが飛び込んできた。ほんのりと甘く爽やかな鈴蘭の香りがした。
急に飛び込んで来られたから、よく顔は確認できなかったけど、少し涙声じゃなかったか?
「……あなたが無事に帰って来てくれて良かったわ。もう、それだけでありがとう……」
「うん、心配かけてごめんね。待っててくれてありがとう」
しばらく会っていなかったということもあるけど、小さく震える細い肩を抱くと、余計にシビラを愛おしく感じた。
クスン、クスン……という涙を押し殺すような音も胸元から聞こえてくる。
紳士として、しばらくはこのままかな?
まだもうしばらくは、このままシビラのぬくもりを感じていたいっていう本音は秘密だ。
アクセル達は、やれやれ、とか「帰って早々、お熱いな」と苦笑い半分に、微笑ましく俺たちを見守ってくれていた。
シビラにはあとで、「俺がアクセル殿下の側近になるんだ」って言って驚かせよう。
魔族の国と和平条約も結ばなきゃだし、これからは忙しくなるな——
「エトムント。私のものにならないか?」
えぇええっ!? 俺、男ですけど!? 可愛い婚約者もいますが!!?
——ってか、それは正ヒロインの女子高生に言うべきセリフ……
「…………」
俺がびっくりしすぎて何も言えないでいると、
「……いや、言葉選びが悪かったな。国に戻っても、側近として私を支えて欲しい、ということだ。今回の遠征で、互いの命を、背中を預け合った仲だ。これから王位を継いで政をしていくには、信頼できる仲間というのは重要だ……どうだろうか?」
アクセルが一番最初に見せてくれたような、はにかんだ笑顔を見せてくれた。
彼が素の時に見せてくれる純粋な笑顔だ。
「ああ。俺でよければ、アクセルの役に立とう」
俺が笑顔で快諾すると、アクセルは一瞬目を瞠って少し頬を赤らめたかと思うと、「ああ、よろしく頼む、エトムント!」とくしゃりとした笑顔で返してくれた。
周りのみんなも、俺たちのそんなやり取りを微笑ましげに眺めていた。
「さぁ、王都へ帰ろう! 皆が待っているぞ!」
「「「「おう!」」」」
アクセルの掛け声に、俺たちは笑顔で答えた。
——最初の顔合わせの時はどうなることやらと思ったけど、最後はみんなと仲良くなれて良かったよ。
***
「さすが! 私の最推しのエトムント様! 全スチル、コンプリートよ!! しかもまさか、魔王様まで味方にしちゃうだなんて!」
女神は、神界の女神の部屋に飾られた、攻略対象者たちの美麗スチルをニヤニヤと……いや、満面の笑みで眺めていた。
「これで魔族の国とも仲良くしてくれるなら、もう聖女を召喚する必要もないし……!」
女神はチラリとプラ◯ドポテトの方を見た。まだ全種類は味見していないのだ。
じゅるりと期待のよだれを飲み込む。
「世界は平和だし、他のポテチも召喚できるし、万々歳よ!!」
女神がはしゃいでバフンッと真っ白な雲にダイブすると、ふわふわっとちぎれ雲が舞い上がった。
「あら? これはボーナスかしら?」
キラキラしいエフェクト音と共に、神界の女神の部屋に現れたのは、額縁に入った勇者パーティーメンバーと魔王が仲良く肩を組む美麗スチルだった。
***
王都に戻ると、町中の人たちが盛大に祝ってくれた。
王宮側で用意してもらった凱旋のお披露目用の馬車に乗せられた。王都の大通りを通って王宮まで戻るパレードだ。
俺たちは、喜び歓声を上げる民衆に、笑顔で手を振った。
「ただいま、シビラ」
「お帰りなさい、エトムント!」
王城に到着すると、俺の胸にシビラが飛び込んできた。ほんのりと甘く爽やかな鈴蘭の香りがした。
急に飛び込んで来られたから、よく顔は確認できなかったけど、少し涙声じゃなかったか?
「……あなたが無事に帰って来てくれて良かったわ。もう、それだけでありがとう……」
「うん、心配かけてごめんね。待っててくれてありがとう」
しばらく会っていなかったということもあるけど、小さく震える細い肩を抱くと、余計にシビラを愛おしく感じた。
クスン、クスン……という涙を押し殺すような音も胸元から聞こえてくる。
紳士として、しばらくはこのままかな?
まだもうしばらくは、このままシビラのぬくもりを感じていたいっていう本音は秘密だ。
アクセル達は、やれやれ、とか「帰って早々、お熱いな」と苦笑い半分に、微笑ましく俺たちを見守ってくれていた。
シビラにはあとで、「俺がアクセル殿下の側近になるんだ」って言って驚かせよう。
魔族の国と和平条約も結ばなきゃだし、これからは忙しくなるな——
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